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6/23 発売の対戦型シューティングゲーム『バイオハザード アンブレラコア』(PlayStation4/PC)は、 株式会社カプコン(以降、カプコン)主導の元、株式会社ケーツー(以降、ケーツー)がプログラム部分とデータ作成を担当し、PhotoScanによる3Dスキャニング、Unityによる物理ベースレンダリング/Physically-Based Rendering(以降、PBR)といった最近の開発トレンドを取り入れた意欲作だ。「ゲームの面白さに対して妥協しないカプコンの精神は、グループ会社であるケーツーにも受け継がれており、プライドをもって開発に臨んでいます」と語るケーツーの中核スタッフに、本作の舞台裏と仕事の魅力を解説してもらった。

UXチーム
UIだけでなく、ユーザー体験までデザインする

1分1秒を争う対戦型シューティングである本作は、UIの良し悪しがユーザーのプレイに大きな影響をおよぼす。「どんな情報を、どういう順番でユーザーに提示するかによって、ゲームの難易度は大きく変わります。表示が一瞬遅れたせいで負けてしまうようでは、ユーザーは納得しません。かといって、先行入力ができてしまうのもよくない。最良のUX(User Experience)、つまりはユーザー体験のバランスを探ることに、多くの時間と神経を使いました」とUXチームを牽引した佐々木 光典氏は語る。本作のUXチームは佐々木氏を含む6人編成で、デザイナー2人、企画1人、プログラマ3人で構成されている。

「Unity UI(uGUI)の機能を使い、我々デザイナーがUIをデザインし、それを企画が確認した後、プログラマに実装してもらいました。当社ではデザイナーも仕様書類の作成を担当するので、ゲームの面白さに深く関われます」。

  • 佐々木 光典氏

    (グラフィック制作室 室長)
    創立間もない同社が実施した最初の一般公募で入社し、現在はデザイナーを統括している。「本作にはプロトタイプ開発の段階から参加しています。最初の数ヶ月は少人数でゲームの面白さを追求し、方向性が決まった段階で関わるデザイナーの数を増やしました」

▲黄色の点線と矢印は、本作UIにおけるユーザーの視線移動を想定したものだ。人はまず画面中央に意識を向け、その後左上から情報を収集するため、その流れに沿ったレイアウトとなっている。『バイオハザード』シリーズのコンセプトカラーはタイトルによって変化し、本作では緑色・オレンジ色がキーカラーとなっている

▲左側は実装書と呼ばれるプログラマへの指示書類。右側は具体的なUIの見映えや動きを説明した仕様書。UIは開発期間中に様々な試行錯誤がなされるため、同社ではデザイナーも実装書や仕様書のブラッシュアップを担うことで、フットワークの軽さを実現している

キャラクターチーム
3Dスキャンを活用し、リアルなキャラクターを実現

本作のプレーヤーキャラクターは、複数の写真から高精度の3Dモデルを生成できるPhotoScanを使って制作されている。「カプコンの3Dスキャンスタジオをお借りして、3体のベースボディやガスマスクなどの小道具を撮影しました。このスタジオはPBR用の素材撮影にも対応できるライティングになっており、アルベドマップ(色情報のマップ)を半自動で生成できます。その後の加工は必須ですが、イチからモデリングするのと比較すれば、圧倒的に短時間で良質なモデルをつくれます」とキャラクターチームリーダーの髙本明宏氏は語る。

これまで観察しきれていなかったディテールを再発見するきっかけにもなり、髙本氏を含む5人のチームメンバーの成長につながっているという。「今回の経験で、3Dスキャンを使ったモデリングのノウハウを蓄積できました。次回のプロジェクトでは、さらに効率の良いワークフローを構築できるでしょう」。

  • 髙本明宏氏

    (キャラクターチームリーダー)
    ゲーム会社のモデラーとして約5年の経験を積んだ後、2008年にケーツーへ転職した。「つくったものに対し、率直に感想を言い合う社風です。へこむときもありますが、自分の欠点と向き合い成長できる環境は自慢です。チーム全体の力を上げて、"ケーツーすげぇ"と言われるようになるのが今の目標!」

▲プレーヤーキャラクターをスキャニング中のPhotoScanの画面。青色の長方形の1つ1つが、撮影された写真を表している。髙本氏は3Dスキャニングのノウハウを指導してもらいながら現場に立ち会い、カプコンの高度な技術を肌で感じたという


▲3DスキャンしたベースボディやガスマスクのデータをZBrushでクリーンナップしたもの。スキャン直後は全てのパーツが一体化しており、分離に手間がかかるというデメリットがある一方、身体の凹凸によって生じる服のシワ、ベルトによってできるシワなど、それらしく造形するのが難しいディテールをリアルに表現できるというメリットがある

▲シェーダは、まずデザイナーがUnityのShader Forgeを使って設定する。ノードベースのエディタなので直感的な作業が可能で、結果をすぐに確認できるため、ストレスなくトライ&エラーを繰り返せるという。設定されたシェーダはプログラマに引き渡され、最適化した後に実装される。【左】はプレーヤーキャラクターのマテリアル、【右】はその一部を拡大したものだ。雨がふっているシーンでは、Wet_Base_Switchをオンにすることで濡れた質感を表現できる。テクスチャで類似の表現をするよりも、シェーダを使う方が容量を抑えられるのに加え、柔軟な表現が可能だという

▲シェーダを使ったマスクの表現。色に加え、質感も様々に変更できる

エンヴァイロメントチーム
全フィールドをPBRで表現

エンヴァイロメントチームリーダーの中島 潤一郎氏が本作に参加したのは2015年1月で、Unity5がリリースされる直前のタイミングだった。「Unity5からPBRが導入されることは、その時点で告知されていましたが、まだまだ未知数の部分も多かったのです。見切り発車とも言える状態でPBRに手を出すことに、私を含む7人のチームメンバーが戸惑ったのも事実です。しかしそれ以上に、欧米のゲーム開発では既に当たり前になっているPBRに、自分たちも挑戦したい。フォトリアルな本作の世界観を表現するのにPBRは打って付けだという思いの方が強かったですね」。

同社のエンヴァイロメントチームでは、基本的に1つのステージの作成を、1人のデザイナーが一貫して担当する。「我々のチームでは、2Dのイメージボード作成から3Dのモデリングまで一手に引き受けるため、やりがいは大いにあると思います。タイトルの世界観を守りつつ、自分のアイデア、クリエイティビティを力いっぱい発揮してくれる人を募集中です」。

  • 中島 潤一郎氏

    (エンヴァイロメントチームリーダー)
    12年前、当時所属していた会社からの出向社員としてケーツーの開発に加わり、「居心地が良くて居ついてしまった」という。「ケーツーのエンヴァイロメントは、企画と一緒にレベルデザインまで考えながらステージをつくります。見た目の格好良さはもちろん、ゲームとしての面白さにもこだわれる仕事です」

▲PBRによって表現された同作のステージ。この中をプレーヤーキャラクターは自由に探索できる。後述する各種マップの制作には、Substance B2M、Substance Designer、Substance Painter、CrazyBumpなどが使われている

▲【左】同ステージのアルベドマップ(色情報)/【右】メタリックマップ(金属には白、非金属には黒が割り当てられている)

▲【左】スムースネスマップ(滑らかな質感には白、粗い質感には黒が割り当てられている)/【右】ノーマルマップ(凹凸を指定する)/これ以外にも、アンビエントオクルージョンマップをはじめ様々なマップが使われている

▲【左】HDR画像を使ったIBL(Image-Based Lighting)を適用することで、PBRの設定がさらに生きてくる/【右】本作では映り込み表現にSSR(Screen Space Reflection) が使われており、シーン内を移動するプレーヤーやゾンビの映り込みもリアルタイムに表現できる

モーションチーム
モーションキャプチャとUnityで制作を効率化

前述の中島氏と同じく、モーションチームリーダーの織田 令氏も2015年1月から本作の開発に参加した。「約15ヶ月の開発期間内に、何千という数のモーションをつくる必要がありました。しかも、目の肥えたハイエンドゲームのユーザーが納得するクオリティを出す必要もあった。イチからアニメーションを手付けしていたのでは到底間に合いませんから、モーションキャプチャの使用は不可欠でした」。

織田氏を含む8人のチームメンバーは15回近くカプコンのモーションキャプチャスタジオに通い、収録に立ち合ったとふり返る。「ケーツーの開発史上、本作は最高頻度でモーションキャプチャを使いました」。前述のプレーヤーキャラクターの3Dスキャンと、モーションキャプチャ時のアクターを同じ人に依頼したため、後日の修正は最低限に抑えられたという。「おかげで、ゲームの世界観や仕様に合わせた調整、ゲームとしての面白さの追求に多くの時間を使えました。我々の仕事は、単に仕様通りの動きを付けるだけではありません。ゲームを面白くするためにどうすべきか、ゲームクリエイターとして積極的に提案する姿勢が歓迎されます」。

  • 織田 令氏

    (モーションチームリーダー)
    ゲーム会社で約8年モーションを担当した後、2008年にケーツーへ転職した。「モーションキャプチャと手付けの使用率はタイトルによって様々で、柔軟に組み合わせるのがケーツーのスタイル。ユーザーはもちろん、自分も満足できる作品を生み出し続け、金持ちになる!それが自分の目標です」

