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vol.005:鯉群 / 「可視量」でディテールアップする

vol.005:鯉群 / 「可視量」でディテールアップする

画にプラス要素を。

画には法則があります。
それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。
そして願わくば貴方の人生に+画を。

今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Turorials』と連携してお届けします。



TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE


【+画 ONLINE】
vol.005:鯉群 / 「可視量」でディテールアップする
(CGWORLD Online Tutorials)の詳細・動画はこちら




Concept

均衡の法則

中国の正史『二十四史』の1つである『後漢書』に記された故事に、「黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みたが、鯉のみが登り切り龍になることができた」というものがある。これにちなんで「鯉の滝登り」が立身出世の象徴となりました。栄達するための難関を「登竜門」(※1)と呼ぶのもこの故事に基づくものです。

※1:「登竜門」(Wikipediaより)

映画などでよく使用されるタイトルの次にくる「序文」は、有名な文言の引用だったり神々の言葉だったりといったことが多く、読者および視聴者を物語に誘導するための技法の1つですね。画ではないので、「画創の法則」には入れていませんが、こういった当たり前に見ているものの中にも、昔から受け継がれている技法が存在します。

さて5月といえば、言わずもがな「端午の節句」の季節ですね。
これまでも5月のイベントに合わせた作品をつくってきました。日本は多様な季節があることから、「季節の節目」や「月の区切り」に様々な催しが行われます。これは、作品づくりにも共通することですが、一種のモチベーションの維持だと思っています。

日々の生活が変化のない単調なものではなく、ふと外に目を向けたら心を揺り動かされるものが世の中にはたくさんあります。変化をとらえ、それを乗り越え、また一歩先に進み、成長する。

画創りもそのくり返しです。



さて今回は、私の授業や講演では欠かさずお話する「量」について。

<画創の法則>
・均衡の法則


Visible quantity「可視量」

創造物にはバランスがあり、人間は無意識のうちにこのバランスを目でとらえています。「可視量」という言葉は少々聞き慣れないかもしれませんが、「可視」はCG用語でも頻繁に出てくる単語で「視る(みる)ことができるもの」という意味です。「量」はそのまま「量」なので、「視ることが可能な量」ということになります。

これは、「人間は大量の "判断できないもの" に特別な感情を感じる」という本能に従った法則です。具体的に説明していきましょう。

目で追えるものや数えれるものは理解ができますね。
パッと見で数えられるのはいくつくらいでしょうか?

1本、5本、10本......?
これらはただの「数」または「記号」のように、普通の認識になりますが......、

これならどうでしょう?
突如として画面いっぱいに大量のものが表示されると、脳の認識が追いつかずパニックになります。「すごい」とか「怖い」とか、そういった感情を刺激するのです。

これを画創では「可視量」と呼んでいます。「人が視ることができる限界を超える量」です。そして、ディテールをアップさせる技法の1つになります。過去の「可視量」に関する作例を見てみましょう。

これはシンプルなプリミティブを用いた「鳥居」です。とてもシンプルでわかりやすいですが、ディテールがあるとは言い難いですね。

まったく同じモデルですが、そのモデルに大量の木材を貼り付けます。ただ、大量に貼り付けただけです。ディテールがアップしましたか?

もう1つ見てみましょう。

これもローポリゴンで作成した猿のオブジェクトで、申(さる)年の年賀状用に制作した作品です。まあ、なんとなく猿とはわかりますが、これに......

大量にオブジェクトを貼り付けます。ちなみに、ベースのオブジェクトは同じものを使用しています。このようにモデリングをしているわけでなく、ただ大量にオブジェクトを貼り付けているだけです。

これらの作例から、「量」がディテールアップにとても大切な役割を果たすということがわかりますね。ディテールアップしたいときやどこか物足りないと思ったとき、まずは「量」、「可視量」を試してみましょう。

人間は、「大量の判断できないもの」に特別な感情を感じます。要は「凄い」と思ってしまうと言うことです。

これは魚が1匹だけの画と2万匹の画です。感情的なことは横に置いておいて、どちらがインパクトを感じますか?

そういえば、どこに鯉が?......と、良く見るとわかるのですが、群魚全てが「鯉のぼり」になっています。ニュースなどで数多くの鯉のぼりが空を舞っている様子を目にしますが、中にはギネス級のものもあるようですね。

魚における「量」と言えば「群」でしょう。
ということで、鯉のぼりの群になりました。現実世界で再現できたら、さぞ素敵でしょうね。

鯉自身はZBrushでディテールアップしています。これも「量のディテールアップ」と言えるかもしれません。ZBrushは「高密度の量」のようなものですから。

「パーティクルとスペースワープ」
群の操作にはパーティクルフローを使用していますが、より簡素な構造を心がけています。 特に複雑になりがちなフローですが、感覚的に動かしたい場合はなるべく簡単なしくみが良いですね。よりシンプルに。