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    6月といえば梅雨。そして、思い浮かべる花といえば紫陽花でしょう。6月は水無月(みなづき)とも呼ばれ、紫陽花は水ととても相性の良いモチーフです。花の部分は小さくしとやかで、萼(がく)が可憐に装飾して魅せる。なんとも演出的な植物ですね。

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 263(2020年07月号)からの転載となります。


    TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(画龍)
    EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

    Method 1:梅雨の季節

    6月の梅雨を思いながら、外出自粛により自宅でこの原稿を制作しています。雨が全てを流してくれたら良いですね。ひとりひとりの努力が多くの人命を救うことになることを祈っています。学生の頃は、とがったものや気持ちの悪いものを描いて目立とうとしていたこともありますが、この職に憧れた当初から「エンターテインメントに従事する者は人を幸せにするもの」と自分を律してきました。世の中が不安にあふれている今、少しでも華やかで和やかに、そして心休まる気持ちになってもらえたら嬉しいです。安直ですが、花には人を癒すモチーフ力がありますよね。そう、モチーフ選びはとても重要なんです。水面に広がる波紋をじっと見ていると気持ちが落ち着きます。また、水面や水中にユラユラと漂う花びらは何とも言えない情緒があります。今回は「6月」「梅雨」「紫陽花」「水無月」「水面」、これらをテーマに安らぐ画づくりを心がけました。


    Method 2:花には


    ▲紫陽花は小さな花の集合体のような構造なので、1つとなる花はなるべく最小の構成にしておきたい。


    ▲これを半球状に並べると紫陽花っぽくなるのですが、そう簡単にはいきません。


    ▲発生から衝突判定で他の花に当たらないよう設定して配置します。


    ▲上手く避けてくれていますが、避け方がおおざっぱなのでスカスカな印象に。


    ▲標準のパーティクルでも試してみた結果、ベースの天球体の変な特徴を発見。パーティクルの発生順が模様のようになっています。これは頂点番号がおかしいのでしょうか。


    ▲頂点番号が一度で修正できないので、いったんバラバラにしてから力技でくっつけました。

    Method 3:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成

    1:配置にひと工夫


    ▲花同士の重なりが上手くできるまで、何回でも挑戦します。この手のシミュレーションは本当に忍耐力が必要です。


    ▲バリエーションとして、ひと回り小さなタイプも作成。元のものをスケールで配置することも考えましたが、花が妙に小さくなってしまうのできちんとつくることにしました。


    ▲あまり見えませんが、下の葉っぱもきちんと作成。要素は多い方が良いですね。


    ▲底の方に、花を囲んで舞う花びらの群を作成。標準のパーティクルではこう上手くいかないか......。


    ▲花を活ける石の手水鉢のようなものを作成し、そこにこびりつく花びらも追加。形状に合わせてシミュレーションしました。


    ▲これらの要素を手水鉢の中に上手く配置していきます。


    ▲自然に考えると、これだけの花を水の中に落としたら自然と花びらが離れてしまうはず。


    ▲全体的に花びらを合成。

    2:明るくしてから締める


    ▲今回も8Kでレンダリングしました。花萼や葉脈まで繊細に見える8Kレンダリングは素晴らしいですね。


    ▲フレアなどの要素を追加して、全体的にフワッと明るい雰囲気にします。


    ▲一気に画像を締めて贅沢なビジュアルに。

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    Road to Generalist ゼネラリストになりたい! 14

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    Road to Generalist ゼネラリストになりたい! 14

    ゼネラリストはリモートワークも管理する

    非常事態宣言の延長により外出自粛の期間が長期化し、CGWORLDでのアンケートでもあるとおり、多くのCGプロダクションがリモートワークを強いられています。もともとフリーランスだった筆者は、今もなおハードからソフト、そして通信まで網羅するゼネラリスト(何でも屋)です。

