スマートフォン向けゲームを企画・開発・運営しているf4samurai。現在、人気アニメ『コードギアス』の最新ゲーム作品『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』(以下、ロススト)の開発と運営を行っている。
2022年のサービス開始以来、本作は原作アニメのフィーリングを踏襲した演出によってファンの人気を集め、2023年11月にはサービス1.5周年を迎えた。そこで本記事では本作の開発において、f4samuraiの「3DCGモデル」「3DCGモーション」「エフェクト」「3DCG背景」の4つのセクションがどのように原作を活かしたゲームづくりを行っているかをうかがった。
第3回ではエフェクトの開発について取材。今回は2017年からフリーランスとしてf4samuraiに参画している、エフェクトデザイナーのTakagi氏からお話を聞いた。『ロススト』開発チームの中心人物でもあるリード3DCGデザイナーのWakabayashi氏とともに、どのように開発へ携わったかを掘り下げていく。
information
f4samurai オンラインセミナー開催!
2/17(土)13:00~14:00
IPゲームタイトルにおける3DCGの作り方
-コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ編-
リード3DCGデザイナーを務めたWakabayashi氏が登壇します。
‟原作のイメージを崩さない”説得力のあるエフェクト
――まずは自己紹介からお願いします。
Takagi:エフェクトデザイナーのTakagiです。もともとは映像系のCGプロダクションにいて、2017年にフリーランスとしてf4samuraiに参画しました。ゲーム内のエフェクト全般を担当しています。
Takagi氏
エフェクトデザイナー
―—Takagiさんの『ロススト』におけるエフェクト制作でのこだわりについて教えてください。
Takagi:『ロススト』の原作である『コードギアス』は約15年前にアニメ放送していた作品です。原作の良さをしっかりと活かすのはもちろんのこと、最新のモバイルゲームの数々と比較しても見劣りしないよう、「いい意味で‟今風”につくり上げること」にこだわりました。
Takagi:原作を愛しているファンの皆さまがこのゲームをプレイしたときに「今時でかっこいいけど、原作と違いすぎる」とか「このキャラの技はこんなのじゃないよ」という違和感を感じてしまうと、没入感が大きく損なわれてしまいます。なので、原作へのリスペクトとゲーム演出としての見栄えとのバランスには特に注意するようにしました。
Wakabayashi:Takagiさんのエフェクトを見せてもらったとき、素直に「このゲーム、ここまで行けるんだ」と嬉しくなりましたね。良い演出ができたという実感が持てたのと、チームにとっての「『ロススト』はこのクオリティラインでつくっていこう」という共通認識をつくってくれた感覚がありました。
Wakabayashi氏
リードデザイナー
2016年中途入社
——具体的にエフェクトのブラッシュアップをする上で、どういうところがポイントになりましたか?
Wakabayashi:例えば紅蓮でいうと、ちゃんと光っている感じを出すといいますか、炎が炎らしく見えるように、ボヤけて見えていたエフェクトにメリハリを持たせて解像度高く仕上げてくれました。ひとつひとつのパーティクルの粒も、テクスチャの解像度を上げてつくるのではなく、節約してゲームで動く範囲内でしっかりと質感を出してくれました。‟濡れ感”といいますか……、以前はもっとパサパサとしたエフェクトでした(笑)。
Takagi:やっぱり映像をやっていたからこそわかる画ブレのタイミングというか、炎の光が放出される直前にガッとブラーがかかってから弱まる、のような自然現象や重力も考慮した上で、細かい表現で手を抜かないことは気にしていましたね。あとはブルームの値を調整することで、白飛びするところはあえてしっかりさせて、明暗の強弱もつけました。
——そういった細かい演出はWakabayashiさんからの指示があったんでしょうか?
Wakabayashi:私からは細かい指示などはあまりせず、Takagiさんのセンスに頼っているところが大きいです(笑)。いつも期待以上のものを上げてくれているので、毎回「Takagiさんに任せてよかったな」と思います。
——f4samuraiでは多様な仕事を兼務されている方が多い印象があるのですが、Takagiさんはエフェクトの他にも担当されている部分はありますか?
Takagi:カットインや画面演出なども担当させていただいています。
Wakabayashi:Takagiさんは前職で遊技機の演出をつくっていた経験もあるので、「感情を盛り上げる演出が必要なもの」に関しては、エフェクトという括りにとどまらずお任せするようにしています。
制限のない映像制作で得た‟限界までクオリティを追求する”力
——Takagiさんはどのような経緯でf4samuraiに参画されたのですか?
