Nuke Artists Q&A | 学生からプロまで特徴的な作品づくりを手がけるアーティストたちにインタビュー
コンポジットソフト「Nuke」を軸に活躍する4名のアーティストに、普段の制作スタイルや直近の作品、得意技、そしてNukeを使う理由やお気に入りの機能について聞いた。
01 美術経験を活かしたショットワーク|星 観広/Mihiro Hoshi
星 観広/Mihiro Hoshi
Instagram:mihirohoshi
デジタルハリウッド大学の学部2年。幼少期からCGと基礎絵画に触れて育つ。普段は、将来映画系のCG会社に就職するべく、Mayaや3ds Max、Nukeなどを活用し、大学内での個人製作やチーム制作に力を入れている。
Q. 普段どういった作品を中心に制作していますか?
普段は、レイアウトからコンポジットまでを一人で担うシネマルックなショット制作を中心としています。フルCGショットだけでなく、実写素材を使ったVFX作品なども制作しています。それ以外では私物のシネマカメラを持って、友人と野外を撮影しに行ったりなどもしています。
Q. 直近で手がけた作品は?
直近の自主制作である『suburbs of Tokyo』では、東京の郊外をリアル調のCGで再現しました。こだわった点は、メインが見やすいかつリアリティのある構成を意識した点と、3DCG空間にもっと実写的な説得力を持たせるという目的で、画面内にNukeでのコンポジット時点での実写素材を含ませているという点です。
My new personal work!
— Mihiro Hoshi (@vfxhoshi) December 22, 2025
I created suburbs of Tokyo in 3D.
I used #Maya #3dsmax #vray #nuke #davinchresolve pic.twitter.com/RCYlVAHUUO
『suburbs of Tokyo』
同じく直近の作品である、『CUADRAT 2058』では、山奥にある未来の極秘研究所をCGで表現しました。こだわった点は、ライトやAtmosphereを駆使してメインの研究所を空間的や画的に最大限魅力的に表現しようとした点です。
また、シネマライクな表現を追求し、タイトルテキストの追加やDaVinci Resolveでカラーグレードしたこともこだわった点です。
『CUADRAT 2058』Personal Work : CUADRAT2058#3dcg #3dsmax #vray #nuke #davinchresolve pic.twitter.com/4q3SQjenx9
— Mihiro Hoshi (@vfxhoshi) November 5, 2025
Q. 得意技を教えて!
自分の得意なところは、自身の美術経験を活かしたショットワークとしての画づくりです。レイアウトによるメインの見え方や光と影を活かした空間表現、色彩表現が好きで、普段の制作でもレイアウトやライティングにこだわったりしています。
Q. Nukeを使う理由やお気に入りの機能は?
Nukeを使うようになったきっかけは、大学入学前からNukeの存在を知っていて、1年生の終わりごろに本格的なNukeでのコンポジットワークフローの勉強を始めたことです。
個人的なお気に入り機能は、flareノードです。コンポジットで、そのレンズに合ったフレアやゴーストを再現するのが好きで、flareノードはフレアをひとつひとつ細かくつくり込めるので、かなりお気に入りです。
02 Fixしない。コンポで詰める機動力。|Moff
Moff
Instagram:moff_editing_company
ポストプロダクションでオンラインエディターとしてキャリアをスタート。フリーランスとして2~3年活動したのち、会社を設立。フリーランス期間中にNukeとBlenderを学び、CG制作から最終完パケまでを主に手がけている。
Q. 普段どういった作品を中心に制作していますか?
主にMV、CM、映画のお仕事をしています。案件によって、オンライン/コンポジットのみを担当する場合もあれば、CGのみを担当する場合もあります。また、CGからオンラインまで、作品全体のVFXを一貫して担当することもあります。
Q. 直近で手がけた作品は?
直近では、ReFa「バイタルウェア」やPUMAの案件で、CGからオンラインの最終試写まで担当しました。特にPUMAはフルCG作品でしたが、Nukeを使用してコンポジットに力を入れることで、非常に短い制作期間ながら、なんとか完成まで持ち込むことができました。
Q. 得意技を教えて!
得意分野はコンポジットです。入口がコンポジットのため、「CGでこだわるべき箇所」 と「コンポジットで詰めるべき箇所」を判断しながら進めています。CGで最終形を固定するというより、コンポジットで詰めることで、フィードバックが大きい場合でも、できるだけ再レンダリングを行わずに、マップ等を活用してコンポジット側で修正対応できるよう心がけています。
