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Intel® Xeon® E3-1505M v5に加え、4K解像度への変更も可能な15.6型ワイド液晶モニタ搭載のThinkPad P50。高負荷の3DCG制作にも耐えうるモバイルワークステーションだと レノボ・ジャパンが太鼓判を押す本マシンを、画龍 代表取締役の早野海兵氏に検証していただいた。
早野氏の作品。実在するモチーフにアーティストの想像力を巧みに組み合わせた、印象的な画づくりを得意としている
耐久性でCore™ i7シリーズに勝る Xeon®シリーズ
株式会社画龍は、2007年の創設以来、単なるCGオペレーションではなく、優れたデザイン能力によって、多くのクライアントから格別の信頼と評価を得ている唯一無二のCGプロダクションだと早野氏は語る。 「CM、PV、映画のVFX、Web用グラフィックなど、手がけるジャンルは多岐にわたります。静止画や短い尺(長さ)の映像が中心なので、私を含め、スタッフの全員がゼネラリストです」。
映画やフルCGアニメのTVシリーズといった長尺映像を中心に手がけるCGプロダクションは、 モデリング・アニメーション・コンポジットなどの各工程に特化したスペシャリストのスタッフが多くを占める傾向にある。 一方、短尺を得意とする画龍のスタッフは、コンセプトデザインから最終フィニッシュまでの全工程を単身で担えるゼネラリストで構成されている。 「私がCGを始めた20年前は、誰もがゼネラリストでした。ゼネラリストのメリットは、自分の仕事に対して達成感や責任感を得やすいことですね。 クライアント様から、" ○○の映像を手がけたアーティストに依頼したい" といった指名をいただく場合もあります。そうやって自分の仕事が評価されれば、嬉しいものです」。
そんな画龍のアーティストが使用するマシンは、基本的に早野氏が選定しているという。「昔からマシンの情報を集めたり、検証したりといったことが好きで、社内では私が一番詳しいのです。 とはいえ、私だけで知りうることには限界があるので、同業者に聞いたり、ハードウェアメーカー、ソフトウェアメーカーの方々に聞いたりしながら、試行錯誤しています。 今回のような検証の機会はとても貴重なので、やらせていただいて良かったです」。 限られた予算のなかで、自社の3DCG制作にベストのマシンと、そのカスタマイズを見極めることは難しく、時間がかかる作業だという。
画龍のスタッフは全員がゼネラリストではあるものの、全員に同じ構成のマシンを提供するわけではないと早野氏は続ける。「経験の浅い新人にハイスペックなマシンを提供しても、もて余してしまいます。 また、ゼネラリストといえど人それぞれに得意不得意があります。例えばモデリングがすごく得意で、集中的にモデリングを任せている人の場合、あまりメモリを必要としません。 一方で、私のようにコンポジットを得意とする人はメモリを大量に使うので、メモリは多めに搭載して、ほかのスペックを下げることでバランスを取っています」。
表1は、ThinkPad P50、チーフクラスが使用するタワー型マシン、新人のタワー型マシンの構成を比較したものだ。最近はレスポンスを重視しているため、 CPUとグラフィックカードのスペックを上げることが多いという。「CPUはなるべくコア数の多いものを選んでいます」。なお、今回検証に使用した画龍のマシンはCore™ i7シリーズ搭載だが、 社内にはXeon®シリーズ搭載マシンもあり、購入から4年が経過しているものの不安なく動作しているという。「Core™ i7搭載マシンだと、もう少し短命で終わる場合が多いのです。 過酷な環境下での使用、例えばレンダリングサーバーとして24時間稼働させるといった場合には、Xeon®の方が良い働きをする可能性がありますね」。
表1
ソフトウェアや用途が変われば ベストのマシンと、そのカスタマイズも変わる
たとえ同じ構成のマシンで同じ作業を行ったとしても、ソフトウェアがちがえば、レスポンスもちがってくると早野氏は補足する。 「当社のメインツールであるAutodesk 3ds Max®の場合、比較的手頃な価格のグラフィックカードでも問題なく動作します。 ただしソフトウェアによっては、グラフィックカードの相性が悪いと、著しくパフォーマンスが落ちる場合があるので注意が必要です。 また、以前のAdobe After EffectsはGPUのスペックを上げても大したちがいはありませんでしたが、GPUによるレイトレース3Dレンダラーが搭載されてからは、 GPUの性能次第でレスポンスにかなりの差がつくようになりました」。
