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    今日、日本の3DCGコンテンツ制作の中核を担うのが、パチンコやパチスロ向けのものだと言えよう。しかし、そこに求められる演出や制作手法については意外と知られていないのではないだろうか。そこで豊富な開発経験をもつポリゴンマジックに、遊技機向け映像制作の特色をわかりやすく解説してもらおう。

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    遊技機の"顔"である図柄
    その制作工程をわかりやすく解説

    近年、日本のCGクリエイティブの中でも大きな比重を占めるまでに成長した遊技機(パチンコ・パチスロ)向け映像制作。しかし独自のルールやノウハウが多く、業界初心者には敷居が高く感じられるところもある。中でも象徴的なものが、数字や記号などの「図柄」デザインだろう。派手な映像演出が目を集めがちだが、実は最も重要なクリエイティブが図柄なのだ。プレイヤーが最も注目し、長時間見続けるデザイン物であり、その制作はノウハウの塊だと言えるだろう。
    そこで今回から、この図柄制作のTIPSについて、実際のパチンコ向け図柄制作に則して紹介していきたい。企画から2Dデザイン、3Dモデリング、オーサリングまでの一連のながれを複数回にわたって解説する。今回はその中でも最も上流工程にあたる、企画と2Dデザインについて紹介していく。講師役を務めてくれるポリゴンマジックは、コンシューマ機からソーシャルゲーム、ゲームプラットフォーム、遊技機映像など、様々なコンテンツ開発を時代のながれに合わせて行なってきた老舗デベロッパーだ。本連載においても同社の強みである、「遊びの本質を引き立てるための映像制作」というこだわりが、遺憾なく発揮されている。中心となって解説してくれたディレクターA氏いわく、「図柄は遊技中もっともよく目にするデザイン物であり、パチンコゲームの中心にして根幹となる要素」という図柄の制作について、さっそくみていこう。

    ワークフロー図
    図柄制作のワークフローを図示したもの。なお図柄デザインの特徴などをわかりやすくするために、今回はあえてシンプルにまとめており、実際の制作はより複雑な工程となっていることをご了承いただきたい



    STEP01 コンセプトワーク

    図柄を揃えるドキドキ感全てはそこに帰着する

    はじめに遊技機における図柄の役割について、改めて整理しておこう。ファンには当たり前だが、遊技機における「遊びの本質」とは、同じ図柄が一列に揃うか否かのドキドキ感に集約される。パチンコは液晶画面を見続けることになるため、ここでのポイントは「動き」と「視認性」の両立だ。そのため遊技機では色や数字を中心とした独自の文法が発達している(言うまでもなく、パチンコとパチスロそれぞれに独自の文法が存在する)。
    大まかなながれが掴めたところで実制作のスタートだ。最初のステップが企画立案で、遊技機の世界観やテーマを設定する。原作ものでは、図柄も原作の世界観に合わせることが重要だ。図柄の数や種類、数字だけなのか、キャラクターとフレームの組み合わせなのか、2Dか3Dか、アニメーションや縦横回転するのか、といった点も検討事項となる。


    コンセプト案ラフ
    ディレクターA氏がデザイナーへの説明資料として作成したコンセプト案を図示したもの。今回はポリゴンマジックという「企業」をフィーチャーしたパチンコ機種向けという設定で、企業ロゴにある「恐竜」と社名の「マジック(魔法)」という2方向からアイデアを膨らませていった




    デザイン案ラフ
    ディレクターA氏のオリエンを下に、デザイナー陣がラフを描いていく。「企業ロゴの恐竜や、『マジック』というキーワードから、『恐竜』パターンと『魔法使い』パターンでイメージを膨らませました」(デザイナーS氏)。このときに「恐竜と魔法使いの融合=ワイバーン(火竜)」など、デザイナー側で発想を膨らませて逆提案することもあるという。なお、図柄はステージごとにバリエーションが加わるため、平均で5~7セット(1セットの内訳は1~9+α)デザインするのが常だという

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    STEP 2 ラフデザイン

    一番アツい「7」から順に段階をつけてデザイン

    ここでは数字図柄のデザインワークを中心に解説する。「図柄を3つ揃えて並べたときに、すわりがいい(安定感がある)シルエットをイメージして制作を進めていきます。デザインコンセプトとして、『時間を操る魔女』というものに決定したので、世界観の統一のため、ファンタジーの要素をキャラクターを含めた"まくら(枠)"と数字に入れ込んだ、一体感が出るデザインとして検討します。背面の造形物の企画コンセプトで魔法陣案と時を刻むギミック案の両案があり、時を刻む内部構造は歯車的な発想から歯車から魔法陣へ変形する動きが面白そうなのでデザインに歯車を入れ込むことにしました」(デザイナーS氏)。
    数字の位置は、歯車の動きを見せたいこともあり、全体のバランスも考慮し右下に配置。パチンコの場合は、一番重要となる「7」からデザインをすることが多い。今回もまずは7を作成しベースの形状を安定させる。その後、以下の順番でデザインしていく。

