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    ひさしぶりに登場した女子児童向け特撮作品。アイドルがダンスや歌を武器に、悪と戦っていく。その様にエンタメ精神あふれるVFXが華を添える。

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 233(2018年1月号)からの転載となります

    TEXT_福井隆弘
    EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

    『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』
    テレビ東京系列にて毎週日曜午前10時30分から放送中
    BSジャパンにて10月31日火曜夕方5時から放送中
    総監督:三池崇史/監督:山口義高、横井 健、西海謙一郎、倉橋龍介/キャラクタースーパーバイザー:前田勇弥/ヘアメイクディレクター:冨沢ノボル/音楽:遠藤浩二/撮影:南 秋寿/照明:渡部 嘉/美術:坂本 朗、前田 陽/VFX/中島征隆/撮影プロダクション:楽映舎/制作:OLM
    miracletunes.jp
    ©TOMY・OLM/ミラクルちゅーんず!製作委員会・テレビ東京

    鬼才・三池崇史が総監督
    女子児童向け特撮ドラマのVFXとは

    2017年4月2日から放送中の『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』(以下、ミラクルちゅーんず!)。「ライブ型NEW特撮ヒロインストーリー」を謳った本作は、小学校高学年から中学生のアイドルたちが得意なダンスや歌のチカラで悪を倒し、世界の平和を守る様子を描いたTVシリーズである。制作はオー・エル・エム、そして総監督を務めるのは三池崇史氏で、両者のタッグで培ってきた実写映画のノウハウを活かした、良質なエンターテインメントに仕上がっている。

    • 〈前列〉左から、木邨恒哉VFXアーティスト、楊 子瑩コンポジター、上田紗希VFXアーティスト、茂木小弓VFXコーディネーター、田原 秀祐コンポジター/〈中列〉左から、佐藤浩一郎コンポジットスーパーバイザー、松岡翔吾リードコンポジター、奥泉暢之コンポジター、川地宏之コンポジター、森田 出VFXディレクター、徳重 実VFXプロデューサー/〈後列〉左から、川出 海VFXコーディネーター、菅家 涼コンポジター、西川拓朗コンポジター、太田聖史エフェクトアーティスト、濱口幸祐VFXアーティスト、高橋 護コンポジター。
      以上、オー・エル・エム・デジタル olm.co.jp

    本作のVFXをリードするのはもちろんオー・エル・エム・デジタル(以下、OLMデジタル)だ。VFXのプリプロが始まったのは2016年4月だったと、VFXプロデューサーを務める徳重 実氏はふり返る。「女児向けの特撮は近年制作されていませんでしたが、アイドル×ダンスという旬な要素を組み合わせることで今までになかった斬新なものをつくろうと、制作に臨んでいます」とは、本作でコンポジットSVを務める佐藤浩一郎氏。毎週放送のTVシリーズということで相応のフットワークが求められているが、効率化一辺倒ではなく、様々な"新たな試み"に取り組んでいるそうだ。「企画から完成まで何年も費やす映画の場合、自ずと規模が大きくなるため、確実性も重視しなければなりません。ですが、本作のような小規模で各スタッフが臨機応変に動く必要のある案件では、むしろチャレンジすべきなんです。コンポジットチームでは、若手を抜擢。松岡(翔吾)くんは3年目ですが、リードコンポジターとしてエフェクトのR&Dなども積極的に任せています。また、僕自身も新たなツールを習得しようと今回初めてFlameを自身の作業フローに採用しました」(佐藤氏)。同様の試みは3DCGチームでも実践されている。「通常は分業制ですが、今回はアニメーターにエフェクトやライティングも担当してもらうなど、意欲のある人には前後の工程まで手がけてもらうようにしているんです。画づくりにおいても仕様どおりに作業するのではなく、コンポジットチームと連携して各担当者が盛っていく、即興的なセッションを楽しむかたちで取り組んでいます」とは、3DCGチームを率いる森田 出VFXディレクター。タイトな条件だからこそ意欲的にチャレンジ、この精神が絶妙なシナジー効果を引き出している。

