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中二病でもギークでも戦場でくじけない。健やかなる「きむら式ゲリラ的手法」 〜映像作家・きむらえいじゅん氏インタビュー(後編)

記事の目次

    インフルエンサー、YouTuber、フォロワー数●●万人、バズる、映える……。これらは、昨今のWebマーケティングにおいて欠かせない用語の一部だ。3DCG&デジタルクリエイターがSNSをきっかけに活躍しているのは確かである。今回インタビューを行なったきむらえいじゅん氏もまた、ユーモアに溢れた独特なテイストがSNSで話題となり飛躍を遂げたクリエイターのひとりといえる。しかしこのように書くと、SNSで話題になることが「成功への鍵」だとミスリードを起こしてしまいそうで甚だ心配である。大切なのはSNSでバズらせることではなく、たとえくじけやすくても、心が折れることなく楽しく自分らしく表現し続けていくことではないだろうか。前編に続き、きむらえいじゅん氏のユーモアに溢れたインタビュー(後編)をお届けする。

    きむらえいじゅん/Eijun Kimura

    映像作家
    Twitter:きむらえいじゅん[.mov] (@kuro_40)

    中二病でもギークでも戦場でくじけない。健やかなる「きむら式ゲリラ的手法」〜映像作家・きむらえいじゅん氏インタビュー(前編)

    良いものが作れた時点ですでに100点。みんなが喜んでくれたら200点

    CGWORLD(以下、CGW):前編ではきむらさんのこれまでの経歴について伺いました。後編では、もう少し具体的にきむらさんのお人柄についてお聞かせいただけたらと思います。現在は大学やセミナー等でお話しされることがあるとのことですが、完全にフリーランスとして活動されていらっしゃるのですか?

    きむらえいじゅん(以下、きむら):はい。フリーランスとして映像制作をしており、本当にありがたいことに毎日忙しくお仕事をさせていただいています。また、映像の仕事だけではなくARのお仕事なども手掛けており、そういったプロジェクトに参加させていただくこともあります。

    CGW:どこにも属することなく、ご自身のキャリアをお独りで築いて来られたんですね。

    きむら:そうですね。もう本当に人のご縁でしかなく、運が良かっただけという感覚が強くあります。まったく努力しなかったわけではありませんが、「努力と運の配分」でいうと9割は運で、少しでもマシな方向に向かうために1割の「何か」をしなきゃいけないという気持ちで。もはや願掛けに近いかもしれませんが。

    シャボン玉室外機

    CGW:「運を引き寄せる力」は才能でもあると思います。人とご縁に感謝する姿勢をはじめ、「このやり方は自分に合っている/合っていない」といった物事への向き合い方や、ご自信のことを客観的に見て肯定もするし否定もするし、自分にとってベストなものを取捨選択していらっしゃって、やはりそういう素直な人の所には良い連鎖が生まれるのかもしれません。

    きむら:ありがとうございます。しかし実はその反面、かなり天邪鬼な性格だったりもするんです。例えば実力のある人の話を聞いて、素直に「すごい! なるほど!」と思う一方で、「だけど、それって実際どうなんだろう」と斜に構えた中二病的な自分が出てきたりするんですよ。だから大学やセミナーでお話しさせていただく際には、「僕の話を聞いて ”すごい” と思った人は、同時に ”うるせえ!”と思うことを忘れないでほしい」と言っています。人の数だけ正解と真理があるし、僕が教えた方法が必ずしも正解ではありませんからね。自分なりにいろいろとやってみた上で、その都度「自分に合ってるか合ってないか」を判断して、自分に合うように修正していけば良いんじゃないかなって。

    CGW:人にはいろんな面がありますからね。ベストな環境、ベストな手法を見つけるまでは試行錯誤するしかないですよね。ところで、お仕事が軌道に乗ってきたきっかけはどのようなものだったのですか?

    きむら:きっかけはいくつかあります。まず大学生のときに初めて雑誌のプロモーションのお仕事をさせいただいてから、しばらくは「この仕事、すごく面白い!」と思って、なるべく色んな所に行ったり人に会ったりとかして、とにかく仕事の毎日になっていました。「大学生で映像の仕事してる俺かっけー」みたいな感じで調子良くやっていたのですが、大学を卒業してしばらくすると次第に仕事の依頼が減っていき、完全に途絶え、貯金もなくなった上にパソコンまで壊れてしまい(笑)。

    CGW:そういうときに限って、なぜか不運なことが続いたりしますよね。

    きむら:そうなんですよね(笑)。その後しばらくして、運良くドラマのお仕事をさせてもらえる機会があり、それを機に少しずつ仕事の依頼が増えていきました。でもやはり、2019年にTwitterに投稿した動画が少しバズったことがきっかけとしては大きかったですね。それ以降、Twitterに投稿した動画が話題になるタイミングでお仕事の依頼をいただくことが多いように思います。

    CGW:YouTubeよりもTwitterの方がきむらさんには合っているように思いますか?

    きむら:僕としてはどちらも好きなんですけど、YouTubeとTwitterってだいぶちがうんですよ。YouTubeやTikTokは「おすすめ」に載るかどうかが大きくて、それがホットなテーマや再生数、高評価などを基準に割と機械的に決まっている印象があって。だから、YouTubeに最適化する工夫をされてる動画はおすすめに載りやすく、人が集まってきてさらにおすすめされやすくなる、という好循環が生まれていると思います。そういう点で、YouTubeさん的に僕はおすすめしにくいだろうなと(笑)。一方、Twitterはほぼ人力による拡散なんです。しかもとてもシビアでふれ幅が大きくギャンブル的というか(笑)。それゆえにTwitterを見てる人はとても目ざとくて、色んなところを鋭く見ている気がします。だからあまり自信のない動画を投稿すると、興味をもってもらえなかったりするんですよね。

    CGW:Twitterは本当に独特ですよね。人間心理が色濃く反映されますからね。

    きむら:はい。Twitterって良くも悪くも人間くさくて面白いですよね。良いものには良いと言うし、そうではないものには興味をもたない。「これぞネット」って感じがするし、「人間のカオス」を垣間見ることができるTwitterがすごく好きです。

    CGW:面白くもあるし残酷でもありますけどね。例えばタイムラインに流れてきた投稿に「いいね」をしても、投稿者のプロフィールをわざわざ訪れて過去の投稿までさかのぼって観るということまではあまりしないかもしれません。刹那的に「いいね」をしただけですぐに忘れてしまうことがほとんどですから。いくら何十万リツイートされたとしても、投稿者のことを深く知ろうとする人は少ないかもしれません。

    きむら:そう。だからバズるとかバズらないとかって、喜ぶものではあるけど落ち込むものではないんですよね。運よくバズったときは「やったー!」って素直に喜べば良いんだけど、それは絶対的な評価じゃないってことも分かってるし、渾身の力を込めて作った動画がバズらなくても、自分が納得したものを作れたんだったらそれはもうそこで完結しているんですよ。「良いものが作れた時点で100点、みんなが喜んでくれたら200点」みたいな。そんなふうに自分に言い聞かせています。

    CGW:そうですね。他者の評価に気を取られず、淡々と自分を磨いて行けば良いんですよね。とはいえ、SNSの反響によりご自身の考え方や周囲の反応に変化はありませんでしたか?

    きむら:たくさんあります! 内面的な変化では、「人に喜んでもらうこと」と「自分を喜ばせること」についてちゃんと考えるようになりました。

    CGW:というと?

    きむら:一度バズって以来、「どうすれば伝わるか」とか「どうすればもっと喜んでもらえるか」を考えてたくさん動画を作ってきたのですが、あるときふと「楽しくないな〜。来年はもう動画作りたくないや」と思ったことがあったんですよ。要は「自分が作りたいもの」ではあるけど「自分が本当に作りたいもの」ではないというか、人の目を意識したものに重心が寄りすぎてしまって、イップスみたいになっている感じがあって。もっと自分がやりたいと思う要素を混ぜて行こうと心機一転して動画を作りはじめました。それが『ポストイット』や『タワー PCマンション』です。

    CGW:たしかにそのあたりから作風が変わったというか、ブレイクスルーして制作を楽しんでいる感じがします。

    きむら:はい、楽しんで作っていますね。特に『タワーPCマンション』の制作は、ブレイクスルーという点では大きかったです。「自分がやりたいことをやれるだけ詰め込んでみよう」と思って初めて制作することができた動画なんです。すごく時間がかかりましたが、やって良かったなと思っています。

    タワーPCマンション

    CGW:このあたりからすごく輝きを放っていますよね。見ていても楽しいし、Twitterにおいては数字に如実に現れているように思います。インスピレーションを受けてからアウトプットするまで、制作の過程で大きな変化があったのですか?

