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お題その3:「ごまかす」

お題その3:「ごまかす」

Sony Pictures Imageworksのアニメーターであり、オンラインスクールAnimationAidの講師も務める若杉 遼氏がTwitter上でお題に沿ったポーズ画を募集する「エイド宿題」。本連載では、その企画で集まった作品をピックアップし、若杉氏がドローオーバーによる添削とそのポイントを解説する。

TEXT_若杉 遼 / Ryo Wakasugi(Sony​ Pictures​ Imageworks
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

今回のお題

こんにちわ、海外でCGアニメーターをやっている若杉(@ryowaks)です。今月はエイド宿題の3週目のお題から、「ごまかす」というテーマでポーズの添削をさせていただきます。

「ごまかす」は意外と難しいテーマです。なぜなら、今まで紹介してきた「退屈する」「興奮する」とはちがい、感情ではなく動作を表す言葉なので、ポーズをつくるときにキャラクターの感情面で自由度が高いからです。自由度が高いというと簡単なように聞こえますが、お題が抽象的であるぶん自分で具体化しないといけない部分が増えるため、いつも以上に想像力が必要なお題だと言えます。

また、「ごまかす」という動詞自体もポーズにおいて難しい表現です。なぜなら、見る人に「ごまかしている」ことがわかるように描く必要があるからです。ごまかすのが上手すぎると見ている人もごまかされて、逆にごまかしている様子が伝わらなくなってしまいます。今回は、そのあたりのバランスもかなり難しいポイントだったのではないでしょうか。

では早速ポーズの添削をしていきましょう。

作品01:「ごまかす」

投稿作品

女の子が椅子を倒してしまって、何とか取り繕おうとしているポーズですね。このポーズはパッと見たときに女の子がごまかしている様子だけでなく、どこにいるのか? 誰なのか? という部分もしっかりと伝わってくるので、とても良いポーズだと思いました。

今回は、ドローオーバーの前にポイントを解説していきます。

Point 1:ポーズはキャラクターの説明書

ポーズを考えるときに僕が常に念頭に置いているのは、キャラクターのポーズはそのキャラクターの「説明書」だということです。例えばこのポーズの場合は、キャラクターが椅子を倒したという状況に対するリアクションをどう表現するかによって、キャラクターの性格を伝えることができるというわけです。

この考え方には、ひとつ大事なポイントがあります。それは、ポーズをつくる側が意図しようがしまいが、観客はポーズを見ると無意識のうちに頭の中でそのキャラクターの性格や感情の解釈をつくってしまうということです。

つまり、何も考えずにポーズをつくると、自分の意図とはちがって伝わってしまうこともあるということです。映画などでこれが起こると、観客は無意識のうちに混乱してしまい、肝心のストーリーに集中できなくなってしまいます。

Point 2:「普通」のポーズ

クラスでアニメーションを教えていると、「普通」のポーズという言葉をたまに耳にします。例えば「普通に悲しい表情」などです。何も情報やアイデアがない場合、おそらくほとんどの方は悲しい表情と言われたら、きっとこんな表情を思い描くでしょう。

まったく悪いポーズではなく、むしろとてもわかりやすいポーズだと言えますが、逆に言うとわかりやすさしかないのです。悲しい表情と言われて、この表情がどんなキャラクターや状況にも当てはまるかというと、そうではありません。むしろ、100人いたら100通りの悲しい表情があります。

具体例を出すなら、同じ表情でも「親友が海外に留学することになって、本当は悲しいけど悲しさを隠して応援しているように見送っている」といった設定がある場合の悲しさは、どんな表情を描けば伝わるでしょうか?

おそらくこんな表情ではないでしょうか? 一見すると笑っているようにも見えますが、悲しさもちゃんと伝わってきます。これも悲しいポーズのひとつですよね。また別の例として、今度は「見送っている主人公=強がりな男の子、海外に行ってしまう子=主人公が好きな女の子」といった設定があるならば、今度はこんな感じの表情が当てはまりそうですよね。

このように、ひと言で表現できる感情だとしても、その場の状況やキャラクターの性格によって表現の方法は実に多岐に渡るということがわかると思います。

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