このように、同じ3DCG用途でも、ソフトウェアや用途が変われば、ベストのマシンと、そのカスタマイズも変わる。 それをアーティストだけで探ることは荷が重いため、今回のようなメーカー主導による検証結果の開示は大歓迎だという。 「信頼できる検証結果を積極的に公開していただければ、我々が検証にかけてきた時間を、よりクリエイティブな作業に使えます」。
"モバイルワークステーション" を名乗るに相応しいパワー
グラフ1は、表1で紹介した3台のマシンを対象とした、CPU性能とグラフィックカードのOpenGL性能の比較検証結果だ。 検証には、MAXON CINEBENCHを使用している。「OpenGL性能では、ThinkPad P50と新人のマシンがほぼ互角の性能を示しています。 とはいえ、3DCG制作の場合、この種のベンチマークソフトウェアによる検証結果は参考程度にしかならないのが実情です」。 例えば、一番快適にゲームをプレイできるマシンを見極めるといった目的であれば、ある程度の目安になるものの、 3DCG制作の適性を探りたいなら、普段使っているソフトウェアとデータを使った検証こそが最適であり、信頼性の高い結果を得られるという。
グラフ1
表1で紹介した3台のマシンを対象とした、MAXON CINEBENCHによる比較検証結果。左はCPU性能、右はグラフィックカードのOpenGL性能の検証結果を示している
グラフ2は、早野氏が制作した3ds Max®データの、V-Rayによるレンダリング時間の比較検証結果だ。 こちらも、表1で紹介した3台のマシンを対象としている。具体的には画像2を参照してほしいが、フォトリアルなレンダリング負荷の高いデータを、 横2,828×縦4,000pixelの高解像度でレンダリングしている。「こちらも、ThinkPad P50と新人のマシンが良い勝負をしていますね。 私が普段使っているモバイルパソコンでは、この速度は出せないでしょう。"モバイルワークステーション"を名乗るに相応しいパワーを有していると思います」。
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グラフ2
早野氏が制作した3ds Max®データの、V-Rayによるレンダリング時間の比較検証結果。こちらも、表1で紹介した3台のマシンを対象としている
画面1 右で紹介している画像2を制作中の3ds Max®の画面。極めて高密度なデータであることが見て取れる - 画像2 画面1のレンダリング結果。フォトリアルなレンダリング負荷の高いデータを、横2,828×縦4,000pixelの高解像度でレンダリングしている
グラフ3は、早野氏によるAfter Effectsデータのレンダリング時間の比較検証結果だ。 同じく、表1で紹介した3台のマシンを対象としている。こちらも画像3を参照してほしいが、早野氏が得意とする作風が色濃く表れた、フォトリアルな150フレーム(5秒)の映像だ。 解像度は横3,840×縦2,180pixelの4Kとなっている。「ThinkPad P50のコア数がもう少し多ければ、ほかのマシンとの差はさらに縮まったのではないでしょうか。 とはいえ、作業中のレスポンスは3台とも大差なかったので、"高負荷の3DCG制作にも耐えうる"というレノボ・ジャパンの開発コンセプトに偽りはないと思います」。
- グラフ3 早野氏によるAfter Effectsデータのレンダリング時間の比較検証結果。同じく、表1で紹介した3台のマシンを対象としている
- 画面2 下で紹介している画像3を制作中のAfter Effectsの画面。3ds Max®でレンダリングした連番画像に、様々な画像処理を施している
画像3
早野氏が得意とする作風が色濃く表れた、フォトリアルな150フレーム(5秒)の映像。解像度は横3,840×縦2,180pixelの4Kとなっている
モバイルマシンの性能向上によって CG制作の効率は格段にアップ
ところで、早野氏の仕事においてモバイルマシンはどのような位置づけなのだろうか。 「基本的に、社内でモバイルマシンを作業に使うことはありません。ただし、外出先ではもはや必須の存在ですね。 最近のモバイルマシンは手頃な価格で高性能なものが増えているので、本格的なレンダリングは難しいながらも、普通のオペレーションであれば問題ありません。 一昔前と比べれば、活躍の場はかなり増えています」。
