ARTPLA海洋堂が2022年から展開しているプラモケイシリーズだ。開発グループの塩入 翼氏がシリーズの企画を立ち上げた直後から、宮脇修一氏(センム)は「絶対に太陽の塔をやらなアカン」と熱く語っていた。愛と夢と希望が詰まったARTPLA 太陽の塔同じく造形愛が込められたARTPLA ガンバスターの制作過程を、海洋堂の社内デジタル造形講座で講師を務めた和田真一先生にインタビューしてもらった。

記事の目次

    和田真一先生

    BLESTAR/ZBrush公認インストラクター/京都精華大学 マンガ学部 マンガ学科 キャラクターデザインコース・教員

    ※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol.305(2024年1月号)掲載の「海洋堂 デジタル造形移行への挑戦 PART 07 メイキング3 ARTPLA 太陽の塔&ガンバスター 圧倒的造形作品をプラモケイとして商品化する」を再編集したものです。
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    宮脇センム&宇野先生が語る挑戦の軌跡

    INFORMATION

    世界最大級の造形・フィギュアの祭典
    ワンダーフェスティバル2024[冬]

    今回は個人ディ―ラーブースが大幅拡大!!
    開催日:2024年2月11日(日)10時~17時
    開催場所:幕張メッセ国際展示場1~8ホール
    主催:ワンダーフェスティバル実行委員会/株式会社海洋堂
    wonfes.jp/specialsite

    北斗の拳40周年特別展示「我が造形に一片の悔い無し展」開催!

    企画名:我が造形に一片の悔い無し展
    ※ワンダーフェスティバル[冬]2024 ブース内
    日時:2024年2月11日(日)10:00~17:00
    開催場所:幕張メッセ7ホール内「北斗の拳」40周年記念・特設ブース
    ※展示作品をご覧になるには、ワンダーフェスティバル2024[冬]の入場券が必要となります。
    ※出展者様のご都合により、出展あるいは展示が取りやめとなる場合がございます。
    ©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
    wonfes.jp/specialsite/news/news-8606

    INTERVIEWEE

    • 宮脇修一氏
      海洋堂 取締役専務
      造形集団海洋堂代表
      ワンダーフェスティバル実行委員会代表
    • 宇野智浩氏
      海洋堂 フィギュア事業部 造形グループ
      デピュティクリエイティブゼネラルマネージャー
    • 西 健斗氏
      海洋堂 フィギュア事業部
      造形グループ スタチューチーム クリエイティブマネージャー
    • 塩入 翼氏
      海洋堂 フィギュア事業部
      開発グループ クリエイティブマネージャー

    金型設計完了前の原型を静岡ホビーショーで展示

    和田真一先生(以下、和田先生):海洋堂では太陽の塔を何度も商品化してきましたね。

    ​​宮脇修一氏(以下、センム):1/144スケール(全高約50cm)、1/350スケール(全高約22cm)、カプセルQなど、サイズや商品形態を変えて何度も出しており、1/144や1/350は再販を重ねる大ベストセラー商品になっています。

    ​​塩入 翼氏(以下、塩入):ARTPLAシリーズの企画を立ち上げた直後から、センムは「絶対に太陽の塔をやらなアカン」と熱弁していました。

    ​​宇野智浩氏(以下、宇野先生):ARTPLAの太陽の塔は1/200スケール(全高約36cm)で、内部の生命の樹や両腕のトラス構造まで初めて再現しました。センムは1970年の日本万国博覧会に行った世代なので、愛が深いんです。

    ​​センム:当時の僕は中学1年生で、万博には計32回通いました。太陽の塔はARTPLAの中でも1番最初に着手して、海洋堂が2022年5月の静岡ホビーショー(国内最大の模型見本市)に初参加した際には、3Dプリンタで出力した原型に加え、1.5mの特製品も飾りました。

    ​​塩入:静岡ホビーショーの当日は、名だたる模型メーカーの方々も太陽の塔の原型を見に来てくださり、「海洋堂さん、1年目でこんなのできるんですか?」と一様に驚いていました。プラモケイ開発では金型設計まで完了したものを "原型" と呼ぶことが多いのですが、僕らは金型製造や量産ができるのかを考えずにつくったデータを出力して、「原型です!」と展示していたんです。

    ​​センム:素人が何も知らずにつくって、「できたよねー。これでいけるよねー」って思って展示したわけです。僕らは新参者ですから、インパクトのある展示ができたのは良かったんですが、そこから商品になるまでが長かった。

    ​​塩入:何となく「できるでしょう」と思っていたんですが、何となくではできなかったです。

    和田先生:アンダーカットを考慮していなかったことが問題になったわけですね。

    ​​センム:それに加え、塩入くんが中国の金型工場に無理難題を言うわけですわ。

    ​​塩入:無理難題はセンムも言ってました!

