今号が書店に出る頃はひな祭りの時期ですね。ということで、今回の和クリエイティブは「打掛(うちかけ)」を制作してみました。毎月なにかしらのイベントがある日本って、とても素敵な国ですね!
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 260(2020年04月号)からの転載となります。
TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(画龍)
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
Method 1:MIXする
私も歳をとったのか、若い頃に憧れていた方々が相次いで他界されています。人生も様々です。最後までデザイナーとして生涯現役を貫く方々は本当に尊敬します。私もかくありたいものです。さて、「何かをMIXする」「ひとつでふたつ以上の価値を見出す」という考え方は、スペシャリストとは対極にあるゼラリストらしい考え方でもあります。かくいう私も、若い頃は3DCGだけではとても太刀打ちできなかったので、3DCGと絵画をMIXすることでテクスチャイリュージョンを始めました。当時はモデリング全盛期で、テクスチャを描く人がほとんどおらず、そういった背景もあって表現に対してもひとつではなくふたつ、みっつと付け足して深みを出していくことにしています。最近の基本的な標準機能に関しては、本当に素晴らしいですね。YouTubeやSNSでもたくさん紹介されていますが、いわゆる応用的なつくり方は、実践をこなさなければなかなか出てこないものです。
Method 2:モデリング
▲最近、ReallusionのCharacter Creatorにしたので、今回はガイドモデルに使用してみました。昨今ではこのくらいのこと、普通にできてしまうんで すね(笑)。
▲3ds MaxにFBX形式でもってきてもボーンがひと通り付いてくるので、簡単なポーズであれば修正可能です。とても便利。
▲布といえば、ずっと3ds MaxのClothを使用していたのですが、Marvelous Designerを知ってしまうともう戻れませんね。
▲インターネットで検索すると、着物の型紙がたくさんヒット。本当に便利な時代です。ついでに着物のつくり方までたくさん出てきました。
▲基本的にはUVが貼られた状態になるのですが、サイズ感がいまいち合っていないので、3ds Maxで修正しました。
Method 3:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成
1:ライティングとレイアウト
▲着物のデータを読み込んだところで、ライティングを先に決めてしまいましょう。真っ白の空間にしたかったのですが......。
▲ちょっと朝日っぽい影が出るのも雰囲気があって良いので、このライティングに決定。
2:模様にひと味
▲シワの感じが素敵なのでテクスチャをそのまま貼っても良さそうですが、若干地味なので少し変更を加えます。
▲3ds Maxでテクスチャの色構成をリアルタイムに変更してみます。まずはモノトーンに変更。
▲色を付けると様々なカラーリングがリアルタイムで確認できるので、ちょっと面白いです。
3:コンポジット
▲テクスチャだと表面がどうしてもツルツルに。バンプだとゴワゴワとした感じになるので、全てパーティクルで表現することにしました。
▲部分ごとに色のちがうパーティクルを設定して、砂でできた着物のようにしました。
▲レンダリングしたままの画像をAfter Effectsにもってきました。少し暗い上に雰囲気が出ていません。
▲少し明るくするだけで、画が立って見映えが良くなりますね。
次ページ:
Road to Generalist ゼネラリストになりたい! 11
Road to Generalist ゼネラリストになりたい! 11
3DCGの情報と楽しさを正しく伝えたい!
