2023年3月4日(土)、Webメディア・ゲームメーカーズ株式会社ヒストリア)主催のイベント「ゲームメーカーズ スクランブル」が大崎ブライトコアホールにて開催された。

本記事では多くの来場者が参加した会場の様子と、全10講演のセミナーから「西川善司が凄いと思ったゲームグラフィックスたち」「【2023年版】ゲーム制作の現場でよく使うツールをまるっと紹介~エディターからバージョン管理ツールまで~」の模様をレポートする。

記事の目次

    Information

    ゲームメーカーズスクランブル

    開催日程:2023年3月4日(土)
    開催時間:本編10:00-18:30/懇親会19:00-21:00
    会場:大崎ブライトコアホール
    参加費:無料(事前予約制)
    主催:ゲームメーカーズ(株式会社ヒストリア)
    gamemakers.jp/scramble2023/

    初心者から経験者まで ゲームづくりの魅力をアピール

    「ゲームメーカーズ スクランブル」はゲーム開発に関わる人たち同士で盛り上がることをコンセプトにした、ゲームメーカーズにとって初めてのリアルイベントである。

    現役のゲームクリエイターはもちろん、インディーズゲームを開発中の社会人やゲーム業界を目指している学生など、業種や年齢を問わない様々な人たちから参加申し込みがあり、定員を380人へ拡大するほどの大盛況に。来場者の約5分の1はゲーム開発未経験者が占め、ゲーム業界への関心の高さが窺えた。

    イベントのメインであるセミナーには、人気作に携わってきたクリエイターやゲーム開発技術に精通した有識者が登壇。

    未経験者はゲーム開発の魅力を知り、経験者は作品をより面白くするためのヒントを得られるような、全10講演をラインナップ。満席となるセッションも出るほど、盛況となった。

    会場の一角には「プロに聞ける!なんでも相談所」と題し、ゲーム業界の第一線で活躍中する面々に質問できるコーナーが設けられた。

    相談を受けるプロたちの職種は、プランナー、プログラマー、3Dアーティスト、2Dアーティストと幅広く、一対一で話ができる貴重な機会とあって、ポートフォリオを持ち込んでアドバイスをもらう学生の姿も。ほぼ全ての相談枠が予約で埋まり、来場者の熱量が伝わってきた。

    • 相談所ブース

    「初心者歓迎!UE5&Blenderハンズオン」はUnreal Engine 5とBlenderを使ってゲーム開発を体験できるビギナー向けの企画だ。プロのゲーム開発者の指導の下、3Dアクションゲームを2時間で完成させるというミッションに挑戦。慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、ゲームづくりの面白さを味わう姿が見られた。

    • ハンズオンブースの様子

    書籍コーナー「ゲームメーカーズ書房」にはCGWORLDのボーンデジタルも出展。ゲームメーカーズ編集部がオススメするゲーム開発関連書籍を会場限定特価で販売した。

    そのほか、会場に好きなゲームのタイトルを書き込むメッセージボードを設置したり、イベント後に懇親会を開催したりと、交流を大切にする「ゲームメーカーズ スクランブル」らしい試みも行われた。

    イベントのエンディングには実行委員長を務めたゲームメーカーズのブランドマネージャー・有末けい氏が登壇。

    「ゲームメーカーズ スクランブル」を無事に終えたことに感謝の言葉を述べ、「今後もゲームづくりを楽しむ人々を増やすために、いろいろなコンテンツを提供できればと思っております。ぜひこれからも応援をよろしくお願いします」と意気込みを語った。

    有末けい氏(ゲームメーカーズ ブランドマネージャー)

    セッション1:「西川善司が凄いと思ったゲームグラフィックスたち」

    映像の感動ポイントからグラフィックスオプションの解説まで

    ここからは当日開催されたセミナーをピックアップして紹介する。

    テクニカルジャーナリストのトライゼット・西川善司氏による「西川善司が凄いと思ったゲームグラフィックスたち」では、具体的なタイトルを挙げながら最新ゲームの映像美に迫った。

    西川善司氏

    まず『Marvel's Spider-Man』シリーズのPC版は、アップスケールの機能が豊富であることに触れた。

    NVIDIAのDLSS 3とAMDのFSR 2.1、IntelのXeSS、開発元のインソムニアックゲームズが独自で手がけたアップスケールが用意されており、現在のゲームはあらゆる超解像メソッドを自由に選択できるようになってきたと話す。

    グラフィックスにまつわる用語を初心者にもわかりやすく解説

    家庭用ゲームの場合はPCゲームより自由度は低くなるものの、映像処理を細かく設定できるタイトルも増えている。西川氏も自身のYouTubeチャンネルでは、視聴者からグラフィックスオプションに関する質問を受けることが多く、一般ユーザーが関心をもち始めているという実感があるそうだ。

    窓ガラスの反射や鏡はグラフィックの見せどころ。西川氏曰く「レイトレーシングが使えるGPUを開発者に与えると、鏡にレイトレースを使いがち」とのこと

    セミナーではレイトレーシングに「サイコ」と名付けた最上位の設定がある『サイバーパンク2077』、「ハリー・ポッター」シリーズの世界観を堪能できる『ホグワーツ・レガシー』、トゥーンシェーディングの表現が魅力的な『Hi-Fi RUSH』などを取り上げた。

    『ホグワーツ・レガシー』 公式 ローンチトレーラー

    特に西川氏がイチオシしたのが、日本では発売中止となったサバイバルホラー『The Callisto Protocol』である。

    本作の映り込み表現は、キューブ環境マップを用いた鏡像表現の発展形であるParallax Corrected Cubemap、実像から疑似的な鏡像を生成するSSR(スクリーンスペースリフレクション)、そしてレイトレーシングを組み合わせたもので、そのチューニングが上手いと絶賛。ゲームに熱中していると、どの技術で作られているのかわからないと話す。

    The Callisto Protocol - Official Launch Trailer | PS5 & PS4 Games

    顔の表現も実写と見分けがつかないほどリアルだ。本作には皮膚をリアルに表現する表面下散乱の技法を開発したJorge Jimenez氏が携わっており、スーパーで肉を買い込み光を当てて計測したり、紙に血を垂らせて変色具合を観察したりと、プロジェクトに心血を注ぎ込んだエピソードが披露された。

    霧やヘルメットの光の表現も美しく、アクションゲームであることを忘れて映像に魅入ってしまう講演となった。

    講演動画

    西川善司が凄いと思ったゲームグラフィックスたち【 #ゲームメーカーズスクランブル 】

    講演資料

    セッション2:「【2023年版】ゲーム制作の現場でよく使うツールをまるっと紹介~エディターからバージョン管理ツールまで~」

    ゲーム開発に役立つツールを全公開!

    「【2023年版】ゲーム制作の現場でよく使うツールをまるっと紹介~エディターからバージョン管理ツールまで~」ではヒストリア代表取締役の佐々木 瞬氏が登壇。ヒストリア社内で導入しているツールを一挙に公開した。

    佐々木 瞬氏(ヒストリア代表取締役)

    講演ではゲームのコアを司るゲームエンジンをはじめ、グラフィック、プログラミング、サウンドなどの制作系ツール、バージョン管理ツールやチャットツールなど、制作に役立つソフトウェアを網羅。

    初心者が気軽に試せる無料ツールや、佐々木氏が個人的に愛用している便利ツールまで紹介する、至れり尽くせりの内容だった。

    ソースコードやテキストの差分をチェックするDiffツールや発想を広げるために使うマインドマップツールなど、ゲーム開発者以外にも役立つツールも解説

    3D素材制作グラフィックソフト(DCCツール)は、ゲーム業界ではMayaがよく使われており、ヒストリアもメインツールとして採用している。近年ではBlenderも増えており、ヒストリアでは小規模なプロジェクトの際に担当者によって使うこともあるという。

