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近年の3DCG制作現場では、プリレンダー、リアルタイムを問わず技術の進歩によって表現の幅が広がると同時に、要求されるPCスペックも増加の一途を辿っている。今回は国内有数のアニメーションスタジオ、グラフィニカの中核メンバーに、今年導入された最新マウスコンピューター機の使用感を聞いた。

TEXT_神山大輝(NINE GATES STUDIO) PHOTO_弘田充
©2019「HELLO WORLD」製作委員会

Unityによるレイマーチング描画も
ハイメッシュキャラの日常芝居も

アニメーションをはじめ、ゲーム・遊技機・実写など、幅広いジャンルの映像制作を手がけるグラフィニカは、現在上映中のオリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD』制作を機に最新マウスコンピューター約40台を導入した。同社ではこれまでインテル Xeon E5-2603、メモリ32GB、NVIDIA Quadro M2000という構成のPCを使用していたが、高度化する3DCG開発の現場において旧世代PCではスペックが追いつかない部分も増えてきたため、現場クリエイターからの強い要望を受け、導入に至ったという。

今回は同作に参加したVFX・堀内隆氏、テクニカルディレクター・酒井邦博氏、撮影監督・小畑芳樹氏、フェイシャルスーパーバイザー・五十嵐彩香氏の4名に最新マウスコンピューターの使用感について話を聞いた。

●DAIV-DGZ530U3-M2SH5

  • CPU
  • インテル® Core™ i9-9900Kプロセッサー(8コア・16スレッド通常:3.60 GHz、ターボブースト:5.00 GHz)
  • GPU
  • GeForce® RTX 2080 SUPER™(8GB GDDR6)
  • メモリ
  • 64GBメモリ
  • ストレージ
  • 1TB SSD、3TB HDD
  • その他
  • 光学ドライブ、DAIVキャスター付きケース

※グラフィニカ購入機は販売終了のため、現行販売の上記マシン構成とは異なります

『HELLO WORLD』における3DCGアニメーションは、キャラクターの表情で演技をさせるような「寄りの画」に耐えうるハイポリゴンのキャラクターが基本となる一方、3DCGならではのダイナミックなカメラワークで見せる、シーン内の情報量が非常に多い「引きの画」も多用されるなど、とにかく負荷の高い処理が多い。

また、After Effects CCで行う撮影も、表現が豊かになればなるほどレイヤー数が増えるほか、背景素材の高解像度化によってプレビュー時の負荷も無視できないレベルになっていたという。「特に処理負荷が大きかったのは、3ds Maxで30体のキャラクターを配置したシーンです。モデリングされたキャラクターそのままのメッシュをAlembic形式で読み込んでいて、合計1,000万ポリゴン以上に達しました。最大で2,500体を同時に展開しているシーンもあります」(酒井氏)。

  • テクニカルディレクター・酒井邦博氏

従来はハイメッシュ化を行う時点でメモリが不足しフリーズしていたが、メモリを64GB搭載した現在のPCでは問題なく動作ができているほか、Alembic側の処理もCPU性能の向上によって高速化されている。

POINT 1
最大2,500体のモブキャラの同時表示
レイアウト作業もサクサク

通常の作画では難しい「アニメーションを伴う大量のキャラクターを同時に描画する」という目的に対し、酒井氏は3ds Maxにキャラクターの3Dモデルのメッシュをそのまま複数インポートするツールを開発(ほかにも、キャラクターモデルの差し替えにも対応するなど、「必要なツールは全て自分でつくっている」とのこと)。以前の環境ではレンダリング前にPCが固まってしまっていたが、現環境では問題なく動作している。こうした特殊な群衆のカットだけでなく、一般的な3ds Maxの作業工程においても、主にGPUとCPU両面の性能向上に起因してプレビュー速度の高速化は進んでいる。

また、Unity上で幾何学的な模様を描くために使用したレイマーチングはGPU負荷が大きく、M2000ではフラクタルをひとつ表示するのが精一杯だったが、GeForce RTX 2080環境では複数を同時に描画させる演出が可能となり、結果的に映画本編の印象的なシーンが実現できたという。

  • 堀内 隆氏(VFX)

「アニメで"新しい表現をやろう"となったとき、未知の分野の不安を取り除く予防線としてハイスペックPCを手元に置いておくことは重要です。マウスコンピューターだからできた、GeForce RTX 2080だからできたという表現が、今作ではかなり多いと感じています」(堀内氏)。

最新の表現を行うためには最新の環境を用意する必要がある

同社がマウスコンピューターを選んだ理由は、コストパフォーマンスとハードウェアの可搬性の2点。従来は情報システム部主導で5年周期(購入後、5年耐用の想定)での買い替えを行なっていたが、3DCG技術開発のスピードに追いついていくため、現在は購入の周期を早める動きも出始めている。

  • 小畑芳樹氏(撮影監督)

作品のクオリティアップのサイクルとPCスペック向上のサイクルを合わせ、現場にフルパフォーマンスを発揮してもらうための"少しでもコスト感を抑えながら最新環境を用意する"というニーズにマウスコンピューターが応えたかたちだ。今のところ目立ったトラブルもなく、また問題が発生した際もオンサイトのサポートがあるため安心だという。ハードウェアの面では、キャスターと取っ手が付いていることで持ち運びや裏面のケーブルの着脱が容易にできるほか、排熱処理に優れておりレンダリング中も不安は少ないとのこと。

「撮影チームは会社に泊まることもなく、スタッフをきちんと家に帰らせることができていました。高いPCスペックには、"現場を救う力"があります」(小畑氏)。

業務として3DCGに携わる以上、クリエイターの働き方や効率化というキーワードはPCそのものの性能に依存する。最新の技術を最新の環境で使いこなすグラフィニカが生み出す新たな表現に、これからも期待したい。

POINT 2
高メッシュモデルの
アニメーションもストレスフリー

セカンダリアニメーションの作業では特にPCスペック向上による恩恵が大きかったという。『HELLO WORLD』では、寄りの画に耐えうるフェイシャルの情報量が必要とされたため、ハイスペックなキャラクターが制作されており、従来の環境では揺れものやモーフを個別に設定する必要があった。フェイシャル調整の際には、再生速度を上げるため他の表示をOFFにするなど、アニメーターの地道な工夫で作業を行なっていたが、新たにマウスコンピューターを導入したことで全ての要素をプレビューできるようになり作業効率が向上。「マウスコンピューターはセカンダリ時点での導入でした。プライマリではパフォーマンスがなかなか上がらなかったので、当時からあればさらに良かったですね。導入後は作業効率が大幅に改善しました」(五十嵐氏)。

  • 五十嵐彩香氏(フェイシャルスーパーバイザー)

問い合わせ先

株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6739-3808(平日9~18時、土日祝9~20時)
TEL(個人)03-6833-1010(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/creator/