インターネットでは多くの偏った情報が横行しています。そんな時代だからこそ、私が自ら足を運ぶことで正確な情報を伝えようと思います。今回は日本大学藝術学部を訪問。筆者の母校でもあります。
Theme 日本大学藝術学部訪問
『画龍点睛』の講演
▲今回の講演は、これから進路を決める2年生が対象でした。選択科目に3DCGもぜひ加えてほしいです(笑)。さて、実際の3DCGの現場ではどのような仕事をしているのか。働く環境は? など、様々な作品のメイキングと一緒に紹介させていただきました。母校での初めての講演ということもあり緊張して早口になってしまいましたが、ノリも良く元気な学生の皆さんを見て、自分の大学時代を思い出しました。ちなみに、筆者の恩師はご存命とのことで嬉しい限りです。
日本大学藝術学部の魅力
▲江古田校舎は古くからありますが、校舎自体は全面リニューアルをして筆者が学んだ面影はまったくありませんでした。少し寂しさを感じつつも、新しい教室で学べるのは羨ましい! 現在は1年生から4年生まで、一貫してこちらのキャンパスで学生生活を送るそうです。
▲昔からシンボルとして存在していた巨大なニケ像。今は場所を変えて展示されていました。
▲展示用のスペースがあり、藝術学部らしい配慮がされています。
▲周辺にも新校舎が建ち、随所に新しさを感じる新キャンパス。そして、OBなのにまったく取材させてもらえない強固なセキュリティ(笑)。
[対談] 笠井則幸教授×早野海兵これからの学生のために
早野海兵(以下、早野):日本大学藝術学部(以下、日藝)の特徴と教育方針を教えてください。
笠井則幸教授(以下、笠井):「総合大学の中にある芸術学部」という点が、ほかの美術大学との大きなちがいです。しかし、学生を含めて教職員は「日大」ではなく「日藝」と呼んでおり、良い意味でほかの学部とはちがったブランドをつくり上げたいと考えているところが非常に特徴的です。デザイン学科は「コミュニケーション」「メディア」「インタラクション」「プロダクト」「インダストリアル」「スペース」「建築」の7つの分野のデザインを2年生から自由に選択できるよう、数年前に制度が変わりました。現在はデザインの幅が広がり、分野でデザインを語ることが難しくなっているからです。また、1学年あたりの生徒数が100名と少人数で、ひとりひとりの将来像に合わせたカリキュラムを組み、専任教員が必ず1年生の授業を受けもつことで相談しやすい環境を実現しています。
早野:日藝での3DCGとの関わりや制作環境はいかがですか?
笠井:グラフィック系では、3年生から3DCGの授業がはじまります。1年生は「手で描くこと」が中心で、2年生から映像制作やPC基礎、Web演習、フォトグラフィの授業といった3DCGにつながる演習が始まります。そして3年生から3DCGやアニメーション、映像、Web、インタラクションといった演習が始まります。プロダクト系の学生は、モデリングをするために2年生の頃からFusionを使用してレンダリングし、3Dスキャナで起こして制作するといった演習を行います。グラフィック系の3DCGによる卒業制作をする学生は少ないですが、意識は高くRPGゲームの制作や3DCGで車や街をデザインしてVR制作に挑む学生もいます。
早野:卒業後の生徒たちは、どういった道に進んでいますか?
笠井:多くの学生は専門職として就職しています。広告代理店やプロダクション、Web系制作会社、エディトリアルデザイン事務所、インハウスデザイナーや建築事務所などが多いですね。最近は、インハウスデザイナーの求人が多いようです。プロダクトデザイナーは以前から求人がありましたが、特にグラフィックや3DCG、映像ができるデザイナー、そしてUI&UXデザイナーなどの求人も増えてきました。日藝デザイン学科は100年の歴史があり、デザイン業界に多くのOBやOGを輩出しています。ただ、このようにデザイン業界での選択肢が多く、就職活動前にどの職種や会社が自分に合うのかわからず戸惑っている様子が見受けられます。今後はますます、われわれ教員が学生の適性を判断して将来像が描けるよう、導いていくことが必要だと感じています。
[Information]
-
日本大学藝術学部
〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
デザイン学科事務室:03-5995-8690
www.art.nihon-u.ac.jp
-
3ds Max CG講座『WORKMAX』
2020年5月開講! 就職、転職、副業、フリーランス、テレワーク。実戦的テクニックに特化した最強のカリキュラム。
online.dhw.co.jp/course/3dcg
[プロフィール]
早野海兵
日本大学芸術学部卒業後、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)リンクス、(株)ソニー・コンピューターエンタテインメントを経て、フリーランスで活動。2007年(株)画龍を設立。
www.ga-ryu.co.jp
www.kaihei.net
Twitter:@Kai_ryu_Kai