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    本連載では2018年12月4日(火)∼7日(金)に東京国際フォーラム(有楽町)で開催されるSIGGRAPH Asia 2018の価値を、SIGGRAPH Asiaを愛するキーマンたちに尋ねていく。第7回ではカンファレンスチェアの安生健一氏自らが、Nafees Bin Zafar氏(Technical Briefs & Posters チェア)、Tobias Klein氏(Art Gallery チェア)、Tomasz Bednarz氏(Courses Committee メンバー/SIGGRAPH Asia 2019 カンファレンスチェア)に対して、SIGGRAPH 2018の会場で行なったショートインタビューの模様をお伝えする。

    INTERVIEW_安生健一 / Ken Anjyo
    EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
    取材協力_木村 歩、河西 仁

    Interview 1:Technical Briefs & Posters チェア

    安生健一氏(以下、安生):まずは、SIGGRAPH Asia 2018ならではの特徴やこだわりを教えてください。

    • 安生健一
      オー・エル・エム・デジタル 技術顧問/イマジカ・ロボット・ホールディングス アドバンストリサーチグループ ディレクター/ヴィクトリア大学(ニュージーランド)コンピューテーショナル・メディア・イノベーションセンター(CMIC)ディレクター。工学博士。国内外の研究者・技術者との「使える」技術開発のコラボレーションに加え、SIGGRAPHを始めとするCGの国際会議での研究発表などの対外活動も活発に行なっている。SIGGRAPH Asia 2018ではカンファレンスチェアを務める。


    Nafees Bin Zafar氏(以下、Zafar):実用的なアイデア、あるいは使いやすいアイデアであることを重視しています。Technical BriefsやPostersを見た人々が、何らかの学びを得て、自身の研究室や仕事場に持ち帰り、活用できるアイデアを集めたいと思っています。

    • Nafees Bin Zafar
      マジック・リープ(Magic Leap)リード・ソフトウェア・エンジニア。17年以上にわたりライブアクション・ビジュアル・エフェクトやフィーチャー・アニメーションの開発に携わる。デジタル・ドメイン 技術開発担当スーパーバイザー、オリエンタル・ドリームワークス(上海)R&D担当ディレクター、ドリームワークス・アニメーション プリンシパル・エンジニアなどを経て現職。SIGGRAPH Asia 2018ではTechnical Briefs & Posters チェアを務める。


    安生:今回はTechnical BriefsとPostersの応募締切が同日になっていますね(※)。これまではPostersの締切の方が遅かったので、まずはTechnical Briefsに応募して、ダメだったら改めてPostersに応募するという人が多かったと思います。でも、今回はこの手が使えないということですね。

    ※ Technical BriefsとPostersの応募締切は8月26日だった。なお、本インタビューは8月14日に実施された。


    Zafar:そうです。審査プロセスを統一したいという思いから、応募締切を同日にしました。応募者には、自分の研究がTechnical BriefsとPostersのどちらに相応しいものなのかを見極め、それぞれの形式にフィットしたプレゼンテーションをしてほしいと期待しています。

    安生:Technical BriefsはいわゆるShort papers扱いの論文ですが、Postersではどんなプレゼンテーションをするのが良いと思いますか?

    Zafar:例えばアニメーションなどの動きに関するプロジェクトの場合は、どんなに優れたものであってもPostersで全てを伝えきることは難しいでしょう。アニメーションの素晴らしさは、ディスプレイに映すことで初めて伝えることができます。こういったPostersの制約を理解した上で、プレゼンテーションのやり方を考えることが大切です。

    安生:Postersは、自分の研究をプロモーションするためのサマリーだと位置づけ、興味をもってもらえるように演出することが重要なわけですね。

    Zafar:はい。Postersは自分の研究の特に重要な部分に焦点を当てて紹介するものですから、多くの紙面を必要としないのです。また、Postersは学生が研究者としての経験を積む良い機会でもあると思います。応募者は審査する側から貴重なフィードバックをもらえます。さらに、審査に通り発表の機会を得れば、来場者からも多くのフィードバックをもらえます。

    ▲【左】SIGGRAPH 2018の会場内で対談するZafar氏と安生氏/【右】バンコクで開催されたSIGGRAPH Asia 2017のPostersの様子。2日目と3日目の13:00〜14:00には、Postersの発表者が自身のポスターの前に立ち、来場者に研究内容を解説したり質問に答えたりするPresentation Timingsが実施された
    © 2018 ACM SIGGRAPH


    安生:若い研究者には、ぜひこの機会を活用してほしいですね。今現在、どのような応募が集まっていますか?

