バンダイナムコフィルムワークスが選んだデータ管理の新常識!「Dell PowerScale」を導入した理由。
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』や『機動戦士ガンダム 水星の魔女』など劇場映画や人気アニメ作品を手掛けるバンダイナムコフィルムワークス。同社は2021年末、20拠点以上に分散していたアニメーション制作スタジオ(以下、スタジオ)を、現在の本社ビル「ホワイトベース」に統合・移転するとともに、データの一元管理を目的としてテクマトリックス社協力のもとDell PowerScale(以下、PowerScale)を導入した。
解像度の向上によるデータの肥大化、制作ツールの多様化による中間生成データの増加に耐えうる中央ストレージに必要な要素と導入の経緯について、IT戦略部のキーマン2人に聞く。
Dell PowerScale (アイシロン)とは?
Dell PowerScaleは、CGプロダクションや映像制作会社など、大規模な映像作品の制作に携わる企業にとって理想的なNAS(ネットワークアタッチドストレージ)ソリューションである。
膨大なデータをワンボリュームで一元管理できることから、企業は複数のプロジェクトを同時に効率良く進め、デジタル変革を加速できる。また、CPUやメモリなどを搭載したノードを複数組み合わせて構成するアーキテクチャにより高い性能を発揮できることに加え、数十PBまで容量拡張が可能で、容量と同時に性能も向上できるという特徴を持つ。PowerScaleは、高い管理性と性能、拡張性が求められるクリエイティブチーム、企業にとって、最適なストレージソリューションである。
PowerScale導入経緯
バンダイナムコフィルムワークスにおいて、PCセットアップやサーバー管理、各種システムの設計・仕様策定、運用に関わるIT戦略部。スタジオ統合に伴うデータ管理の設計や実働部分を担当したのが、同部門マネージャー 大作真平氏とチーフ 黒角隼平氏だ。
PowerScale導入以前は、20以上ある各スタジオにファイルサーバーを用意し、拠点ごとにデータを管理する状態が続いていた。同社では一部ローカル環境で作業した内容を除き、DCCツールのプロジェクトデータや各テイクのバックアップなど作品に関わる全てのデータをサーバーにアップロードする運用となっている。
そんな中、当時のアニメーション作品はApple ProRes 422 HQ形式が多く中間データを含めて各話500GB程度が目安となっていたが、近年求められる映像クオリティが高まるにつれApple ProRes 4444XQ形式の制作も行われるようになり、今では各話1TBを超えるプロジェクトも少なくないという。スタジオ間のデータ共有はVPNを通じて可能ではあったものの、データ容量が大きいことから協業のハードルは高く、動画チェックなども一度ローカルにデータを置いた状態で行われていた。
もちろん、課題は容量や転送速度の問題だけではない。IT戦略部にとって大きな課題だったのは、メンテナンスコストだ。スタジオの数だけメンテナンスを行うサーバーが用意されており、定型業務としてサーバー稼働チェックを行うだけでも一苦労。黒角氏によれば「1年に1度ビルの停電があり、20拠点の停電日に合わせてサーバの電源を入れ直して復旧をするだけでも本当に苦労した」とのことで、メンテナンス、データ管理両面から改善が求められていた。
制作拠点の統合に伴うミッション
制作拠点の統合にあたり、IT戦略部が最も大切にしたのは「統合によって不便になることが1つでもあってはならない」ということ。スタジオ統合そのものは全社的な意思決定ではあるものの、これに伴うサーバー導入に関してはIT戦略部が全面的にリードしていた。
最終的にPowerScaleを選定した理由は、高いパフォーマンスを維持したスケールアウトが可能なアーキテクチャを有していたから。統合のタイミングでは約400TBの容量が必要となっていたが、その後は更なるデータの大容量化も見込まれていた。また、各制作部門の繁忙期が一律でないことから、どんなタイミングでもスムーズにスケールアウトが可能なストレージを選択する必要があった。こうした背景から、大作氏が「かねてから狙っていた」というPowerScaleを、テクマトリックス社の支援のもとに導入。