    きむら:いえ、そんなことなくてむしろすごく単純ですよ。『タワー PCマンション』の場合は「タワーPC」と「タワーマンション」という単語をかけ合わせたら面白いなっていうだけで(笑)。あとは見た目的に「あそことあそこの間にUSBが刺さりそうだな」っていう感じでちょっとずつ肉付けしていく感じです。こんな感じでインプットからアウトプットまでの方向は各動画ごとにいろんな道がありますが、だいたいどれもこんな感じです。

    CGW:愚直なまでにシンプルを極めたんですね(笑)。

    きむら:はい、本当に(笑)。その最たるものが『アイスの氷識』なんですけど、もう本当にシンプルで何も考えていないんですよね(笑)。夏、すごく暑いし多分頭が朦朧としてたんでしょうね。標識がアイスみたいに見えたっていう、ただそれだけなんです。「アホだな〜と思う要素を入れられるだけ入れたらどうなるんだろう」と。それでみんなも面白がってくれたら良いなと思って。

    氷識アイス

    CGW:モチーフも見慣れたものが多く採り入れられているので、一目瞭然で分かりやすいのですが盲点を突いてきますよね。

    きむら:「身の回りにあるもの同士を掛け合わせてみる」という感じで、脳トレ感覚でやってみるのがポイントです。僕の動画の場合、字面にするとマジでくだらないことばかりだし、言葉で説明してもこういう面白さって伝わらないじゃないですか。それを「伝わるレベルで表現することができたら、人に伝わる」と言うか。まあ当たり前なんですけど(笑)。芸人さんの間でよく言われることらしいのですが、「自分が面白いと思っていることはずっと変わらないんだけど、伝える技術が上がったことで面白さが伝わるようになった」っていう話があって。だから、自分が面白いと思ってる時点でそれは面白いんですよ。人に伝わるレベルにクオリティが達したときにはじめて「面白い」と思ってもらえる、っていうだけなんだなと。

    CGW:人に伝わるまでの過程で、クオリティのティッピングポイントのようなものがあるんですかね。

    きむら:「しきい値」のようなものですよね。いや〜、もうグラデのような感じで毎回ほんとうに手探りで、「伝わってくれー!」と全開で思いながら作っています。「これはちょっと伝わりにくいかな」とか「内容が薄すぎるかな」ってときもありますし、あまり難解なメッセージを入れすぎると見てる人との距離が開いてしまうこともありますし。見てる人が納得して腑に落ちるようなかたちになるよう気を付けています。

    CGW:見慣れたモチーフは、腑に落ちるという点で有効に働いてくれますよね。でも逆に、ポイントが細かすぎると逆にわからなかったりしそうですね。

    きむら:その点でいうと『Apple Watch』の動画は反面教師にしてる動画なんですよ。これは僕の「作ってみたい!」を詰め込んで、見てくれる人に配慮せず作ってしまった動画なんですけど、やはり見づらいんですよね。「何となく格好良いけど、何が起こっているのか分からない」とか「で、結局何なの?」っていう感覚ってあるじゃないですか。

    AppleWatch非公式拡張MOD

    CGW:特に何も起こらず、「ただ格好良いことがしたかっただけなのかな?」ってやつですね。

    きむら:はい。そういった「よく分からないもの」をなるべく少なくする必要があるのかなと。ポップソングのように「100%誰にでも伝わるべき」という考えは行き過ぎですが、みんなに見て欲しい動画の場合は「感覚的な部分」と「納得できる部分」の両方があったら強いのかなと。

    CGW:しかし、どれも「個人的すぎて人には言えないくらいバカバカしい想像」をかなり真剣に映像化していますよね。

    きむら:そうですね(笑)。でもそういうのってすごく大切だと思うんですよ。どこかに遊びに行って得られる「楽しい」という感情って限界があるじゃないですか。例えば毎日ディズニーランドには行かないし、行ったとしても楽しさってどんどん下がって行きますよね。でも日常の本当に些細なこと、……例えば「変な音のおならが出た」とかで笑えるって、すごくエコだしサステナブルだなと思って(笑)。排出したとしても、せいぜい自分から出てくるガスくらいですし。

