「ポールダンス」×「歌」×「がんばる少女たち」がテーマの『劇場版 ポールプリンセス!!』。制作は『プリティーリズム』などで知られるタツノコプロだ。ポールダンサーをモーションキャプチャアクターに迎え、その妖艶な演舞を煌びやかなアニメーションに昇華した注目作だ。

記事の目次

    Information

    『劇場版 ポールプリンセス!!』
    監督:江副仁美/脚本:待田堂子/CGディレクター:乙部善弘/キャラクター原案:トマリ/アニメーションキャラクターデザイン:櫻井琴乃 /ポールダンス監修:KAORI(STUDIO TRANSFORM)/アニメーション制作:タツノコプロ/原作:エイベックス・ピクチャーズ、タツノコプロ/配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
    poleprincess.jp
    ©エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/ポールプリンセス!!製作委員会

    Point
    ・タツノコプロの発案によるオリジナル企画
    ・ポールダンスをしたときに映えるキャラクターデザインを採用
    ・ポールダンサーの動きをモーションキャプチャで収録
    ・立体的なカメラワークやエフェクトがショーを豪華に演出

    個性豊かでかわいらしい主人公たちのデザイン&3Dモデル

    本企画を主導したのは、以前からポールダンスの表現の幅に注目していたという乙部善弘氏。タツノコプロでの長いCGディレクター経験を踏まえ、3DCGの強みや表現力を知り尽くした乙部氏ならではの着眼点と行動力が、本作を世に送り出す大きな原動力となった。

    後列左より、CGデザイナー・笠永祥文氏、CGディレクター&企画プロデュース・乙部善弘氏、CGデザイナー・伊藤明仁氏、CGデザイナー・平泉 晃氏、テクニカルディレクター・國武亮佑氏。前列左より、CGデザイナー・川崎春香氏、CGデザイナー・朴 美佐氏、CGデザイナー・坂本奈央氏、CGデザイナー・小原彩子氏、CGデザイナー・鈴木遥夏氏(以上、タツノコプロ)
    tatsunoko.co.jp

    ポールダンスをアニメに! 熱い想いが劇場公開の道を拓く

    ポールダンスに挑戦する少女たちを描いたアニメ作品『ポールプリンセス!!』。2022年12月にWeb公開されたショートアニメを経て、2023年11月に劇場上映となった本作は、過去に類例のないダンスシーンに多くの観客が惹き付けられ、応援上映なども盛り上がりを見せている。

    本作を企画したのはタツノコプロで長年にわたりCGディレクターを務めてきた乙部善弘氏。きっかけは2017年に劇場公開された『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』だ。乙部氏はかねてより競技としてのポールダンスに感銘を受けていたことから、この作品でCGディレクターの立場からポールダンスによる演出プランを提案。それが見事に採用され、作中に約30秒のポールダンスシーンが誕生した。

    「自分たちから企画を発案して、創作していきたいという思いがありました」と話す乙部氏は、この表現に可能性を見出し、以降もオリジナル企画として温め続けた。

    そして2020年初頭、モーションキャプチャのテストデータから動画を制作し、社内でプレゼンをしたところ、即座にゴーサイン。乙部氏はさっそく動き出した。「ポールダンスに映えるよう、頭身が高く、かわいい衣装も描けるデザイナーを探していて、イラストレーターのトマリさんに依頼しました。こちらからはキャラクターの設定をお伝えするだけで、自由に描いていただきました」。

    企画当初はキャラクターのダンスMVやショートエピソードからなる小規模な展開を想定していたが、企画サイドから好評を得て、トントン拍子で劇場版制作へ。「全スタッフが一丸となって非常にモチベーション高く制作に臨めた作品です」と、乙部氏はその充実した制作期間をふり返る。

    今や小学生からシニア世代まで幅広く行われているポールダンス。本作を観賞したファンからは「作品をきっかけに実際にポールダンスを観に行ってみた」といった声も聞こえてくる。作品のみならず、競技に対する熱烈な応援団となったファンが増え、競技人口も増大しそうだ。

    星北ヒナノ

    本作の主人公、チーム・ギャラクシープリンセスの星北ヒナノのデザイン画とCGモデル。設定は「高校2年生で引っ込み思案の性格だが、ある夜偶然公園で見たポールダンスに感動し、スタジオに通い始める。幼少期にバレエの経験あり」。

    イラストレーターのトマリ氏によるデザイン画
    CGモデル。「テスト動画をつくったときに、頭が大きいとポールに当たり、また脚が長い方が踊ったときに映えることがわかりました。カメラで撮ったときに映える手足のバランスを研究して調整を重ねたところ、一般的なアイドルアニメよりも高い6.5頭身付近が最適だとわかったんです」(乙部氏)
    「グレーのグラデーションマップを使って袖の透け感を出しています。手首から肘にかけて徐々に腕が見えなくなる、透明幅の調整が大変でした。透けた部分には服の裏地や背景の色が反映されてしまうので、映り込む色に負けないようにラメ色の彩度を高めに設定しています」(CGデザイナー・岩井聡美氏)

    東坂ミオ

    東坂ミオのデザイン画とCGモデル。設定は「コスプレと衣装づくりが好きな高校3年生。ヒナノとリリアに誘われてポールダンスを始める。チーム・ギャラクシープリンセスの衣装制作も担当」。

    デザイン画
    • CGモデル。コンセプトはマーメイドで、スカートのデザインモチーフは尾びれ
    • セットアップ。ダンス中、ポールに登るとマーメイドにフォームチェンジをするため、スカートのセットアップは2種類用意した(左:オープン状態、右:クローズ状態=マーメイドスタイル)。クローズ時はキャラクターの太ももとスカートが一部のリグを共有。スカート・エプロン共に、オープン時とはボーンの本数・位置が異なっている

    西条リリア&南曜スバル

    西条リリアと南曜スバルのデザイン画、CGモデル。設定は「リリアはヒナノの幼馴染で、ヒナノと共にポールダンスを始める」「スバルは体操選手だったが怪我で夢敗れ、そんな折、ポールダンスに出会う」。ふたりは大会でダブルスを組むことを念頭に、似たデザインの衣装を用意した。衣装のコンセプトは“友情・勝利”。

    西条リリア(左)と南曜スバル(右)のデザイン画
    • リリアのCGモデル。腹や背中の筋肉の立体感をテクスチャの影マスクで表現している
    • スバルのCGモデル。リリアとペアで踊り、手を繋いだり腕を組んだりするため、お互いに干渉しないようなパーツ構成になっている。光る部分は特殊素材だ

    (2)に続く。

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    TEXT_日詰明嘉/Akiyoshi Hizume
    PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子/Momoko Yamada