画にプラス要素を。
画には法則があります。
それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。
そして願わくば貴方の人生に+画を。
今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。
<粗密/ヴォイド感>気持ちの良いバランスの取り方
今回は「粗密」について。
あまり聞きなれない言葉かと思います。
私もアニメのお仕事に携わった際にはじめて教わりました。
「ヴォイド感」と言うこともあるのですが、
「ヴォイド(void)」という単語でネット検索してみると「ヴォイド宇宙」という検索結果が得られ、
「宇宙は細胞」とかそういった「配置の考え方」が出てきます。
「超空洞」という言葉も出てくるのですが、何だかすごそうな言葉ですね。
さてヴォイドについて調べてみると……、
ボイドとは
意識的につくられた構造物がない空間をいい、例えば建物の吹抜けがこれに当たる。ボイドを設けることは、建築デザインにおける技法の一つであり、ビルディングだけでなく、戸建て住宅でも採用されることがある。ボイドのある建物は開放感があるが、一方で空調や照明に特別の注意が必要であるとされる。
引用元:不動産情報サイト アットホーム
文章にするととても理知的な感じがしますが、
ようは「気持ちの良いバランスの取り方」の1つですね。
そして画創の法則「均衡の法則」がついにここに完成します。
デザイン
粗密を表現するには、こういった「モノを配置するときのバランス」を考えてみると良いでしょう。ただモノを置くだけではなく、大きなモノの周りに小さいモノを配置することで、大きなものと小さなものが相互的にバランスを保ちあいます。これがただ同じモノが並んでいるだけでは、なかなか印象深くならないものです。
「大きいモノと小さいモノ」、「大きなモノ1に対して小さなモノをたくさん」。これが配列にはとても相性が良いです。
ヴォイド
直列に並べると人工物かデジタルのように見えます。
しかし意識的に穴をあけることで、ヴォイド空間を構築することができるわけです。例えば細胞とか銀河とか……。ただ空間を等間隔で埋め尽くすのではなく、何とも不思議な穴があり空間を遮っています。
ヴォイドを使用すると、機械的なレイアウトになりがちなモノに生物感を与えることができます。つまり配置による印象の操作ができるということです。
破壊
CGの醍醐味の1つともいえる「破壊」。エフェクトには欠かせない……というか、アクションやSFなどストーリーのあるものには欠かせない要素ですね。人間には破壊衝動に駆られる一面があります。単純に破壊されていく過程などは、見ていて飽きることがありません。
この作品を作成した2005年当時は、まだ破壊による破片も全て手で作成していたものです。ひとつひとつの破片をくり抜いてモデリングしたものに、物理シミュレーションをかけるという、何とも手間のかかる作業でした。
こちらの作品を作成した2011年には、プラグインを使用することで簡単にボロノイ分割ができるようになりました。しかし何度か使用すると同じようにしか割れなくなり、また破片も単調なので難しいところです。
今回も様々な割れ方を試しましたが、シンプルに「中心を抜けていく」ような見せ方にしました。
破片の形というのは面白いもので、その形の印象から質感まで感じ取ることができます。こういった「曲線の集まり」のよう割れ方は、質感が付いていないにも関わらずガラスを想像することができます。
同じ平面でも、グリッドだとこのようにワイヤーフレームのPC画面か人工的な網のようなものに見えます。
かといってただランダムに割れば良いわけでもなく、このようにボロノイを使用してもなかなかガラスのようには見えにくいです。これに質感が付けば別なのですが。
コンポジット
レンダリングした画像からコンポジットしていきましょう。今回は、ほんのりと薄化粧したような印象を変えるカラコレです。
私の講演の『画を良く魅せる一夜漬け』でご紹介した「地平線を消そう」と同じですが、背景にある真っ直ぐな線はとても目立ち視線が集まってしまいます。本当は被写界深度で上手くボケて消えてくれたら良かったのですが、上手く消えなかったのでマスクで消しました。
色の感じを変えていきます。「白よりも白く」という業界用語があるのですが、実はただ白くしただけでは白く見えないものです。ダイヤモンドも同様ですが、「最高の白は」少し青みがかかっているものだとか。少しでも黒が入るとグレーになってしまいますし、どうしても「真っ白」という表現は難しいのですが、青を少し足すことで透明感を出すことができます。
今月の「+画」はいかがでしたか?
「画創の法則」は現在8章8項目全64技に上ります。これからもっと増えるかもしれませんが……(笑)。
CGにはいつも夢があります。
CG制作を望む全ての方が素敵なCGに触れられるよう、オンラインで活動の幅を広げております。オンラインセミナーやオンライン教材を用意しているほか、講演なども承っておりますのでお気軽にご連絡ください。
本来の画をつくる楽しさをいつまでも忘れずに。
チュートリアル収録内容
<画創の法則>
・均衡の法則「粗密」「ボイド」「消す」
<メイキング>
モデリングからコンポジットまで
使用ソフト:3ds Max、After Effects
長年、セミナーや授業でお話してきた生な感じをぜひ体感いただけたら嬉しいです。動画チュートリアルによる解説ではさらに詳しく内容をご説明しております。
3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)
CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。
online.dhw.co.jp/course/3dcg
3ds Max『画龍点睛オンライン』講座
文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
tutorials.cgworld.jp
早野海兵/Kaihei Hayano
画龍 / Garyu
ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
#3dsMax, #adobe aftereffects, #zbrush, #substancepainter
<代表作>
ゲーム『鬼武者』シリーズ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
連載「+画」、「画龍点睛」
早野海兵公式サイト:kaihei.net
画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
Twitter:@Kai_ryu_Kai
TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(@Kai_ryu_Kai)
EDIT_みむらゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)