    リモートワーク

    フリーで使えること

    調べてみると、相当な数のリモートデスクトップ用ソフトが世の中にはあふれています。特にここ近年で急に増えたようで、海外には知らないソフトもたくさんある様子。そんな中、お手軽に始められるフリーのリモートデスクトップソフトを試してみました。ちなみに筆者は、Windowsで3ds MaxAfter Effectsといったソフトを使用する3DCGに特化した環境です。

    マイクロソフト「リモートデスクトップ機能」

    ▲Windowsには標準でマイクロソフトのリモートデスクトップ機能がついています。説明文は淡泊ですが、ローカルで使用する分にはとても使い勝手が良いです(support.microsoft.com/ja-jp/help/4028379/windows-10-how-to-use-remote-desktop

    ▲リモートデスクトップにチェックを入れるだけで、LAN内のPCから接続可能に。ユーザー名とパスワードで、PCに最初からログインするように使用できます。ちなみに、リモートで使用している間はホストでの操作はできません。ホストにログインすると接続が終了

    「Parsec」

    ▲SNSで話題になっていた「Parsec」。遠距離でゲームを一緒にプレイするためのツールですが、そのためか通信速度が速く遅延がほとんどありません。ただ、あまりに重いデータだとブロックノイズで画面が荒れることがあります。「マウスだけ」「キーボードだけ」とお手軽に操作系を制限できるのも良いですね。ゲーム用なので「コントローラ」という項目も。After Effectsなどでのプレビュー再生も問題なくこなしてくれます(parsecgaming.com)。

    Google Chrome「リモートデスクトップ」

    ▲CGWORLDのアンケートでも多くの人が使用していたGoogle Chromeブラウザのリモートデスクトップ。Gmailのアカウントさえあれば、ChromeをインストールしたPC同士の接続が可能。デスクトップ版もありましたが、新しいバージョンはChrome内で使用できます。ブラウザのタブにそれぞれのPCを繋いでおけるので、複数のPCと繋ぐにはとても便利。会社での個人PCが複数台ある人は、クライアントが1台でも手間をかけずにログインできます。また、PCが再起動してもログイン画面から使用可。ただ、ほかのソフトより若干描画が遅延するので、事務処理向きでしょうか(remotedesktop.google.com/home)。

    NTT「シン・テレワークシステム」

    ▲NTTのシンクライアント型VPN「シン・テレワークシステム」。比較的新しく出てきたタイプで、Windowsリモートデスクトップをかなり簡単にしたものという印象。クライアントとホストのソフトを両PCにインストールしたら、メールアドレスとパスワードだけで繋ぐことができ速度も申し分なし。2020年10月30日(金)までの試用となっています(business.ntt-east.co.jp/service/thintelework-system)。

    NOTE

    どれも一長一短あるので、用途によって選ぶのが良さそうです。データ系でたくさんのPCを使用する場合はChrome、アニメーション作業が多い場合はParsecが使いやすかったです。画面を見られない場合にはシンクライアントが便利でした。設定に関して多少の知識があるなら、Windowsの標準デスクトップでも十分だと思います。有料のソフトは、速度や描画数、セキュリティなどそれぞれ特徴がちがうようでした。快適なリモートワーク環境を探す参考にしてみてください。



    [Information]

    • 株式会社画龍 早野海兵 監修
      3DCGベーシック講座[3ds Max]

      3ds Maxを本当にゼロからスタートする方のために作成したオンライン講座です。本講座は画づくりと技術アップの両面を重視しています。また、3ds Maxの様々な実践的な機能を動画で収録しているため、後々機能のリファレンスとしても使用可能です。ぜひ、この機会に3ds Maxを通してCGの世界に!
      online.dhw.co.jp/course/3dcg

    [プロフィール]
    早野海兵
    日本大学芸術学部卒業後、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)リンクス、(株)ソニー・コンピューターエンタテインメントを経て、フリーランスで活動。2007年(株)画龍を設立。
    www.ga-ryu.co.jp
    www.kaihei.net
    Twitter:@Kai_ryu_Kai