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満を持して世界に挑む! 映画『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』荒牧伸志監督インタビュー

満を持して世界に挑む! 映画『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』荒牧伸志監督インタビュー

いよいよ封切られた2012年の要注目フルCGアニメーション長編、『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』。現在、新宿ピカデリーほかにて全国で公開中だ。今年は 3DCG を積極的に採り入れた和製アニメーション劇場長編が多く公開されるが、本作は、昨今注目を集めるセルルックのリミテッドCGアニメとは一線を画しつつも、紛れもない "ジャパン・クオリティ" であり、日本発のフル CG アニメーションの新たな可能性を、表現や技術、さらにはビジネスとしても切り開いたといっても過言ではない。今回は、荒牧伸志監督に本作で目指したこと、そして『STi』の先に見据えるものについて話を聞いた。

『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』

© 2012 Sony Pictures Worldwide Acquisition inc. All Rights Reserved.
『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』
新宿ピカデリーほか全国で上映中!
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
www.ssti.jp

新スタジオ「SOLA DIGITAL ARTS」の記念すべき第1作

日本でフル CG アニメーションが制作され始めて約15年が経つ。その歴史の中で最も継続して、そして最も多くのフル CG 作品を監督してきた人物、それは 荒牧伸志 であることはまちがいない。
2004年公開の 『APPLESEED』 を皮切りに、今回の 『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン(以下、STi)』 まで、フルCG長編3本と、短編1本( OVA 『Halo Legends』 の一編『The Package』)の監督を務め、さらに『STi』の次作も控えている(恐らく世界的にみても ジョン・ラセター に次ぐハイペースではないかと思う)。

「フルCGアニメーションというフィールドで約10年にわたり継続して活動できていることは素直にありがたいことだと思います。ですが僕の場合、セル(2D 作画)の頃から、変形機構を持ったメカやパワードスーツによるアクション描写を追求し続ける中で、そうした表現を生み出す上で最も効果的だったのが 3DCG だったということに過ぎないのですよ。その意味では、『この技法を使って、こんな表現がやりたい』 といった具合に、自身の中でやりたいことが明確なクリエイターがフル CG アニメを監督する際に高いパフォーマンスを発揮できるのかもしれませんね」。

この度『STi』を実際に観て、まず感心したのが、2D か 3D か、はたまたセルルックかフォトリアルかといった具体的な表現様式のことを意識せずに夢中で観終えてしまったことだ。作り手としてのこだわりが作品クオリティに大きな影響を与えることは言うまでもないが、実際にそれを楽しむ観客たちはその映画が面白いかどうかでしか評価しない。そうした意味において、『STi』は素晴らしいエンターテインメント作品だと思う。


『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』予告編

ご存知の方も多いと思うが、『STi』の原作であるロバート・A・ハインラインの 『宇宙の戦士』 は SF 小説の大傑作であり、『STi』以前には、ボール・バーホーベン監督による 『スターシップ・トゥルーパーズ(以下、SST)』(1997) を皮切りに3本の実写映画が制作されてきた。

「つまり、それだけ確固たるファンが存在する題材だったわけですね。そこで今回フル CG アニメーションとして『STi』を制作する上でも、原作小説や実写映画シリーズのファンに観て貰えるような作品にすることをまずは目指しました」。
その具体的な戦略が、フォトリアルなルック であり、実写映画シリーズのエッセンスでもあった行き過ぎた軍国主義や愛国精神がもたらす悲劇をパロディとして描く上での アメリカ人特有の立ち居振る舞いの再現 であった。

「『APPLESEED』シリーズでは、同じようなアプローチから日本の漫画が原作だったのでセルシェーディングを採用したわけですね。僕としては題材やターゲットに応じて最適なルックを選択したいといつも考えています。そして、CG キャラクターに生身のアメリカ人の立ち居振る舞いを反映させる上ではやはりモーションキャプチャが最適でした。今回はアクターにもこだわり、本国で活躍するアメリカン陣の役者さんをオーディションして決めました」。

時計の針を少し戻そう。『STi』プロジェクトが日本の CG・VFX 制作者の注目を大きく集めたのは、荒牧伸志監督の最新作というだけではない。荒牧監督が SOLA DIGITAL ARTS という新たなスタジオを起ち上げ、そこで『STi』を制作するという座組みに対する関心も大きいことだろう。
「その前段として、『Halo Legends』プロジェクト制作時から抱いていた思いがありました。ここからさらにステップアップを果たすためには、同じ志を持つ仲間たちと腰を据えて良いものづくりを実践していかなければならない。そのためには拠点となるスタジオが必要だと考えたのです。そんな時に、2009年の コミコン・インターナショナル の会場で、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下、SPE)のプロデューサーさんと知り合う機会がありました。自分たちのビジョンを伝えたところ、大変共感してもらえて、フル CG で何か一緒にやりましょうということになり、SPE さんには『SST』シリーズがあるから、これを題材にしましょうと、トントン拍子で話が進みました」。

2010年からシナリオ制作がスタート、同年の夏からプリプロダクションが行われた。そして、翌2011年の初頭に念願だった制作スタジオ、SOLA DIGITAL ARTS がオープンしたのであった。
「設立時は、僕たち経営陣(荒牧監督がCCO、『STi』プロデューサーのジョセフ・チョウ氏が CEO、同 CGI プロデューサーの河田成人氏が CTO)を含めても5人しかいないという最小人員でした。最初の数日はマシンのセットアップで過ぎてしまったので本当にゼロからのスタートでしたね」。

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© 2012 Sony Pictures Worldwide Acquisition inc. All Rights Reserved.
一番最初に公開された『STi』ティザートレーラーにも登場するパワードスーツを身に纏った兵士の全身をクローズショットで見せていくシーン。『STi』は、日本のクリエイターがハリウッド映画を制作する という意味でも非常に画期的なプロジェクトだが、このシーンの完成度の高さからは、荒牧監督をはじめとする中核スタッフの高いモチベーションが伝わってくる。また、荒牧監督ならではのメカシズル溢れる観る者を大いに高揚させる本編でも印象的なシーンのひとつでもある

Profileプロフィール

Shinji Aramaki

Shinji Aramaki

1960年10月2日、福岡生まれ。
メカデザイナーとしてアニメーション界で頭角を現わし、『機甲創世記モスピーダ』(83) や 『ガサラキ』(98)、『アストロボーイ・鉄腕アトム』(03)、『REIDEEN』(07)などの作品で才気を発揮。
OVA 『メタルスキンパニック MADOX-01』(88) では原案を手がけるとともに監督デビューを果たす。04年には『攻殻機動隊』の士郎正宗原作による『APPLESEED』を発表。
フル3DCG、トゥーンシェーディング、モーションキャプチャという手法を用いた、この画期的な作品は日本のファンはもとより海外でも称賛の声を集め、07年にはその続編『EX MACHINA』を監督。
次回作として『SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK(仮題)』(2013年公開予定)が控えているなど、日本を代表するフルCGアニメーション表現に精通した演出家として知られている。
『STi』を制作した SOLA DIGITAL ARTS では、CCO(Chief Creative Officer)も務める。

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