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No.001:東京工科大学 メディア学部 三上研究室

No.001:東京工科大学 メディア学部 三上研究室

毎月1名は卒業生が本誌に登場

こうした私の経歴と研究室の成り立ちゆえ、アニメ、ゲーム、CG、映像の各業界に、共同研究や共同制作をご一緒した方々が多くいます。また、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、画像情報教育振興協会(CG-ARTS)、日本動画協会日本映画テレビ技術協会といった業界団体の委員会などに、学術的な見地から参画してきました。これらの役割を通じて、制作の最先端、あるいは将来において求められる能力を議論する機会も多くありました。その甲斐もあって、私のプロジェクトや研究室出身の学生の多くが、アニメ、ゲーム、CG、映像の各業界で活躍しています。著名な卒業生としては『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)の3D監督の柳野 啓一郎氏、『君の名は。』(2016)の3DCGチーフの竹内良貴氏、『どこでもいっしょ』シリーズのプロデューサーの伴 哲氏、『かぐや姫の物語』(2013)の制作デスクの吉川俊夫氏などが挙げられます。ほかにも、毎月1名は卒業生が本誌に登場しています。

現在の研究室には大学院の博士課程(Doctor)に2名(3年生が1名、2年生が1名)、修士課程(Master)に7名(2年生が5名、1年生が2名)、研究生1名が在籍しています。これら10名のうち6名が外国人(ベネズエラ、タイ、中国、イタリア)という状態です。学部生(Bachelor)は現在4年生が18名で、後期には3年生が15名程度増えます。ですので、だいたい40~45名の学生の研究の責任をもつという状況になっています。これに加え、研究テーマが近い先生とは大学院生の指導を一緒に行うので、さらに20名程度の大学院生を指導しています。学部生はテーマの近い学生のサポートをするので、さらに10名くらいを指導しています。これだけの人数がいるので、テーマは各自が設定し、それを自発的に深めていくというスタイルが必要になります。また私以外にも、指導のサポートをする3〜4名の研究者にパートタイムでご参加いただく体制をとっています。

積極的に学会発表を行い、学会誌や国際会議での採択を目指す

学会論文や発表と言っても実は様々で、最も格式高く評価されるのは査読のある学会誌論文(Journal論文)、それも著名な国際学会のものです。査読とは専門家によるレビューであり、一定水準を満たさない限り採択されません。新規性や信頼性、有用性が十分かどうかなどが問われ、不十分な場合は不採択になったり、採択に必要な条件が示されます。CG分野では国際学会ならACMIEEE、国内なら情報処理学会などが高く評価されます。次にSIGGRAPHなどの査読のある国際会議や、国内学会の年次大会が評価されます。なお、「国際会議」というのは国際学会が開催する大会のことです。査読のない同様の学会誌や会議、大会、研究会などはその下の位置づけになります。また論文の形式も様々で、学会や会議により多少差異はありますが、最も評価されるフルペーパー(6〜12ページ程度)以外にも、ショートペーパー(2〜4ページ程度)、ポスター(1〜2ページ程度)などがあります。これに加え、技術展示や作品展示もフルペーパーと同等の評価とする学会もあれば、ポスターと同等に扱う学会もあります。学生の場合はポスターなどから始めて、様々な意見を受けつつ研究を発展させ、国際会議での発表や学会誌論文へと昇華させていきます。

私が指導責任者をしている学生に関しては、年間2件程度の学会誌論文、5〜6件の国際会議論文が採択されています。国内の年次大会では、年間20件程度の発表をしています。責任者ではなく、ほかの教員と一緒に指導している学生を加えると、この倍程度の発表件数になります。大学院生は自身の研究を学会で発表することが義務付けられています。学部の学生の場合は、成果の上がった学生のみが発表します。いずれの場合も、学会発表に値する水準の成果が出たと判断した学生に対してのみ、学会での発表を許可しています。

現在、私の研究室が積極的に投稿、参加しているのは、国際学会だとSIGGRAPHSIGGRAPH Asia、国内学会だと私が会長を務めている芸術科学会や、理事を務めている日本デジタルゲーム学会、さらには情報処理学会のCGVI研究会とDCC研究会、EC研究会、映像情報メディア学会日本図学会日本VR学会などです。これらの活動の結果、芸術科学会の論文コンテストであるNICOGRAPHにおいて、最優秀論文賞や審査員特別賞などを受賞しています。私個人としては、ゲームやアニメ、CGの教育カリキュラムなどで、情報処理学会の優秀教育賞や、関東工学教育協会の業績賞などを受賞しています。また、実証制作や学生作品では、前述の東京国際アニメフェアの優秀賞のほか、福岡ゲームコンテストにおいても優秀賞や福岡市長賞を受賞しています。

東京ゲームショウやAnimeJapanなどで研究成果を展示

▲東京ゲームショウやAnimeJapanでの出展の様子。私の研究室では、学会のみならず様々なイベントでも制作物や研究成果を展示しています


▲Global Game Jamは、毎年1月に開催されるギネス記録をもつ世界最大のゲーム開発ハッカソンです。東京工科大学はその会場のひとつとなっており、学生たちはプロの開発者と一緒にゲームを開発します

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手描きアニメ的な表現のCGやゲームへの応用

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