    DCCツールは非常に数が多いため、初心者はどれから手を付ければいいのか悩みがちだ。

    佐々木氏は「まずはMayaかBlenderから始めて、必要に応じてツールを増やしていくことをオススメします」とアドバイスを送る。

    またDCCツールに限らず、多くの人が使っている定番ソフトは情報が大量にあって学びやすい。特にこだわりがなければ、メジャーなものを最初に触ってみるのが良いだろう。

    ヒストリアはUnreal Engine専門の会社。ゲームエンジンは商業用はUnreal EngineとUnityが2大巨頭だが、RPG制作ソフトのRPG Maker、2022年10月にアーリーアクセスを開始したRPG Developer Bakin、2Dアドベンチャーゲーム用のティラノビルダーなど数多く存在する

    質疑応答では「様々なDCCツールを扱うと、スキルが分散してしまうという弊害があるのではないでしょうか?」という質問が飛んだ。

    佐々木氏はそれに同意し、ヒストリアがMayaをメインに据えているのも、プロジェクトごとにツールを自由に変えてしまうと、コストが高くなったり、社外とのやり取りで上手くいかなかったりするからだと明かす。

    しかし「ツールは何かを達成するための手段なので、1つのツール以外に興味をもって触れることは、むしろ推奨したい行為です」とコメント。興味の幅を広げることを大切にしたいという気持ちもあり、メインとサブという考え方で複数のDCCツールを扱っているそうだ。

    制作系ツールでは、テキストエディタを紹介。

    ゲーム開発では検索や置換を多用するので、お気に入りのツールをひとつ用意しておくと便利だという。正規表現による置換を使いこなして、複雑な検索条件を指定できるようになれば、作業効率が大きくアップするだろう。

    佐々木氏はテキストエディタの中でもVimを偏愛しているが初心者にはハードルが高いため、エンジニアにはVisual Studio Code、それ以外のプランナーなどにはサクラエディタを推奨していた

    制作支援ツールでは、ファイルを一元管理するバージョン管理システムに言及した。

    ゲーム開発では全員がファイルのバージョンを毎日合わせて、最新の状態にしてから作業を進めないと大きな事故が起きてしまう。そのため企業では100%導入しているが、個人であってもバージョンを簡単に戻せるという利点があるので導入した方が無難である。

    ヒストリアはPerforce(Helix Core)を採用。独自の通信で送信速度が速いため、超大量のデータを扱いやすい。なおヒストリアではPerforceの社内運用レギュレーションを公開している
    historia.co.jp/archives/13406

    講演中にコメントを受け付けており、便利ツールとしてクリップボード履歴ソフトを取り上げた際には「[Win]+[V]キーでクリップボード履歴が見られるようになりましたよ」と指摘を受ける一幕も。

    Windows 10のアップデートで標準搭載されたことを知らなかった佐々木氏は驚いて会場の笑いを誘うなど、終始和やかな雰囲気でイベントが進んでいった。

    講演ではゲーム開発を効率化する多彩なツールが紹介されたが、いくら便利になったからといっても、グラフィックやテキスト、サウンドなど、ユーザーに直接届くところの品質が上がらなければ、作品を受け入れてはもらえない。そういった考えをもってゲームづくりに臨むことを忘れないようにしたいと、佐々木氏は自戒の念を込めて語った。

    ヒストリアで使用しているツール環境まとめ

    講演動画

    【2023年版】ゲーム制作の現場でよく使うツールをまるっと紹介 ~エディターからバージョン管理ツールまで~【 #ゲームメーカーズスクランブル 】

    講演資料

    TEXT_高橋克則 / Katsunori Takahashi、CGWORLD編集部
    PHOTO_島田健次 / Kenji Shimada
    EDIT_柳田晴香 / Haruka Yanagida(CGWORLD)、小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)