    01 プリプロダクション&ワークフロー

    内容は削らずに作業効率を高める

    OLMデジタル内では、3DCGチームを率いる森田VFXディレクターと、コンポジットチームを率いる佐藤コンポジットSVが中心となり、1話あたり3DCGとコンポジットで各々6~7名ほどが携わっているという。1話あたりのVFXショットは平均40ほどだが、フォトリアルな実写合成であることに加え、物語の発端となる『音楽の国』の世界とキャラクターたちはフルCGのため、作業負荷はデフォルトで高めだ。「プリプロダクションやキーとなる表現については内部でつくるようにしていますが、毎週放送のTVシリーズということで多くのCGプロダクションさんに外部パートナーとしてご協力いただいています。現在(2017年11月中旬)までに10数社に参加していただきました」(川出 海VFXコーディネーター)。多くの外部パートナーに協力を求めていることから、3DCGツールはMaya 2015、レンダラはmental rayを採用。ただし、複雑なエフェクト表現についてはHoudiniも利用されている。

    VFX表現は、アイドル戦士『ミラクルちゅーんず!』たちの変身シーンと必殺技をくり出すシーンのいわゆる「バンク」。そして、各エピソード特有のVFXやCGアニメーションに大別される。OLMデジタル内のチームによるプリプロ時から取り組まれたバンクのR&Dと、三池総監督自身がディレクションを手がけた第1話&第2話の制作を通じて、ワークフローや作品全体としてのVFX表現の方向性は定まっているとのこと。「各話の監督さんと相談しながらCG・VFXボリュームのバランス取りを提案するようにしています。その際は、内容を削るのではなく、作業効率を高めることを心がけています。具体的には、3Dではなく2Dで対応する、よりシンプルな処理で同等の見映えに仕上げるといった具合です」(森田氏)。上述のとおり、『音楽の国』の表現はフォトリアルな3DCGアニメーションがベースとなっているが外部パートナーの協力を多く求めることになるため、エフェクトもアセットのひとつとしてできるだけヒューマンエラーが生じないよう数クリックでレンダリング設定が行える等のカスタムツールが組み込まれた。

    プロダクション・マネジメントにおいても新たな試みが実践されている。「過去案件でもテスト的に利用していたのですが、今回初めてNUKE Studioを本格的に導入しました。これによって、オフライン編集の情報をより正確に継承できるようになりました。また、監督たちとの打ち合わせの際もNUKE Studioを利用することで、過去エピソードで制作したリズムズたちのアニメーションを簡易的に合成して、サイズやレイアウト、タイミング、表情などを具体的に確認できるようになったことで、内容とスピードの両面で効率を高めることができました」(川出氏)。



    • 神咲マイ(足立涼夏)の変身シーンの演出コンテ



    • 「ミラクルちゅーんず!」必殺技発動シーンの演出コンテ。いずれも、三池崇史総監督と画コンテを手がける相馬宏充氏を一連の打ち合わせを経て作成したものである。これらをガイドにキャストたちの実写撮影を実施し、VFX表現のR&Dが進められた


    プリプロ時に作成された一ノ瀬カノン(内田亜紗香)のリズムズ「ポップン」の設定画


    リズムズたちが暮らす人間界とは異なる世界「音楽の国」のイメージボード例。こうしたラフを清書したものをベースに3DCG背景セットが作成された


    RVによるチェック作業の例



    • QuickTimeやDPX連番のチェックデータを読み込み、それらをマスモニに出力してチェック作業が進められる



    • Annotation Toolsで修正指示を書き込んだ例。打ち合わせ、チェック時に出た簡単な修正指示はその場でムービーに内容を書き込み、その後の作業に利用された


    本プロジェクトでは、オフライン編集に込められた情報をムービーとの目合わせではなく、具体的な数値データとしてCG・VFX工程に引き継がれている



    • オフライン時にFinal Cut Proで適用されたブローアップをNUKE StudioのTransformノードとして確認



    • その情報を基に作成したNUKEシーン(ノードツリー)


    物語が進み、種類と数の双方で一定量のストックが出来た最近では、過去話数の完成ムービーをCGアニメーションの演出打ち合わせに利用することでさらなる効率化につなげている



    • 過去話数の完成ムービーを社内のライブラリから検索



    • オフラインムービーをNUKE Studio上で簡易的に合成した例。目指す表現に近いアーカイブを利用することで、必要な尺数やレイアウト等について、より適確な演出チェックが行えるようになったという

