建築パース業界のリーディングカンパニー、インカー・ドローイングCGworksが2022年8月に業務提携を締結した。「外観のInkar、内観のCGworks」とそれぞれの得意分野を活かしつつ協業を図るという。「業務提携」というと文字通りともに業務で協力するイメージがあるが、両社の場合はそれにとどまらず、3Dデータの価値を高め、CGパース業界で働くクリエイターの地位向上を目指したいという。この度、両社代表にその目的を対談で詳しく語ってもらった。

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    顧客を魅了するエンターテインメント建築パースを目指して

    ――まずはお二人が代表を務めていらっしゃるそれぞれの会社のプロフィールを教えていただけますか?

    CGworks・金澤勇輝代表(以下、金澤):弊社は建築内装に特化したCG制作会社で、3DCGを活用したパース制作を行なっています。それと、パース制作のほか、Maxon出身の社員がCGパースのコンサルティング業務も行なっています。

    ――金澤さんは最初にどのようにCG業界に入られたのでしょうか?

    金澤:僕は大学のときにダブルスクールで専門学校に通って、設計者を目指す過程で3DCGを会得しました。卒業後はフランスはパリで建築家の堀内功太郎さんの事務所に入ったのですが、ビザが出ずに3か月余りで帰国し、スペースラボの創業期メンバーとして23歳で取締役兼株主になり、その後9年半ほど勤め、代表を務めたあと、2019年に独立をすることになりました。それを聞いた不動産テックの株式会社アズーム3496/グロース)から「日本一のCGパース制作会社」を創ることを前提に出資のお話をいただき、共同出資というかたちでCGworksを設立したという経緯になります。

    株式会社CGworks

    代表取締役:金澤勇輝
    cgworks.jp

    ――続いて、インカー・ドローイング(以下、Inkar)のご紹介をお願いします。

    Inkar代表・梶野潤代表(以下、梶野):弊社は「建築パースにエンタメの要素をもち込みたい」というビジョンを掲げた大阪の会社です。2006年に個人事業主として独立し、2012年から法人化しました。

    インカー・ドローイング株式会社

    代表取締役:梶野 潤
    inkarinc.com

    ――梶野さんはどのようにCGのキャリアを積まれてきたのでしょうか?

    梶野:最初は1995年にゲーム会社「電脳映像製作所」に就職し、3d studio R4(現在の3ds Max)を使い始めました。PCの電源の入れ方もわからないというスタートから、テクスチャのつくり方とモデリングのつくり方を並行して覚えていきました。最初に手がけたゲームはプレイステーションの『ダークメサイア』(1998年発売。発売元:アトラス)というダークな世界観のゲームで、背景の6割ほどのデザインと制作を担当しました。その後、世界観をさらにホラーにした『デスピリア』(ドリームキャスト用ソフト。2000年発売。発売元:アトラス)でも背景の7~8割を監修、自分自身でもデザインからアニメーションまでを担当しました。そこから時代が変わり、規制の関係上から制作環境が厳しくなったこともあり、背景制作から現実の建築業界に関わる仕事へと軸足を移そうと思いました。そこで背景制作のノウハウを建築パースにもち込もうとしたんですが、この界隈を調べていて非常に驚かされました。

    ――何があったのでしょうか?

    梶野:建築パース業界はゲーム業界と比べるとグラフィックの質が圧倒的に古かったんです。「ゲームグラフィックがあれだけ日進月歩していたのに、パース業界は時代に取り残されていいのか?」と僕自身の心に火が点きまして(笑)。もちろんそこには要因のひとつとしてゲーム業界とはちがう建築業界特有の制約もあったのですが、それにしてもそこに縛られ過ぎていると感じました。当時世界の同業者を見渡すと、ドイツに「レンダータクシー」(rendertaxi)という会社があり、ここは非常に没入感のある建築パースをつくっていました。なので、日本でもやろうと思えば建築もゲームと同じく1枚の絵の訴求力でプロジェクトを引っ張ることができると考えたんです。そんな思いをもちながら大阪のパース制作会社で4年働いたのち、独立をしました。その後、Photoshopを使ったレタッチワークと3ds Maxの二刀流で仕事をしてくなか、徐々に大きな建築の案件をいただけるようになり、自分のビジョンが固まっていきました。

    ――梶野さんのビジョンとは?