    ​​和田先生:太陽の塔の原型は、海洋堂に所属している造形師ではなく、繪宙計畫(以下、繪宙)さんと市原俊成さんが手がけていますね。どういう経緯で依頼したのですか?

    ​​塩入:繪宙さんはこれまでにも海洋堂の太陽の塔の原型を手がけており、今回は黄金の顔以外の外装と、内部の生命の樹の造形を担当しました。市原さんの方はカプセルQの黄金の顔や映画『海底二万マイル』のノーチラス号のフィギュアなどを手がけた実績があり、今回は内装と黄金の顔を担当しています。「芸術作品であり、建造物でもある太陽の塔を造形作品に落とし込めるのは誰だ?」と考えたときに、白羽の矢が立ったのが、繪宙さんと市原さんでした。

    繪宙計畫がZBrushで造形した、太陽の塔の外装と生命の樹

    ▲大阪府の万博記念公園にある太陽の塔。芸術家の岡本太郎氏が制作した全高約70mの芸術作品であり、建造物でもある。日本万国博覧会のテーマ館の一部として建造され、現在も内部を見学できる(事前予約制)
    ▲繪宙計畫がアナログ造形した太陽の塔の3Dスキャンデータ

    ▲3DスキャンデータをZBrushで改修した、ARTPLA 太陽の塔の外装の原型データ。両腕の角度がより上向きに調整されている。(上)正面の顔は「太陽の顔」、(下)背面の顔は「黒い太陽」と呼ばれている

    ▲(上)ZBrushで新たに造形された生命の樹と、(下)その一部拡大。合計頂点数は約1,900万。アメーバなどの原生生物から、アンモナイト、ブロントサウルス、マンモスなどを経て類人猿にいたる進化の過程をかたどっている

    夢と希望が詰まった分割方法を示し、現実的な落としどころを詰める

    ​​センム:造形師は猛獣みたいな人が多いんですが、市原さんはちゃんと納期通りにつくってくれる、真面目で正しい人です。

    ​​塩入:市原さんがこちらの思いを受けて立ってくれたからこそ、今回の内装が完成しました。太陽の塔は岡本太郎さんの作品であると同時に、大阪府の登録有形文化財でもあるので、建造当時の図面などの資料は大阪府がもっており、取り寄せるには時間がかかるという事情がありました。一方でセンムからは「早くほしい! 早くほしい!」と催促されていたので、なんと市原さんが一般客として太陽の塔に入り、自分の歩幅で実測してくれたんです。

    和田先生:すごすぎる!

    ​​塩入:普通に中を見るだけなら1時間もかからないのに、10時に入って17時の閉館まで内部を観察して、柵は1歩の幅につき何本ずつとか、全部の寸法を測っていったそうです。

    ​​センム:よく追い出されなかったね。

    ​​塩入:追い出されかけたらしいです。そうして並々ならぬ努力の末につくった内装を、繪宙さんが制作した外装と合体させる作業は西 健斗さんが担当しました。その作業をやってみたら、「内装と外装がちょっとズレてませんか?」という話になって、2017年の耐震補強工事の際に内装の壁面が内側に約20cm移動していたことなどがわかりました。

    ​​宇野先生:建造当時と現在とでは、内装が微妙に変わっていたんです。西さんの合体作業のおかげで、太陽の塔に関するわれわれの知識がさらに深まりました。

    ​​西 健斗氏(以下、西):基本的にデータの合体作業は海洋堂の社内で行なっています。繪宙さんのデータはZBrush、市原さんのデータはCADソフトでつくられていたので、まず市原さんのデータを整理した上で、STL形式でZBrushに入れて、外装の方を調整して位置を合わせました。内装はほとんどいじっていません。

    和田先生:それもすごい。でもCADソフトの中にZBrushのメッシュデータを入れると、頂点数が多すぎて調整が難しいでしょうね。

    ​​センム:繪宙さんがつくる太陽の塔は、巨大感を出すために両腕や首の角度にアレンジが加えてあります。模型心があるからこそのアレンジですが、結果として市原さんが実測したデータとの間に若干のズレが生じており、それも西くんが整理していきました。