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    02 変身&必殺技シーンのVFX

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    02 変身&必殺技シーンのVFX

    多彩なアレンジにも対応するアセットとセットアップ

    バンクシーンの背景セット(世界観)について。当初、中島征隆VFXスーパーバイザー(SKYLAB)が作成した修正案(イメージボード)を指針として、白基調の神殿に囲まれているデザインを提案したところ、女子児童向けとしてのかわいらしさが今ひとつ足りないという結論に。「エフェクトについても最初のテスト映像では、光の表現が映えるだろうと暗い空間にしていたのですが、同じくかわいらしさが足りないということでリテイクに」(佐藤氏)。そこで、カラフルな色味、派手なエフェクトを加える方向でブラッシュアップすることになり、ジェリービーンズのような雲や異空間につながっているという設定の木目調のカラフルな窓などが足されていった。

    変身シーンのVFXは1・2話を監督した三池 総監督の絶妙なエディット(オフライン編集)に対して忠実にVFXが施された。コンポジットワークによる変身パーツ発生処理(=コンポジットで次のショットで実体化する実物のマスクを描いて光らせて次のショットにつなげる)というアプローチで、自然なかたちでパーツの追加やメイクが施されているように仕上がっている。その一方で、光の粒子のエフェクトは地面へのコリジョンもしっかりと表現。三池監督のCG班への配慮は素晴らしく、基本的にほぼドンピシャで素材がくるので、余分なのりしろはなく、無駄になるCGをつくる必要もないので、クオリティアップに注力ができる。こうした細かい積み重ねが三池作品のクオリティの高さにつながっていると言えよう。そして、3DCGチームもこれに応えるべく、CGデザイナーとコンポジターが演出意図を汲んで積極的に盛っていく。セッションを楽しむ感覚で作成し、どんどん提案していくスタイルだったという。非常にのびのびとクリティティブな表現にチャレンジできているように感じた。

    バンク用CGセットの床面は、必殺技のシーンでは音楽に合わせてアニメーションするイコライザーのようなエフェクトが施されている。音源との同期だけでなく、担当アーティストが任意に調整できるようにもセットアップ。また、CG・VFXスタッフの間では通称「ベラージオ」と呼ばれている、必殺技シーンのクライマックスに描かれる噴水的な光エフェクトも同様に外部パートナーでも扱いやすいようにアセット化されている。そして、便宜的に「バンク」と表しているが、実際は各話ごとに多彩なアレンジが施されているのだ。「物語が進んでいく過程で、テクノやロック、演歌など、楽曲とアイドル戦士たちの衣装にアレンジが施されていくのです。当然、CG・VFXも、それぞれに適した表現に作り替えています。テクノでは、初期のテスト映像向けに作成した暗い空間のイメージが役立ちました」(佐藤氏)。

    フルCGで描かれるリズムズのコンポジット作業例


    ポップン(CV:日野まり)のレンダーエレメントのサムネイル一覧。合成時の対応幅を広くするため、常時20種類のパスが書き出されている。パスの種類が多いことに配慮し、Pythonスクリプトで入れ替えるしくみを構築



    • ポップンの部屋のリファレンス用コンポジットシーンファイル(NUKEのUI)。口の開きサイズの影響で口内が暗くなりすぎないよう、口の中調整用ノードが組み込まれている(最も使用頻度が多いそうだ)。本作の実写撮影にはSony PMW-F55が用いられているが、同カメラのノイズを再現するGrainノードやカメラフィルタを再現するデジタルフィルタノードも含まれている



    • 一連のコンポジット作業を施した完成形。自然な見た目に仕上がっている


    必殺技シーンでは、大理石状の床面に楽曲と同期したイコライザーの波形的なエフェクト表現が描かれる



    • Maya上のエフェクト設定。Mayaのボーナスツール「audioWave」プラグイン(中央下)を利用し、WAV音源から自動的に動くようにセットアップが組まれている。ただし、忠実に反映すると変化が激しすぎる(ノイズのように見えてしまう)ため、作業者が任意に調整できるように各種アトリビュートが組まれている(右上のチャンネルボックス)。「エクスプレッション制御ではなく、どの環境下でも使用できるようにノードベースで計算させているため、ノード構成が複雑になっています」(森田氏)



