東京工芸大学の共同研究(工学部と芸術学部の共同による研究、代表:矢島 仁准教授)として制作された映画作品『笹色の紅・Grunen Metallglanz』が、2021年10月、ヘルシンキ国際教育映画祭「Helsinki Education Film Festival International, HEFFI2021」で、特別賞・最優秀芸術教育映画賞「BEST ART EDUCATIONAL FILM」を受賞した。
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■概要
同作品は、「江戸の昔に流行した笹色の紅化粧の色彩の謎、なぜ赤い紅花色素が緑色の光沢を見せるのか」を、工学と芸術を融合してまとめ上げた東京工芸大学独自の共同研究による映像作品。
従来、この現象に対してはゲーテ色彩論をベースにした非科学的な説明が通説となっていたが、5年に渡る研究の結果として、赤い紅花色素が緑色光を吸収し緑色光を放射しているために生じていることを突き止め、学術論文での発表並びに一般に対する啓蒙を目的として10分45秒の短編科学映像に仕上げ解説している。この取り組みは、伝統色の発色機構を化学と物理の壁を取り払って行われたものであり、縦割り教育が久しく続く教育界に、新しい学際的空気を供給する試みでもある。
受賞について、矢島准教授は「この映画祭は、特に観客とのディスカッションを大切にしている映画祭でしたが、コロナ禍により、現地に赴けずやむなくメッセージビデオでの舞台挨拶のみとなりました。会場に行ければ、実際に紅を使ってワークショップなどもできたと思い残念です。けれども、色の国際科学芸術研究センターの活動が、日本の伝統的な紅花色素をサイエンスとして世界に伝えられたことは大きな励みで、またアートとしての評価は意外でしたが大きな喜びです。長い間研究の中核を担ってくださった佐々木 麻衣子博士に感謝しています。受賞理由は明らかにされておりませんが、フィンランドでは 2019 年に同じテーマ、同じスタッフによる短編映画「紅」が美術館で上映されていることもあり、ジャポニズムに対する興味が大きいということも一因ではないかと思われます」と話している。