    Zafar:最近のトレンドに沿った応募が多いです。例えば、VR/AR、リアルタイムCG、バーチャル・キャラクターなどに関する研究です。これ以外にも、あらゆる分野の方々からの応募を期待しています。

    安生:最後に、SIGGRAPH Asia 2018の参加者に向けてメッセージをお願いします。

    Zafar:SIGGRAPH Asiaには、CGに関連する世界中のアカデミック分野とインダストリー分野の専門家が集まります。そのコミュニティに参加することは、とても魅力的でエキサイティングなことだと思います。特に今年は東京で開催されるので、多くの専門家が参加してくれると思います。私も含め、皆さん東京が大好きです。世界各国の専門家が交流することで、様々な成果が生まれ、カンファレンスが成功することを期待しています。

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    Interview 2:Art Gallery チェア

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    Interview 2:Art Gallery チェア

    安生:今回のArt Galleryのテーマはとてもユニークですね。

    Tobias Klein氏(以下、Klein):今回のArt Galleryは、セミ・キュレーションされた展示にしたいと考えています。Nam June Paik氏の『Candle TV』(1975)と日本の能面をプラス極とマイナス極に据えた「FORCEFIELDS(力場)」を構築し、これら2つのキュレーション作品の周りに応募者の作品を展示します。応募者は、自分の作品を通してキュレーション作品に共感しても良いですし、模倣しても良いでしょう。あるいは、反発しても構いません。

    • Tobias Klein
      香港城市大学 所属。建築家であり、学際的芸術家/デザイナーでもある。現代のCAD/CAMテクノロジーと、デザイン・文化・歴史などを融合させた数多くの作品を生み出している。SIGGRAPH Asia 2018では、Kyle Chungと共にArt Gallery チェアを務める。


    image courtesy of ACM SIGGRAPH


    Art Galleryの応募ページに提示された図
    image courtesy of ACM SIGGRAPH


    安生:キュレーション作品として、『Candle TV』と能面を選んだ意図を教えていただけますか?

    Klein:まず、SIGGRAPH Asia 2018のCROSSOVERというテーマを踏まえ、作品同士のCROSSOVERを意識しました。さらにアジアに関連する要素を加えること、概念的な作品と工芸的な作品という対照的な2つの極を加えることも意識しました。Paik氏は、現代アートのパイオニアであり、レジェンドでもある重要な人物です。私たちは韓国のNam June Paik財団にコンタクトし、Paik氏の極めて象徴的な作品である『Candle TV』の貸し出しを依頼しました。この作品はシニカルで、アナログとデジタルの境界線上にあり、非常にコンセプチュアルです。さらに、その対極に位置する作品として、日本の文化遺産のひとつである能面を選びました。能面は、社会がデジタル化する以前から存在する古いコミュニケーションの形態であり、長い歴史を有しています。

    安生:TVと同様、能面もコミュニケーション・メディアのひとつだと捉えたわけですね。

    Klein:その通りです。能面は、今も使用されているメディアであり、工芸品です。2つのキュレーション作品に対し、応募者がどのような反応を見せてくれるのか、とても楽しみにしています。このテーマは受け入れられたようで、これまでに約100件の応募をいただいています。全ての応募作品が2つのキュレーション作品に強く反応しているわけではない点も、面白いと感じています。ある作品は強く、別の作品はそこそこといった感じです。応募者の中には、ニューメディア分野におけるパイオニアであり、数々の受賞歴をもつ方もいます。そういう方が、私たちのテーマに反応してくださったことに強い感銘を受けています。

    安生:とても素晴らしいことですね。

    ▲【左】SIGGRAPH 2018の会場内で対談するKlein氏と安生氏/【右】SIGGRAPH Asia 2017のArt Galleryの様子
    © 2018 ACM SIGGRAPH


    Klein:今回の応募作品は総じてレベルが高く、過去のSIGGRAPH Asiaとはすべての点で一線を画しています。それだけ、東京という開催地は特別であり、魅力的なのだと思います。SIGGRAPH Asia 2018のArt Galleryは間違いなく素晴らしいものになりますから、期待して足を運んでいただきたいです。