例えば、早野氏はイベントや専門学校などで、3DCGの講師を定期的に務めている。 「当社の環境をそのままもち出すことは難しいので、今も昔もモバイルマシンを使って講義をしています。 以前のマシンであれば映像を流すだけで精一杯でしたが、最近のマシンであれば、3ds Max®やAfter Effectsのデータを直接操作することが可能です。 より直感的でわかりやすい講義ができるようになったと思います」。
さらに、社外でのクライアントとの打ち合わせ、プレゼンテーション、実写素材の撮影現場などでも、モバイルマシンは必須になっているという。
- 「撮影現場で撮った素材をマシンへ取り込み、その場でCGとの簡易合成をやってみせると、"イメージが湧きやすい!"と監督や撮影スタッフからすごく喜ばれます」。 例えば、実写撮影したモデルの周囲にCGでつくった花びらを舞わせたい場合、撮影現場にもちこんだモバイルマシンで花びらの物理シミュレーションを行い、監督たちにプレビューを見せることも可能だという。 「ライティング用の環境マップ素材を撮影現場で撮って、その場でCGモデルに適用して見映えを確認することも多いですね。思うような画づくりができない場合でも、撮影現場であれば即座に素材を撮り直せます」。
以前は会社に素材をもち帰らないことには合成結果を確認できなかったため、実写素材とCG素材が思ったようになじまないことも多く、苦労していたという。 「監督やクライアント様とのイメージのすり合わせが容易になったのに加え、撮影後の我々の作業も随分と楽になりました。モバイルマシンの性能向上によって、CG制作の効率は格段にアップしています」。
モバイルマシンでも 4Kモニタの需要は増えている
ThinkPad P50の15.6型ワイド液晶モニタは、4K解像度への変更も可能だ。このオプションも、今後はニーズが高まるだろうと早野氏は語る。 「最近の実写素材のほとんどは、4Kサイズで撮影されています。放送用の映像はまだまだHDサイズが主流ですが、 撮影現場では、4Kサイズで撮っておいて、必要な部分だけをトリミングして使うといった手法が増えています。 当面は映像の解像度が上がっていくことは確実なので、モバイルマシン、タワーマシンを問わず、高解像度モニタの需要も増えていくでしょう」。
そして、高解像度モニタが力を発揮するのは映像だけに留まらないと早野氏は続ける。 「以前、静止画の制作を4Kモニタで行った際、印刷時と同じ解像度でデータを確認できたのです。すばらしい体験でしたね」。 通常のモニタで高解像度データを確認した場合、その解像度は圧縮されてしまうため、高精細出力が可能なプリンタが必須となっている。 しかし、4Kや8Kのモニタが普及すれば、広告業界のワークフローが大きく変わるかもしれないと早野氏は予想する。
早野氏の検証によって"高負荷の3DCG制作にも耐えうる"ことが証明されたThinkPad P50。 最後に、さらに使い勝手の良さを追求するなら、レノボ・ジャパンに何を期待するかを伺ってみた。 「さらなる軽量化ですね。例えば撮影現場にもちこんで、広いロケ地の遠くにいる監督のところまでモバイルマシン片手に走っていき、 その場で合成結果を見せるといったシチュエーションの場合、マシンは軽ければ軽いほど有り難いのです」。
今の重量のままでも、例えば自宅と職場を行ったり来たりするフリーランスや、家庭の事情で在宅勤務をするスタッフが使用するなら、大きな問題はないだろう。 ただし、早野氏が例にあげたような、とりわけ機動性を重視する撮影現場では確かに重量の軽さは無視できない。
「モバイルマシンの性能がさらに向上し、価格が手ごろなものになっていけば、私を含めたCG制作者の働き方が変わっていくでしょう。 モバイルマシンの最大の利点は、使う場所の制限が少なく、場所をとらないことです。日本のオフィス事情・住宅事情のなかでは、とくに嬉しいアドバンテージです。 今後のさらなるモバイルマシンの技術革新に期待していますし、メーカーには、3DCG制作に特化した検証結果を引き続き公開してほしいですね」。
TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充
[製品情報]
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ThinkPad P50
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