世界に誇る日本の自動車産業をビジュアライゼーションの分野から手厚くサポートし、業界を牽引してきたスマートエンジニア株式会社。本拠地の名古屋に留まらず、東京にもオフィスを設立した同社は今、バイクのビジュアライゼーション事業をはじめとする事業拡張に伴って広く人材を募集中だ。
自動車ビジュアライゼーションにおける名古屋の雄が東京オフィスを強化
CGWORLD編集部(以下、CGW):本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
枚田直樹氏(以下、枚田):マネージャーとプロデューサーを務める枚田です。
枚田直樹氏/Naoki Hirata
マネージャー兼プロデューサー
浦本康道氏(以下、浦本):営業・企画チームで企画営業およびプロジェクトマネージメントを担当している浦本です。過去には大手自動車ブランドなどの工業製品を主体とした3DCGビジュアライゼーション制作のディレクターをやっていました。
浦本康道氏/Yasumichi Uramoto
営業・企画チームリーダー
CGW:スマートエンジニアへの入社の経緯について教えてください。
浦本:入社前から前職でスマートエンジニアがつくる画を参考にしていました。クルマの見せ方が上手くて品質が高いなと思っていて。よくよく調べてみると、スマートエンジニアはCADデータを整理してアセット化して3DCGを起こしている、クルマに特化したワークフローを確立している会社なんだということを知ってさらに興味をもちました。コロナ禍になって僕自身、新しいことをしたい気持ちが出てきたこともあって入社しました。
白石智隆氏(以下、白石):入社2年目、企画・営業チームの白石です。業務内容としては主にクライアントさんと要件のすり合わせなどを中心に担当しています。前職では3DCADで航空機の内装設計をやっていました。
白石智隆氏/Tomotaka Shiraishi
営業・企画チーム
彭 振華氏(以下、彭):2年目のクリエイター、彭です。入社するまで、スマートエンジニアがバイクのビジュアライゼーションを制作しているとは知らなかったのですが、バイクや自動車が大好きなので楽しくやらせてもらっています。前職、前々職は映像制作とゲーム制作で、プリレンダーもリアルタイムも両方経験してきました。
彭 振華氏/Shinka Hou
クリエイター
CGW:彭さんはエンタメ業界から自動車やバイクの製造業界に移られたと。業界的なちがいは感じますか?
彭:スマートエンジニアでは、工業製品ということでとにかく正確性が大切です。データとしても、オブジェクトやマテリアルの命名規則がキッチリ決まっていたりします。でもその分、最終成果物のクオリティがすごく高いです。
CGW:皆さん制作ツールはどんなものをお使いですか?
浦本:自動車やバイクのビジュアライゼーションには基本的にMaya、3ds Max、国内の建築ビジュアライゼーションには3ds Maxを使います。会社全体としては3ds Maxが中心です。レンダラはUnreal Engine(以下、UE)など、ケースバイケースでいろいろなツールを使っています。
CGW:東京オフィスが今回さらに体制強化されたということで、その経緯などを教えてください。
枚田:元々5年前クライアントの要望を受け、名古屋拠点で培ってきた技術や知見を活かし、さらなる高みを共に目指す拠点として東京オフィスを設立しました。我々はプロダクトデザインCGをメインとして扱っていますが、他領域の参画も視野に仕事の幅を拡げていかないと、技術に偏りが出てしまったり、世の中の変化に対応していけなくなるという危機感を強くもっていました。ただ、受託業務と並行して新規事業の創出というのはパワーもスピード感も足りず苦労をしていたんです。
そんな折に、経験豊富な浦本さんが入社してきた。わたしの想いを受けぜひ一緒に実現させましょうといってくれました。そこから一気に加速しさらに強化が必要になってきたという経緯になります。
CGW:なるほど。枚田さんの右腕として浦本さんに来てもらったと。
枚田:そうです。それで、これまでの業務をわかっているスタッフを3名、名古屋から異動して、新たに採用したスタッフと合わせて6名でスタートしました。今は13名、さらに増やしたいと考えています。
バイク業界もCGビジュアライゼーション時代へ
CGW:自動車のイメージが強い御社ですが、なぜバイクのビジュアライゼーションを?
浦本:クライアントの担当者とは以前から3DCG案件でお付き合いがあったのですが、コロナ禍の折、物流の問題で実写撮影の予定が組み難くなった背景もあり、バイク業界各社でも3DCGでビジュアルをつくる動きが加速しました。その際に、以前の仕事ぶりをクライアントの担当者が気に入ってくださっていて、現職でもお声がけいただけたことから始まりました。
CGW:なるほど。きっかけは浦本さんなのですね。
浦本:きっかけはそうですね。ただ、クライアントさんと安定的なパートナーシップ関係を築けているのは、スマートエンジニアが高品質なCGを継続的に提供できているからです。大手自動車ブランド案件で培ってきた高いクオリティ、高い実績を示せた。それが大きいです。
CGW:バイクのビジュアライゼーションはこれまで実写が中心だったのですか?
浦本:そう聞いています。自動車ではもっと以前から3DCGによるビジュアライゼーションが使われていましたが、バイクでは表現の難易度が高いことも影響してか、コロナ以前は実写が中心で、ビジュアライゼーションの浸透度にちがいがあるのでは?と感じていました。
CGW:コロナ禍がターニングポイントになったと。
浦本:はい。きっかけのひとつになったと考えています。今は各社3DCGを使うケースが増えてきているようですし、自動車のビジュアライゼーションが実写に戻っていないことを考えると、バイクでもどんどん3DCGが増えていくことが予想されます。
CGW:クライアントとしては、バイクのビジュアライゼーションに何を求めているのでしょうか?
浦本:これはいつもクライアントの担当者と話すときに話題に上るのですが、クライアントが求めているものは綺麗な3DCGではなく、「人の心を動かすもの」です。
CGW:重要なことですね。
浦本:バイクという乗り物は趣味性が高いですから、やっぱりお客さんありきです。自己満足で綺麗な3DCGをつくるのではダメで、お客さんがそれを見たときに魅力を感じるか、欲しいと思えるか、求められているのはそういった販促物としての有用性なんです。それを常に意識しながら案件と向き合っています。
ゲームエンジンをカスタマイズした独自のワークフロー
CGW:では、東京オフィスが手がけたバイクのコンテンツをご紹介ください。
浦本:こちらは日本で3月に発売(※発表は2月)された「Africa Twin」というHondaのアドベンチャーバイクのフラグシップモデルです。
浦本:さらに、店頭の大型ディスプレイで体験できる、リアルタイムのインタラクティブコンテンツ(コンフィギュレータ)もあります。複数の車種のサムネイルを並べて、スライドで好きな車種を選べます。すでに複数モデルラインアップされていて、今後もまたさらに増えていく予定です。
浦本:モデル制作においては工業製品としての正確性を担保するための苦労はあります。ただ、モデルさえきちんとつくっておけば、後からたくさんのソリューションを低コストでお客様に提案できる可能性が高まりますから、このように様々なコンテンツをつくるときには、やはり3DCGが大きなメリットとなる可能性をもっています。
CGW:精緻なモデルが見事にコンテンツに昇華されていますね。こちらのコンフィギュレータについて、ワークフローを教えてください。
彭:工程としては「事前作業」、「バイクのモデル制作」、「背景制作」の3つがあります。「事前作業」というのは、各バイクの仕様の整理とマテリアルライブラリの作成、カメラの設定(ISOや被写界深度の統一)、共同作業用のSVNサーバの構築などです。それと、制作に使用しているゲームエンジンはカスタマイズされているので、必要に応じて環境整備を行います。
CGW:どのようにカスタマイズされているんですか?
浦本:Remote Parentというシステム、簡単に言うとピクセルストリーミングの技術を応用してローカル環境に実装しました。このコンテンツで言うと、UI部分とバイクの描画部分は別プロジェクトになっていて、バイクの画は内部通信でUI部分のプロジェクトに送られるしくみになっています。
CGW:なるほど。どうしてカスタマイズの必要があったのですか?
浦本:最初にRemote Parentを開発した際は、カスタマイズの必要はありませんでした。コンテンツのパフォーマンス向上のため、ゲームエンジンのバージョンアップを行ったところ、Remote Parentで使用していたプラグインの一部が機能しないことが発覚、ゲームエンジンのカスタマイズを行いました。
彭:次の「バイクのモデル制作」では、まずクライアントから届いた外観データのモデルやマテリアルを全部まとめてPixyzで軽量化します。そしてマテリアルのアサイン、レイヤーの組み立て、ライトの制作を進めます。パーツやUVの修正はMaya、3ds Max、Rhinocerosなどから、その都度素早く作業が終わるツールを選んで使い分けています。
CGW:ライトや質感はどう設定されたのですか?
彭:ライトはヘッドライトとテールランプでは見た目が異なるので、マテリアルを切り分けて見た目を手動で調整しています。各パーツのテクスチャはSubstance 3D Painterでつくっていますが、クライアントから借りた外観データ、スタジオ写真、塗装板、シートの生地を見ながら詰めていきました。ルック調整は一番時間がかかる部分です。
浦本:このコンテンツ、かなり近くまで寄れるんですよ。寄っていくと小さなねじの形がわかるくらいです。ここまで寄っても耐えられるクオリティでつくらなければいけないというのがこの案件のハードルのひとつでもあり、一般的なコンテンツにはない魅力でもあります。
CGW:シーンのライティングについてはどうでしょうか。
彭:特にナイトモードはバイクを格好良く見せるこだわりのポイントです。エンジンなどの鋳物のシルエットを見せるために、弱めのライトを追加しつつ、ヘッドライトやテールランプからの光の格好良さを活かすようにしています。
CGW:次は「背景制作」の工程ですね。
彭:背景は購入素材をPhotoshopで加工・調整したHDR画像をMayaでローポリモデルに貼り込んでつくりました。バイク周りの小物にはUEで直接つくったものもあります。
CGW:彭さんは自動車のビジュアライズ経験もあるとのことですが、バイクとの共通点やちがいを教えてください。
彭:共通点は、デザインの意図を汲み取って、形状のながれやシルエットを意識して、ライティングやスタジオ、ロケーション環境の調整を行うことです。ちがいは、個人的な意見にはなりますが、自動車は平滑面が広くて立体感を出しやすい形状のものが多いのに対して、バイクはエンジン等の造形の細かいパーツが露出しているうえに、それぞれの平滑面が狭いため立体感を出しにくく感じます。オプションパーツの装着で全体の印象が大きく変わることもあって、自動車も同じではありますが、ライティングは重要ですね。
VFXで魅せる、二輪車初の新テクノロジー「Honda E-Clutch」ティザー動画の裏側
CGW:その他に制作したコンテンツはありますか?
浦本:二輪車初の新テクノロジー「Honda E-Clutch」のティザー映像をつくりました。「Honda E-Clutch」を効果的にアピールするために、細部にわたる工夫を凝らしましたね。最も挑戦的だったのは、バイクを映さない走行シーンの表現です。どの機種に搭載されるか分からないようにするため、バイク自体を見せないというご要望がありました。しかし、走行シーンは必要不可欠です。そこで、バイクを光の閃光に置き換えるというアイデアを思いつきました。速さの印象や電気信号の比喩としても最適で、Honda E-Clutch車(赤い閃光)とマニュアルトランスミッション車(青い閃光)の比較を効果的に表現できました。
浦本:当初は全編3DCGでの制作を考えていましたが、全体のバジェットやリアルな表現を考慮し、バイクの挙動やライダーの操作を自然に見せるためにはVFXを活用した実写合成が最適解だと判断しました。特に、クラッチレバーの操作不要というメインメッセージを実写で表現できたことで、視覚的な説得力が増したと思います。また、BGMをあえて使用せず排気音を最大限に活かすことで、Honda E-Clutchの優れた性能を音でも伝えることができました。
働きやすく、成果に報いてくれる企業風土
CGW:ここからは、中途入社2年目の白石さんを中心に伺います。まず、東京オフィスではどんな方々が働いていますか?
白石:東京オフィスに移ってまだ2ヶ月ちょっとですが、13人中10名が中途入社、3名が新卒という構成です。
CGW:小規模で風通しの良さそうな環境ですね。
白石:本体ということもあって名古屋には新卒が集まりやすく、東京はいまのところ中途入社が多いです。
CGW:スタッフの育成についてはどうですか?
浦本:東京オフィスは、調べながら進める案件が多く、OJT中心です。即戦力な人材は大歓迎です。
CGW:白石さんは製造CADからスマートエンジニアに転職されたわけですが、そのきっかけについて教えてください。
白石:もともとビジュアライゼーションには興味があって、スマートエンジニアが大手自動車ブランドのビジュアライズをやっていることも知っていました。僕はエンタメよりも製造業に興味があったので、スマートエンジニアはピッタリだなと思い、応募しました。
CGW:最初は名古屋オフィスでの勤務ということですよね?
白石:そうです。業務の基礎は名古屋になりますので、将来を見据えて、名古屋で1年間研修を受けました。それぐらいしてもいいと思えるモチベーションがあったのです。
CGW:覚悟を決めて入社されたのですね。実際働いてみて、どんな社風ですか?
白石:挑戦するパワーがある人を応援する、そういう風土がある会社だなと思います。自分でどんどん挑戦して成長したい人をサポートしてくれる会社です。
彭:作業しながら雑談もできるような職場環境で、雰囲気が良いなと感じています。みんなリラックスしていて仲が良くて、人と人との関係性が良いです。中国籍のスタッフは、僕だけでなくもうひとりいるのですが、外国籍のスタッフが僕以外にいるというのも、僕にとっては働きやすい環境だと思っています。
白石:休みも取りやすいですし、時間休(1時間、2時間などの単位で休みを取ることができる制度)を使えるのも良いですね。あとは出社時間はある程度融通が利くので、混雑する通勤時間を避けたりできるところも良いと思います。
浦本:結果を出し、売上に貢献したスタッフにはしっかり報いてくれます。実は僕の年収、2年目から前職を超えました(笑)。
CGW:1年目で結果を出したからしっかり給与に反映されたと。
浦本:はい。それと、会社の利益が目標を超えた場合、年末に通常賞与以外に特別な手当として決算賞与という形で頑張った社員に還元される仕組みになっています。
CGW:モチベーションが上がりますね。
浦本:そうですね。そもそも人事や給与制度が整っているので、目標が立てやすいのも良い点です。
東京オフィスで一緒にチャレンジする仲間を募集
CGW:今後、御社がCGビジュアライゼーションを通してやりたいことや目指していることを教えてください。
枚田:目指すところはあえて固定していません。世の中はどんどん変化していますから、プロダクトという自分たちの強みはしっかりもちつつも、東京オフィスを拠点にして、可能性を感じたらありとあらゆるジャンルに誰よりも先にチャレンジしていきたいという気持ちです。
CGW:そういった意志の下、どんな方がスマートエンジニアに合うでしょうか?
枚田:とにかく「熱い想い」を持っている方に来ていただきたいです。新しいことにチャレンジするにはパワーが必要ですから、それを有している人材、能動的に動ける人材は特に歓迎します。
CGW:新卒で応募される方についてはいかがですか?
枚田:新卒の方には、やっぱり長く会社で一緒に働いてほしい。ですから、前向きな気持ちとコミュニケーション能力を重視します。
CGW:中途採用についてはどのような方に来てほしいですか?
枚田:技術を追求する方と取り回しができる方に来てほしいです。東京オフィスでは案件が増えてきていますから、ディレクタークラスは特にありがたいです。また、開発のニーズも高まっているのでテクニカルアーティストのような技術職もぜひ、と考えています。
CGW:興味をもたれた方は、ぜひ求人ページをご覧ください。本日はありがとうございました。
求人情報
■職種
①3DCGデザイナー
②ゲームエンジンアーティスト(UnrealEngine/Unity)
③モデラー
④エンジニア(UnrealEngine/Unity/WEB系)
⑤ディレクター(制作ディレクター/アートディレクター)
⑥制作進行・アシスタントプロデューサー
⑦プロデューサー・プロダクションマネージャー
■雇用形態
正社員
※入社後3ヶ月の試用期間あり
(試用期間中、雇用条件の変更なし)
■勤務地
東京都港区、愛知県名古屋市、愛知県豊田市
■待遇
[年収]
新卒 : 年収300~350万円
中途(①②③④⑤) : 年収300~800万円
中途(⑥⑦) : 年収500~1000万円
※中途採用の場合、前職、スキル、経験を考慮し給与決定します。
・賞与あり(年2回、初回日割り計算)
・昇給制度あり
・残業代全額支給
・通勤交通費支給(上限あり月/5万円)
・社会保険完備
・福利厚生
[休日休暇]
完全週休2日制(土、日曜日)
年末年始休暇 (2022年実績9日間)
夏季休暇 (2022年実績9日間)
GW休暇 (2022年実績11日間)
※2022年度休日実績121日
有給休暇(初年度10日付与)
慶弔休暇
育児休暇
TEXT__kagaya(ハリんち)
PHOTO_弘田 充