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No.05:到達度のちがいをどのように捉えるか?

No.05:到達度のちがいをどのように捉えるか?

授業自体にもレベルデザインが必要

こんな風に第5回と第6回の演習は、それぞれ2日ずつを費やしましたが、それでも時間が不足した学生が多かったようです。一方でサクサクと進めてしまい、時間が余ってしまった学生も......。このように、次第に「決まった演習課題」を元に、どのように「個々の進捗度の差を解消していくか」が課題になってきました。「できる子」には追加課題を与え、「できない子」を定期的に引っ張り上げてやりながら、双方のモチベーションを保つ......。いわば、授業のレベルデザインを行う必要が、本格的に出てきたというわけです。

このうち「できる子」については、(今後の演習資料の公開予定にもよりますが)どんどん先に進んでもらうのがよさそうです(個人的には周りの学生のフォローに回ってほしいところですが......)。これに対して「できない子」向けには、これまでと同様に2週間でひとつの回を行い、1周目はそのまま、2周目はスクリプトやプロジェクトフォルダを配布して参考にさせる、といったやり方が考えられるかもしれません。

学生の指導をしながら、総じてつまずきやすいポイントがあるようにも感じられました。前述したように第5回と第6回では、ピンボールのようなステージをつくって、中にギミックを配置していきます。はじめに行うのがステージとバー(=自機)の配置です。床をつくり、壁をつくり、バーをつくり、ボールをつくっていきます。そして、その過程で作業を進めやすくするために、エディタ画面上でステージ全体の見え方を調整していきます。

▲【左】「あそびのデザイン講座」第5回の該当部分(同PDFの8枚目)/【右】筆者が自作した第5回の動画チュートリアルの該当部分


ところが、ここで気をつけないと、UnityのSean上の向きとシーンギズモがずれてしまいがちです。こうなるとバーが左右ではなく上下や斜めに動いたり、バーに当たったボールが明後日の方向に飛んでいく、という怪現象に襲われます。本演習のスクリプトでは、バーの動きをSean上の水平方向(=X軸)、バーに対するボールの反射を垂直方向(=Y軸)に対する速度ベクトルの変化で指定します。そのためステージの向きがSean上の座標に対して狂っていると、こうした問題が発生するのです。

実際、自分も自宅で予習した時、同様の事態に陥りました。そして解決するまでに、結構悩みました。わかってしまえば、なんということはないんですけどね。ただ、わからなければ、ここで詰みますので、学生に対するフォローが必要になります。

また、中にはステージ上に、ひたすら大量のブロックを配置することに情熱を傾ける学生もいました(これは前回までの「坂をつくってボールを転がす」演習でも見られた光景です)。この時、ブロックをプレハブ化しておき、インスタンスをコピーして配置すると、同じ設定のブロックを量産できるため、便利です。これに限らず、プレハブはUnityでコンテンツをつくる上で基本となる概念のひとつですが、資料では第1回目で軽く触れられているのみです。そのため、この前後でエディタ上での手順を解説しておくといいでしょう。

▲筆者が自作したプレハブの動画チュートリアル


ほかに、第6回目の演習では過去に作成したスクリプトを再利用するシーンが出てきます。ただし、中には「過去の演習内容のプロジェクトフォルダを削除してしまった」「保存したUSBメモリを忘れた」なんて学生も出てきます。今後、全15回の資料公開が終了した時点で、使用する全スクリプトのコード一覧が別ファイルで配布されると、授業で使いやすくなりそうです。

一方で、これくらいの時期になると、学校側に対応いただいたこともあり、これまで頻発していたUnityの環境やライセンスに関するトラブルが、ほとんど見られなくなってきました。しかし、それでも「作業中のプロジェクトフォルダを誤って削除する」「提出時にプロジェクトフォルダではなく、Unityのシーンファイルのみを提出する」「ファイルやフォルダ名に2バイト文字を使用する」などのヒューマンエラーが見られました。これについては、繰り返し指導していくしか方法がなさそうです。

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完成度が低く、独創性が高い学生をどう導くか?

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