    • イコライザーエフェクトのFlameによるコンポジット作業例。RGBの各色で用途を分けたマスクを使用し、発光処理を調整している


    実際の本編CUT


    必殺技シーンの後半に登場する噴水エフェクトの作業例


    Mayaシーンファイル。nParticleを利用し、水柱に見える程度の分量のパーティクルを計20個以上配置。パーティクルの分量が非常に多いため、レンダリング時にキャッシュをコネクトできるように簡易的なツールが作成された(右中央)


    噴水エフェクトのFlame作業例。CG素材をActionノードで合成した上で、Actionの外でマスクを使用して発光処理などを追加している


    実際の本編CUT


    ミラクルちゅーんず!たちの必殺技「ハーモニーエナジー」は途中で強化されて現在にいたる



    • 強化版ハーモニーエナジーのエフェクト設定。1つの回転している玉が詳細の調整が可能で、中心にある太いエネルギー体は先頭にディテールが足されている(図・右下)。図中・左端のUIは、レンダリング作業が不得意なスタッフでもわかりやすいように、本プロジェクト特有のカメラ設定やアセットに関する仕様を共有し、このツールに配された青色ボタンを順番にクリックしていくだけで、標準的なレンダリングが行えるようになっている(その他のアセットにも利用されている)



    • ファイナルハーモニエナジーのレンダーパス。この技は、ミラクルちゅーんず!5人のビームエフェクト集大成ととして、ビーム本体の素材に加えて、5人分のビームと粒子の素材があるため、15種類に達した


    ブレイクダウン



    • 実写プレート



    • メインのビーム本体と照り返し処理



    • 5人分のビームを合成



    • リバーブエフェクトを合成



    • 5人のパーティクルを合成



    • レンズフレアを加えて、一連の調整を施したコンポジット完成形(グレーディング処理前)

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    03 各話特有のVFX

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    03 各話特有のVFX

    監督陣との厚い信頼関係が効率化の源泉となる

    先述のとおり、本作のCG・VFXワークでは「内容は削らずに、作業効率を高めることで対応」という方針が掲げられている。本作のHDR素材は、Theta Sで撮影した360度写真が用いられている。また、HDRIのレタッチについてもCG表現の特性に応じて必要最低限のバレ消しに止めているとのこと。作業効率を高める上では、CGチームとコンポジットチームの密な連携が不可欠だ。第28話のネガティブジュエラーのジンゾーがくり出す棘付き鋼鉄球のような攻撃エフェクト「ネガティブハンマー」の制作においても、森田VFXディレクターと松岡リードコンポジターが打ち合わせを重ね、CG制作は鉄球のアニメーションなど3DCGでしか不可能な作業に専念する一方で、鉄球の質感調整は基本的にNUKEによるコンポジットワークで行うというアプローチが採られた。また、ハンマーの衝撃でアイドル戦士たちのバリアにひびが入る表現については、After Effectsのシャター処理でベースを作成。そこに、ゆがみ表現(屈折)用のマスクと発光用マスクを巧く組み合わせることで表情豊かに仕上げている。このほか、火花は連番素材のアーカイブを活用するといった具合に、全ての作業をNUKEで行うのではなく、AEやPhotoshopなどの定番ツールも併用。臨機応変に使い分けている。

    作業効率を高める取り組みの一環として、本作のエフェクト制作では、監督たちが適確にジャッジできるようにアニメーションチェックの段階でPlayblastではなく、色味や質感がある程度わかるルックにまで仕上げることが徹底されている。そして、一連の取り組みが有効に機能する根底には、三池総監督をはじめとする監督陣、中島VFXスーパーバイザーの柔軟なジャッジがあるという。その好例が、ネガティブジュエルの歩行アニメーション。第1話では、床に投げ落とされたネガティブジュエルに脚が生えてターゲットへと歩み寄るというアニメーションが付けられたが、これではコストがかかりすぎると森田氏たちが相談したところ、第1話だけの特別な表現に止めることになった。同様に、音楽の女神(舞羽美海)の登場シーンも当初は、グリーンバック撮影した役者をCGで作成した「音楽の城」背景セットに合成していたが、基本的にバストショットであり、顔にグローエフェクトがかかる(=背景はあまり見えない)と判断した中島氏が白バック(2D背景)に変更することを提案。三池総監督も了承したという。「若手も順調に育ってきていますし、ラストに向けて自分たちのやりたい画づくりの集大成みたいなものができればと思っています。外部パートナーさんの協力も不可欠でしたが、終盤はできるだけOLMデジタル内でやりきりたいですね。そして、それが各スタッフの 代表作、代表ショットとして、次へのステップアップにつなげていければ」(森田氏)。