Q. Nukeを使う理由やお気に入りの機能は?
Flameから入ったこともあり、同じコンポジットツールとして以前からNukeに強い興味がありました。実際に使ってみると、Nukeは3D空間の把握がUI的にしやすく、位置関係を掴みやすいと感じています。そのため、3Dを扱う案件ではNukeの方が有利だと考え、使用しています。
好きな機能はパーティクルとカメラトラッキングです。パーティクルは、Flameも使う自分にとって、雨や煙などを扱いやすい点が魅力です。カメラトラッキングもシンプルでわかりやすく、3D座標が得られるため、プロジェクションによるマッピングなどでレイヤーを配置しやすいところが良いと思います。
03 観察と試行錯誤をくり返す過程が楽しい|杉﨑亮太/Ryota Sugisaki
杉﨑亮太/Ryota Sugisaki
Instagram:ryota_vfx
www.linkedin.com/in/ryota-sugisaki
日本大学生産工学部4年。数学・情報工学を専攻。大学入学後に3DCGと出会い独学で学び、映像制作にのめり込む。最近はカメラにはまり始め、さらに表現の幅を広げている。
Q. 普段どういった作品を中心に制作していますか?
映画を意識したスケール感のある大規模シーンを中心に制作しています。プロシージャルな手法を用いた背景制作と、最終的に映像作品として成立する完成度の両立を重視しています。
Q. 直近で手がけた作品は?
オリジナル映像作品『Breath of the Ancient Earth』を制作しました。HoudiniやGaeaによる地形生成とスケール設計を軸に、静かで力強い世界観を表現しています。Nukeではフォグを重ね、奥行きやレイヤー感を演出しました。
Personal Work『Breath of the Ancient Earth』
— Ryota Sugisaki 杉﨑 亮太 (@Suggybro) November 30, 2025
Software: Houdini, Redshift, Blender, Nuke, Gaea, ZBrush, Photoshop#houdini #3dcg #sidefx #b3d #blender #redshift #nuke #gaea pic.twitter.com/tDoukAe357
Q. 得意技を教えて!
観察と試行錯誤をくり返す過程そのものを楽しめる点です。制作では毎回壁に直面しますが、方法を調べたり力業で突破したりしながら表現を詰めていきます。レンダリング時に、これまで届かなかった表現が実現した瞬間に大きな高揚感を覚えます。
Q. Nukeを使う理由やお気に入りの機能は?
Houdiniでレンダリングした素材を、より実写に近づけるために合成工程の重要性を感じたことがきっかけです。映画VFXのワークフローを学ぶ中で、Nukeが標準的に使われている点に魅力を感じ、使い始めました。
気に入っている機能は、画像や映像素材をカードとして3D空間に配置できる点と、ノードベースで処理の意図を明確に管理できるところです。試行錯誤しながら調整する作業でも、後から見返しやすい点がとても助かっています。ほかにも機能がたくさんあり、一度使うともう手放せなくなります。
04 個人製作でも振り切るVFX|大槻直貴/Naoki Otsuki
大槻直貴/Naoki Otsuki
Sony Pictures Imageworksバンクーバーにて、フルタイムのリード・コンポジターとして活動。2020年に映像制作チーム「Flying Chorizo Pictures」を結成し、インデペンデントのホラー短編映画などを企画から撮影、Nukeを使ったコンポジットメインのVFX処理まで行う。
Q. 普段どういった作品を中心に制作していますか?
オリジナルのショートフィルムのほか、仕事ではSony Pictures Imageworksのリードコンポジターとして、ハリウッドのいわゆる大作実写映画の制作に携わっています。リード職になってからは、ショット作業に加え、プロジェクト全体に幅広く関わるようになりましたが、より広い視野で作品を見る事が出来る、とても興味深いポジションです。
Q. 直近で手がけた作品は?
自主制作の作品で、『Wheels of the Devil』という短編ホラー映画を完成させました。
ほぼ全てのショットにインビジブルVFXを施していますが、中でも「車が崖から落ちる」ショットでは、主にコンポジット作業にて車種を差し替えており、プレートの破壊表現との馴染ませや大量のペイントワークなど、まさにパワーコンポジティングな作品です。
他では、YouTubeのコラボ企画でキャンプ映像を「撮影」した動画もこだわりぬいているので、ぜひ前情報なしでご覧ください!
©Flying Chorizo Pictures
Q. 得意技を教えて!
VFXと撮影の両方を得意としているので、それぞれを活かした制作はもちろん、コンポジットの知識がカメラでの撮影に使えたり、撮影の知識がコンポジットに役立ったりと相乗効果でのクオリティアップも生み出せていると思います。より良い映画には「お話」も重要なので、今後はシナリオの強度を上げていきたいですね。
Q. Nukeを使う理由やお気に入りの機能は?
業界標準というのももちろんありますが、一つのショットを徹底的に深堀りしてコンプできるのが使う理由です。ノードベースの強みでもありますね。
お気に入りのノードはFrameHoldです。受け取った映像を一度静止画にして手を加えるなど、コンポジットで力技をすることも多いので……(他部署のみんなごめん)。機能全般では、Viewerのプレビュー用Gainスライダーなしではコンプできない、という意味でお気に入りですね!