    ​​宇野先生:原型ができるまでに半年くらいかかったんですが、2022年の静岡ホビーショーにはなんとか間に合いました。

    市原氏がCADソフトで造形した、太陽の塔の内装と黄金の顔

    • ▲胴体内部
    • ▲前面の壁
    • ▲左腕内部
    • ▲右腕エスカレーター
    ▲黄金の顔。2017年の耐震補強工事にて、現在の建築・防火基準を満たすため塔の脇から下にはコンクリートが内側から増し打ちされ、壁の厚みが30cmから50cmになった。肩から上も鉄骨を増やすことで補強され、建造当時のエスカレーターを階段に変更することで塔自体の軽量化も図られた(代わりにエレベーターを設置してバリアフリーに対応)

    繪宙計畫と市原氏のデータを合体作業

    ▲市原氏のデータを表示したRhinocerosの作業画面。右腕のエスカレーターは現在の仕様に合わせて削除された
    ▲繪宙計畫と市原氏のデータを合体させた完成データ。「合体作業の際には、外装の両腕と内装のトラス構造の位置を合わせたり、中央の生命の樹の位置を微調整したりしました」(西氏)

    和田先生:金型工場には、どんな状態で納品するんですか?

    ​​西:フィギュアの場合は原型やPMをアナログ納品しますが、プラモケイの場合はデータ納品です。太陽の塔では、繪宙さんのZBrushのSTL形式データと、市原さんのCADソフトのSTP形式データを、位置情報が合うように調整した上で別々に納品しました。金型工場がFreeformで分割したデータを送り返してくる際にも、STL形式とSTP形式に分かれていました。プラモケイ用のデータは抜き勾配解析などが必要なので、CADデータの方が扱いやすいんです。だからもともとCADソフトでつくっていたものは、STP形式のまま分割しています。

    和田先生:どこで分割するかは、海洋堂の方で決めるんですか?

    ​​塩入:こちらから夢と希望が詰まった(無理難題の)分割方法を示して、現実的な落としどころを詰めます。例えば太陽の塔の両腕は、最初は「胴体と一体化して、分割しないでほしい」とお願いして金型工場のエンジニアに検討してもらいましたが、製造コストなどとの折り合いがつかず無理でした。

    和田先生:今でも十分大きいのに、どれだけ巨大なランナーにしたかったんですか!

    ​​塩入:「とにかくデカく!」と言ってました(笑)

    分割方法の検討

    ▲センムや塩入氏の夢と希望が詰まった分割案
    ▲分割ライン検討時の試作データ。「手描きやIllustratorでこちらの分割案と意図を伝える絵を描いて、原型データと一緒に金型工場へ送り、電話やオンライン会議で打ち合わせを重ねていくと、8割程度まで意図を汲み取った分割データが届きます。それを画面上で確認したり、3Dプリンタで出力したりしながら検討を重ね、落としどころを詰めます。最後にランナーに配置して、金型の数が想定内に収まれば良いのですが、収まらないなら一部の分割を見直すことになります。金型を増やすと販売価格にもろに影響するので、必ず想定内に収めるのが鉄の掟です」(塩入氏)

    ​​センム:夢があって良いですね。塩入くんは30代なのに、横山 宏さんや僕が1950〜1960年代のプラモケイについて語っている中に入ってこれるおかしい人です。

    ​​塩入:『マシーネンクリーガー』のARTPLA キュスターなどの開発を通して、横山先生やセンムから多くのことを学びました。

    ▲ARTPLA キュスターのランナーと未塗装作例(原型制作:谷明)。横山氏の『マシーネンクリーガー』を代表する二足歩行戦車のプラモケイで、ARTPLA開発にあたり、塩入氏は横山氏から大きな影響を受けた

    ​​センム:例えばARTPLAシリーズのカラフルなランナーは、横山さんの影響を受けています。

    ​​塩入:横山先生は「グレーのランナーは、形を見やすいけど生命力がない。子どもが喜ぶ生き生きした色が良い!」とおっしゃっていました。だから太陽の塔では"生きている白"を吟味しています。「できるだけ太くて、折れなくて、丈夫なのが良いプラモケイなんだ!」というのも横山先生やセンムがおっしゃってきたことです。太陽の塔の分割では、彫刻作品がランナーの中に配置されているような圧倒的な存在感を目指しました。一方で、生命の樹の繊細なパーツは1個のランナーの中に収めて、"生命の樹の額縁" としてそのまま飾れるような面白い仕上がりにしています。

