>   >  痴山紘史の日本CG見聞録:第15回:クラウド環境構築[社内レンダーファームのクラウド化]
第15回:クラウド環境構築[社内レンダーファームのクラウド化]

第15回:クラウド環境構築[社内レンダーファームのクラウド化]

みなさんこんにちは。今年もSIGGRAPHがロサンゼルスで開催されました。私は仕事に追われてほとんど話題を追えていないのですが、今年はUSD周りでホットな話題が多かったようです。各種アプリケーションがUSD対応を進めてくれれば、CG制作のながれが大きく変わる可能性が出てくるので、今後のUSD周りはとても面白くなりそうです。

TEXT_痴山紘史 / Hiroshi Chiyama(日本CGサービス
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)

ネットワーク環境の調整

ユーザーが使用する際にも管理者が管理をする際にも、クラウドレンダリングのための専用ツールと環境を用意して使うのは敷居が高いです。社内環境でもクラウド環境でも、同じような手順で構築でき、同じツールを使用して計算できるのが理想的です。その理想を実現できるよう、今回から数回に分けて、どちらの環境でも同じような運用ができるように整備を進めていきます。

前回、最初の一歩として基本的な社内ネットワークを構築しました。これは下図の通りの構成でした。


これを元に、HTCondorの設定を行なっていきます。

実は前回作成した構成でHTCondorを動かすのには大きな問題があります。そして、クラウド上で動かす場合でも同様な問題があるため、これに対応しておく必要があります。

何が問題なのか、そしてクラウド上でHTCondorを動かす場合にどこで困るのかを知るためには、一度HTCondorのしくみを確認しなおす必要があります。問題点と対応方法については、Condor Week 2009のプレゼンテーション、 "The Condor Connection Broker" が参考になります。

HTCondorはサブミットマシンと計算ノード間で直接通信をして、ジョブの実行やファイルの転送を行います。そのため、両者が通信できない環境ではジョブの実行ができません。

※ "The Condor Connection Broker" より引用


下図の点線がファイヤウォールです。計算ノードがファイヤウォール内に存在するため、[計算ノード]→[サブミットマシン]の通信はできるものの、逆の通信はできなくなっています。

※ "The Condor Connection Broker" より引用


前回作成したネットワークも同様で、サブミットマシンと計算サーバ間の通信ができなくなっています。

この問題に対応する最も簡単な方法は、両方のネットワーク間にルータを置き、双方向に通信できるようにすることです。計算サーバがクラウドにある場合、社内ネットワークとクラウド上のネットワークでVPNを張ることになります。

ただ、本連載ではもう少し社内環境とクラウド環境を切り離した感じで運用したいので、双方向の通信を行わず、計算サーバ側はファイヤウォールの向こう側にあるような環境にします。こうすれば、計算サーバをクラウド側に置いても似たような環境が再現できるはずです。HTCondorには異なるネットワーク間にある計算サーバを使用するための方法がいくつかあり、どの方法をとるのがベストなのかは私もまだ完全に把握できていません。公式ドキュメントなどを参考にしながら手探りで進める必要があります。ひとまずは社内にあるマネージャが管理するpoolに全ての計算サーバを登録する方法で進めていきます。

今回は 前述の "The Condor Connection Broker" で紹介されている、Condor Connection Broker(CCB)を使用してこの問題に対応することにします。具体的には、下図を参考に環境をつくっていきます。

※ "The Condor Connection Broker" より引用


方針が決まったので、ネットワーク構成を見なおします。これまではセントラルマネージャが両者のネットワークに接続しているだけで、2つのネットワーク間での通信は一切できなくなっていました。

ここを見なおし、ネットワークの間にルータを挟んでセントラルマネージャをサブミットマシンのあるネットワークに配置します。また、ルータの設定を行なって、計算サーバからセントラルマネージャのあるネットワークへのアクセスはできるものの、逆方向のアクセスはできないようにしておきます。このあたりの設定はよくあるネットワーク構築のお話なので、紙面の関係で省略します。すみません。


こうすることで、クラウド上に計算サーバを置いたのと似たような状態をつくることができます。

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CCBを使用した環境構築

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