    安生:私も期待しています。

    Klein:ありがとうございます。最善を尽くします。

    Interview 3:Courses Committee メンバー/SIGGRAPH Asia 2019 カンファレンスチェア

    安生:まずはSIGGRAPH Asia 2018のCoursesについてお話しましょう。今年は40近くの応募がありましたね。

    Tomasz Bednarz氏(以下、Bednarz):はい。コンピュータアニメーション、ジオメトリ処理、レンダリング、グラフィックスハードウェアなど、多彩な分野が集まりました。ビッグデータとビジュアライゼーション分野の応募が多かったのは、とても嬉しかったです。さらにゲーム開発、VFX、ハンズオンワークショップに関するCoursesも追加で募集しました。Coursesのチェアを務めるCarol O'Sullivan氏の助言はとても参考になりましたね。彼女はCROSSOVERというテーマを踏まえ、芸術、人文科学、コンピューターサイエンスなど、多様な分野を組み合わせることを提案してくれました。

    • Tomasz Bednarz
      ニューサウスウェールズ大学 アート&デザイン/ビジュアリゼーション Expanded Perception and Interaction Centre(EPICentre)センター長、ディレクター。CSIRO Data61 研究開発機関 Visual Analytics チームリーダー。クイーンズランド工科大学 Applied & Computational Mathematics 助教授。SIGGRAPH Asia 2017ではCourses チェア、SIGGRAPH Asia 2018ではCourses Committee メンバー、SIGGRAPH Asia 2019ではカンファレンスチェアを務める。


    安生:一部のCoursesは、Bednarzさんがキュレーションしているわけですね。

    Bednarz:そうです。前回同様、今回のCoursesもキュレーションしたものと応募されたものとで構成します。両方とも、可能な限り最高レベルの品質を目指します。

    ▲【左】SIGGRAPH 2018の会場内で対談するBednarz氏と安生氏/【右】SIGGRAPH Asia 2017のCoursesの様子
    © 2018 ACM SIGGRAPH


    安生:続いて、SIGGRAPH Asia 2019の話も聞かせてください。

    Bednarz:もちろん、可能な限りお話したいです。SIGGRAPH Asia 2019は、2019年11月17日~20日の期間、オーストラリアのブリスベンで開催します。テーマはDream Timeです。このテーマは私がオーストラリアに対して抱いている気持ちにぴったりマッチしており、非常に誇りに思っています。実際、Dream Timeという言葉はオーストラリアの歴史とも関連しています。SIGGRAPH Asia 2019では、VR、AR、MRなどのテクノロジーを通して、オーストラリアの歴史にまつわるDream Timeを楽しんでいただきたいと思っています。

    安生:素晴らしいですね。ほかに、何か特別なイベントは考えていますか?

    Bednarz:SIGGRAPH本体に倣い、Studioを設置したいと考えています。そこで、CGとインタラクティブ技術に関連する幅広いワークショップを実施します。さらに東京で実施するBirds of a Featherをブリスベンでも継続したいと考えています。

    安生:SIGGRAPH 2018のBirds of a FeatherでBednarzさんが実施したDemoscene Underground Real-Time Art Worldwideは大人気でしたね。ブリスベンでもDemosceneセッションを実施しますか?

    Bednarz:そのつもりです。だから、東京で開催するReal-Time Live!にはとても注目しています。これはDemosceneと似ている部分がありますし、最新のリアルタイムCGとハードウェアの素晴らしさを実感できる非常にエキサイティングなプログラムです。SIGGRAPH Asia 2018と、2019は連続性をもつべきだと思いますから、安生さんと私をはじめ、各プログラムのチェア同士がつながりをもち、経験や考えを継承していくことが大切ではないでしょうか。

    安生:同感です。私たちが協力することで、SIGGRAPH Asiaはさらに素晴らしいものへと進化していくでしょう。

    Bednarz:さらにVRやビジュアライゼーション関連の学会との連携も予定しています。SIGGRAPH Asia 2019の開催をきっかけに、CG、VR、ビジュアライゼーションのコミュニティがブリスベンに集結するような施策を考えているので、ご期待ください。

    安生:期待しています。SIGGRAPH Asia 2019の追い風になるよう、SIGGRAPH Asia 2018をしっかりと盛り上げていきますから、今後もぜひサポートをお願いします。

    Bednarz:もちろんです。お互い、ベストを尽くしましょう。

    info.


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