さらにハイディテール、さらにフォトリアル、そして役者とのインタラクションもより豊かに。4K時代のテレビドラマ向けVFXの最新形にせまる。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 235(2018年3月号)からの転載となります
TEXT_福井隆弘
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
スーパープレミアム スペシャル時代劇『荒神』
2月17日(土)21時から(BSプレミアム)
原作:宮部みゆき/脚本:山岡潤平/音楽:羽岡 佳/制作統括:加賀田 透・櫻井壮一/演出:松浦善之助/VFXスーパーバイザー:松永孝治
www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/7000/270695.html
©NHK
実績あるリアルな生物VFXを
ファンタジックに発展させる
2018年2月17日(土)BSプレミアムで21時から放送予定のスペシャルドラマ『荒神(こうじん)』。宮部みゆき原作、怪物と人間たちとの死闘を最新のVFXを駆使して描く、スケールの大きなエンターテインメント時代劇である。本作のVFXを手がけたのは、NHKの松永孝治VFXスーパーバイザーを中心としたチーム。フォトリアルな生物VFXで注目をあつめた『生命大躍進』(2015)から蓄積してきたノウハウを本作にも活用したという。VFXスタッフの編成は、NHK内部がデジタルアーティスト(3DCGゼネラリスト)5名、コンポジター5名、エフェクトアーティスト3名を中心とする約15名。そして、劇中に登場する怪物のデザインならびにモデル制作を森田悠揮氏、そのセットアップ&アニメーションを森江康太ディレクターが率いるMORIEが担当したという。
- 〈前列〉左から、秋山 玄氏、北川茂臣氏、加藤晴規氏、日髙公平氏、松永孝治氏、渡部辰宏氏、階戸絵里氏、町浦真沙奈氏/〈後列〉左から、稲垣充育氏、茂庭祐介氏、吉田 慶氏、早坂 渉氏、三浦貴大氏、中島中也氏、増田真理氏
昨年1月末からプリプロがスタート。5月にクランクイン、6月末のクランクアップを経てVFX制作が本格的に進められたという。本作のVFXショットは約200。その大半が怪物関連の表現であることに加え、撮影からポスプロまでの全工程が4Kベースのため、自ずと作業負荷は高いものになった。3DCGワークのメインツールはMaya(レンダラはArnold)、エフェクト表現についてはHoudiniで作成したものをAlembic形式で出力し、Mayaでレンダリングされた(一部の要素はMantraも併用)。「テレビドラマでこうした怪物VFXをやるのは自分たちも初めての経験でした。怪物の存在なしには成り立たない作品だったので、常に監督のそばにいて、"怪物会議"と命名した監督や主要スタッフたちとのミーティングを週1ペースで重ねながら、コンテやテスト映像を基に具体的に詰めることを心がけました。近年ドキュメンタリー番組向けの恐竜等の古代生物のVFXをコンスタントに担当させていただく機会に恵まれたこともあり、これまでのドラマ向けVFXで培ったノウハウを上手く融合させることができたと思います。ありがたいことに、いつも良いスタッフに恵まれているのですが、優秀なアーティストたちがその手腕を存分に発揮できる環境、ワークフローを用意することも大切なことです。ぜひ今後の制作にも活かしていきたいです」と、松永氏は総括してくれた。
01 プリプロダクション
シナリオと演出意図をデザインと動きに込める
まずチャレンジとなったのが、怪物のデザイン。コンセプトデザインからモデル制作まで、フリーランスのデジタルアーティスト、キャラクターデザイナーとして活躍する森田悠揮氏が一括して担当した。「2016年の12月頃に松永さんからオファーをいただき、まずは手描きのイラストで10案ほどデザイン案を提出しました。その中の1つが監督のイメージにドンピシャだったようで、そのイラストからZBrushでコンセプトモデルを作成していきました」(森田氏)。当初はコンセプトデザインだけを担当する予定だったそうだが、怪物のデザインがシナリオや演出と密接に関わるため、本 番モデルも森田氏が手がけることに。「最初から最後まで、ほぼ自由につくらせていただきました。