>   >  VFXアナトミー:三池崇史総監督×オー・エル・エムによる女子児童向け特撮の新機軸!『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』
三池崇史総監督×オー・エル・エムによる女子児童向け特撮の新機軸!『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』

三池崇史総監督×オー・エル・エムによる女子児童向け特撮の新機軸!『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』

02 変身&必殺技シーンのVFX

多彩なアレンジにも対応するアセットとセットアップ

バンクシーンの背景セット(世界観)について。当初、中島征隆VFXスーパーバイザー(SKYLAB)が作成した修正案(イメージボード)を指針として、白基調の神殿に囲まれているデザインを提案したところ、女子児童向けとしてのかわいらしさが今ひとつ足りないという結論に。「エフェクトについても最初のテスト映像では、光の表現が映えるだろうと暗い空間にしていたのですが、同じくかわいらしさが足りないということでリテイクに」(佐藤氏)。そこで、カラフルな色味、派手なエフェクトを加える方向でブラッシュアップすることになり、ジェリービーンズのような雲や異空間につながっているという設定の木目調のカラフルな窓などが足されていった。

変身シーンのVFXは1・2話を監督した三池 総監督の絶妙なエディット(オフライン編集)に対して忠実にVFXが施された。コンポジットワークによる変身パーツ発生処理(=コンポジットで次のショットで実体化する実物のマスクを描いて光らせて次のショットにつなげる)というアプローチで、自然なかたちでパーツの追加やメイクが施されているように仕上がっている。その一方で、光の粒子のエフェクトは地面へのコリジョンもしっかりと表現。三池監督のCG班への配慮は素晴らしく、基本的にほぼドンピシャで素材がくるので、余分なのりしろはなく、無駄になるCGをつくる必要もないので、クオリティアップに注力ができる。こうした細かい積み重ねが三池作品のクオリティの高さにつながっていると言えよう。そして、3DCGチームもこれに応えるべく、CGデザイナーとコンポジターが演出意図を汲んで積極的に盛っていく。セッションを楽しむ感覚で作成し、どんどん提案していくスタイルだったという。非常にのびのびとクリティティブな表現にチャレンジできているように感じた。

バンク用CGセットの床面は、必殺技のシーンでは音楽に合わせてアニメーションするイコライザーのようなエフェクトが施されている。音源との同期だけでなく、担当アーティストが任意に調整できるようにもセットアップ。また、CG・VFXスタッフの間では通称「ベラージオ」と呼ばれている、必殺技シーンのクライマックスに描かれる噴水的な光エフェクトも同様に外部パートナーでも扱いやすいようにアセット化されている。そして、便宜的に「バンク」と表しているが、実際は各話ごとに多彩なアレンジが施されているのだ。「物語が進んでいく過程で、テクノやロック、演歌など、楽曲とアイドル戦士たちの衣装にアレンジが施されていくのです。当然、CG・VFXも、それぞれに適した表現に作り替えています。テクノでは、初期のテスト映像向けに作成した暗い空間のイメージが役立ちました」(佐藤氏)。

フルCGで描かれるリズムズのコンポジット作業例


ポップン(CV:日野まり)のレンダーエレメントのサムネイル一覧。合成時の対応幅を広くするため、常時20種類のパスが書き出されている。パスの種類が多いことに配慮し、Pythonスクリプトで入れ替えるしくみを構築



  • ポップンの部屋のリファレンス用コンポジットシーンファイル(NUKEのUI)。口の開きサイズの影響で口内が暗くなりすぎないよう、口の中調整用ノードが組み込まれている(最も使用頻度が多いそうだ)。本作の実写撮影にはSony PMW-F55が用いられているが、同カメラのノイズを再現するGrainノードやカメラフィルタを再現するデジタルフィルタノードも含まれている



  • 一連のコンポジット作業を施した完成形。自然な見た目に仕上がっている


必殺技シーンでは、大理石状の床面に楽曲と同期したイコライザーの波形的なエフェクト表現が描かれる



  • Maya上のエフェクト設定。Mayaのボーナスツール「audioWave」プラグイン(中央下)を利用し、WAV音源から自動的に動くようにセットアップが組まれている。ただし、忠実に反映すると変化が激しすぎる(ノイズのように見えてしまう)ため、作業者が任意に調整できるように各種アトリビュートが組まれている(右上のチャンネルボックス)。「エクスプレッション制御ではなく、どの環境下でも使用できるようにノードベースで計算させているため、ノード構成が複雑になっています」(森田氏)



  • イコライザーエフェクトのFlameによるコンポジット作業例。RGBの各色で用途を分けたマスクを使用し、発光処理を調整している


実際の本編CUT


必殺技シーンの後半に登場する噴水エフェクトの作業例


Mayaシーンファイル。nParticleを利用し、水柱に見える程度の分量のパーティクルを計20個以上配置。パーティクルの分量が非常に多いため、レンダリング時にキャッシュをコネクトできるように簡易的なツールが作成された(右中央)


噴水エフェクトのFlame作業例。CG素材をActionノードで合成した上で、Actionの外でマスクを使用して発光処理などを追加している


実際の本編CUT


ミラクルちゅーんず!たちの必殺技「ハーモニーエナジー」は途中で強化されて現在にいたる



  • 強化版ハーモニーエナジーのエフェクト設定。1つの回転している玉が詳細の調整が可能で、中心にある太いエネルギー体は先頭にディテールが足されている(図・右下)。図中・左端のUIは、レンダリング作業が不得意なスタッフでもわかりやすいように、本プロジェクト特有のカメラ設定やアセットに関する仕様を共有し、このツールに配された青色ボタンを順番にクリックしていくだけで、標準的なレンダリングが行えるようになっている(その他のアセットにも利用されている)



  • ファイナルハーモニエナジーのレンダーパス。この技は、ミラクルちゅーんず!5人のビームエフェクト集大成ととして、ビーム本体の素材に加えて、5人分のビームと粒子の素材があるため、15種類に達した


ブレイクダウン



  • 実写プレート



  • メインのビーム本体と照り返し処理



  • 5人分のビームを合成



  • リバーブエフェクトを合成



  • 5人のパーティクルを合成



  • レンズフレアを加えて、一連の調整を施したコンポジット完成形(グレーディング処理前)

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03 各話特有のVFX

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