ブラックマジックデザインは、豪シドニーを拠点とするBeyond Internationalが、ディスカバリーチャンネルの人気テレビ番組『MythBusters』の新しいコンテンツ、ヴァーチャル・リアリティ(VR)のポストプロダクション・ワークフローにDaVinci Resolveを使用していることを発表した。
MythBusters: Shark Shipwreck (360 Video)
2015年8月に放送されたエピソード『MythBusters vs. Jaws』以降、Beyond Productions はその後のエピソード用に、郵便 トラックの爆発、ゾンビの襲撃、ロケットの発射など、様々なVRコンテンツを提供している。
これらのVR映像は、ディスカバリーチャンネル による iOS/Android 用 VR スマートフォンアプリを使用するか、あるいは新設された専用サイト「Discovery VR」で視聴できる。
「当時、私たちは VR に関するリサーチを始めていましたが、同時期に Discovery も独自の研究開発を進めていて、コンテンツを欲しがっていたことを知りました」と話すのは、Beyond Productions のポストプロダクション部門代表、アンソニー・トイ(Anthony Toy)氏。
VR コンテンツの撮影は、MythBusters のサメのエピソードに合わせ、5 月の 2 週目に開始された。
「最初に撮影したのは、水中のサメの映像でした」と、MythBusters で編集およびヴァーチャル・リアリティ編集を担当するジュニアエディター、アンバー・シドワニ(Ambar Sidhwani)氏は説明する。
「撮影場所に関わらず、6 台または 7 台のカメラを搭載したリグを使用して、360x180 視野、4:3 アスペクトレシオ、 80fps で固定ショットや主観ショット(POV)を撮りました。後にポスプロで映像を同期させるのも簡単でした」。
撮影したフッテージはポストプロダクションでスティッチング・ソフトウェア(映像をつなぎ合わせるソフトウェア)に取り込まれ、同期、キャリブレーション、安定化、露出補正などが行われた。トイ氏は説明する。
「それぞれのカメラアングルでキャンバスを構成する、パズルを組み立てるような作業でした。最終的には 4096 x 2048 の MP4 ファイルになりました。4K、2:1 アスペクトレシオ、80fps です。VR コンテンツに とって、高解像度、高フレームレートはとても重要です。しかし、多くのポスプロのシステムは高解像度に対応できず、高フレームレートにも苦労しているのが現状でした。幸運にも、私たちのシニア・オンラインエディターであるマイケル・グラハム(Michael Graham)が、DaVinci Resolve Studio の使用を提案してくれました」。
「Resolve の持つ解像度非依存という特性は、絶対に必要でした。つなぎ合わせた最終的なイメージのフレー ムサイズは、HD、2K、4K、UHD などの標準的なフォーマットとは適合しないからです」と、グラハム氏。

「つなぎ合わせたイメージの元の解像度で作業を行えたので、最終的な出力にブランク部分が入ることもありませんでした。イメージを巻き込むようにしてヴァーチャル・リアリティの 360 度イメージを作成する上で、ブランクがあると良くありません」と、シドワニ氏は続ける。
「Resolve の最大の強みは、ファイルの元のアスペクトレシオとフレームレートに対応できるところです。ファイルを他のフレームレートのファイルにエンコードしません。80fps は納品の手前までは良いのですが、最終的にメディアを再生する携帯電話などのデバイスは 80fps に対応していないので、仕上げたファイルは 30fps で納品しました。Resolve はフレームごとに変換を行うので、変換プロセスの後でも、フッテージの動きがスムーズです」。
シドワニ氏は、この機能はヴァーチャル・リアリティの制作において必須であると話す。ヴァーチャル・リアリティでは、映像の急な揺れなどによって、視聴者が映像酔いを起こす可能性があるためだ。
「スムーズな映像によって、視聴者は VR 体験にさらに入り込みやすくなり、映像酔いを起こすこともありません。すばらしい VR 体験を提供する上でとても大切なポイントです」と、シドワニ氏。
また DaVinci Resolve Studio は、フッテージのグレーディングにも使用された。このグレーディングはコンピューターのモニターで行われたとトイ氏は話す。
「映像は 4096 x 2048 では出力しません。放送用スタンダードではないからです。したがってグレーディングはコンピューターのモニターで行います。
Resolve に 搭載されたスコープはすばらしく、ガイドラインの範囲内に収めるのにも非常に役に立ちます」と、トイ氏は言う。彼らが使用したスティッチング・ソフトウェアでは、全てのカメラのバランスを取れるのでつなぎ目もスムーズだ。
一方、ソフトウェアはできる限りのディテールを保持しようとするため、ルックが多少フラットになってしまう場合がある。
しかし Beyond チームは、これらのイメージを視聴する最終的なプラットフォームが VR やスマートフォンのスクリーンであることから、鮮やかで活気があり、力強いルックを求めていた。
「フラットなイメージは少し問題でしたが、Resolve のツールや機能で解決できました」と、グラハム氏は言う。
「オリジナルのフッテージは圧縮 8-bit ソースからのものなので、サチュレーションやコントラストを上げると、圧縮によるアーチファクトやバンディングが鮮明になってしまいます。Resolve では、32-bit 環境、 ノイズ除去フィルター、その他の機能を組み合わせて作業できるので、イメージを際立たせ、
目標とするルックを達成しながらも、"加工しすぎ"たようなルックになることはありません。」
彼は続ける。「VR だけでなく、私たちが他のプログラムでもすばらしいイメージを得るために使用しているツールが、Resolve に搭載された数々のカーブです。これらのカーブはとてもパワフルで、自由にイメージを作成し、簡単に調整できます。おかげで私たちの VR 世界で、均等かつ鮮やかなルックを作り上げられます」。
「VR では、Resolve はグレーディングツールとしてだけでなく、完結型のフィニッシングツールとして活躍しています。Resolve の新しいツールやタイムラインでは、編集、グレーディング、VFX や他のエレメントの取り込み、VR 体験の向上など、全ての作業を解像度非依存の 32bit 環境で実行できます」と、彼は結んだ。
■Blackmagic Designについて
Blackmagic Design は、映画、ポストプロダクション、放送業界に向けて世界最先端のビデオ編集製品、デジタルフィルムカメラ、カラーコレクター、ビデオコンバーター、ビデオモニター、ルーター、ライブ プロダクションスイッチャー、ディスクレコーダー、波形モニター、リアルタイム・フィルムスキャナー を開発している。
Blackmagic Design の DeckLink キャプチャーカードは、その品質と価格で放送業界に革命をもたらした。
また、エミー賞を受賞した DaVinci カラーコレクションシステムは、1984 年以降、テレビ、映画業界の中心となっている。
Blackmagic Design は、現在も 6G-SDI、12G-SDI 製品、 ステレオスコピック 3D、Ultra HD ワークフローなどの独創的な革新を続けている。
世界をリードするポストプロダクションエディターやエンジニアにより設立された Blackmagic Design は、現在アメリカ合衆国、イギリス、日本、シンガポール、そしてオーストラリアにオフィスを構えている。
www.blackmagicdesign.com/jp
■Beyond について
Beyond International は、オーストラリア証券取引所(ASX BYI)に上場している大手国際メディア&コンテンツ企業。
1984 年の創立以来、Beyond International Limited は計 5,000 時間以上の テレビ放送用プログラムを世界中に提供しており、作品には MythBusters、Beyond Tomorrow、 Taboo、Deadly Women、Selling Houses Australia などが含まれる。
アメリカ、オーストラリア、イギリスにオフィスを持つ Beyond Productions は、HD、ファイルベースの取り込み/納品、UHD (4K)プロダクションなど、ファイルの取り込みやポストプロダクションにおける最新のテクノロジー で常に業界をリードしている。Beyond のヴァーチャル・リアリティ(VR)チームは、その専門知識の下に、スタンドアローン型のコンテンツだけでなく MythBusters などテレビシリーズ用 VR 体験コンテンツを提供している。