シナリオと、"泥から創られた神様的な存在"といった設定は監督から説明を受けていたので、そうしたキーワードを念頭に、手が体から出ていたり、顔が体に埋まっていたり、骨が突き出していたり......生物としては強靱だけど、未発達で脆そうな面を残しているといった印象を込めていきました。生物的な説得力を出すために、オオサンショウウオ、カエル、ワニとかの体のバランス的な要素も加えました。質感については、おおもとはオオサンショウウオっぽいヌメヌメした気持ち悪い感じ。どことなく土からできた要素がほしいと言われたので、上の顔の未発達な部分のあたりは泥、土っぽい、乾いた土、角質っぽい感じも出そうとヌメヌメとカサカサのメリハリは意識しました」と、森田氏。皮膚のディテールについてはMORIEからの提案を受け、ディスプレイスメントではなく、メッシュで表現。これにより、シワのニュアンスが動きにしっかりと反映された。
コンセプトモデルが完成すると、そのデータを3Dプリントして「怪物会議」等の打ち合わせ資料として活用。それと並行してコンセプトアニメーションが作成された。一連のコンセプトアニメーションは、リードアニメーターを務めたMORIEの小川光悦氏が担当。なるべく説得力が出るように、恐竜で培ったスキルを活かし、1.歩く、2.走る、3.捕食する、4.家屋を尾で壊す、5.火縄銃で撃たれる、という5種類が作成された。「尾の動きは海外のファンタジー作品に登場するドラゴンを参考にしました。逆に立ち上がった後に撃たれるといった特別な動きは、探して見つかるようなものではないので、荒神になったつもりで自分で演技をしたものをビデオに録ってリファレンスにしました。コンセプトアニメーションはまさにイチから自分で動きや芝居の段取りを考えなければならないので、とても良い経験になりました」(小川氏)。
監督の松浦善之助氏が描いた絵コンテの例。これらを基に、VFX班にて怪物のデザイン案やコンセプトアニメーションが作成されていった
森田氏が描いた怪物の初期デザイン案。10案ほど提出したところ、いずれも好評だったという
【初期スケッチ】をベースに描かれたコンセプトデザイン。シナリオや演出プランを反映しつつディテールが詰められていった
怪物のコンセプトモデル。最終的に体長20mというサイズに決まったが、これはロケ地の道幅が約8mということを受けてのことだという。また巨大な怪物ではあるものの、背が高すぎると生身の役者とのフレーミングが限定されてしまうため4つ足に。テクスチャは体表だけで8Kサイズで4種類(UDIM形式で作成)。ハイディテールのため、クローズショットでは1フレームのレンダリングに最大1時間要したそうだ(平均は1フレーム約30分)
[[SplitPage]]02 怪物の襲来~ロケ撮影~
広大な屋外ロケーションのリアリティキャプチャにも挑戦
怪物のセットアップは、MORIEの田島誠人氏が一手に引き受けた。MayaプラグインのAdvanced Skeltonを使い、関節の位置は決まっていたので、プライマリなリグを組んだ上で印象的な部分、顎の下、二の腕などにマッスル、揺れもののシミュレーションを施していったそうだ。「(泥から創られて間もないという設定のため)体がグニャグニャと柔らかく、体表には無数の目があります。その上、未発達のため宙ぶらりん状態の足がマッスルの影響を受けつつ、体の動きに応じてブラブラと揺れる。前肢を伸ばしたときにも、形状破綻しないようになど、相当大変でした。最終的にはブレンドシェイプターゲットをつくって強引に直したり......時間もなく突貫工事になったので課題が浮き彫りになりましたね」と、MORIEの森江康太ディレクター。
ショットワーク(エフェクト、ライティング&レンダリング、コンポジット)はNHK内のチームが担当。接地、煙作成、影落とし用に地形を起こす必要があったので、今回ドローンでフォトグラメトリー用の素材となる空撮動画を撮影の空き時間に撮ってもらったとのこと。資料を作って、農村エリアと漁村エリアに分けて撮影。マット用に家の情報もほしかったため、家周りもしっかりと撮ってもらったようだ。「この規模をドローンで撮ったのは初めて。主にカメラ合わせとか、レイアウトに使用しましたが、これのおかげでとても捗りました。特に現場に行っていないスタッフは重宝しました。アタリとしてはとても良かったし、今後も活かせそうです」と、日髙氏。フォトグラメトリー作業にはContextCaptureを使用。動画から拾って1秒間隔くらいで、7,000枚ほどを使用。認識がおかしいのを1枚1枚削ったりしながら1週間ほど調整。解析だけで半日ほど要し、さらに調整した上での再解析をくり返したそうだ。MORIEにもデータが提供されたが、影を落としたい場合は、若干メッシュがガタガタしているのでplaneを引き直してレンダリング。HDRIも撮影の空きを見て、晴れ、曇り、夕方、朝などパターンを撮影。THETA Sでも撮られたがレンジが足りなかったのでLUMIX DMC-GH4に魚眼レンズを装着して追加のリファレンスを収集したという。