    梶野:ゲームで感じた熱量やスピリッツをパースCGにももち込みたかったんです。例えばですが、『グランツーリスモ』や『ウイニングイレブン』などのスポーツゲームではオープニングムービーに試合前の会場の高揚感や選手の熱量といったエモーショナルな描写を必ず盛り込みます。スポーツやイベントのCMでも同様です。そうした臨場感を建築パースにももち込みたかったんです。そうしたビジョンをもって徐々に技術をブラッシュアップさせていきながら大規模コンペで指名がかかるようになり、2021年ついにトヨタ自動車のレース場・富士モータースポーツフォレストでそれが実現させることができました。

    富士モータースポーツフォレスト、全景CGパース制作/Inkar

    ――この画像はCMでも使われていましたね。レース車両やライトアップなど、そこで開催されているかのような臨場感が伝わってきます。最初にお話された、「建築パースにエンタメの要素をもち込みたい」というビジョンの内容はこれだったんですね。ゲームや映画で言うところのコンセプトアーティストのような存在であってほしいという。

    梶野:はい。本来、建築パースはコンセプチュアルであって欲しい願望があります。設計士の先生とパースをつくる人が並立して世界観を落とし込みながら、その土地との調和性や必然性を考え、周囲の理解を得ながらそれを技術的に落とし込んでいけたら理想的です。現に、海外では既にそういうながれが早くから構築されており、日本もいずれそういう潮流が生まれる可能性は感じています。

    ――日本の建築業界ではおっしゃったような海外の事例のようなことがあまり行われていないのでしょうか。

    梶野:日本のパースはCAD図面の延長で補足資料という扱いが多く、線画に写真を貼るようなイメージのものが多い印象です。光と影の演出や、各素材の象徴的な表情が建物自体の厚みに繋がると思うんですが、パースとなるとなかなか。アナログの頃は巨匠の筆で温かみや質の豊かさを実現しておられましたが、3DCGの時代になると数値で合わせてほしいと言われてしまい、無機質なものになりがちです。そういった絵は説明用としては機能しますが、施主の気持ちからは乖離することもあります。

    金澤:この業界には「内監提出用」という言葉があり、資料として一応入れておく、みたいなレベルでした。それが、僕がこの業界に入った2009年頃から徐々に綺麗なCG見本を入れるようになっていきました。

    梶野:徐々に変わってきましたよね。ただ、3DCGを始める若い方の多くはやっぱりゲームや広告の方に進むので、これから建築パースやビジュアライゼーションに興味をもって働いてもらえる環境をつくるにはどうしたらいいかと考えていたんです。そうした中、お互いにそれを考えていた我々が出会ったというながれがあります。

    東急歌舞伎町タワー内 ホテル「BELLUSTAR TOKYO」ロビーCGパース制作/CGworks

    業務提携と業界団体設立への思い

    ――おふたりはどのようなかたちでお知り合いになったのでしょうか?

    金澤最初は確か、2018年の忘年会ですよね。CG会社の社長が40人くらい集まる交流会でした。でもその中で建築系は数人しかいなくて、「勢力としてはまだまだ小さいですが、お互いに頑張りましょう」なんてお話をした覚えがあります。

    ――そのころ、Inkarはもう建築パースでは有名な会社だったんですよね。

    金澤:そうですね。CGarchitectという、パース界隈で有名なコンセプトビジュアルを掲載しているサイトがあるのですが、そのレベルのCGパースをつくれるのはInkarさんだけだと僕は思っていました。絵の中にストーリー性をもたせたレタッチができて、雰囲気をしっかりとつくられているんです。僕らは内装のパース屋なので、またちがった刺激を受けました。

    ――建築系といっても、Inkarのような外観の会社とCGworks社のような内装とでは全くちがうんですね。

    梶野:そうですね。まずクライアントがちがいます。僕たちは組織系の設計事務所さん、ゼネコンさんからの依頼が圧倒的に多いです。内装やディスプレイをつくることになると勘所がちがうので、インテリアの業界のパース屋さんにお願いされることが多いです。

