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No.001:東京工科大学 メディア学部 三上研究室

No.001:東京工科大学 メディア学部 三上研究室

本連載では、アカデミックの世界に属してCG・映像関連の研究に携わる人々の姿をインダストリーの世界に属する人々に紹介していく。第1回では、東京工科大学の三上浩司教授に自身の研究室について語っていただいた。

※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol. 240(2018年8月号)掲載の「ACADEMIC meets INDUSTRY 東京工科大学 メディア学部 三上研究室」を再編集したものです。

TEXT_三上浩司 / Koji Mikami(東京工科大学)
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
取材協力_芸術科学会

複数教員によるフラットな研究連携

こんにちは。東京工科大学 メディア学部の三上浩司と申します。読者の皆様の中には「アカデミックの世界に縁がない」という方もいらっしゃると思います。今回は連載第1回目ですから、私の研究室の紹介をしつつ、アカデミック世界の日常についてもお話します。

  • 三上浩司
    東京工科大学 メディア学部 メディア学科 教授
    博士(政策・メディア)
    専門分野:プロデュース、デジタルコンテンツ制作技術、映画/アニメ/CGアニメーション/ゲーム制作技術、制作管理技術
    mkmlab.net

国公立大学の場合、教授の名を冠した研究室があり、そこに准教授や講師、助教(昔は助教授、講師、助手と呼ばれていました)などが所属するのが一般的です。私立大学の場合は、各教員が自身の研究室を運営するスタイルが多いです。しかし、設立当初のメディア学部は研究室という概念をもっておらず、複数の教員でプロジェクトを形成し、そのプロジェクトに学生が参加するというスタイルをとっていました。各教員が自身の研究室をもち、独自の研究テーマを掲げて研究するようになった現在でも、昔からいる教員の多くは研究室をまたいだフラットな研究連携を進めています。そのため、様々な視点から多様な分野の研究に取り組める点が、メディア学部の特徴と言えます。

コンテンツ制作を学問へと高める

私は慶應義塾大学 環境情報学部を卒業後、総合商社のメディア事業部門に就職し、スーパーファミコンとセガサターンの通信対戦サービスや、3Dメタバース(仮想空間)の起ち上げに従事しました。その後、自らサービスやコンテンツ自体をつくることに興味をもち、独立して新規事業を起ち上げようと試みる中で、日本最初の商業CGスタジオであるJCGLを起ち上げた故・金子 満先生と出会い、エムケイという金子先生の会社でプロデューサーとして働くようになりました。

そして金子先生が東京工科大学 メディア学部の設立に携わるにあたり、実際にコンテンツも制作できるプロダクション能力をもつ研究所をプロデュースする役割を任され、本大学で勤務することになりました。「コンテンツ制作を学問へと高めるためには、実証制作と研究が重要」と金子先生が語っていたことを今でも鮮明に覚えています。当初は研究所を運営しながら、メディア学部の学生の教育や、研究指導をしていました。その傍ら、社会人大学院生として慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の修士課程と博士課程に通い、2008年に博士号を取得しました。それよりひと足早く、2007年から大学の専任講師になりましたが、実質的には金子先生のプロジェクトを一緒に運営してきたので、私の研究室の歴史は2002年頃からスタートしたと言えるでしょう。

問題の本質を理解し、解決方法を探す

金子先生はTVアニメ制作にCGを導入した先駆者であり、JCGLの創設者でもあったことから、私の研究室でも3DCGを活用したアニメ制作手法の高度化、特にモーションキャプチャを用いたモーション生成技術や、トゥーンレンダリングに関わる研究を進めてきました。2004年頃からは、他大学に先んじて4年制のゲームのカリキュラムを起ち上げ、ゲームにおけるアニメ的表現の実現や、ゲームデザイン、レベルデザインに関わる研究なども進めています。

原則として、研究テーマは学生自らが提案、設定することにしています。そのためには、興味をもったテーマの先行研究や技術背景をきちんと理解し、研究意義を見出さなければなりません。それに必要な論文調査の方法などを指導しつつ、自ら問題の本質を理解し、解決方法を探せるようになることを目指し、指導をしています。

プロフェッショナルと同じツールや環境を用意

▲【左】モーションキャプチャスタジオ。学部生の段階からプロフェッショナルと同じツールや環境を用いた制作経験を積むことで、制作技術や研究内容の高度化を目指しています/【右】三上研究室の学生集合写真


▲【左】三上研究室、近藤研究室、渡辺研究室による、卒業研究の中間発表会。複数教員が連携し、合同のポスター発表会を実施しています/【右】オープンキャンパスの様子

産学連携による制作も実施

東京工科大学は日本で初めて「メディア学部」という名の学部を設立した大学で、教育面では、実践的な教育を意識したプロジェクトベースの演習を実施し、充実した制作環境の下、意欲ある学生が自発的に制作活動できる体制を整えています。研究面では、先端メディア科目(早い時期から研究を開始できる成績優秀者対象の早期ゼミ)と、先に紹介した研究室のしくみをもち、多様で柔軟な研究を進められる環境を用意しています。

東京都の西部、八王子に位置するため、そのキャンパスは広大で、スタジオ施設が充実しており、ロケ現場としても適していることから、産学連携による制作なども多く実施しています。例えばサンライズと共同で、手描きアニメーションとトゥーンレンダリング、さらにモーションキャプチャを比較する実証実験を行いました[1]。その後、この技法はモーションキャプチャとトゥーンレンダリングを用いた映画『APPLESEED』(2004)のパイロット制作などに活かされました。また、タツノコプロと共に3DCGの制作手法を検討し、『Sky Kids BOOBY』を実証制作しました。この作品は2004年の東京国際アニメフェア(現、AnimeJapan)でアニメアワードの一般部門優秀賞を受賞しました。モーションキャプチャに関しても様々な共同研究を行なっており、映画『CASSHERN』(2004)をはじめとする映像作品やゲームタイトルでモーションキャプチャを用いたモーション生成手法を追求してきました。

[1]金子満,三上浩司,岡本直樹,おおすみ正秋,井口光隆,吉井孝幸,野崎絹代"3DCG手法を利用するセルタッチアニメ映像と従来型手法の比較制作",芸術科学会,第16回NICOGRAPH論文コンテスト論文集,pp.135-142,2000

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