Lesson50:青リンゴを、その温度を考えながらペイントする
続いて、同じ青リンゴを3パターンの色使いで描いてみましょう。先の赤リンゴと同様、段階的に使う色を増やしていきます。
▲このリンゴは、上部にあるグラデーション(白色、明度のちがう緑色、黒色からなるグラデーション)を使って描いています。赤リンゴの場合と同様、彩度のちがいは白色と黒色を使って調整しています。1色しか使っていないため、単調な絵になっています
▲このリンゴは、先の絵に青色(寒色)を加えたグラデーション(白色、明度のちがう緑色、明度のちがう青色、黒色からなるグラデーション)を使って描いており、影(あるいは陰)になっている部分に少し青色を加えることで「温度」を変えています。緑色(暖色)に青色(寒色)を加えることで、より冷たい色となります。赤リンゴの場合と同様、青空の下に置かれたリンゴの陰影は、空の青色の影響を受けます
▲このリンゴは、先の絵に黄色(暖色)を加えたグラデーション(白色、明度のちがう緑色、明度のちがう青色、明度のちがう黄色、黒色からなるグラデーション)を使って描いています。緑色(暖色)に黄色(さらに暖かい暖色)を加えることで、より暖かい色となります。赤リンゴの場合と同様、光が当たっている部分に黄色を加えることで、その部分が黄緑色になり、色味が複雑になり、さらにリッチな絵になっています
オブジェクト自体の色よりも冷たい色、あるいは暖かい色を加えていくと、色味が複雑になっていきます。このとき、色の彩度にも気を配りましょう。最も彩度が高い部分はどこか、最も暖かい部分はどこかを意識し、バランスを考え、反射光にも注意してペイントしていきます。もちろん、明暗のバランスも常にチェックします。
▲カラー・ホイール(色相環)。最も暖かい色は黄色で、最も冷たい色は青色です。この2色を基点として、色の温度が変化します。近くの色同士を混ぜた場合には色の鮮明さ(彩度の高さ)が保たれますが、補色(反対側の色)に近くなればなるほど、混色すると色が濁ります
今回のレッスンは以上です。第23回も、ぜひお付き合いください。
(第23回の公開は、2019年1月を予定しております)
プロフィール
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伊藤頼子
ビジュアルデベロップメントアーティスト
三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野のアートディレクションとビジュアルデベロップメントを担当。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。
www.yorikoito.com
www.artstation.com/yorikoito
本連載のバックナンバー
第1回∼第13回まではこちらで総覧いただけます。
No.14:画の中のスケールとディテール
No.15:ダイナミックな動きのある画を描く
No.16:イメージづくりに使うレイアウトコンポジション
No.17:ライティングデザイン
No.18:ライティングデザインによる感情表現
No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする
No.20:人工の光を使い、ライティングをデザインする
No.21:ライティングと天候を使い、ムードを表現する