「スケールアウトできる点が一番の魅力でした。ファイルサーバー容量が100TB以内に収まる場合は別の選択肢もあったと思いますが、弊社の場合は最大で400TB程が見込まれており、先々を見据えるとPB(ペタバイト)以上の数値も見えてきます。つまり、スケーラビリティが最も重要でした」(大作氏)。
従来型のNASストレージシステムでは、ディスクシェルフを追加することで容量自体をスケールすることは可能でも、IOPSやスループットなど実際のパフォーマンスは一定上限に収束されていた。一方、今回採用されたPowerScaleでは、ノードを追加することで容量だけでなくシステム全体のパフォーマンスもリニアに向上する仕様となっており、バンダイナムコフィルムワークスが求める将来性とも合致していた。
こうした経緯から、テクマトリックス社に相談が行われたのは2020年9月。その後、他製品を含めた製品選定を経て2021年3月にPowerScaleの導入を決定、そして2021年9月頃からサーバー移行がスタートし、スタジオ移転と並行しながら順次データを移行した。
その他スタジオ移転に伴うインフラ刷新と同時に導入したが、大作氏は当時を振り返って「何も問題なくスムーズに導入できました。サポートも丁寧で、運用開始後にも、追加で使用してみたい機能などあれば相談させていただいていました。」とコメント。テクマトリックス社の技術的なサポートの速度と精度には何度も助けられたと言い、導入後も細かくコミュニケーションを取り合いながら運用を進めている。
ワークフローを変更せず、快適なサーバー環境を構築
今回はスタジオ統合ということもあってサーバー名は新たに設定されたが、PowerScaleは複数サーバー名を引き継ぐ設定も可能であるため、ワークフローを一切変更することなく利用を継続することもできる。
移行の結果、特定の時間にサーバーが重くなるといったフィードバックを耳にすることもなくなり、従来はローカルにダウンロードしてから再生していた映像ファイルもサーバーから直接参照できるようになった。クリエイターは今まで通りの作業工程で、より速いサーバー環境を手に入れたことになる。
運用面で見ると、パフォーマンス監視およびレポート作成ツールである「InsightIQ」も優秀だった。
「これまではフォルダ容量を確認するのに、右クリックからプロパティを開いていました。数十万ファイルあると、集計だけでかなり時間がかかります。InsightIQであれば容量もすぐに分かりますし、毎朝稼働状況をレポートとして出力できるため、管理コストがグッと下がりました」(黒角氏)。この導入をサポートしたのもテクマトリックス社だ。
また、映像制作の現場において役に立っているのが「重複排除機能」。
これは複数ソースにまたがる冗長データを排除する機能で、自動的にストレージ容量を削減できる。「容量は2/3ほどに低減できています。映像業界で使用するファイルは画像や映像、テキストなどフォーマットが多岐にわたることから効果は限定的と思っていましたが、実際には大きな効果があり、驚きました。データの大きいクリエイティブ業界全般にオススメできる機能と感じました」(大作氏)。
またクリエイターサイドが、快適なサーバー環境を構築して欲しいと考えた場合にどういったアクションを取るべきか?という問いに対して大作氏は、
「日々の不満や要望は、ぜひ直接言っていただきたいと考えています。ただ、最終的には採算が取れるかどうか、費用面の議論も必要になります。このため、個々人から個別に要望を受けるよりも制作部門の総意として意見をまとめていただいた方が、我々としても実現に向けて動きやすいです」
と語っている。コンテンツの高解像度化や関わるクリエイターの数の増加を背景として、クリエイティブ業界におけるデータ容量は今後も増加の一途を辿る。管理方法の刷新は、すべての制作活動にとってプラスに働くはずだ。
Dell EMC PowerScale (アイシロン)に関するお問い合わせ
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TEXT_神山大輝/Daiki Kamiyama
EDIT_中川裕介(CGWORLD)/Yusuke Nakagawa