2018年から続いているTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』シリーズの最新作『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』は、物語の舞台を中学校に設定し、学園ドラマと共にストーリーが進んでいく。基地の設定やシンカリオンと敵の登場シークエンスなどもリニューアルされており、見どころ満載のシリーズだ。そのメイキングを、3回にわけて紹介していく。
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多数の創意工夫で印象的に仕上げられたカットの数々
シンカリオンの変形ショットは実際のプラレールの変形動画を見ながら、久能木氏が絵コンテとして固めた。参考動画だけでは上手く理解できない部分もあり、3ds Maxで変形用のモデルをイジりながらビデオコンテを作成していったという。
「本作はメタバース風の表現がポイントになるので、それに合わせて頭部の回転部分などはボクセルから実体化するような表現にしています。パーツの動きのリズム感を詰めながら、最終的にはアクション監修の宮尾佳和氏に確認してもらい、変形アクションを作成していきました。変形アクションはシンカリオンの命なので、前作の良いところを踏襲しながら、新しいアクションが見せられるようにこだわっています」(久能木氏)。
カット制作における新しい試みとして、ERDA輸送機が発進するシークエンスがある。ERDA輸送機のデザインを含め、基地からの発進からキャプチャーウォールに運ぶまでのシークエンスの内容を、SMDEから提案した。埼玉県の大宮にある車両基地を撮影した素材を基にビデオコンテを作成し、提案しながら内容を詰めており、基地内の格納庫のデザインも社内背景モデラ―が手がけている。
変形バンクでの頭部の出現表現
変形シークエンスはシンカリオンの命なので、前作の良いところを残しつつ、新たな表現にチャレンジしている。プラレールの動きと相違がないように注力しながら作成していく中で一番難しかったのが、頭部だという。頭部はプラレールの構造上、後ろ向きの状態から回転するが、実際のアニメーションにしたときにあまり格好良い感じに見えず試行錯誤した。結果的に頭部が出てくるときはボクセル風のエフェクトによって頭部が包まれた状態で回転し、ボクセルが実体化すると頭部が表示されるように演出されている。
以下は、完成映像。
必殺技リクソウセイバーの演出
劇中でも見せ場のひとつである必殺技は、タカラトミーから提供された武器名を基にSMDE側で考案し、絵コンテの段階で監督のOKをもらってアニメーターが作業する、という手順で作成された。必殺技の「リクソウセイバー」は陸送のトレーラーをモチーフにして名付けられたため、トレーラーを活かしたアクションが良いという意見から、メタバース感を強調し、タイヤ痕のエフェクトに新幹線風のエフェクトを混ぜるアクションにした。必殺技のエフェクトもアニメーターが担当している。
本作オリジナルのERDA輸送機シークエンス
トレーラーなどのエルダビークルをシンカリオンと敵が戦うキャプチャーウォールまで運ぶ方法として、ERDA輸送機のアイデアとデザインをSMDEが提案した。発進のシークエンスは写真を基にビデオコンテが作成され、内容が検討されている。ERDA輸送機を離陸させる画をつくる際に、背景を3DCGでつくることも検討されたが、背景と登場回数が少ないため、時間とコストを考えて大宮の車両基地の写真を基に、背景美術と組み合わせる方法が採られた。
ヘックスデザインを活かしたキャプチャーウォール
キャプチャーウォールのデザインは、アイデアとして校庭や監獄など様々なものが挙がったが、最終的にメタバース空間に閉じ込める案に決まった。空間は六角形をベースにしたヘックスデザインになっており、社外デザイナーのコレサワシゲユキ氏や灯夢氏と話しながら固めていったという。デザインの方向性が決まったところで社内の背景モデラ―が実際に背景アセットの制作を進め、ディテールを詰めた。デザイン上で最も問題になったのが、キャプチャーウォールを囲む壁だ。空間が広くなければ戦闘シーンでのアクションが難しくなるので、フィールドの外側にある壁も、ヘックスデザインが見えつつ、広い空間になるよう試行錯誤している。
CGWORLD 2024年8月号 vol.312
特集:パルワールド
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年7月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_大河原浩一 / Hirokazu Okawara
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada