記事の目次

    Framestoreで活動中の今川真史氏が解説する本誌の連載と連動して、メイキング動画とコラムをお届けする。

    TEXT_今川真史 / Masashi Imagawa(Framestore
    EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

    2D素材で惑星を、パーティクルで星々をつくる

    今回は、宇宙船が惑星に到着するカットを制作しました。今月から4回続けて一連のカットを制作して、惑星到着から着陸までのシーケンスをつくってみようと思います。

    今回は、連作1回目の惑星に到着するショットをつくりました。メインの作業は惑星の作成です。最初に3Dソフトでつくるか、2D素材を使ってつくるか迷いました。そこで、いろいろな映画のVFX Breakdownを見たところ、遠くから惑星全体を映しているようなショットは3Dでつくられている場合が多く、惑星の近くのショットは2Dで加筆している場合が多い印象を受けました。今回は惑星の近くに寄るショットで、ディテールも必要だったことから、2Dで作成することにしました。

    今までSFな世界観が好きで自主制作を行なってきましたが、意外と惑星をつくるのは初めてでした。苦労した点は、惑星の立体感をどう出すかです。惑星は球体なので、写真素材を使うにしても変形させて合成していかないといけません。

    そのほかにも、マットペイントの経験があまりないので、スケール感なども難しかったです。大きい雲を使いすぎてもスケールが出ないのですが、小さい雲を詰めすぎても画的に良くないので、バランスが難しかったです。ちょうど今、仕事でやっているプロジェクトも大気圏や雲のマットペイントが多く、毎回マットペインターから上がってくる素材を見て感動しています。NUKEでプロジェクションマッピングするために、6面の素材が上がってくるのですが、どうやってディフォームしているのか気になりました。あと、雲のディテールがすごいのはもちろんのこと、太陽やハイライトの部分のディテールも細かくつくられています。どうやってつくっているのか気になるので、また機会があればマットペインターのファイルを覗いてみようと思います。

    今回の作品では、背景の星たちの制作にNUKEのパーティクルを使用しました。今回のようなショットでは、写真素材1枚で済ませた方が良いのですが、実験的にパーティクルでつくってみました。今働いている会社では星を作成するためのNUKEのテンプレートがあり、気になって中身を覗いてみるとパーティクルでつくってありました。地球から見た星座や星の位置が正確で、星の名前もちゃんと設定してあり、星ごとに明るさなども調整できました。ここまでやる必要があるのかと言うほど作り込まれていて、たぶん映画『ゼロ・グラビティ』のときに使ったのかなと思います。ほかにも、レンズフレアのインハウスツールなどもすごく作り込まれていて、中身を見ているだけで面白いです。すごく動作が重たいですが......。

    モントリオールもようやく夏っぽくなってきました。冬は超極寒だったので、夏は日本より涼しいといいなぁと思います。

    Another planet-c01 from Masashi Imagawa on Vimeo.

    Profile.


    • 今川真史/Masashi Imagawa
      Framestore/コンポジター

      京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。大学1年次に受けた授業をきっかけに、ほぼ独学で3DCGを学ぶ。自主制作作品『THE SEABED』でKLab Creative Fes'17動画部門グランプリ受賞。MPC モントリオールを経て、現在はFramestoreに在籍
      www.artstation.com/masashivfx321



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