    金澤:それぞれに大きなコンペがあります。納期も予算もまったく異なりますね。

    ――そしてこの度、両社が業務提携を締結というプレスリリースを発表されました。

    梶野:ご多分に漏れず、弊社もコロナ禍の影響を受けまして、2020年5月の売り上げは相当落ち込んだのをきっかけに、本格的に“企業”にしていこうと考えました。「いつか機会がきたら」と、それまで溜め込んでいたアイディアをひとつずつ動かしていくわけですが、そのひとつが他社との協業でした。企業にするというのは個人事業主の延長線上ではなく、その仕事をきちんと産業にしていかなければなりません。それを実行する際、横の繋がりが不可欠です。それも、足りないリソースを補ってくれるというよりも、同じ意識をもって向かっている関係の会社がいてほしい。そう考えたときに思い当たったのは金澤さんしかいませんでした。そこで電話をしたところ、金澤さんもそのとき同じ考えを抱いていたみたいで。

    金澤:ちょうどそのときに、僕はCGパースの業界団体をつくれないかと考えていたんです。「日本CGパース協会(仮)」のような協会ですね。その理事は本当にパースに熱い人に就任してほしいと思い描いていたうちの1人が梶野さんでした。

    Tamagawa Takashimaya S・C、GRAND PATIO CGパース制作/CGworks

    ――業界団体をつくろうと思ったのはどんな思いからでしたか?

    金澤:ひとつにはCGパースクリエイターの地位を向上させたいという思いがありました。僕自身、前職ではクリエイティブで1か月以上連勤や1週間の泊まり込みをした経験があったり、取締役になってからも人事評価をしたり会社説明会を開いて新人を育てたりしても、他所の業界の新人クラスしか報酬を貰っていませんでした。悪いことに、それが当然だと思っていたんです。

    ――クリエイターが好きなことを仕事にすると、あまり報酬に報われなくても満足してしまうという話は他の業界でも聞きますね。

    金澤:梶野さんと直にお会いして話した中でも裁量労働制の問題に関する話題が出ました。「好きなだけ描いていい」とか「泊まってでもやればいい」という労働の仕方は、もうこの先は通用しません。ある仕事を請けたときに何時間でやるべきかを理解すれば、仕事そのものの価値が上がってくると思います。僕もクリエイター出身なので、寝ずにモノづくりをした経験があるし、その思いも理解もしています。ですが、きちんと休みを取って同じことができる方が、会社全体としては強くなれます。

    ――何か良い方法はないものでしょうか。

    金澤:CGworksでは社員1人1人に理解してもらうように教育しています。上から言っても本当の意味で伝わりませんからね。弊社ではスタッフに対して全体会議で販管費の内訳とか売上とかを毎月説明をしています。そうすることでコスト意識が皆に染み渡るわけです。28歳のCGパース制作部の部長は損益計算書をつくれるまでになりました。こういった取り組みを包み隠さず梶野さんにお話したところ、大変共感してくださって「一緒にやりましょう!」と一気に話が進みました。

    梶野:僕自身もつくり手からスタートしているので、どうしても手を入れすぎたり、時間オーバーしてしまったりする構造がまだまだあって、そのあたりは金澤社長に学ぶところが非常に大きいです。上場企業のスタイルで仕事をされていて、レギュレーションに対する覚悟のもち方が全然ちがいます。弊社としては全社を挙げて勉強しないといけないところだと思います。そういった事柄は、「仲の良い会社がこうやっていたから」と伝聞するだけではスタッフ11人に徹底されないと考え、協業というかたちに進めました。自分の会社のためだけではなく、協業してる会社(仲間や同志)のためにルールを守る意識をつくる。クリエイティブな部分での実績のつくり方はそれなりに経験してきましたが、次はビジネスで結果を残そうとしていたときに、今回のお話を金澤社長からいただきました。プレスリリースで業務提携の目的のひとつに「ビジネス視点をCGworksで、ものづくり視点をInkarで」と書きましたが、そこにはこうした背景がありました。

    ――業界団体を設立したら、どんなことを進めていく考えでしょうか?

