前回の中面編(前編)に続き、東洋美術学校 クリエイティブデザイン科 高度グラフィックアート専攻に所属する学生さんに協力いただき、実際に学生さんが作成したポートフォリオを事例に、具体的な改善方法を提案していきます。前編では「Step01:マージン設定を見直す」「Step02:行間を整える」について解説したので、今回はStep03から始めます。

SUPERVISOR&TEXT_斎藤直樹 / Naoki Saito(コンセント
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
取材協力_東洋美術学校
作例提供_五十嵐礼、小見山沙彩、坂見こずえ、杉山舞、三井柚佳(前後編併記)

Step03:ほか要素との関係も整える

下図は一例として作成したものです。見出しと写真との間隔がちがっていますが、どちらが正解というわけではありません。ただ少しだけ意味合いがちがって見えるのは見ての通りです。


具体的な距離は下図を参照してください。前編のStep02で説明した通り、見出しとの距離はどちらも行間より大きくとっていますが、画像との間隔はわずか1ミリの差です。


こうしたちがいについて、不慣れな人はぞんざいな扱いになりがち。繰り返しになりますが、同じ役割をもたせたものは同じ条件で配置してあげましょう。それだけで画面がぐっと締まって見えるようになること請け合いです。

ヒトの目は近くに置かれたものをより関係が深いものと感じ、グループとして認識します(『群化の法則』で検索してみましょう)。左は文字でグループをつくり、画像に文字を添えているのに対し、右は見出しと画像でまずグループをつくり、説明を添えるかたちです。

レイアウトとしてコントロールしやすいのはおそらく左だと思います。セオリーとして述べるなら、画像と文字組みの間隔はすぐ近くの行間と同じかそれ以上にする。言葉にするととても簡単ですが、簡単だからこそ心を配っておくに越したことはないのだ......と思います。

Step04:書式はもっと自由に

今回全体的に「学校文書」の影響を色濃く感じました。例えば、カギカッコは強調の意、マルカッコは補足の意、文頭の黒丸は見出しの意、などなど......黒一色で文字サイズ固定/フォントも一種類......という制約の中から生まれた「学校文書」的な書式が、皆さんの文字の扱いの中にもがっつりと染みついているように思います。

美術系学生のポートフォリオはもう少し自由で構わないはずです。多くのフォントの種類やサイズ、なにより多くの色が使えるわけですしね。あまり突飛すぎる表現はどうかと思いますが、皆さんの意図がきちんと伝わるのならそれはそれで良いのです。


Before
同一フォントの同一サイズ〜文字色をBL90%にしているのは、文字の存在感を少し弱めて、絵のほうを引き立たせたい意図があるのだとは思いますが、もう少し親切心がほしいな......と思わせる物足りなさの方が先立ちます。


After
作品のタイトル/作品の種類/解説/使用ソフトウェア......と4つの役割を明確に分けました。最小限ながらフォントサイズや太さにも変化を付けています。解説はBL70%とし、濃度差をはっきりさせメリハリを付けました。画像との距離はStep03で述べたように、ごく基本的な整理をしています。右揃え/左揃えもきっちりと整えました。


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Step05:箇条書きは無理せずシンプルに

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Step05:箇条書きは無理せずシンプルに

箇条書きは「学校文書」的な堅苦しさと、デザイン的に美しく見せたいという美意識との衝突が顕著にうかがえる部分です。少しでも見栄えよく、そして少しでもラクに文字を配置できるよう、いくつかの例を見ながら、改善の提案をしてみようと思います。


Before
箇条書きが素っ気なく見えます。ロゴの完成度の高さと比べると余計に見劣りがするように思います。なんだかもったいないですね。項目の文字数がまちまちのところ、空白文字(いわゆる全角スペース)で文字数の差を埋めて、コロン(:)の位置で揃えているようですが、結構手間がかかったことでしょう。

インデントとタブ機能を駆使すればもう少しラクに文字配置することも可能なのですが......。


After
もっとシンプルに解決してみました。このようにすれば文字数の差はなんなく解決できます。オレンジ色はこのページのテーマカラーに合わせるように配慮しました。『ロゴ:3時間』とコロンの使い方の重複も気になりましたので、この際ですからコロンに頼るのは止めてしまいましょう。

次はコロンで揃えなかった例です。


Before
箇条書きにおけるルールが混在しているか、あいまいなため、左端に添えたタテ線がうまく機能していないようです。『コンセプト:』以降を左揃え(いわゆる「ぶら下げインデント」のかたち)にしているため、タテ線との間隔が開きすぎて「かたまり」感が出ないからでしょう。


After
タテ線のアイデアを活かすことを主眼として、箇条書きルールを整えました。ただ下図の通りルールが複雑になり手間もかかりますので、ひとつ前の例のようにシンプル化する方がコスパは良かったかもしれませんね。


次はセンター揃えの例です(プロフィール欄ですので名前を出さないように配慮しています)。

Before
皆さんコロンに頼りすぎかもしれません。センター揃えの場合は特に、コロンで区切っても項目としてきちんと機能させられないように思います。この例ではフォントも同一ですので、あったりなかったりはうっかりミスだと思いますが、項目として好意的に見るしかないのは少し不親切かな......と思います。


After
センター揃えで同一フォントを使いつつ、項目として立たせる方法を考えてみました。丸を文字列の両脇に置きシンメトリーな関係を保ちつつ項目として目立つように、丸自体はあまり主張しないよう配慮しました。行数が少し増えてしまいますが、空行の調整でできるだけ同じ範囲に納まるようにしました。


最後に

中面編はこれにて終了です。

我ながら細かいよなぁ......と思います。普段無言で行なっていることを言語化して、人にわかりやすく説明しようとすると言葉はいくらあっても足りません。実際にはガチガチの理詰めで作業をしているわけではないんです。まず直感的に置いてみて、理屈をもって検証してみる。その繰り返しです。思いがけない発見も毎度のことです。そういう発見が楽しいから続けていられるのかな......とも思います。

ルールを厳密に定めたとしても、運用していく上で例外は必ず出てきます。例外をどのように処理するのか......その人のセンスと力量が問われるところです。慣れないうちは無理をしないこと......これも重要ですね。無理をすれば必ずどこかに歪みが生じます。なんかヘンだな気持ち悪いなという場所にはきっとなにかしら不都合が隠れています。



今回は以上です。次回もぜひお付き合いください。
(第13回の公開は、2019年2月以降を予定しております)

プロフィール

  • 斎藤直樹(グラフィックデザイナー)
    株式会社コンセント

    神奈川県横浜市生まれ。1987年東京造形大学造形学部デザイン科I類卒。広告企画制作会社、イベント企画運営会社を経て、1991年株式会社ヘルベチカ(現コンセント)入社。HUMAN STUDIES(電通総研)、日経クリック、日経パソコン(日経BP社)などの制作に関わる。東洋美術学校ではグラフィックデザインの実習を担当。

Information

  • 採用担当者の心に響く
    ポートフォリオアイデア帳

    発売日:2016年2月3日
    著者:中路真紀、尾形美幸
    定価:2,000円+税
    ISBN:978-4-86246-293-0
    総ページ数:128ページ
    サイズ:B5判


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