クリーク・アンド・リバー社の社内CGスタジオであり、ゲームの3DCGグラフィックス制作を中心に手がけているCOYOTE 3DCG STUDIO。本連載では、同社のTAチームによる制作に役立つ技術TIPSを紹介していく。

TEXT_中村元太 / Genta Nakamura(COYOTE 3DCG STUDIO)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

はじめに

おはようございます!!(居酒屋では、1日で初めて会う人にはおはようございます!だぞ!!ってことで......)。COYOTE 3DCG STUDIO テクニカルアーティスト(以下TA)の中村です。

今回から2回に渡って、COYOTE流骨打ちについて解説していきます。お仕事や自主制作等にてキャラクターを制作される方も多いと思いますが、せっかく出来上がったなら格好良く・可愛く動かしたいですよね!

そこに立ちはだかるのがリギング作業です。作業内容としては「骨打ち→ウェイト調整→コントローラ設定」です。この工程が一番キライ or 苦手と思っている人も多いように思いますが、なぜ一番苦手意識が高いのでしょうか?

今回は、実際にキャラクターの骨設計から骨打ちまでの流れについて、筆者が普段行なっている作業のフローを紹介します。苦手意識打破への参考になれば幸いです!

今回の記事では前回に引き続き、当スタジオのMonyが作成したVRChat向けモデルのミュリシア-Mulicia-ちゃんを例に進めます。

※注:今回紹介するセットアップ内容は、当連載のために書き下ろしたものになります。販売中データの骨構造とは異なりますので、ご了承ください。

Step 01:知識編・骨のプランニング

さて、骨打ちに必要な情報とは何でしょう?

◆意図を読み取る力(2D(イメージ画・3面図)、3Dモデル(トポロジーの割り、流れ)、テクスチャなど)
◆解剖学の知識(骨格のちがいや筋肉の動きなど)
◆キャラクターらしさ(理想的な動き、キャラクター性、シルエットなど)
◆モデラー・アニメーターさんとのヒアリング(お仕事の場合)

個人差はあると思いますが、上記の4項目が非常に大切になる要素だと思います。

今回、2Dのイメージ画・3面図にコメントを加筆したものを用意しました。早速、読み取りを始めてみましょう! 

以下が、元のイメージ画です。

次に、こちらは後述のポイントを加筆したものになります。

1:イメージ画に書かれている文字オレンジ
2Dデザイナーからモデラーに向けて書かれているテキストから、骨打ちにおけるポイントや2Dデザイナーがもっているイメージ、キャラクター性を読み取ることができます

2:骨打ち作業上での疑問点や質問水色
3Dモデル(キャラクター)が動いた際に、どの部分が動くかなどの疑問や質問を洗い出します。イメージ画の端にラフに描かれている線画やらくがきなども、案外見落としがちですがキャラクター性を活かすために必要な情報だったりします

3:プライマリ骨(体幹骨)の大まかな位置の認識合わせ
2Dデザイナーとの3Dモデルの可動部分や骨位置の認識合わせ、3Dモデラーに「この部分が動くのでトポロジーを工夫してほしい」といったすり合わせや提案に使用します

続いて、3面図。以下が元の3面図です。

こちらが加筆したものになります。

1:骨位置の確認点
骨の始まり位置や数(縦何本? 1周何本?)といった確認・質問事項や、キャラクターを活かすために必要だと思う骨を大まかに書き込みます

2:「キャラクターらしさ」として採り入れる部分
セカンダリ(揺れもの)として動く部分、ウェイトで伸びないでほしい部分の確認点、髪の毛や耳の骨の間隔、シワが入る位置(骨が曲がった際に凹む位置)の確認点を書き込みます

これらのポイントをあらかじめ書き込むことによって、実際にリギング・セットアップを行なった後の認識の齟齬や、「このパーツは伸びるはずじゃなかった!」とか「ここはもっと滑らかに揺れてほしい!」などの問題を未然に解消することができます。

このように、2Dのイメージ画・3面図などに加筆することによって、リギング・セットアップの際の要点や疑問・確認点が明確になります。これによって、2Dデザイナー・モデラー・アニメーターなど各部門へのヒアリングや提案が容易になり、骨位置への迷いや認識のズレを減らすことができます。

また、今回はご用意できませんでしたが、顔のアップや各パーツごとのアップがある場合は、フェイシャル周りの骨位置や表情の幅確認なども行うと良いでしょう。

Step 02:実践編・①hips〜spine_Cの骨打ち

実践では、大きく分けて以下の①~④の項目に分けて作業を行なっていきます。骨打ちの方法には色々ありますが、今回はロケータ配置→骨をロケータ位置へ移動→骨同士をペアレント(親子関係)というながれで作業を進めます。本記事ではプライマリ骨の作業のみ紹介します。

早速、①から見ていきましょう!
サイドから見ていきます。画像では形を捉えやすいようにシルエット表示を行い、必要なパーツだけ表示しております。ミュリシアちゃんの場合、背中がS字型に曲がっているので、骨位置も少し曲がっているのがわかります。

次に、フロントから。
スタイルがX型なのがわかると思います。スタイルの位置によって骨位置が異なることが多々あります。スタイルは、簡単な分け方だとO・X・I・A・V型の5種類、厳密に行くと12種類以上あると言われています。

サイドとフロントの情報から、骨位置になる場所へロケータを配置していきます。

次に、骨をロケータの場所へ配置していきます。

骨を同じ位置へ配置する方法は色々ありますが、今回はMayaの標準機能[Modify→Match Transformations]を使用しています。結構便利な機能です。移動・回転・スケールなども個別にできます。Maya 2022ではより細かい設定も可能です。

そして、作成された骨は以下の通りです。

1.hips:骨盤の仙骨の中心付近に配置
2.spine_A:おへそより少し下に配置
3.spine_B:みぞおち付近へ配置
4.spine_C:胸骨のアバラの2~4番の間で配置

どこを基準に骨打ちをしているのか?

基本的には、解剖学に基づいた位置への配置を心がけています。今回は素体に対して骨打ちをしましたが、服やベルトなどのパーツがある場合は曲がる部位が変わりますので、骨位置が前後・上下したり、spine_Dの追加など背骨にあたる部分を増やすこともあります。

背骨にあたる部分が全体的に背中側に寄っている理由については、今回のモデルは骨格がしっかりとわかりますので、解剖学に沿って近しい位置へ配置しています。

また、人間が前屈みになるときには、どうしても背中に角張りが出たりします。逆に反った姿勢になる際には、お腹側の筋肉が引っ張られるようになります。このことを考慮して、背骨にあたる骨位置が背中側に来ています。サイドからモデルを見たい場合、6:4~7:3の割合で背中側に骨を配置することが多いです。

ただし、ふくよかなキャラクターや解剖学に沿わないキャラクター(スライムなど)など、
お腹:背中=5:5から3:7
というように、中心~お腹方面に骨を入れた方が良いキャラクターもあります。

今回は、「骨設計・プランニング」、「①hips~spine_Cの骨配置」まで行いました。いかがだったでしょうか?

この骨打ち作業が苦手、という方は、記事の中で紹介したように2Dイメージ画にいったんポイントを書き込んでロジカルに骨位置を考えてみる、ということをぜひ試してみてください。

そして、骨位置については、解剖学を基準とすることで「どこに骨を置いたらいいのかわからない...」という問題は解消するかもしれません。少しでも、理想の骨打ちの参考にしていただければ幸いです。

日々の生活の中で「今どこの骨が動いてるんだろう?」「あの人の姿勢だと、今骨格はこんな感じかな?」などと、少し観察や想像をしながら生活をしてみると、解剖学って面白い!と思えるかもしれません。また、少しでも骨打ちについて興味をもっていただければ幸いです。

さて、今回は、ココまででお開きにしたいと思います。次回は、続きとなる②以降の骨打ちを進めていきます!

では、次回の開店まで! お疲れさまでした~!



Profile.

  • 中村元太 / Genta Nakamura(COYOTE 3DCG STUDIO

    デザイン会社、映像会社にて、アニメーション・リギングなど映像寄りの制作を経験後、テクニカルアーティストに転身。現在は、株式会社クリーク・アンド・リバー社COYOTE 3DCG STUDIOにてリガーとして映像系の経験を基にリアルな骨設計、ウェイト調整など映像のクオリティをゲームに落とし込むことを目的に様々なプロジェクトに従事。若手の育成・社内サポートなどにも関わりながら勤務中!