    ①『3』を作成することで『2』と『8』が作成しやすい
    ②『8』を作成することで『5』と『6』が作成しやすい
    ③『6』があれば『9』と形状が似ている数字から作っていくことで、デザインのばらつきを防ぐことができる
    ④共通する部分が少ない、『1』と『4』は最後に作る


    上記の要領で作成することによって、文字の統一性が保ちやすく、その後の調整も比較的容易に行えるそうだ。

    デザインバリエーション
    魔法使いのキャラクター(図柄)と数字図柄といったキーとなる要素は固めつつ、手前にくる要素(キャラクター等の図柄や数字)と背景要素に分けてレイアウトや背景デザインについての検証を進めていく。ファンタジーの要素ということで、数字の質感はクリスタルのイメージで表現することにした


    数字図柄のデザイン案ラフ
    数字図柄のデザインラフの例。デザイン性以上に重要となるのが形状の視認性。主役はあくまで数字なので、数字が認識しにくい形状は遊技機としてはNGである。多種多様な映像(予告など)と複合することがあるため、それに負けない(可読性を保持する)ためにもしっかりとした重厚感や立体感のあるデザインにし、印象が残るようにすることが欠かせない



    STEP 3 ギミック案&2Dファイナルデータ

    3D班との打ち合わせを重ねながら3D化のための設計図を完成させる

    ラフデザインがある程度固まったら、図柄演出案を掘り下げていく。よく用いられるのがオーラや発光、アニメーションなど。例えば恐竜図柄なら背景の火山が噴火したり、魔女をテーマとした図柄ならば魔方陣を出現させるといった具合に、図柄を動かすことを意識しながらデザインをする。
    図柄には、必ず開始・停止の動きのアクションがあるので、その際にどこをどう動かすのかも考慮しながら具体的なデザインへと落とし込んでいく。2Dデザインの段階では3D化した際に、映えるデザイン、ギミックとして歯車がどう動くと面白くなりそうかを考えてデザインされるが、その後の3D工程でより良いアイデアがみつかれば適宜反映していくとのこと。
    デザインコンセプトが確定したら、2D班と3D班とでデザインの構造について打ち合わせを行い、3D化に最適なデザインへの修正を行う。その上で2Dファイナルデータが仕上げられていくのだが、まずは線画のクリーンアップを行い、色の方向性を決定。表面反射などの質感を加えて、1枚の絵として仕上げていく。作例では「魔法使い」というコンセプトで制作してもらった。「社内では線の太さがつけやすいSAIで線画を描き、Photoshopで着彩する人が多いですね」(2Dファイナルの制作をリードしたT氏)。図柄はサイズの拡大縮小に対応させるため、ベクターデータで仕上げていく。絵柄が広報用に流用されることもあるだからだ。ただし、ここで完成した絵柄は3Dのモデルデータを作成するための見本にすぎない。それでも、ここまでの品質が求められるのは、各段階でクライアントの確認作業が入るからだ。3Dよりも2Dの方が制作・修理コストも安上がりとなる。なお、実際にはコンセプトワークから全ての段階でチェックが入り、細かな修正が重ねられていく。

    ギミック案ラフ
    ディレクターA氏が作成したギミック案の例。「コンセプト案のラフと同じく、デザイナーさんにアイデアを膨らませてもらうための叩き台にすぎません」(A氏)。2Dデザインの段階では3D化した際に、映えるデザイン、ギミックとして歯車がどう動くと面白くなるかを考えてデザインされるが、その後の3D工程でより良いアイデアがみつかれば、さらにそこへ盛り込んでいくそうだ。また本来であれば、外的要因である、UIや液晶上のパーツ等、盤面デザインなども考慮しながらデザインワークは進められる


    2Dファイナルデータの作成01
    まずはラフを下絵にして線画を作成していく。デザイナーT氏の場合、キャラクターなど線の太さに強弱を付けたい要素はSAIを使い(左)、機械のようなラインに対して規則性や統一性をもたせたい場合はIllustratorを使っているとのこと(右)


    2Dファイナルデータの作成02
    続けて、着色。まずは色の方向性を決めた上で、陰影等の質感を加えていく。前後関係や要素ごとの質感のちがいに配慮しながら適宜マスクキングを施しつつ、丁寧に調整していく


    2Dファイナルデータの作成03
    図柄単体としてのルックが整ったら、他の図柄とのバランスをみながらさらにディテールを追い込んでいく。「柔らかい図柄は柔らかく、固そうな図柄は固く見えるように、カラコレやドロップシャドウなどの処理を加えながら調整していきます。3D作成時に破綻が起きないように3Dデザイナーのリクエストを加味した上で完成させるのですが、必要があれば三面図も用意します」(デザイナーN氏)

    TEXT_小野憲史

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    ポリゴンマジック

    1996年創業の老舗デベロッパー。コンシューマ機、ソーシャルゲーム、ゲームプラットフォーム、遊技機映像など、時流に応じたクリエイティブをつくり続けている。2012年6月には、グリーと共同出資によるソーシャルゲーム開発と運営を手がけるジープラを設立。

    ポリゴンマジックグループは
    【笑顔の創造 Create Smiles!】を目指しています
    http://www.polygonmagic.com

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