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    TVアニメ、実写映画、ゲームなどを幅広く手がける株式会社コロビト代表・大島夏雄氏によるCG雑学コラム。第7回はアフリカゾウとアジアゾウ、アシカとオットセイなど、似ている動物のちがいについて紹介する。

    TEXT&ILLUSTRATION_大島夏雄 / Natsuo Oshima(コロビト
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

    <1> 動物の分類階級とは?

    こんにちは、株式会社コロビトの大島夏雄です。第7回となる今回は「動物のちがいのはなし」ということで、動物の見た目のちがいについてお話ししようと思います。

    動物図鑑などを見ていると、「~科~属」という記載があります。これは「分類階級」といって生物を分類するときに使われています。地球上にはそれこそ数えきれないほどたくさんの種が存在しています。それを「生物」というフォルダにまとめて入れると探すのも大変なので、大きい区分から徐々に細分化されたフォルダに分けて分類しているイメージです。

    例えばトラをみてみると、脊椎動物門-哺乳綱-食肉目-ネコ科-ヒョウ属-トラとなります。脊椎があり、乳で育てて、肉食で、ネコの仲間で、ヒョウのグループのトラ、ということです。哺乳綱より哺乳類と呼ぶ方が馴染みがあるかと思いますが、学問的には綱になるようです。

    今回は、アフリカゾウとアジアゾウのように同じ象なのに種別がちがう動物の形状のちがいや、サメとイルカとクジラのように別の過程をたどっているのに同じような姿になった動物のちがいなどについていくつかお話ししたいと思います。

    <2>アフリカゾウとアジアゾウのちがい

    アフリカゾウは脊椎動物門-哺乳綱-長鼻目-ゾウ科-アフリカゾウ属、アジアゾウは脊椎動物門-哺乳綱-長鼻目-ゾウ科-アジアゾウ属、とそれぞれ分類されています。名前の通り生息する場所が異なるわけですが、見た目はどのくらいちがうのでしょうか?

    まず大きさを比べてみましょう。アフリカゾウは全長4~5m、体重4~7トン、アジアゾウは全長3.5mぐらいまで、体重2~5トンとアフリカゾウの方が大きいですね。牙はアフリカゾウの場合、オスもメスも大きな牙がありますが、アジアゾウの牙は小さく、メスにはないこともあります。耳もアフリカゾウの方が大きいです。これはゾウの耳には多くの毛細血管があり、それを外気にさらすことで血液を冷やすためといわれています。バイクのラジエーターと同じですね。

    背中の形もちがいます。アフリカゾウの背中はくぼんでいますが、アジアゾウの背中は丸く山なりになっています。そして、ゾウの一番の特徴である鼻の先の形状も異なります。アフリカゾウの鼻先には2個の突起がありますが、アジアゾウの突起はひとつだけです。

    ゾウといってもアフリカゾウとアジアゾウで大分ちがいますね! ゾウなどの動物をモデリングするときは「ゾウ」で検索するのではなく、種別を決めて資料を集めないと、バラバラの資料になってしまい整合性の欠けたモデルになってしまいますので注意してください。

    <3>アシカとオットセイとアザラシのちがい

    次は水族館のショーなどによく登場する動物たちです。アシカは脊椎動物門-哺乳綱-鰭脚目-アシカ科、オットセイは脊椎動物門-哺乳綱-鰭脚目-アシカ科、アザラシは脊椎動物門-哺乳綱-鰭脚目-アザラシ科です。アシカとオットセイは同じアシカ科でよく似ています。アザラシはアザラシ科ですので、まずはアシカ科とアザラシ科のちがいから説明します。

    アシカ科は陸上で半身を起こすことができますが、アザラシ科はできません。足もちがいますね。前足は、アシカ科はアザラシ科に比べ長く、アシカ科の後ろ足は前に曲げることができますが、アザラシ科の後ろ足は伸びたままです。そのため、アシカ科は陸上で前足をついて4本足で歩くことができますがアザラシ科は歩くことはできません。

    それから、耳がちがいます。アザラシは外耳がなく、アシカ科にはあります。アシカとアザラシでは体の特徴がちがいますので、泳ぎ方もちがいます。水族館に行った際はちがいに注意してみると楽しいと思います。

    続いて、アシカとオットセイのちがいです。アシカの毛は固いですが、オットセイは結構モサモサと毛が生えています。また、アシカとオットセイを比べるとアシカの方が耳が小さく、アシカの後ろヒレの指は不揃いでオットセイの後ろヒレの指の長さはだいたい揃っています。

    <4>サメとイルカとクジラのちがい

    今度は、水族館でみられる動物でも体の大きな方をみていきましょう。ジンベイザメは軟骨魚綱-板鰓亜綱(ばんさいあこう)-テンジクザメ目-ジンベイザメ科、マイルカは哺乳綱-クジラ目-ハイルカ亜目-マイルカ科、シロナガスクジラは哺乳綱-クジラ目-ヒゲクジラ亜目-ナガスクジラ科です。

    サメは魚類でイルカやクジラは哺乳類ですので分類は全然ちがいますが、形状は似ていますよね。ジンベイザメは大きさも12m以上にもなり、見た目もクジラに似ています。このように異なる種類の生物がよく似た形状に進化することを「収斂進化(しゅうれんしんか)」といいます。収斂進化は他にもいろいろあります。例えばモモンガとムササビや、ハリネズミとハリモグラなども収斂進化です。

    ジンベイザメとクジラの見た目でのちがいとして一番大事なのが尾びれの向きです。クジラの尾びれは上下に動かすので水平です。それに対してサメの尾びれは左右に動かすので垂直に伸びています。それから、サメにはエラがあり、クジラには噴気孔があります。

    では、イルカとクジラのちがいは何でしょうか?「分類階級」でみるとクジラ目までは同じですね。クジラはヒゲクジラハクジラに分類されます。イルカはハクジラの一種です。ハクジラのなかにはセミイルカのように「~イルカ」という名前のものとマッコウクジラのように「~クジラ」という名前のものの両方ありますが、これはどこで区別されているかといいますと、大きさらしいです。小さいのがイルカ、大きいのがクジラだそうです。何だかアバウトですね。

    余談ですが、イルカや長い距離を飛ぶ鳥はほとんど眠らずに何カ月も活動を続けることができます。これは脳の片側だけ眠る「半球睡眠」という技を使うことができるからだそうです。筆者も「半球睡眠」を獲得できればいいなと思います。

    今回は動物のちがいということで、3項目のおはなしをしましたが、まだ紹介したいことがたくさんありますので、次回も引き続き「動物のちがいのはなし」をします。それでは、次回もよろしくお願いします。

    参考文献

    書籍
    「世界動物大図鑑 ANIMAL」(ネコ・パブリッシング)
    「カワハタ先生の動物の不思議どこがおなじでどこがちがうの?」(川幡智佳 著、実務教育出版)
    「進化の法則は北極のサメが知っていた」(渡辺佑基 著、河出書房新社)
    「子どもには聞かせられない動物のひみつ」(ルーシー・クック 著、小林玲子 訳、青土社)

    Profile.

    大島夏雄/Natsuo Oshima(コロビト)
    株式会社コロビト 代表取締役、リードモデラー
    奈良県出身。多摩美術大学(絵画学科 油画専攻)を卒業後、数社のCG制作会社に所属しモデリングチーフを務める。その後、フリーとなり2009年7月2日に株式会社コロビトを設立。ゲーム、映画、アニメ、CMなど様々なジャンルの仕事を手がける
    colobito.com