    CGW:そのとおりです(笑)。

    きむら:みんなそれぞれの暮らしをしていて、僕が経験し得ないことを日々経験してると思うんですよ。例えば「毎日電車で通勤する生活」は、僕にはできない生活でレアな体験なんですよね。「毎日会社に通う」という日常的な体験があるからこそ分かるものがあり、考え方によっては希少性の高い体験になり得るわけで。それが「退屈な日常」なのであれば、見方を変えて面白がるしかないんじゃないかなって。

    CGW:物事は捉え方次第ですからね。きむらさんはきっと独り遊びが上手なんでしょうね。

    きむら:そうですね。独り遊びは得意ですね。ちょっとした欠点でもあるのですが。

    CGW:欠点? なぜですか?

    きむら:友達とあまり遊びに行かないっていうか……。たま〜に遊ぶぐらいで。

    CGW:それって、きっと独りで十分楽しいからですよね。

    きむら:そうなんですよね、結局(笑)。独りの楽しみ方っていっぱいありますからね。僕のやっていることって「日々の暮らしに存在する ”退屈” のウェイトを減らす作業」だったり「退屈なものを少し面白くする作業」だったりするんですよね(笑)。この記事を読んでいるみなさんも、信号の待ち時間とかを使ってぜひ妄想してみてください。それで退屈な時間が0,1秒でも減ったら「良い状態の時間」が増えるじゃないですか。そういう感じでみんなも動画を作ってくれたら、それはそれですごいことだなと思います。

    CGW:今回、きむらさんにインタビューさせていただけて本当に良かったです。きむらさんの動画を拝見して、「どうしてここまでふり切ることができたんだろう」とずっと思っていたんです。きむらさんの動画にシンパシーを覚えるというか、自分の脳内だけで再生される個人的な映像で、かつ我ながらくだらない想像だなと却下されたはずの世界が、惜しげもなく表現されているんですよ。それもごく短い動画であっさりと。感動すら覚えました。誰しも一度はこういう想像をしたことがあると思うんですよね。

    きむら:ありがとうございます(笑)。やっぱり「僕の動画を見て喜んでほしい」という気持ちが大きいんですよ。僕が道化みたいに見えたとしてもそれでも良いかなって。「結果良ければすべて良し」みたいな。

    CGW:きむらさんは中学時代に、人からどう見られるかをすごく気にされていたじゃないですか。「努力していないからできなくて当然」と斜に構えるところがあったり。でもその反面で、自分を見て笑ってほしいという思いが共存しているんですね。

    きむら:そうですね。どちらも「人の目を気にする能力」だと思うのですが、だったらなるべくアグレッシブな方向にその能力を発揮させたいですよね。「人の目を気にして消極的になって逃げる」のではなく、どうせ人の目を気にするなら、その能力を利用して「どうやって人を楽しませようか」と考えるみたいな感じに。

    ▲きむら氏の制作環境/PCはMacBook Pro、ソフトはAfter EffectsとCinema 4Dを使用。撮影にはSONYのアルファ7S III、iPhone等を使用

    CGW:最後に、これから挑戦したいことについてお聞かせください。

    きむら:やりたいことはたくさんあるのですが、直近で挑戦してみたいことは「キャラクターを作って動かす」ことです。アニメが好きということもありますし、人間を使って動かすことができたらできることがもっと増えるだろうし。とにかく僕の動画に圧倒的に足りていない要素なんですよね。ですので、今はそのあたりをいろいろと勉強しています。あと、クリエイターのみなさんと仲良くなりたいです。いつも独りなので。

    CGW:SNSなどでフォロワーが多いと、顔が広いと思われがちですよね。

    きむら:本当に。普段、部屋から出ないので、クリエイターの皆さんといろんな絡みができたら良いな〜って思います。あと、これからやりたいことが変わっていくかもしれませんが、それでもずっと、飽きるまで動画を作り続けたいなと思っています。

    CGW:これからますます技術が味方してくれるようになりますからね。きっと、もっといろんなことができるようになるでしょうね。楽しみですね!

    きむら:本当ですね。この時代に生まれて良かった、って思います。

    CGW:新作動画をはじめ、これからのご活躍を楽しみにしています。きむらさん、今日はありがとうございました。

    きむら:今まであまりお話ししてこなかったことを話すことができて良かったです。こちらこそありがとうございました。

    INTERVIEW&EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE

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