ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は笛を吹いて災害をもたらす神を造形します。
TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
アナトミーとメリハリを意識した造形
今回は神をモチーフに制作しました。ひとくちに神といっても多種多様ですが、西洋寄りのテイストにしています。筆者は金色が好きなので、造形を邪魔しないように金と白のバランスを強調してみました。設定としては、この災いの神が笛を吹くと、疫病、ハリケーン、津波などの災害が起こるというものです。
主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2020
・KeyShot 8
・Adobe Photoshop 2020
STEP 01:ラフモデルの作成
今回はある程度イメージが固まっているので、設定画は作らずモデルから制作していきます。左右対称のポーズからではなく、最終的にイメージしているポーズを基に制作していきます。コンセプトモデルの場合は後からポーズを付けるより、最初からポーズを意識して制作した方が躍動感が出て生き生きとした作品になると思います(もちろん作業する人やモチーフによって差はあります)。
【5】体に動きを出していきます。このときざっくりと筋肉や骨格の整理も行なっていきます
STEP 02:翼などのパーツを作成
翼などのパーツも、羽を丁寧につくるより動きや躍動感を重視して作成します。本体と合わせたときのシルエットが格好良くなるよう意識します。
【7】髪を追加して、笛の造形を整理しつつディテールを加えていきます
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STEP 03:アナトミーを意識したディテールアップ
STEP 03:アナトミーを意識したディテールアップ
各パーツや要素が揃ってきたところで、全体的に躍動感が出るようにアナトミーを意識してディテールを彫り込んでいきます。
【1】顔のパーツと全身を一体にして一度DynaMesh化します。その方が、ディテールを馴染ませつつ制作できるからです
【2】ディテールを入れていくときに、重要なのがメリハリです。時に全体的にこだわりすぎてディテールを入れすぎてしまうケースがありますが、せっかくのディテールもメリハリのバランスを無視して入れるとうるさい作品になってしまいますので、入れるところと抜くところを意識して進めると、作品として見やすくまとまりのあるものになります。今回は赤く塗った領域をより細かく彫るようにしています
【3】今回の作品はコンセプトモデル寄りですが、コンセプトだからといって適当につくれば良いということはなく、ある程度骨格やアナトミー(解剖学的構造)は意識する必要があります。アナトミーはとても奥が深く、より正確にアナトミーに沿ったモデルを制作するにはそれなりに時間もかかります。そのため、まずは最低限基本的な部分を押さえておくように意識します。頭と体は首を通して繋がっている、胸鎖乳突筋、肩の三角筋の下に入り込んでいくように付いている大胸筋、男らしい腕の象徴でもある腕橈骨筋など、見た目に重要な部分を押さえておくだけでも印象としてはとても大きく変わります。緑のラインは中心線をメインに表しており、このラインを意識することによって、非対称なモデルをつくるときにも全体のバランスを念頭に置くことができます
【10】これで造形は完成です
完成
KeyShotでレンダリングし、Photoshopで微調整して完成です。最初にイメージした金色と白のバランスを意識して仕上げます。
最近は北欧などの西洋のスタイルにも関心が高まりつつあるので、今回のような神秘性のある作品は非常に楽しく造形できました。今回の制作を機に、神々をモチーフとした造形を手がける機会を増やし、最終的にはラグナロクをテーマに魅力的な作品を作れたらと思います。
Profile.
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岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp