カナバングラフィックスのアニメーターが語る、Asanaの魅力。 脱・Excelによるスケジュール管理で大幅なコストダウンの裏側を聞いてみた!
「ExcelからAsanaへの切り替えを含む様々な施策の結果、月あたりの会議にかかる人件費が大幅に削減できました」。そう語るのは『ウサビッチ』など数々の3DCGアニメーション作品を手掛けてきたカナバングラフィックス代表 富岡 聡氏だ。
スタッフやプロジェクトの管理に、ExcelやGoogle スプレッドシートを利用しているプロダクションは非常に多いが、ワークマネジメントツール「Asana」に切り替えると、一体どんな効果が生まれるのか.....? ツールの導入推進役となった、同社のアニメーションディレクターとアニメーターに話を伺った。
まずはExcelでやっていたことをAsanaに置き換えるだけで、効果大。
CGWORLD(以下、CGW):今回、カナバングラフィックスがAsana導入をきっかけに、
アニメーションディレクター
菅野宏樹氏
菅野宏樹(以下、菅野):Asanaを導入する前は、スケジュールやプロジェクトの管理にExcelを使っていました。
会議の際は、進行担当者が共有するExcelの画面を全員で見ていましたが、Excelでは同時に編集ができなかったため、一人が画面を共有し、新たなタスクに関する指示が出る度に、その人がExcelにタスクを追記していました。
また、スケジュールが変更になった際に、当然それぞれのタスクを動かさないといけないのですが、それもExcelだと非常に面倒で。そのため、話の進行がその都度、ストップしてしまうんです。
CGW:なるほど、その都度、無駄な待ち時間が発生していたということですね。そして、それを解消するために、別のツールに乗り換えることを決めたと。
菅野:はい、ただいきなりAsanaの導入に踏み切ったわけではなく、様々なツールを比較検討する中で、最終的にAsanaを選んだという経緯です。
CGW:それでは、ツール選定の条件はどのようなものがあったのでしょうか?
菅野:まず大きな条件として、これまでExcelでできていたことが再現できるということがありました。これまでできていたことが新しいツールではできないとなると、社内浸透での大きな壁になることが予想されたからです。
具体的には、新たなタスクを表として作ったり、その期限を簡単に伸縮できたり、担当者の切り替えが容易にできる、といった作業が同様に行えるツールというのが条件でした。
菅野:そこで、それらの機能を満たしつつ、それがオンラインで再現できるツールを探しました。また、UIが判りやすくて使いやすいといった点も重視していました。ClickUp、Microsoft Project、Googleスプレッドシートのタイムライン機能など、およそ15くらいのツールを検討しましたが、最終的にはAsanaを使うことに決定しました。
CGW:Asanaに切り替えることによって、どのような効果が出ましたか?
菅野:全体スケジュールの管理とタスクの割り振りがとても簡単になりました。それに「黄緑色はモデラー案件」とか「紫は短期の案件」といったようにタスク毎に色を変えられたり、各タスク間の依存関係が視覚的に表せるのもわかりやすくていいですね。
「アニメーションのこの作業がここまでに終わっていると、ショットに渡せる」みたいな、他のセクションと関連する進行状況もわかりやすいです。
CGW:ワークマネジメント系のツールを切り替えるのは社内浸透が大変だと思いますが、そのあたりはいかがでしたか?
菅野:しばらくはExcelとAsanaの二重管理になるかもしれないと考えていて、そのあたりの負担は自分が請け負うつもりだったんですが、二週間程度の併用期間を経て、みんなすぐにAsanaに慣れてくれました。Excelと近い操作感だったことも、移行しやすさの理由だったと思います。特に弊社の場合は代表の富岡が使ってくれるかどうかが一番大きな難所ではあったんですが、すんなり使ってくれるようになり一安心です(笑)。
CGW:全てをAsanaで管理しているわけではなく、ShotGridも併用していると聞きました。
菅野:はい、やはりShotGridは制作物の工数管理においては便利なので、Asanaの導入後も引き続き活用しています。
制作に関してはShotGridで、制作以外の日常的なタスクについてはAsanaで管理する、というのが基本的な使い分けです。ただ、ShotGridはデフォルトでは、カレンダー機能がないので、プロジェクトや部署をまたいだスケジュール管理には不向きなんです。ガントチャート機能はあるんですが、担当者の切り替えなどの機能が不足しているので、Asanaと相互の短所を補い合うかたちで併用しています。
CGW:Excelと比べて、Asanaはどのようなところが優れていますか?
菅野:最も大きな点は、複数人が同時に編集できるところですね。PL(プロジェクトリーダー)会議でも、Excelなら特定の操作者がひとつひとつ変更点を入力していかなければならなかったところ、Asanaでは各自が随時変更を加えていけるので、待ち時間が発生せず、次々と話を進めていけるようになりました。
あと、Excelは自由度が高いので、半年単位のようなスケジュールを引くような時は正直Excelのほうが楽なんですが、週単位で小まめに調整したりするような作業は圧倒的にAsanaのほうが楽ですね。そういった効果が積もりに積もって、Asanaの導入前と導入後を比較すると、人件費ベースでひと月あたり、数百万円の会議費削減ができたという試算が出ています。
CGW:ひと月あたり数百万というのはすごい数字ですね。
菅野:コロナ禍の時期はリモート作業がメインだったので、それによるコミュニケーションレスがあって、今はそれが解消されていたりと、Asanaだけが会議費削減の要因ではないのですが、その一因であることは確かだと思います。
田中孝弥氏(以下、田中):まだ検証段階ではあるんですが、この調子でムダが削減されていって、よりアニメーション業務に集中できるようになったらいいなという希望が見えてきました。
アニメーター
田中孝弥氏
求人管理やリクエストフォーム、勤怠管理にも活用
CGW:プロジェクト管理が主な使い方だとは思うのですが、それ以外にAsanaを活用されている事例はありますか?
菅野:例えば、求人の応募者管理用のツールとして活用しています。ピーク時だと一日に7~8件の応募があるんですが、各自の面接の段階や担当者が誰かといったことを、Asanaで全部表示させられるので、一目でどういう状況なのかが把握しやすいんです。
菅野:また、もともとは社内へAsanaをアピールするために始めたものなんですが、ソフトとハードのリクエストフォームを作っています。こういうソフトやハードが欲しいという要望を入力してもらうと、タスクとして登録されるようになっているんです。
CGW:Asanaは利用体系が3プランあるそうですが、どのプランを利用されているのでしょうか?
菅野:現在はプロジェクトリーダーのメンバー5人ほどが「Starter」プランで契約しています。他のスタッフは現状では自分でスケジュールを動かす必要がないので無料の「Personal」プランを利用しています。 Personalだとタイムライン機能やルール設定が使えないので、リーダー達はそれらの機能が使えるstarterプランを利用しています。
ルール設定というのは、特定の条件を設定しておけば、それに従って自動的に処理をしてくれる機能です。例えば「勤怠管理表にタスクを追加すると、Googleカレンダーにイベントを作成する」といった処理が可能になります。
また、さらに1ランク上の「Advanced」プランで使えるワークロード機能にも注目して検証しているところです。ワークロード機能というのは、チーム全体のタスク量や進捗状況を一覧できる機能です。個人ごとにタスクを見ていくよりプロジェクト単位で見た方が判りやすい場合もあると思うので、導入を検討しています。
CGW:今後、さらにAsanaをこう使っていきたいというような予定はありますか?
菅野:経理の負荷を下げるために、今後は勤怠管理もできるように予定しています。また、ShotGridとAsanaのタスクを相互に紐付けて使えないか調査中です。ShotGridでイベントが発生したらAsanaに反映されて、Asanaで操作したらShotGridにも反映される、という状態を目指しています。
CGW:今回はありがとうございました。
TEXT_オムライス 駆
PHOTO_弘田 充
INTERVIEW_池田大樹(CGWORLD)