    梶野:まだ計画段階ではありますが、ひとつ考えているのは、金澤さんが社内に対して行われているビジネス教育をさらに推し進めて、オープンソース化させること。そして映画やゲームの業界のようになるには、金銭だけではなくモノのつくり方をどんどん開示していくことで仲間を増やし、業界の底支えをしていく必要があります。もちろん守秘事項はそれぞれにあるでしょうけれども、少なくともクリエイティブに関する部分と、どうやってお金のすり合わせをするかは横の繋がりがある方が広がりやすいので、協会を通して広めていきたい考えです。

    金澤:お金の問題は本当に深刻で、先ほどの裁量労働の問題もそうですが、例えばある会社で働いていた人が独立すると「個人事業主だから」という理由で、同程度の仕事を値切られたりすることがあると聞きます。価格破壊に対抗するには、存在感や信頼感、見積もりの出し方を含めた遣り取りで価値を高めていくしかありません。協会員に相談していただければ、見積書のつくり方から契約書の読み方、ソフトの使い方、従業員の時給の出し方まで、すべてお答えします

    ――協会は個人事業主も受け入れる考えですか?

    金澤:もちろんです。そしてさまざまな会社さんに入っていただければと考えています。この業界の価値を上げていきたい想いをもたれている方々で共感いただけましたら、ご連絡をいただければ幸いです。

    ――先ほど、パース業界を目指す若者が割合として少ないというお話がありましたが、そうした協会が存在してくれれば、交流や仕事のきっかけづくりにもなり、若者も安心して目指すことができるようになるかもしれませんね。協会ができることで、今までは各社で門外不出だったようなことが明らかになり、弱い立場の人が言い値で依頼されるようなことがなくなる。

    金澤:その通りです。基本的にクリエイターは、自分のやりたいことだけをやれていられれば楽しいんですけれども、そのままだと画しか描けない人間のまま、個々人だけではなく業界全体が先細ってしまいます。最初は衝撃を受けるかもしれないけれども、そこを目覚めさせないと。

    梶野:そうした交流のなかでみんなで身につけたいのは、技術や金銭面もそうですが、絵づくりにおけるストーリー構築の仕方です。この建物で何が行われるのか、そこから想像することができるような絵づくり。それはこの仕事をする人全員が根本にもっていてほしいところです。弊社のホームページにも書きましたが、パースをつくるのは「ふるさと」をつくることに繋がっていくと思っているので、本来そういう仕事でありたいと考えています。

    「外観のInkar、内観のCGworks」協業のビジョン

    ――協業のメリットは他にどんなことがありそうですか?

    梶野:例えば大きな案件となると、それに合ったような添景をコンペ向けのワンオフでつくるわけですが、そのとき限りで使い切るのはもったいないほどの生きた素材がたくさんあるわけです。それを内観でも共有し使い分けるといったことができます。そのプロジェクトに対して、僕らがまず外観でコンペを取りに行き、並行する形で内観の方もCGworksさんがつくり上げると、より建築パースを産業としてもち上げることができます。

    ――8月に業務提携を発表されて以降、2社で協業した案件はありますか?

    金澤:これは協業でねらったというよりも、結果的にそうなった案件が複数あります。案件名は出せませんが、Inkarさんが外観のビジュアルを担当した大規模案件の内観のコンペのご依頼をいただくことが多いです。

    梶野:図らずも、外装のInkar、内装のCGworksというかたちが実現したのは嬉しかったですね。プレスリリースには「外観のInkar、内観のCGworks」、「両社提携によるブランド向上を図る」と書きましたが、弊社ではできないような内観の仕事をCGworksさんにお願いしたり、その逆をすることもあります。協業を結んでいる我々が、ビジュアライゼーションの部分を包括的にサポートする体制をこれからも図っていきたい考えです。

    金澤:そうすることでより3DCGモデルのデータ価値も上がっていきやすくなります。あとは、最近ではメタバース案件のご相談が本当に多くいただけるようになりました。そうしたときに、別ラインからそれぞれいただいたときに、両社で協力して担当することもできます。

    梶野:VRとかメタバースの案件はびっくりするぐらい引き合いが多いんですよ。特段、メタバースをつくると掲げていないにもかかわらず、ひと月に6~7件あります。それも、これまでまったくお取引がなかった企業からのお問い合わせがあるほどです。

    ――確かにリアルな建築CGのエキスパートであれば、バーチャルな3DCGの建物づくりもお手のものなわけですね。

    梶野:そうなんです。一見するとメタバースはゲーム会社が強そうなイメージがありますが、実は建築CGもメタバースと親和性が高いと思います。メタバースでいきなり世界を展開させようとしても、バックグラウンドとなるストーリーがないと盛り上がり方がよくわからず、戸惑われてしまいます。オープンワールドのゲームが盛り上がるのは、そこの下地がしっかりしていたり過去作の世界観がしっかりしているから。メタバースでも、建築パースで培ったコンセプトづくりで導入戦略をつくっていけば、盛り上がるオープンワールドがつくりやすくなるわけです。

    金澤:詳細はまだ公開できないのですが、実は弊社でメタバースの案件を抱えており、来年に納品予定です。それも業務委託契約ではなく、弊社にも権利をもてるかたちに契約をまとめました。それを実績として掲げると、より安心してご相談をいただけるようにるかと思います。これまで速度もクオリティも相当鍛えてきましたから、いざ表に出たときは他所に引けを取らない自信があります。

    ――メタバースやデジタルツインなどのながれから、ゲームエンジン含め複数の3Dツールを使いこなし、3Dデータをどう活用していくかという仕事も製造業では増えつつありますよね。海外ではそういう方たちを「3D Visualizer」という肩書で呼んでおり、日本の建築パース業界でも遅かれ早かれそういう方たちの存在感が増してくるのではないでしょうか。実際にメタバースの仕事が増えていると先ほどお聞きしましたし、スマートシティなどのながれもくれば、建築パース会社もこの数年で仕事内容も変わっていきそうですよね

    梶野:そうですね。そうすることで工業製品に携わっている方も入ってきやすくなるかもしれません。大学ではデザイン学科の中でグラフィック・インフォメーションに進む学生と、インテリア・工業デザインプロプロダクトに進む学生に分かれるのですが、メタバースは後者の学生さんに親和性が高いと思います。今後、3DCGの存在感はさらに高まってくるでしょう。

    神戸須磨シーワールド、全景CGパース制作/Inkar

    ――最後にCG業界を目指す学生や若者にメッセージをいただければと思います。

    金澤:経営者気質を意識して臨んでいただきたいなと思います。自分が進む道に対して「やりたいことができるからいいや」ではなく、その上できちんと対価やコスト意識をもっていかないと、自分の仕事自体が地盤沈下していってしまいます。若い人ほど情報収集・発信能力が高と思いますので、ながれが変わりつつあるこの時代に対して柔軟な頭でそれらを活かし、僕らにはないようなものを創り出していただけたらと思います。

    梶野:これから3DCGを生業とする方たちは、自分たちはデジタルにおける第一次産業であるという認識を強くもっていただきたいと思います。現実の建物をつくるときには木を伐って柱を建てるように、3DCGや設計の現場ではモデリングデータが原材料になるわけです。今後はNFTなど資産面でも、工業デザインの分野においての3Dモデルのあり方が変わってくると思います。どのツールを使える/使えないではなく、そのモデルデータをどう活かすかの考えが先にあって、その上で最適なツールを選択する時代になると思います。また、AI化が進めば進むほど、選ぶ言語の語彙力や人への配慮など、人間性を求められてきます。そうした人間力を高めつつ、第一次産業としての重さを自分の中でいかに取り込むかを考えてもらいたいなと思います。そんな方たちが僕たちの業界に入っていただければ、非常にありがたいです。僕らも今、学生さんに人気のゲームや映像に負けないよう、環境を整えて参ります。現在、3DCGを勉強している方たちはぜひともチャレンジしていただければと思います。

    Information

    株式会社CGworks

    代表取締役:金澤勇輝
    本社所在地:東京都渋谷区代々木2-1-1 新宿マインズタワー19階
    URL:https://cgworks.jp/
    問合せ:contact@cgworks.jp

    インカー・ドローイング株式会社

    代表取締役:梶野 潤
    本社所在地:大阪市中央区内平野町2-1-2-2F
    URL:https://inkarinc.com/

    TEXT_日詰明嘉
    EDIT_海老原朱里(CGWORLD)、山田桃子
    PHOTO_弘田 充