原画と動画という考え方
アニメでは古くから原画と動画というような言葉が用いられます。この2つを分かりやすく言うと、原画は「その動きのなかで鍵となるポーズ」と言い換えることができます。一方、動画は「鍵となるポーズの間を補間するためのポーズ」と言い換えることができます。アニメでは、原画マンと呼ばれるように、原画を専門的に描き上げる方がいるほど、この原画というのはとても重要な作業工程になります。この原画がアニメーションの出来のほとんどを決めると言っても過言ではありません。この原画と動画という概念はとてもよく出来ていて、この手法を用いることでCGアニメーションでもシンプル、且つ効率的にアニメーションの作成を行うことができます。よって、本連載でもこの原画・動画というアニメの概念をCGアニメーションにそのまま応用していきます。
まず原画となるポーズを作成していき、あとでその間を補間するポーズを作成します。この作業工程がなによりも重要。この段階で、ポーズ・タイミング・動きの演出のほとんどを決めてしまいます。原画を作る上で重要なことは、「その1フレームだけを見ても、どんな動きをしているのかが判るポーズ」を作成すること。良い原画はそれだけ見ても動きがほぼ出来あがっています。
原画となるキーだけ打ち、その他のフレームは自動補間された動き
ツメ・タメを作る動画
原画と原画の間を補間していくポーズを作成していきたいと思います。アニメ用語では動画と言います。ツメ・タメという言葉がアニメーションをする上で用いられることがあります。これは何かと言うと、動きの中に発生する緩急のことです。CGアニメーションでは、グラフエディタでXYZの曲線をいじることで動きに緩急を付けることができますが、ここではその手法は用いません。AとBという原画の間に、Cという動画が必要になってきた場合、グラフエディタは用いず、Cというポーズをわざわざイチから作ります。一見面倒に見えますが、こうしてその都度ポーズを作っていくことがCGアニメーションの最も上達する方法であり、逆に言えばCGアニメーションに最も足りない部分でもあります。
動画を作る上で重要なのは原画の動きをさらに引き立たせてくれるものを作ることです。例えば、ここで言う(12)番の64Fのポーズ(本誌146号参照)。このポーズがあるだけで、足を振り下ろすスピード、手を落とす勢い、またその後に頭を上げる動作の伏線にもなりうるポーズ。また、腰の位置は動いているけど頭の位置は62Fとほぼ同じ位置に設ける。そうすることで「足を振り下ろすために力んでいる」という演技を表現することができます。
原画だけでなく、動画となるキーも加えた動き
なお、原画も動画も全身のジョイント、もしくはコントローラー、今回のFBIKならEffectorと、キャラクターの全身にキーフレームを打つことで、「そのフレームでは必ずこのポーズ」と、アニメーターが意図したポーズを作成することができます。これはポージングを意識するという上でとても重要です。また、このやり方は後にタイミングを調整する際にとても効果的なのです。CGであれば必ずといっていいほどリテイク作業が発生しますが、タイミングの調整の利便性にも優れています。アニメーション作業を行う際に重要なのは、どんなポーズでまたそれをどんなタイミングで動かせばそういった演技に見えるのか、というのを自分のなかで構築すること。こうしたことを頭で考える時間が最も長くなりますが、この動画作成時間は1時間程度でした。また、ここまでグラフエディタはほとんど使っていません。接地などの調整ぐらいで、使う必要はなしです。とにかくポーズとタイミングだけを考えることが重要です。
タイミングの調整を行なった動き
最終的な調整を加えた動き
この連載を始めるにあたって
今回、月刊CGWORLDで連載をするにあたりどういった内容が読む人たちにとって望ましいものかという部分を改めて考えました。アニメーションは基本的に表現ですので、答えというものがありません。ここで説明していることも筆者の好みであって、この動きが正解というわけではありません。しかし、逆に言えば何でも好きにやっていいという、とても自由度の高いフィールドです。今回はたまたま、MayaのFBIKを用いてますが、ソフトウェアの機能を如何に知っているかというのが、出来上がる絵に直結しないというのがCGアニメーションの面白いところでもあります。要するに、知識はなくとも表現力があれば勝てる世界であるということです。
CGは、知識が先行してしまいソフトウェアに使われてしまうことが多々ありますが、アニメーションに関してはそれはあり得ません。むしろ、如何に普段からいろんなモノやヒトを観察しているか、コミュニケーションを取っているか、表現したいものが自分の中にあるのかといった、その人の人間性が大きく影響してくる分野だと思います。実際、私の周りでアニメーションの上手な人たちは、よく飲んでよくしゃべって、話の面白い人が多いです。もちろん、感受性だけではCGアニメーションは作れないので、この連載で少しでもCGアニメーションの取っ掛かりを作ることができ、これからCGアニメーターになりたいと思っている方に何か伝えられば嬉しいですね。
キャラクターを思い通りに動かせたときは、何ものにも変えがたい達成感があります。是非CGアニメーションを好きになってください。最後におまけムービーも掲載しますので、こちらも観て楽しんでいただければと思います。
TEXT_森江康太(トランジスタ・スタジオ)
『FREEDOM-PROJECT.JP』やNHKスペシャル『恐竜絶滅 ほ乳類の戦い』などでアニメーションを担当。
トランジスタ・スタジオ公式サイト
続きは、月刊誌で!
CGWORLD 146号に関する詳細は下記リンクへ
CGWORLD 2010年10月号 vol.146
INFORMATION
デジハリ×CGWORLDコラボーレーション
「アニメーションスタイル」
これまで誌上連載をしてきた「アニメーションスタイル」を、「CGWORLD Academy」と題して、デジタルハリウッドとのコラボレーションで開催! ハンズオンでの習得をリアルセミナーならではの臨場感とスケール感で各回を解説します!
第1回は、「走ってきて止まる」というモーション制作をハンズオンで講義。原画、動画、仕上げの工程にわけ、キーフレームの打つタイミング、アニメーションをよりよくみせるためのプロの技、 キャラクターアニメーションでの演出のポイントを解説。
日時:2011年2月19日(土)14:00~18:00
会場:デジタルハリウッド東京本校
交通:御茶ノ水駅から徒歩2分
(JR線 改札:お茶の水橋口/丸の内線/千代田線)
受講料:5,000円
詳細・申込はこちら
http://blog.dhw.co.jp/tokyo/2011/02/cgworldcgworld-.html