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ファンタジックなCGアニメーションと職人気質あふれるインビジブルエフェクト〜映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』

ファンタジックなCGアニメーションと職人気質あふれるインビジブルエフェクト〜映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』

CMを中心に活躍するデジタルアーティストたちが創り出した、3DCGならではのファンタジックなVFXときめ細やかなインビジブルエフェクトが織り成す映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』。その制作舞台裏にせまる。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 251(2019年7月号)からの転載となります。

TEXT_福井隆弘 / Takahiro Fukui
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)



映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』予告編
2019年6月14日(金)全国公開!


littlezombies.jp

脚本・監督:長久 允
撮影:武田浩明/照明:前島祐樹/サウンドデザイン:沖田純之介/美術:栗林由紀子/装飾:渡辺誉慶/衣裳:下山さつき/ヘアメイク:光野ひとみ/編集:稲本真帆/カラリスト:根本 恒/VFXスーパーバイザー:二瀬具洋
リードVFXプロダクション:MARK/VFXプロダクション:レスパスビジョン、トランジスタ・スタジオ、Canvas、lure、GIFTほか/製作幹事:電通/配給:日活/制作プロダクション:ROBOT
© 2019 "WE ARE LITTLE ZOMBIES" FILM PARTNERS


<Keynotes>
ハイクオリティ3DCGに定評あるMARKが初めて挑んだ映画VFX

第33回サンダンス映画祭(ショートフィルム部門)で日本映画初のグランプリを獲得した監督・長久 允(ながひさ まこと)氏。受賞作『そうして私たちはプールに金魚を、』(2017)は、圧倒的な映像センスと、巧みな語り口、音楽の絶妙な活用が国内外で大きな注目を集めた。そして2019年、今回紹介する『WE ARE LITTLE ZOMBIES』にて満を持して長編映画デビューを果たした。
本作は、第35回サンダンス映画祭(ワールドシネマドラマティック コンペティション部門)にて審査員特別賞オリジナリティ賞、第69回ベルリン国際映画祭(ジェネレーション14プラス部門)スペシャル・メンション賞を獲得するなど、その独創性とスタイリッシュな映像美によって海外の映画祭で高い評価を得ている。

「 両親が死んでも涙が流れない」まるでゾンビのように感情を失った少年少女たち。音楽バンド"LITTLE ZOMBIES"を結成し、13歳という多感な時期の彼らが心を取り戻すために歩んだ冒険の記録である。そして最後にたどり着くのが、ほぼフルCGで構成された、深海や産道を胎児に見立てたトラックで浮遊し、輪廻転生を彷彿とさせる幻想的なクライマックスシーンだ。そのCG・VFXワークをリードしたのは、CMを中心としたハイクオリティなCG・VFXに定評あるMARKである。本作にて、VFXスーパーバイザーを務めた二瀬具洋氏が企画の経緯から語ってくれた。
「以前にCM案件でご一緒したラインプロデューサーの鈴木康生さんから2017年12月頃にお話をいただきました。今回は、クライマックスシーンを3DCG主体で描きたいということで、撮影前のビジュアルデベロップメントから参加させてもらいました。MARKが長編映画向けVFX制作に参加するのは初めてでしたが、長久監督は第一線で活躍中のCMプランナーですし、われわれも何度かご一緒させていただいたというご縁もありました」。

本作のVFXショットは約300。そのうちMARKが手がけているのが約200で、残りをレスパスビジョンが担当している。MARKがリードしたVFXチームには、以前から協力関係にあるCanvaslure、フリーランスのスタッフ含め総勢50名ほどが参加しているとのこと。

左から、山岸辰哉CGディレクター( フリーランス)、二瀬具洋VFXスーパーバイザー(MARK)、稲垣 徹CGディレクター(Canvas)、渡邉祐貴CGディレクター(lure)

PHOTO by Mitsuru Hirota


<1>ほぼフルCGで構成されたクライマックス
~ビジュアルデベロップメント~

デザインからCG・VFX本制作まで約10ヶ月にわたる一大プロジェクト

「最初にオファーをいただいたのが2017年12月だったのですが、まずはクライマックスシーンの世界観や表現についてのアイデア出しに取り組みました。実写撮影は2018年2月23日(金)に調布市の味の素スタジアムでクランクインし、4月30日(月)にクランクアップ。そこからCG・VFX本制作に取り組みはじめました。ただ、当初の納品は7月予定だったのですが、オフライン編集が確定したのが6月だったため、最後の納品は9月末でした。約10ヶ月のプロジェクトになりましたが、普段はCM案件を中心に活動しているMARKにとっては異例の長期プロジェクトとなり、貴重な経験をさせてもらいました」(二瀬氏)。

MARKが担当したVFXワークのうち最大のチャレンジとなったのがクライマックスシーン。ある事情からゴミ収集車を奪った主人公たちが長いトンネルに入ると輪廻転生を彷彿とさせる不思議な体験をするのだが、そのファンタジックな世界がほぼフルCGで描かれるのだ。新たな生命として生まれ変わるビジュアル的なモチーフとして胎児や産道をキーワードにビジュアルデベロップメントが進められた。ゴミ収集車のアセット制作は、現実の業務用車輌のフォトグラメトリーをベースに作成。産道に着想を得たフルCG空間をトラックが浮遊しているシーンのため、サイズ感、スケール感はデザインとルックを検討しながら、様々なパターンを模索したという。「役者さん以外はほぼフルCGなので、実写撮影時はグリーンバックの中にトラックを置いて撮影しています。シーンの途中からトラックが肥大化していくのですが、風船ぽく膨らませたかったので、テストCGのレンダリングイメージに対して僕の方でレタッチしたりもしながらデザインを詰めていきました。こちらから様々なデザイン案を出させてもらい、その中から選んでもらうことを心がけました」(二瀬氏)。

クライマックスシーンの制作は、MARK代表取締役の犬童宗恒氏がディレクションを担当。Canvasの稲垣 徹CGディレクターによると、「産道がモチーフいうことで初期デザインではトンネルの壁面をエコー写真で埋め尽くしてみたのですが、ホラーな印象になってしまったのでコンセプトアーティストとして参加された西藤立樹さんに協力していただきながら、かなりの数のデザインを試しました」。完成したシーンを観ると、奇抜だけどポップな印象もあり、異次元へのトンネルを潜っているような幻想的なシーンに仕上げられた。また、エンバイロンメント制作では、トランジスタ・スタジオの協力を得て、海洋の無脊椎動物のように動くアセットがHoudiniで構築されている。


  • 長久監督が作成した演出コンテより


絵コンテを元に作成したビデオコンテより

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長久監督は基本的にカット割りやカメラアングルを事前に決めておくスタイルだという。台詞、劇伴、SEのタイミングもかなり細かく決めた上で映像を当てはめていくため、フルCGシーンについてもアニメーションやカメラワーク、エフェクトのタイミングに細かな配慮が求められたそうだ

フルCGシーンのビジュアルデベロップメント例

  • <A>最初のプラン

  • <B>フルCGシーンのコンセプトアートを担当した西藤氏が描いたイメージボード。様々なバリエーションが描かれた

  • <C><B>をふまえて西藤氏がCinema 4Dで作成した3DCGアート

  • <D>フルCGシーンのエンバイロンメント制作を担当したトランジスタ・スタジオが作成した本番シーン。レンダラはRedshiftを採用

  • <E><D>に対して山岸氏が作成したベースコンプ

  • <F>一連のショットワークが施された納品データ(完成形)。最終的にモノクロで描かれることになった



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<2>ほぼフルCGで構成されたクライマックス
~ショットワーク~

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