前項で述べたコンセプトアニメーション。実写撮影にあたり、怪物のイメージをある程度確立、スタッフ並びにキャスト間で共有しておく必要があったため、NHKサイドからのオーダーを受けMORIEが作成
通常の歩行モーション。20メートル近くある怪物の大きさや重さが伝わるよう細部にわたって調整を重ねたという
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走り。通常は動きの少ない怪物が、猛スピードで人物に迫るときなどに用いるため、コモドドラゴンの機敏な走りを参考に迫力と恐怖感が追求された
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舌を伸ばして捕食する動き。カメレオンを参考に、ゆっくりと標準を定めた後素早い動きで獲物を捕らえるといったメリハリと迫力が出るように意識したという。舌が収まる動きは掃除機の電源コードの巻き取りを参考にしたそうだ
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尻尾で建物を破壊する動き。基本的に怪物は意思を感じさせない(何を考えているのかわからない)動作が付けられたが、これについては標的に尻尾を当てるという、明確な敵意が込められた
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心臓(赤点部)に銃弾を受けた際のリアクション。「実写撮影を行う上で、この動作時の心臓の位置を把握する必要があったため、一番最初に作成したコンセプトアニメーションになります。立ち上がるという非現実的な体勢になるため、動きの方向性に悩みました」(小川氏)
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怪物のセットアップ。Advanced Skeltonをベースにしているが、複雑な動き、挙動を表現すべく大幅なカスタマイズが施された。「かなり重いリグになってしまったのでセカンダリ工程ではアニメーターたちのリクエストに応じて、その都度調整しました」(田島氏)
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本番アニメーションの作業例。体中にある目や舌の動きについては汎用モーションを作成しておき、それらをベースにショットごとに加工調整することで効率化が図られた
怪物の完成モデル
渡部辰宏氏(フリーランス)が開発したカスタムツールの例
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「RenderLayerManager」。各レンダーレイヤーごとの設定を簡単に行える。Mayaのシーンは複雑になるとオーバーライドしている項目がわかりづらくなりがちだが、このツールを用いれば何をオー バーライドしているかすぐに確認できる
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「Scene Assembled Tool」。レンダーセッティング、AOVなどの設定を自動で行うためのもの。作業者による設定のバラつきを防ぎつつ、作業手順の効率化にもつながったという
NHKの日髙公平氏がリードした、ヒロインの朱音(内田有紀)たちが暮らす名賀村シーンのロケ地となったスタジオセディック庄内オープンセットのリアリティキャプチャ作業例
元データとなるドローン空撮を担当したシーズプロジェクト向けに用意した、撮影方法に関する提案書。図解を基にわかりやすくまとめてある
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ContexCaptureによるフォトグラメトリー作業