    建築模型のような白のランナー

    • ▲テストショットのランナー【A】
    • ▲【B】
    • ▲【C】と【D】。右の【D】だけは、STL形式とSTP形式のデータが両方含まれている
    • ▲【E】と【J】
    • ▲【F】と【G】
    • ▲【H】と【I】、黄金の顔。生命の樹の繊細なパーツは全て【H】に収められた。テストショットのランナーは全部で11枚あり、黄金の顔はメッキパーツになっている。「ランナーの色は平野暁臣さん(岡本太郎記念館館長)の希望を受けて白にしました。建築模型は白一色のものが多いですよね。それをイメージしながら、暖色寄り、寒色寄り、彩度高め、彩度低めという具合に白の候補を10パターンほどつくり、一番しっくりくる白を選びました」(塩入氏)

    和田先生:生命の樹はパーツが滅茶苦茶いっぱい入ってますね。金型は上下だけですか?

    ​​塩入:そうです。キットを買ってきて箱を開けた瞬間に「何じゃこりゃ!」と驚くようなものがほしかったので、金型工場に無理を言いました。こんな金型をつくると成形時の不良率が跳ね上がるので、本当はやっちゃダメなんですけどね。

    ​​センム:金型工場にとっては、抜きやすいように原型をバラバラのパーツにして、ランナーに等間隔に配置して、金型の数を増やす成形が一番楽なんです。でもそんなジグソーパズルみたいなプラモケイだと、箱を開けてもワクワクしないし、組み立てたいと思いません。

    ​​塩入:太陽の塔の場合、普通ならランナーは18枚ほどになりますが、11枚に収めました。ちなみに金型がほぼ完成した後で、観光客4人を追加で彫っています。

    和田先生:追加で彫れるんですか!

    ​​塩入:観光客は当初3人しかいなかったんですが、テストショットを組み立てて、塔の内部に観光客を置いてみたときに「太陽の塔ってこんな大きさなんだ! スケール感がわかって良いなぁ」と思ったんです。「一番デカい胴体パーツのランナーの隙間に4人追加して、大きさの対比を見せましょう! 」と金型工場に追加加工をお願いしました。「すでに無理だという話をしているのに、さらに入れるってどういうことですか?」とめっちゃ怒られながらでしたが。 ​​

    ​​センム:無理難題言いますやろ(笑)

    ​​塩入:射出成形時にはランナーの中央から高い圧力で樹脂を注入するので、デカい胴体ランナーの端っこに小さい観光客を配置すると、射出圧のバランスが悪くなってバリが出る(樹脂があふれる)と言われました。それでも、「生命の樹のランナーの端っこであれば、何とか入りそう」ということで、追加してもらえたんです。そうしたら偶然にも生命の樹と人の大きさの対比ができるようになって、このランナーの魅力がさらにグッと上がりました。

    金型への観光客4人の追加

    ▲"生命の樹の額縁" をイメージしたランナーの完成データ。金型がほぼ完成した後で、右下の隙間(緑枠内)に観光客4人を追加で彫っている
    ▲塗装済み作例の胴体内部。脳の壁や生命の樹を見学する観光客が3人配置されており、スケール感がよくわかる

    脳の襞の抜き勾配調整

    ▲脳の壁と呼ばれる、胴体内部の壁面パーツの拡大
    ▲脳の壁の原型データ(赤)と、金型用の分割データ(白)を重ねたもの。抜き勾配調整のため、金型の側面部分の突起のみ直線的な傾斜に変更された

    外装表面の質感表現

    • ▲胴体外装後面パーツの拡大。「太陽の塔の表面の質感はツブツブのザラザラで、金型に落とし込むのは至難の業でした。さらに表面に表情をつけるため、模様以外の部分の金型につや消し加工を入れたら、模様や顔が浮き出て見えて、良い感じにまとまりました」(塩入氏)
    • ▲ZBrush上でのツブツブした表面の拡大。外装の合計頂点数は約3,800万あり、Freeformへの変換も困難だった

    ARTPLA 太陽の塔の塗装済み作例

    • ▲塗装済み作例
    • ▲前面の壁をとると、内部を鑑賞できる
    ▲「黄金の顔のギラギラした印象を表現するために、市原さんには表面の凹凸を強調してもらいました。こういう模型心に根ざしたアレンジは大事にしています」(塩入氏)

