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Story 15:タイヤのはなし

Story 15:タイヤのはなし

TVアニメ、実写映画、ゲームなどを幅広く手がける株式会社コロビト代表・大島夏雄氏によるCG雑学コラム。今回は自動車モデリングのリアリティを支える、タイヤの種類や構造のおはなしです。

TEXT&ILLUSTRATION_大島夏雄 / Natsuo Oshima(コロビト
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

タイヤのサイズ表記から正確なガイドモデルをつくる

こんにちは、コロビトの大島夏雄です。第15回となる今回は「タイヤのはなし」ということで、自動車のタイヤのはなし(ちょっとだけホイールのはなしも)をしていきたいと思います。

皆さんも1度くらいは自動車をモデリングしたことがあるかと思います。弊社の求人に応募していただいた方のポートフォリオにも自動車のモデルはよく見かけます。

そのときタイヤはどのようにモデリングされていますか? ドーナツ型のメッシュから変形させて作るのか、平面に溝をモデリングしてからベンドで曲げて作るのか、進め方は人それぞれだと思います。後ほど、筆者がいつもタイヤを作るときの作業の流れを簡単に紹介します。

タイヤのサイズ

モデリングを始めるにあたりまずはタイヤのサイズを知りたいですよね。カタログなどを見ると、

215/45R17
195/65R15

などと書かれています。この後に100Wなど数字やアルファベットが続きますが、これはタイヤが支えることのできる重量や対応する速度のことですので今回は割愛します。

ここでは、「195/65R15」を例にして解説してみます。この数字とアルファベットはどういう意味なのでしょうか。

①断面幅:最初に書かれている「195」はタイヤの断面幅です。断面幅というのはタイヤの横面(サイドウォール)にあるマークや文字、模様などを除いたタイヤの幅です。マークなどを含めた幅は「タイヤ総幅」といいます。
②扁平率:「65」は扁平率です。これはタイヤ幅に対して何%の高さがあるのかということを表す数値です。「195/65R15」の場合、195X0.65=126.75となりますので、サイドウォールの高さは126.75mmとなります。
③タイヤ構造:Rはタイヤ構造の種類で、この場合ラジアルタイヤのことです。これはあまりモデリングには関係ないですが、興味のある方は調べてみてください。他にはバイアス構造があります。
④リム径:装着されるホイールの外径でインチで書かれています。タイヤ断面幅はmmでリム径はインチで表記されています。わかりにくいですよね。

これでタイヤのサイズがわかりましたので、ガイドとなるモデルを作ってみましょう。

195/65R15のリム径は15インチ、381mmです。ということはタイヤの外径は381+126.75X2=634.5mmとなります。直径634.5mm、厚み195mmの円柱を作り底面を126.75mmベベルすれば完成です。同じように、215/45R17のガイドモデルも作ってみました。同じ乗用車用のタイヤでも印象がずいぶんちがいますよね。

モデリングするときは、どんなときでもまず、寸法がきっちり取れたガイドモデルを作りましょう。ガイドモデルに合わせてモデリングを進めていくと作りやすいと思います。

トレッドパターン

タイヤの顔というと、路面との接触する部分であるトレッド部といわれる部分です。ここに入っている模様を「トレッドパターン」といいます。トレッドパターンがあることにより、タイヤの駆動力や制動力の増加、雨天走行時のタイヤと路面の間の排水などの効果があります。

一方で、路面が綺麗な舗装道路で雨が降っていないという環境に限れば、溝がない方が路面との接地面積が大きくなりグリップ力が上がるそうです。モーターレースで路面が濡れていないときに使用するタイヤには溝がなくツルツルのものもありますよね。

①リブタイプ:縦方向に溝がついています。舗装された綺麗な路面に向いています。
②ラグタイプ:横方向に溝がついています。舗装されていない荒れた路面の走行に向いています。
③リブラグタイプ:①と②を合体させたタイプです。
④ブロックタイプ:雪や泥の道に向いています。スタッドレスタイヤやスノータイヤもこのタイプです。

この4種類を基本として、様々なトレッドパターンが存在します。自分がモデリングしている自動車の用途や使用カットを理解してどのようなトレッドパターンにするのか検討してみてください。

タイヤのモデリング

タイヤのサイズとトレッドパターンが決まれば、いよいよここからモデリングを進めていきましょう。

トレッド部分のモデリングから進めます。まず板を制作し付けたいトレッドパターンに合わせてメッシュを切ります。タイヤの断面の形状を意識してトレッド部とショルダー部まで制作します。サイドウォール部分はまだ作りません。