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出来上がったロケ地の3Dモデルの例。怪物やデジタルダブル等の影を落とす、地面の接地を伴うアニメーションやエフェクト表現のためには綺麗なジオメトリを用意する必要はあるが、アタリとしては重宝したそうだ
序盤に描かれる、怪物が砦を襲撃するシーンより。櫓に立つ絵師・菊地圓秀(柳沢慎吾)からトラックバックすると怪物と対峙していたというカットだが、スペースが限られたスタジオセットのため、事前に入念なプリビズを行い、カメラ位置や動きが決められた
収録現場のスナップ写真(演者からの見た目)
プリビズ作業の例
完成映像
序盤の砦シーンより。奧から天井が崩落していくのだが、手前の牢屋3つ分を奥にもエクステンションする必要があった。そこで手前用の牢屋セットをCGに起こして配置、ライティング&レンダリング。手前の実写プレートと奥のエクステンションCGの境界はペイントオーバーで馴染ませつつ、エクステンション部分はマット画をパースマップし、Houdiniによる破壊シミュレーションが施された
エクステンション用3Dモデル
Houdiniによるシミュレーション作業例
完成CG
朱音たちが暮らす名賀村を怪物が襲うシーンより。怪物が初めて全貌を現すカットである
NUKEXによる実写プレートのマッチムーブ作業。ショットの特性に応じてPFTrack等も併用したという
一連のコンポジット処理を施した完成形
名賀村シーンの収録では不測の事態にも直面したという。「ロケハン時は植えてある麦の芽が土から少し出ているだけだったのですが、本番撮影を行う段になると予想よりだいぶ長くなっていたのです(苦笑)」(松永氏)。大きく映る草木と怪物のインタラクションについては、専用のオブジェクトを作成したそうだが、本ショット等の麦の動きはXGenジオメトリインスタンサをnHairシステムを利用したDyamicsに連動させることで効率化が図られた。具体的には、①XGenで長さ、太さや曲がり具合などを調節した麦を用意、②ModifierのAnimWireで、生やしたXGenに沿ったHairCurveを作成し、HairSystemを構築。XGenにアタッチさせる、③怪物の体をPassive Colliderにし、HairCurveとインタラクションさせ、XGenをレンダリング、というながれで作成された
村人が放った矢が怪物の目に射さるが、目玉が抜け落ちその奧から新しい目が生え出てくるというカット。かなりのクローズショットのため、ノーマルマップを調整してディテールを高めたという。目が落ちる際に、体液と視神経のようなものが流出する表現についてはHoudiniのSandシミュレーションが用いられた
村人の発砲が怪物の心臓部位に着弾するエフェクトカット。コンセプトアニメーションも作成された劇中における重要な表現だが、HoudiniのFLIPシミュレーションによって血飛沫が作成された
[[SplitPage]]03 妙高寺の決戦~スタジオ撮影~
多種多様の技法を臨機応変に使い分ける
NHKのVFX班では、独自開発した、DCCツールの制御とCG・VFX制作チームの連携を円滑にするプロジェクトマネージメントツールから構成されたツール群「NK Pipeline」を軸としたパイプラインを構築している。そして各プロジェクトごとにWikiを作成しているのだが、これにより、誰が作業しても極力同じクオリティを出せるように、資料を作って整理、共有、情報交換が行われている。また、チュートリアルのようにもなっており、フリーランスの人が来てもスムーズに入れるしくみになっているという。本Wikiでは、ショットやシーンごとのライトリストも共有されたが、テレビドラマの場合は明るいリビングで観られるものである。そのため、映画館という暗い空間での上映を前提とした劇場映画の要領で画づくりをしてしまうと暗くなりすぎてしまう。されど明るすぎるとチープなルックになる恐れがあり、本作でも特に後半の妙高寺シーンはナイトシーンのため、細密な調整が求められたそうだ。