    古賀 学氏によるインストと、中村豪志氏によるボックスアート

    ▲古賀氏によるインストの一部。印刷時に線が潰れないように適切な省略がなされている。ながれるようなレイアウトも古賀氏の技だ
    ▲インストの作画用に西氏がレンダリングした画像の一部。「金型工場から納品された分割データを1個ずつバラしながら、1日がかりでインスト用の画像をレンダリングします。それを基に古賀さんがIllustratorのベジエ曲線で組み立て説明図を描くのですが、太陽の塔は情報量が多かったので作画コストがすごいことになりました」(西氏)
    ▲中村氏によるボックスアート。「古賀さんと中村さんがいないと、ARTPLAは成立しません」(塩入氏)

    海洋堂の名作のリトポは通常の2〜3倍の時間がかかる

    ​​センム:今後は『ガールズ&パンツァー』などの人気作品の新作ARTPLAの開発と並行して、海洋堂の名作と言われてきた作家性の高い造形もARTPLAとして蘇らせていきます。2023年の年末には、佐藤"ロボ師"拓くんが1991年に発表した『トップをねらえ!』のガンバスターをARTPLA化して発売します。海洋堂は模型メーカーとしては新参者ですが、この2年間でかなり技術と経験を蓄積できたので、主義主張をもって良いものができるようになりました。

    和田先生:過去の名作をARTPLA化する場合は、松村初号機や太陽の塔の外装のように原型を3Dスキャンして改修するのでしょうか?

    ​​西:そうです。ガンバスターの場合は、海洋堂の造形師が3DスキャンデータをリトポしてARTPLA用の原型データをつくりました。

    ​​宇野先生:元の良さを残してリトポするのが、けっこう難しいんですよ。

    ​​西:通常のデジタル造形と比べると2〜3倍の時間がかかりますが、海洋堂の造形師たちがつくってきた原型は、データ化して未来に残す価値があります。例えばガンバスターの脚なんて、普通につくればボタンひとつで円柱モデルを呼び出して終わりなんですが、元の形に合わせて地道に面を張り直しています。

    ​​塩入:それを怠ると、ロボ師さんの絵心やニュアンスが残らず、ちがうものになるんです。

    ​​センム:絵心のない、プラモケイの設計だけできる人がガンバスターをつくっても、カッコ良い造形にはなりません。圧倒的造形作品をプラモケイとして商品化できるようになったことは、僕らにとってすごく幸せなことです。このやり方はガレージキットのながれを汲んでおり、プラモケイの新境地と言えるでしょう。

    ​​塩入:本当にそうだと思います。今後は模型メーカーとフィギュアメーカーのアウトプットが近づいていくような気がします。

    和田先生:今後の進化にも期待しています!

    ARTPLA化のための、ガンバスターの3Dスキャンデータのリトポ

    ▲ガンバスターの頭部の3Dスキャンデータ。原型はロボ師氏が手がけており、1991年にソフトビニール製のフィギュアとして発売された
    ▲リトポ中のBlenderの作業画面。3Dスキャンデータに合わせてポリゴン面を張り直し、トポロジーを再構築している
    ▲(左)3Dスキャンした直後の前面と、(右)リトポ後の前面
    ▲(左)3Dスキャンした直後の後面と、(右)リトポ後の後面
    ▲ARTPLA ガンバスターの未塗装作例。全高は約27cm
    ▲BOME氏が塗装した作例。腕を下ろした素立ち状態と、作中の合体シーンでお馴染みの腕組みポーズの両方を再現できる。ARTPLA化にあたり、タカヤノリコとアマノカズミも1/24スケールで新たに立体化された。原型は2021年のデジタル造形講座で講師を務めた大上竹彦先生が制作している。「これまではハイディテールで有機的なものが多かったので、"対照的な造形もほしいよね" と思って、ガンバスターを企画しました。2023年は『トップをねらえ!』35周年でもありますからね。われわれが積み重ねてきたARTPLAの技術と経験を結集して、ロボ師さんの曲面のカッコ良さを蘇らせました」(塩入氏)
    ©KAIYODO
    ©Kow Yokoyama 2023
    ©Taro Okamoto
    © BANDAIVISUAL・FlyingDog・GAINAX

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.305(2024年1月号)

    特集:海洋堂 デジタル造形移行への挑戦
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2023年12月8日

    詳細・ご購入はこちら

    INTERVIEWER_和田真一/Shinichi Wada(BLESTAR)
    TEXT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)
    EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)
    文字起こし_遠藤大礎/Hiroki Endo
    PHOTO_木許 一/Hajime Kimoto(スタジオ・ウォーター)