世界中の若手技能者が技を競う「技能五輪国際大会(WorldSkills Competition)」。
1950年にスペインで始まり、現在では80を超える国と地域が参加する“技能のオリンピック”だ。その中で近年注目を集めているのが、デジタル分野の新しい職種「3Dデジタルゲームアート」。ゲームの世界を形づくるキャラクターや背景を、コンセプトアートからモデリング、アニメーション、実装まで一人で手掛ける総合競技だ。
今年12月、日本電子専門学校において、この競技の国内予選を兼ねた新イベント「モデリングフィードバックLIVE 2025」が開催される。“挑戦しながら学べる予選”という新しい形が動き出している。

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    【11/20(木)応募締切】「モデリングフィードバックLIVE 2025」開催-プロがあなたの3DCG作品を直接講評

    https://cgworld.jp/flashnews/02-2510-mfb2025.html

    新たな時代を切り開く、3Dデジタルゲームアート職種

    技能五輪国際大会は、機械、建築、調理など多様な分野の若手技能者が集い、国を超えて技を競い合う場だ。そのなかでも「3Dデジタルゲームアート職種」は、2017年に試験的に導入され、2019年の大会から正式競技となった比較的新しい種目。デジタルの時代にふさわしい“新しい職人技”として注目されている。

    競技内容は、ゲームの世界観を構築するキャラクターや背景を一人で制作するというもの。英語で与えられたテーマを理解し、コンセプトアート、モデリング、テクスチャ、アニメーション、ゲームエンジンへの実装までを数日間で仕上げる。

    求められるのは、瞬発力と正確さ、そしてアートとしての完成度。「ゲーム開発の現場では日本でも諸外国でも分業化が進んでいますが、この競技では全工程を自分一人で行います。その分、得られる経験は圧倒的です」と語るのは、国内予選を指揮する技能五輪国際大会 3Dデジタルゲームアート職種分科会の分科会長、五十嵐淳之氏(日本電子専門学校)だ。

    近年は中国、韓国、シンガポールが上位を独占する中、日本は後発国として挑戦を続けている。中学生の頃からCG教育を受ける海外勢に比べ、日本では専門学校から学び始めるケースが多く、経験値の差は大きい。それでも日本選手が有利な理由がある。

    「日本の強みは“丁寧さ”。ポリゴンひとつ、テクスチャ一枚であっても丁寧に仕上げる。そしてアニメやゲームなどクオリティの高いコンテンツを作る土壌がある。それが日本の強みです」と五十嵐氏は語る。

    新たな試み。「モデリングフィードバックLIVE 2025」始動

    2025年12月13日(土)に開催される「モデリングフィードバックLIVE 2025」は、技能五輪3Dデジタルゲームアート職種の国内予選を兼ねる新形式のイベントだ。従来の「一部の選ばれた人だけが挑む大会」から、「すべての応募者が学びを得られる予選」へと進化するのが最大の特徴で、国籍や年齢の制限はなく誰でも参加できる。

    本イベントでは、「予備審査」と「対面イベント」の2つで構成されている。まず、予備審査のために3DCGの静止画作品を提出。その作品に対して、プロクリエイターからフィードバックをもらうことができる。

    その後、審査通過者が参加する対面イベントでは、当日発表される課題に沿って3DCGモデルを作成。ここでも、完成した作品に対して、プロクリエイターから直接フィードバックやアドバイスを受けることになる。会場では制作課題に加えて、講評会や交流の時間も設けられる予定だ。せっかくの同世代のライバルが集まる機会を、競技という枠を超え視野を広げるチャンスとして楽しんでいただきたい。

    なお、日本国籍を有し、高校生以上、かつ第48回技能五輪国際大会開催年に22歳以下、など要件を満たす参加者の中から日本代表選手が選ばれる。日本代表に選ばれると、国際大会までの9ヶ月間、3DCGの訓練指導員によるトレーニングを無償で受けることができ、また、オーストラリアや中国で開催予定の大会にも負担なしで参加できる。

    過去の日本代表選手は、いずれもCG・ゲーム業界への就職を果たしている。彼らが技能五輪国際大会に向けて積み重ねた努力と経験が、そのまま実務力として評価されているのだ。

    【11/20(木)応募締切】「モデリングフィードバックLIVE 2025」開催-プロがあなたの3DCG作品を直接講評
    https://cgworld.jp/flashnews/02-2510-mfb2025.html

    国際大会への挑戦が世界に通じる総合力を身につける

    日本代表として参加する技能五輪国際大会の競技時間は、4日間で計22時間。英語で書かれた課題を読み解き、限られた時間内に作品を完成させることになる(日本語訳された競技課題も配布され、日本語で説明を受けることもできるので、英語が不慣れな方は安心してほしい)。その作品への評価によって他国の選手と争うことになる。使用ソフトはMAYAや3dsMAX、Photoshop、substance painter、ZBrushなど。過去の大会で使用されたゲームエンジンはUnreal EngineおよびUnity。ほかにも使用可能なツール一覧があり、選手はその中からツールを選んで制作することになる。

    大会は観衆の前で進行するため、集中力と精神力も問われる。評価は「技術力」と「表現力」の両軸で構成され、技術点ではレギュレーションに沿ったポリゴン数や構造の正確さ、表現点ではテーマ解釈(与えられた課題の世界観に合っているか)やビジュアルの完成度が審査対象となる。

    技能五輪国際大会は、ただの競技会ではない。それは、若手が世界基準のスキルと精神を身につけるための“訓練の場”であり、企業が次世代を見つける“発掘の場”でもある。さらに、今までの技能五輪国際大会に出てきた日本人選手は「他国の同世代の代表選手に刺激を受け、拙いながら英語でコミュニケーションをとっていた。それが実は選手にとって楽しい経験になっている」(五十嵐氏)という。

    人生において、そう何度も訪れない「世界」という舞台を楽しめるのが、技能五輪国際大会の一番の醍醐味なのかもしれない。

    第47回技能五輪国際大会「3Dデジタルゲームアート」職種の紹介

    世界の扉を開くために、まずは予備審査にエントリー。作品提出は11月20日(木)まで

    「モデリングフィードバックLIVE 2025」では、現在エントリーを受付中だ。テーマは「3DCGキャラクター」。自分の得意な世界観を活かして、オリジナルのキャラクターを制作してほしい。応募締切は2025年11月20日(木)23:59まで。

    提出されたすべての作品に対し、現役のプロクリエイターから講評が行われる。上位通過者は、12月13日(土)に日本電子専門学校で開催される対面イベントに招待され、当日発表される課題に基づいて実制作に挑むことになる。

    「技能五輪国際大会に参加できるのは一生に一度のみ。世界と自分との“距離”を実感できる貴重な場です」と、五十嵐氏は語る。「作品づくりの中で見えてくる課題や気づきこそが、次のステップへの糧となります。プロからのアドバイスで自分を大きく成長させる絶好のチャンス、ぜひ積極的にご参加ください」

    世界に羽ばたく日本の代表たちは、モデリングフィードバックLIVEという新しい予選から生まれる。学び、挑み、そして世界へ。その第一歩が、もう始まっている。

    技能五輪国際大会の様子