記事の目次

    画にプラス要素を。

    画には法則があります。

    それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。

    そして願わくば貴方の人生に+画を。

    今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。

    【ダイジェスト】 vol.014:砂 / 「数値」を採り入れる
    【+画 ONLINE】vol.014:砂 /「数値」を採り入れる (CGWORLD Online Tutorials)の詳細・動画はこちら

    本当に好きな道を選ぶ

    2022年2月です。「202202」と良い感じに数字が揃いましたね。

    数字というものは学んでみるととても奥が深いもので、様々な意味や形、そして画にもつながってきます。
    実はもともと私は理数系の方が得意で、高校生の頃に進学を考えたとき理数系か文系かでクラスが分かれてしまう学校だったので、ことさらに迷いました。

    ちなみに当時は、絵画の道は文系にカテゴライズされていたため、進学のために成績を犠牲にして文系に進路を決めました。そういった意味で、理系的な計算などを扱いながらも文系的な画の素質も必要となるCGという道は、とても選択に迷う職業ですね。

    はっきり言って、親からは大反対されました。「この世の終わり」くらいに(笑)。ですがこの道に進んで30年。「あのとき良い決断をした」と自信をもっています。こんなに多くの人に影響を与えることができ、感動してもらえるものをクリエイトできる職業は他にないでしょう。

    もし今、進路に迷っていたり反対されていたりするのであれば、少し落ち着いて「自分の本当に好きな道」を選んでくださいね。それがCGじゃなくとも。

    数値を採り入れた画の創り方

    さて今回は、「数値を採り入れた画の創り方」を紹介します。この連載でもちょこちょこと採り入れているのでご存知の方も多いと思いますが、画の王道としてよく使われるのは「黄金比」ですね。
    画創の法則の「均衡」「数値」になります。

    これは定番ですね。

    テレビ等の「16:9」に見慣れていると、少し太り気味に見えてしまうかもしれません。テレビや映画の対比率は結構いい加減な決め方をしているので、興味があったらその歴史を調べてみると面白いと思います。世の中に存在する規定の理由なんて、案外単純なものだったりします(笑)。

    実は、数年前から使用しているこの「KAI」のロゴも黄金律を使用しています。決まるまではしっくりいかず何度かロゴを変えたりしたのですが、このデザインにしてようやく落ち着きました。黄金律でデザインしたものは、決して目立ったり突飛なものではないのですが、「長く・深く・ずっと使える」といった親しみ深いものになっていきます。

    さて、自然界でよく使われる数式には「フィボナッチ」というものがありますね。これはCGをやっていると、どこかしらかに出てくるのでご存知の方も多いでしょう。

    ひまわりの種の配置はとても有名ですね。まさに数式で並んでいるかのような、不思議な配置です。なぜこのような配置になるのか?

    例えば、トンボの羽やキリンの模様なども数式で再現できるそうです。何かしらのロマンを覚えますね。こういった自然から発生した数学/数学から発生した自然は「ネイチャーテクノロジー」と呼ばれていたりします。

    有名なものがいくつかありますね。

    例えば「コンピュータの父」とも呼ばれているイギリスの数学者、アラン・チューリングが理論的存在を示した「チューリングパターン」などです。これは、キリンやヒョウの柄などに見られます。

    また、植物の花びらや葉には「黄金角」が使用されています。黄金角は、例えばランダムに配置させたいときなどにとても有効です。

    通常の「回転の配置」では綺麗に揃いすぎてしまいます。

    黄金角を使用した配置です。少しずつズレていき、重なることなく自然な配置に。
    これらと似た数式の1つが「フィボナッチ」です。とても有名な数式ですね。数式はなかなか複雑なのでそう簡単に使えるものではありませんが、世の中にはこういった場面で数式を使うことがあったりします。

    花びらなどを作るときに使用すると効果絶大です。

    シーンの作り方や使用したスクリプトなどはチュートリアルに収録しています。興味があったらぜひご視聴ください。

    Composite

    今回はコンポジットでカラコレして色の調整をしています。
    色の調整をするときは、最初にある程度テーマを決めておくと作業がスムーズに進みますね。今回のテーマ色は「承和色(そがいろ)」です。

    R:243/G:244/B:127

    「承和色(そがいろ)」は日本の伝統色のひとつです。平安時代、承和の天皇・仁明天皇が好んだ菊の色にちなんで付けられた名前だそうです。少し彩度を落とした黄色で、品位を感じますね。色ひとつとっても歴史を感じる日本って、とても素敵な国ですね。

    実は、この色をしっかりとマテリアルに使用しているため、さらにコンポジットで調整といった作業になります。

    読み込んだ画像はモノトーンに近いですが、下準備として「反射」などの素材を重ねて少しキラキラとした感じを強めておきます。

    ここで「調整レイヤー」でカラコレを行いました。色を黄色方向に振っていきます。このとき、彩度を上げすぎないように気をつけます。

    最後に、味付けでフワッとフレアの加工をしています。「数値を使った画の創り方」は、感覚的なものとはまたちがった素敵な要素があります。これを自然界に見出した人は本当に素晴らしいですね。なんとなくしっくりこないデザインや配置になってしまっているときなどに利用してみてはいかがでしょうか。

    CGにはいつも夢があります。

    全ての望む方が素敵なCGに触れられるよう、オンラインで活動の幅を広げております。オンラインセミナーやオンライン教材を用意しているほか、講演なども承っておりますのでお気軽にご連絡ください。

    本来の画をつくる楽しさをいつまでも忘れずに。

    【チュートリアル収録内容】

    <画創の法則>
    ・数値
    ・色

    <実際の制作過程メイキング>
    モデリングからコンポジットまで
    使用ソフト:3ds Max、After Effects
    長年、セミナーや授業でお話してきた生な感じをぜひ体感いただけたら嬉しいです。ムービーの解説ではさらに詳しく内容をご説明しております。

    【ダイジェスト】 vol.014:砂 / 「数値」を採り入れる
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    Information

    3ds Max『画龍点睛オンライン』講座

    文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
    tutorials.cgworld.jp

    3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)

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    online.dhw.co.jp/course/3dcg

    Profile

    早野海兵/Kaihei Hayano

    画龍 / Garyu
    ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
    #3dsMax, #adobe aftereffects, #zbrush, #substancepainter

    <代表作>
    ゲーム『鬼武者』シリーズ
    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
    『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
    著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
    連載「+画」、「画龍点睛」

    早野海兵公式サイト:kaihei.net
    画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
    Twitter:@Kai_ryu_Kai

    TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(@Kai_ryu_Kai)
    EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)