クライマックスに登場する怪物の体に文字(書道家の先生に書いてもらった文字)が這うという表現について。こちらはHoudiniでマスクだけ出してコンポジットで合成。パーティクルを体に這わせて、そこにランダムに文字を配置。ただし、このままではめり込んだり浮いたりするので、まずはテクスチャにベイク。文字が貼られた連番のテクスチャを作成し、MayaのUVと同じ状態の物に再度貼り直してレンダーしている。Mayaでディスプレイスメントをかけているので数値をもってきて、Houdiniで再現された。また、怪物の体の皮が剥がれる箇所は、破壊のシミュレーションと水シミュレーションの合わせ技。破壊→溶ける→ポイントクラウドで破壊。途中から水のシミュレーションにシフトして、メッシュ化。という複雑な工程を踏んでいる。「トポロジーが変わるので、そのあたりはノードの組み方を工夫して対応しています。最終的に複雑なしくみになりましたが、流体シミュレーション以外は比較的データ負荷が軽かったので期日内に仕上げることができました。Houdiniのブーリアン機能が優秀だったことにも助けられましたね」と、怪物のエフェクト制作をリードした北川茂臣氏。体の中の質感は、SSSを使用しているが、夜なので太陽光もなく、クオリティがなかなか上がらなかったというが、最終的には中に物体を入れてSSSっぽさを上手く表現することに成功している。
クライマックスの舞台、妙高寺シーンは東宝スタジオにセットを建てつつ、ブルーバックで収録。遠景にセットエクステンションが施された
Mayaによるセットエクステンション作業の例。現場で撮影した複数の写真を基にフォトグラメトリーでセット形状を起こした上で、精密なCGモデルが組み合わされていった
ブレイクダウン
怪物が境内のお堂を尾で破壊するカットより。「実際の美術を壊すのではタイミングが取りづらいですし、何テイクも収録できません。そこで実写は破壊前と後の状態だけを収録し、それに合わせてCGで作成しました。全てをCGでつくるのでは高コストになりますし、実写の割れ目等に合わせてCGを加えた方が、効果的にリアルな画づくりも行えます」(松永氏)
実写プレート
破壊アニメーションの連番。Mayaで制作したお堂のモデルをHoudiniで読み込み、セットアップ。破壊シミュレーションをMayaにAlembic形式で戻し、Arnoldでレンダリングされた
朱音の兄で藩の重臣・曽谷弾正(平 岳大)は、怪物に呑みこまれてしまう。そのVFXを制作するにあたり、弾正のデジタルダブルが作成された。「弾正が怪物に呑まれるシーンは東宝スタジオで収録しました。そこで、弾正を演じた平さんを衣装を着た状態で、スタジオ内のピクチャーエレメントのボディスキャン(フォトグラメトリー専用ステージ)で撮影したデータを基にデジタルダブルを作成しました」(松永氏)
ある出来事をきっかけに、怪物の体表を呪文の文字が覆い尽くす。妙高寺シーンにはこうしたファンタジックなVFXが随所に登場する。「書家の方に書いていただいた文字をデジタルデータ化して、パーティクル素材にしました。ポイントは怪物のデコボコした体表に這わせる必要があったことですが、MayaのVector Displacement Mapと同じマップに合わせてHoudini側でも同じVector Displacement Mapを適用することで対応しています」(北川氏)
ブレイクダウン
怪物の外皮が剥がれ落ちるカットより。剥がれ落ちた皮はドロっと流体のようになって混ざり溶け落ち、光沢のある内部が露わになる。剥がれ落ちるエフェクトと剥がれた状態をHoudiniで作成し、そのデータをAlembic形式でMayaに読み込んでまとめてレンダリングが行われた
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剥がれ落ちるアニメーション作業。剥がれていくにつれて溶けていくように、ポイントクラウドでブリッジしつつ、流体シミュレーションにつなげている。それを最終的にメッシュ化するのだが、極力同じトポロジーになるように調整された
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Houdiniの作業UI。剥がれ落ちる箇所が色付けされた状態
ブレイクダウン
涙の表現。「エフェクト作業はHoudiniで行いましたが、演出意図を適確に表現するためにシミュレーションではなく、VDBブレンドやポイントクラウドのメッシュ化などを用いて手付けで動きを付けました。一度しくみを構築してしまえば修正対応も効率的に行うことができ、プロシージャルの強みを感じました」(日髙氏)
弾正が怪物の舌を切り落とすVFXも実写素材を活用した好例だ。地面に落ちた舌から流れる血をどう表現するか? もちろん、CGエフェクトでも可能だが、よりコストパフォーマンスの高い手法としてペットボトルに血糊を入れて倒すというオーソドックスな手法が用いられた