トレッドパターンを押し出して形状を確認してみてください。でも、ここではまだ溝はつくりません。確認したらアンドゥしてください。

ガイドモデルと合うようにベンドでぐるっと丸めます。

今回のトレッドパターンはループしているので、1パターン分だけ切り取ります。

溝以外のメッシュを押し出して溝を作ります。溝は直角ではなく、テーパーがかかっていますので注意してください。②の段階でメッシュを押し出すと、ベンドしたときにベンド方向に対し水平と垂直方向ではテーパーのかかり方が変わってしまいますので、丸くした状態で押し出した方が良いかと思います。

ショルダー部分で溝はなくなりますので、ブーリアンで不要な部分をカットします。

頂点を整理して複製していきます。

エッジを押し出し、サイドウォール部分をモデリング。これでとりあえずは完成とします。サイドウォールのマークなどのディテールは、必要に応じて追加してください。

今回はシンプルなトレッドパターンですが、実際のタイヤはすごく複雑です。騒音を軽減するために、溝が少しずつズラしているものもあります。タイヤに限らず、モデリングするときは常に断面を意識してモデリングするようにしましょう。

インチアップ

インチアップとは、タイヤの外径があまり変わらないようにリム径を大きくすることです。最初に紹介した215/45R17と195/65R15は同じ車のタイヤです。この場合、外径はそれぞれ625.3mm、634.5mmですので、15インチタイヤの方が外径は1cm大きくリム径は5cm小さくなります。

インチアップすると見た目の印象も大きく変わりますが、他にはどのようなメリット、またデメリットがあるのでしょうか? 調べてみたところ、インチアップすると運動性能やグリップ性能などが高くなるそうです。デメリットとしては音が大きくなる、燃費が下がる、乗り心地が悪くなるなどが挙げられていました。モデリングする自動車の所有者の性格や職業によって変えると面白いですよね。

ホイールのサイズ

ホイールに関しても少しだけ紹介します。ホイールのサイズ表記もタイヤとよく似ており、下記のように表記されています。

15X6 1/2 J 5 114.3 50

では、これはそれぞれ何を意味しているんでしょうか?

①リム径:15はリム径です。単位はインチです。
②リム幅:6 1/2はリム幅で、タイヤがはまるところの幅です。6.5インチということですね。こちらの単位もインチ表記です。
③フランジ:Jはフランジの形状で、フランジとはタイヤに被さる部分でこの形状がJとかJJとかあります。
④ボルト穴の数:5はボルト穴の数です。4,5が一般的でたまに6があります。
⑤P.C.D:114.3はP.C.Dといいボルト穴の中心を結んだ円の直径です。単位はmm。
⑥インセット:最後の50というのはインセットの数値です。これはホイールの中心線から、ホイールとディスクを固定する面がどのくらいずれているかを表記しています。内側に入っているのをアウトセット、ちょうど同じときはゼロセット、外側にくるときはインセットとそれぞれいいます。

クルマ好きの人にはタイヤとボディを段差がない状態、"ツライチ"にセッティングするのがかっこいいとされているそうです。確かにタイヤがボディの内側に入りすぎているのはちょっと貧弱にみえますよね。逆にボディからタイヤが外側に出っ張っているのは違法です(10mmまでOK)。

ホイールアライメント

ホイールアライメントとはトー角、キャンバー角など車体に対してどのような角度でホイールを車体に取り付けるかということです。

「タイヤのはなし」はいかがでしたでしょうか。自動車が好きな方にはすでにご存知なことが多かったかもしれませんが、今までタイヤなんてそれほど注意してモデリングしていなかったな、という方は参考にしてみてください。

次回は「結び方のはなし」として、ロープのいろいろな結び方についておはなしできればと思っております。キャラクターモデラーは靴紐やリボンをモデリングする機会が何度もあるかと思います。背景モデラーの場合は、丸太とロープで足場や橋を組んでみたり、テントやタープを固定してみたり、船を係留してみたりなどこちらもいろいろな結び目をモデリングすることがあります。

帆船とかロープだらけでヤバイですよね。この機会にいろいろな結び方を覚えて実践してみてほしいと思います。それでは、次回もよろしくお願いします。ありがとうございました。

参考文献

書籍
「Motor Fan illustrated Vol.106 タイヤの解剖」(三栄)
「自動車の限界コーナリングと制御」(野崎博路 著、東京電機大学出版局)
「自動車用タイヤの基礎と実際」(株式会社ブリヂストン 編、東京電機大学出版局)

Profile.

大島夏雄/Natsuo Oshima(コロビト)
株式会社コロビト 代表取締役、リードモデラー
奈良県出身。多摩美術大学(絵画学科 油画専攻)を卒業後、数社のCG制作会社に所属しモデリングチーフを務める。その後、フリーとなり2009年7月2日に株式会社コロビトを設立。ゲーム、映画、アニメ、CMなど様々なジャンルの仕事を手がける
colobito.com


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