▲【左】モーションキャプチャデータを MotionBuilder に流し込み、動きを確認している/【右】プレーヤーとゾンビのモーションを同時収録している。開発後半になると、Unityを経由してキャプチャデータをリアルタイムに実機内の3Dモデルに流し込み、完成したばかりのステージ内での見映えをチェックしていたという


▲【上段左】 MotionBuilderを使い、モーションデータを編集している。上半身と下半身のデータは別レイヤーで管理しており、武器を持ち替えた場合でも、下半身のデータはそのまま使えるよう工夫されている/【上段右・下段左・下段右】各種モーションはUnityで管理しており、ユーザーの操作に応じて様々な上半身と下半身のモーションがブレンドされる仕組みになっている。例えば【下段左】のCoverというノードには壁にはりつくモーションが、Doorにはドアを開けるモーションが紐付けられている

VFXチーム
ライトボリュームテクスチャで、リッチなスモークを演出

本作の VFX(エフェクト)は、チームリーダーの中馬越 理一氏を含む 2 人体制で制作された。「銃器の火花やスモーク、ゾンビの血しぶきは画面内に数多く表示されるため、処理負荷との戦いでした。エフェクトチーム以外のスタッフからも色々なアイデアや意見をもらいましたね」。エフェクトの多くはUnityに標準搭載されたパーティクルツールで表現している。Unity5になって表現力はさらに上がったものの、リッチな演出に挑戦すればするほど、ステージデータは重くなってしまう。見た目の良さに加えて、いかにデータ容量を軽くするかを考えることも重要な役割だという。

「スモークグレネード(手榴弾)の煙がライトに照らされて浮かび上がる演出の場合、煙のパーティクルに直接ライトを当てると計算負荷が高くなってしまいます。そのため、ライトボリュームテクスチャから色情報を抽出してブレンドし、パーティクルの色へ反映させる技術をカプコンから提供してもらい、処理負荷の削減に成功しました」。本作のVFXにおける最大の課題はUnityに適応したエフェクトの作成だったが、カプコンからの技術協力のおかげで、楽しみながら開発を進められたそうだ。

  • 中馬越 理一氏

    (VFXチームリーダー)
    専門学校の最終学年時にケーツーのインターンシップに参加。そのまま入社し現在にいたる。「気が付いたら入社から10年が経過していました。ハイエンドゲームのエフェクトを追求したい人がいたら、ぜひ仲間になってほしい。映像業界、アニメ業界のエフェクト経験者も歓迎します。お互いのセンスを組み合わせ、新しいエフェクト表現を生み出しましょう」

▲スモークグレネード(手榴弾)の煙がライトに照らされて浮かび上がる演出は、付近のテクスチャから色情報を抽出してブレンドし、煙のパーティクルの色へと反映させることで表現されている

▲ステージのライトと影がレンダリングされたテクスチャ【左】。ステージに16段階の高さで16枚の板ポリゴンを敷きつめ【右】、トップビューからレンダリングすることで、16枚のテクスチャ(【右】下部の16枚)を制作した。煙パーティクルの頂点カラーには黄みを帯びた白色が割り当てられており、そこに付近のテクスチャの色がブレンドされることで、ステージ内のライトの影響を受けているような演出が可能となる

ケーツー企画のオリジナルゲーム開発が全員の目標

『バイオハザード アンブレラコア』の開発が一段落した現在、各チームのメンバーは次のプロジェクトを精力的に推進している。一方で、カプコングループの新しい柱となるような、ケーツー企画のオリジナルゲームの開発が全員の目標だと代表取締役の児玉光生氏は語る。「そのために、スタッフ同士が切磋琢磨し、企画力、技術力、表現力を磨き、目標に向けて着々と準備を進めています。加えて、我々と一緒に目標の実現に向けて汗を流してくださる仲間も募集しています。当社自慢の開発者たちの仕事が気に入った方は、ぜひご連絡ください。我々と共に開発の苦楽を味わい、美味い食や酒も味わいましょう」。

TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

求人情報


株式会社ケーツーでは現在下記職種を募集中です。

ゲームプランナー
ゲームプログラマー
3DCGデザイナー(モデル)
3DCGデザイナー(モーション)
3DCGデザイナー(背景)
3DCGデザイナー(イベント)
UIデザイナー
エフェクトデザイナー

■雇用形態
正社員・契約社員

■勤務地
大阪府大阪市北区豊崎5丁目6-10 商業ビル7F

■待遇
経験・スキルに応じます
年俸制(昇給年1回)
裁量労働制
各種手当(通勤等)
インセンティブボーナス(年1回)
保養施設(三重県賢島)

■休日休暇
土、日、祝日
有休(初年度10日)
年間休日数 120日(2014年実績)

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