    第28話で戦う相手となるネガティブジュエラー「ジンゾー」がくり出す「ネガティブハンマー」のコンポジット作業例



    • リコーのTheta Sで撮影した7段階露出のHDR素材



    • HDR素材をPhotoshopの自動処理でHDRIとしてまとめ、NUKEでバレ消しや色合わせを行う。HDRIは、ガンマLinear、色域sRGBで32bitのOpenEXR形式としてCGチームに出荷。「それと同時に、カラーチャート、グレーボール、ロケ現場のリファレンスなどのDPXファイルもガンマ SLog3、色域Sony S-GamutのものをガンマLinear、色域sRGBに変換した上でCGチームに渡しています」(佐藤氏)



    • レタッチとカラコレが施されたHDRI。レタッチ作業は足元の三脚や目立つものを消すのが主目的であり、使用されるCG素材のサイズやアニメーションを考慮して、どこまでバレ消しをするかはその都度判断。できるだけ手早く作業を済ませることを心がけているという



    • CG素材の質感調整例。「HDRIをなるべく正確に配置するため、ほぼ全てのシーンのガイドとなるモデルを作成し、カメラを合わせるようにしています」(森田氏)


    完成した本編CUTより。ハンマーのアセットは、ショット作業時に調整できるよう、棘の長さをシームレスに伸ばすことが可能となっている(ハンマー形状に変形する際に一時的に伸ばす等)。あくまで、鉄球として黒ずんだ、重いものを意識したアニメーションを心がけたそうだが、図のような画面手前に向かってくる動きはCGチームとしても納得の出来映えだという



    • ネガティブハンマーのリファレンスコンポ。マルチパスの素材に加えて、CameraとAxisをFBXデータとしてCGチームから出荷し、Reconcile3Dにてハンマーの中心座標をXY情報としてOutput。光の筋や色収差エフェクトのCenterに利用している



    • ネガティブハンマーのマルチパス素材。そのほかにもショットに応じて背景に対するオクルージョンや落ち影等も用いているとのこと

    完成した本編CUTの例


    ネガティブハンマーの衝撃で、ミラクルちゅーんず!たちのバリアにひび割れが生じる表現のコンポジット作業例


    After Effectsの「シャター」エフェクトを使用して、ヒビのマスクとヒビを中心にシールド全体が凹んだ表現をするため用のマスクを作成



    • ヒビのマスク。このマスク素材にNUKEでアニメーションを施し、ヒビ割れの主となる処理を行なっている



    • シールドを歪ませて立体感を出すためのマップ。シャターエフェクトでライティングをした情報を使い、NUKE上で歪みを与えている



    • NUKEのシーンファイル。シャターエフェクトマスクのシンプルさをDirBlurWrapper、S_WarpBubble、IDistort等のノードとフラクタルノイズを複数用いて、深みのある表現にブラッシュアップしている



    • 完成した本編CUTの例


    ネガティブジュエルに取り憑かれ、ネガティブジュエラーと化してしまう表現は各話でバラエティに富んでいる。第23話の場合は、ネガティブジュエルを呑み込むと、その反動で鼻と耳の穴からエネルギーが噴き出すというインパクトあるVFXが施された



    • 噴き出るエネルギーは全16種類の素材で構成されているが、CG素材は過去のエピソード向けに作成したFumeFXで生成した汎用エフェクト素材1種類のみ。その他のノイズやパーティクルは、全てNUKEXで作成したものである



    • NUKEによるエフェクト作業例。Node Graph上の紫色のバックドロップがネガティブジュエルのマルチパス。赤色のバックドロップがビームエフェクト素材


    完成した本編CUTの例



    • 月刊CGWORLD + digital video vol.233(2018年1月号)
      第1特集:映画『鋼の錬金術師』
      第2特集:ゲームエンジン向けキャラクター制作

      定価:1,512円(税込)
      判型:A4ワイド
      総ページ数:128
      発売日:2017年12月9日
      ASIN:B0783Z46XK