Takagi:前職はCGプロダクションで働いていました。当時はまだ働き方改革もそこまで進んでいなかった上に、どうしても映像業界の性質上、労働時間が長くなる傾向があって……。長期で続けていけるイメージが持てなかったのと、映像とはまた違った制約のあるゲーム業界も面白そうだなと思って転職を決めました。
——映像業界からゲーム業界へ転職するのはけっこうなチャレンジではありませんでしたか?
Takagi:そうですね。少し遡ると、僕が通っていた専門学校では映像部門とゲーム部門でコースが分かれていたのですが、当時は映像部門の制作物のほうが全体的にハイクオリティだったんですよ。というのも、やっぱり映像はポリゴン数に依存しないので、ゲームよりも表現の幅や自由度が高い。一方でゲーム部門の方たちは、決められたポリゴン数でモデルをつくっていて、どうしても動きがスムーズでなかったり、モデル自体の見た目もあまりつくり込めていないように見えました。
——ゲームはハードウェアごとにも制限が出てきますからね。
Takagi:はい。なので当時は映像業界の道を選び、その経験が今も活きているのですが……結果としては「求められるクオリティに天井がない」ことの難しさも感じました。何でもできちゃう面白さはあるものの、上から「こうしたい」とリテイクがあれば「わかりました」としかいえないですし、際限なく突き詰めてしまえるためスケジュールや労働環境が二の次になってしまうこともあります。
対してゲーム業界のほうは、もちろん目指すクオリティ自体は高いものの「これ以上は処理が重くなって遊びやすさに影響が出るから、ここまでが限界だよね」という制限があるもので、やはりそこの違いは転職してきた時にも感じました。ただ今の僕にとってはその制限はむしろプラス要素で、映像業界より全体の開発スケジュールが短い分、決まった期間内でできることをぎゅっと詰め込む感じが面白いですね。
Wakabayashi:制限があるなかで戦うほうが、Takagiさんに合っているのでしょうね。
Takagi:そうですね。
——Takagiさんはどのようなツールを使っていますか?
Takagi:Mayaでモデルをつくって、エフェクトはSPARK GEARを使っています。
Wakabayashi:エフェクトの一部はUnityのShurikenを使ってもらっていますね。3D部分に乗せるエフェクトはSPARK GEARを使い、UIより上にエフェクトを乗せたいときは、レイヤーの都合でShurikenといった使い分けをしています。
——SPARK GEARは主にモバイルゲームで活用されているツールですが、映像業界でも使った経験はありましたか?
Takagi:使ってなかったですね。UnityのShurikenを使っていました。SPARK GEARは、たとえばモデリングで言うなれば3ds MaxとかMayaを使っている人がZBrushを使うイメージでした。つくるものは同じなんだけど、アプローチが全然ちがうんです。
Shurikenの方が「粒をどれだけ出すか」とか「スピードをどのくらいにするか」といったパラメーターが直感的なんですよ。一方、SPARK GEARは突き詰めればほかのツールではできない派手な表現ができるようになります。
——ありがとうございます。最後に、どんな方と一緒に働きたいですか?
Takagi:自分が経験したから余計にそう感じている側面はあるでしょうが、やはり映像を学んできた人はいいな、と思います。ゲーム画面の中ではまだ実現できないようなクオリティをとことん突き詰めた経験があるからこそ考えられる表現があるというか……「映像だったらここまでできる」ことを知っている人が、それをゲームに落とし込もうとする工夫を積み重ねていけば、ゲーム表現の可能性をもっともっと広げていけると思うんですよね。
エフェクトって答えがないじゃないですか。100人がつくれば100人別のものをつくるし、時代によって流行りもあります。いまはアニメで描いたようなエフェクトが流行っていますが、今後はまた新たな表現が出てくるわけで……。その中で取り残されることなく、常に流行をキャッチアップして自分をアップデートしていくことができる方だとなお嬉しいと思います。
——Takagiさんはどのようにして流行をキャッチアップしていますか。
Takagi:僕はXで流行っているゲームとか、必殺技集は常にチェックしています。トレンドになっているゲームはやっぱり演出も一流なんですよ。基本的にはそうやって話題になっているアプリをプレイするか、それ以外でも自分が気になったアプリの演出を観ていますね。
——そうやってトレンドも追っていけるクリエイターに来てほしい、というところですね。
Takagi:そうですね。実務面でも、「このアプリのこんな感じがいいんだけど」と言ったとき、知ってくれている人のほうが話が早いというメリットもありますし。とにかくいろんなゲームや演出に触れている人がいいですね。
f4samurai『ロススト』チーム座談会 その3
座談会の3回目では、開発の中心となったリードデザイナーのWakabayashi氏がどのように各スタッフと関わり、その能力や個性を生かしているのかをお話いただいた。
Muramatsu氏
ディレクター
2017年中途入社
Yoshida氏
背景デザイナー
2021年中途入社
——Wakabayashiさんは開発をまとめる立場としても、各セクションに関わっていますよね。Takagiさんから見て、普段のWakabayashiさんはどんな様子ですか?
Takagi:Wakabayashiさんはいつも優しいですよ(笑)。
Yoshida:たしかに、優しいです(笑)。
Takagi:エフェクト制作の観点で言うと、Wakabayashiさんはエフェクトデザイナーではないはずなのに、フィードバックがいつもすごく的確なんですよね。「なんでそんなところに気が付くんだろう?」ぐらいの細かいことを見ていて驚かされます。
「Wakabayashiさんに言われたことをそのまま反映して、悪くなることはほぼないだろう」と思えるような、かなり理にかなった指示をくれるというか。自分の仕事を客観的な目で観られたとき、やっぱり抜けてるところはたくさんあるので、そういう意見を言ってもらえて助かっています。
Muramatsu:Takagiさんはしゃべれるね~(笑)。
Yoshida:そう! すごい!
——(笑) Wakabayashiさんはフィードバックで意識されていることはありますか。
Walabayashi:その人がつくってくれたからこその“尖った部分”を殺さないことは大事にしています。最近はメンバーが増えたこともあって、クリエイターごとにクセがあるよなと思うことも多いです。
みんなクリエイターとして優秀なので、つくってくれたものはだいたい『ロススト』としての統一感はありつつ尖ったものになっています。尖りすぎていると感じたときには多少角をとることはありますが、それでもなるべく皆さんの個性を出すかたちで完成させることを目指しています。
次回は1月30日(火)に「3DCG背景」を担当されたお二人のインタビュー、
「3DCG背景編―手描きテクスチャで原作の雰囲気を細部まで表現」を公開予定です。お楽しみに!
▼求人情報
■募集職種
①3DCGモデラー | open.talentio.com/r/1/c/f4samurai/pages/87611
②3DCGモーションデザイナー | open.talentio.com/r/1/c/f4samurai/pages/84864
③エフェクトデザイナー | open.talentio.com/r/1/c/f4samurai/pages/84257
④3DCG背景デザイナー | open.talentio.com/r/1/c/f4samurai/pages/84555
※いずれの職種も『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』もしくは『新規3DCGゲームタイトル』の開発・運営に携わっていただきます。
<参考記事>
3DCGデザイナーのお仕事紹介 | note.com/f4samurai/n/nb2b4579ddedb
リード3DCGデザイナーインタビュー | recruit.f4samurai.jp/interview/473
■雇用形態
・正社員(試用期間3カ月 ※本採用時との待遇差なし)
※ご希望・ご経験により業務委託でのオファーをするケースもあります。
■勤務地
〒101-0021
東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX 北ウイング14階
■待遇
給与 :
経験・能力を考慮の上、当社規定により決定します。
想定年収(メンバー):450万円 ~
想定年収(リーダー ):650万円 ~
※みなし固定時間外手当(45時間相当分)を含む月給制
(みなし固定時間手当を超える時間外労働分の割増賃金は追加支給)
※賞与制度あり(年2回)
福利厚生 :
通勤手当(上限50,000円/月)、社会保険完備、健保組合保養所、健康診断、他
■勤務形態
月・金:リモート勤務
火・水・木:秋葉原オフィス勤務(原則出社必須)
■休日・休暇
完全週休2日制(土曜・日曜)、祝日、年次有給休暇(入社時付与あり)、年末年始休暇、慶弔休暇、夏季休暇、特別半休制度(1ヶ月に1度使用可能)
※年間休日120日以上
TEXT_葛西 祝 /Hajime Kasai
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota