多くの院生が情報・通信系企業に就職する中、一部はゲーム業界へ
学術論文は年間3〜4本程度が採択されており、学会発表は学生数に応じて実施しています。国際会議での発表は5〜6件程度で、CGI(Computer Graphics International)、CASA(Computer Animation and Social Agents)、NICOGRAPH International、IWAIT(International Workshop on Advanced Image Technology)などに投稿しています。国内会議での発表はNICOGRAPH、日本情報考古学会、芸術科学会 東北支部研究会などを含めて20件程度です。修士課程は、修了までに国際会議1回、国内会議1回以上の発表をするよう指導しています。博士課程は、年間の国際会議や国内会議のスケジュールと、本研究室推奨の会議を年度の最初に説明して、各自で目標を定めて発表します。
企業で働いていた頃はあまり論文作成ができませんでしたが、大学に移動してからは学生と一緒に積極的に研究を行い、NICOGRAPHや日本情報考古学会などで15件の論文賞を受賞しました。受賞すると学生の研究活動への意欲が高まりますし、指導教員はそれまでの指導が報われるので、非常に嬉しいことです。
卒業(修了)後は、多くの大学院生が学校推薦などによって情報・通信系の一般企業へ就職していますが、一部の大学院生はゲーム業界へ就職しています。また多くの博士課程の学生が、母国の大学や日本の大学へ教員として就職しています。現在、本研究室では11名の修了生が博士の学位を授与されています。
バーチャルカンパニーで土器パズルなどの製品開発も実践
理工学部には、学内にバーチャルカンパニーをつくり、学生と一緒に起業体験する「ものづくりEF(エンジアリングファクトリー)」というプロジェクトがあります。2009年に準備委員会がつくられたときから、私は本プロジェクトに関わっています。バーチャルカンパニーは学内カンパニーと呼ばれ、将来起業家を目指す学生や、大学で学んでいることが製品開発にどう役立つのかを知りたい学生が参加しています。
私は学内カンパニーの公募に学生と共に応募して、2010年からMMM(エムキューブ)というバーチャルカンパニーを起ち上げ、考古遺物を3Dプリンタで出力して製品化する事業を行なっています。情報系の学生に加え、本学で美術を専攻している学生にも手伝ってもらい、3Dプリンタの出力物に色を付けた土器パズルなどを制作しています。最初は修士課程の学生が中心になって活動していましたが、ここ数年は学部1年生も入社するようになり、MMMの年齢層は広がってきています。MMMは様々な分野の学生が集まる融合プロジェクトとなっているため、学生のコミュニケーション能力向上や視野拡大におおいに役立っています。
▲実物の土器(右)を模倣し、MMMが開発した土器パズル(左)。本作はMaker Fair Tokyo 2017にて「チームいわて」のブースに出展されました
▲陸前高田市森の前地区にある「五本松の巨石」と呼ばれる史跡の模型。ここは地区の人々の拠り所となっていたため、かさ上げ工事で埋め立てられる前に記録として残したいという要望を受け、MMMが本研究室の技術を使い制作しました