CGWORLDが開催する学生・アマチュア向けCGコンテスト「WHO'S NEXT?」。本コンテストでは各応募作品について審査員から採点のほかに講評が送られるシステムとなっている。

昨年2025年第2弾コンテストの背景・プロップ部門の応募作品のうち6点について、特別審査員の一人である行弘進氏から講評と共に、ブラッシュアップの参考イメージが贈られた。本記事では行弘氏がどのような目線で作品を講評し、どのようにブラッシュアップすべきとアドバイスしたのか、実際の画像を掲載しつつご紹介しよう。

本記事の制作にあたって、ブラッシュアップ対象となった各作品応募者そして行弘氏の多大な協力があったことを書き添えておく。また、WHO'S NEXT?へ作品応募されたすべての応募者に敬意を示したい。

>>2026年第1弾のWHO'S NEXT?がスタート! 応募の詳細は以下をチェック
WHO'S NEXT? 2026年第1弾 募集告知ページ

記事の目次

    ■WHO'S NEXT? 2025年第2弾

    国内外で活躍する審査員から講評が得られる、学生・アマチュア向けCGコンテスト。
    https://cgworld.jp/flashnews/cgwhos-next-202502.html

    ・受賞作品紹介ページ
    >>キャラクター部門
    >>背景・プロップ部門

    ■レビュワー紹介

    行弘 進 氏

    Niantic
    Art Director

    96年に映画『Independence Day』の製作に参加したのを皮切りに、20年以上に渡りMatte Artistとして50作品以上の映画製作に関わる。成熟した映画の世界から新しいARテクノロジーに魅力を感じ、2018年Industrial Light and Magicを退社。現在NianticでArt DirectorとしてAR開発に携わる。代表作:『スターウォーズ/フォースの覚醒』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』など。
    nianticlabs.com/ja

    『was a champion』(飯村聖也さん)

    まず紹介するのは、WHO'S NEXT? 2025年第2弾の背景・プロップ部門(以下、前回コンテスト)において第2位に輝いた作品だ。各審査員から高い評価を受けた本作品について、行弘氏はどのように評価し、ブラッシュアップの方向性を示したのかを見ていこう。

    ■Before

    タイトル:『was a champion』、作者:飯村聖也さん(日本工学院八王子専門学校)、作品情報(作者コメント):過去の栄光から決別して新たな人生を歩み始めるというテーマで作成しました。こだわったポイントは道路の反射やプロップモデルのノイズ感を意識して制作しました

    ■After

    行弘氏によるブラッシュアップイメージ

    ▼行弘氏 講評
    アメリカの大都市の裏路地にある、どこか治安の悪い空気感がとてもよく再現されている作品だと感じました。雨による湿った雰囲気や、地面にできた水たまりの反射表現が美しく、空気の温度や匂いまで伝わってくるようです。また、鉄格子や梯子、手すりなどがほんの少し歪んでいる表現に、実際の街をよく観察した痕跡が感じられ、生活や時間の蓄積がうまく描かれているのも良い点です。

    さらに良くしていくのであれば、人物まわりの光の扱いを少し調整してみるとよいかもしれません。奥の人物がやや環境に埋もれてしまっているため、rim light(縁の光)をわずかに強めたり、背景側の明暗差を整理することで、視線の誘導がより自然になります。また、「過去の栄光」を象徴するチャンピオンベルトとボクシンググローブが少し気づきにくいため、配置や色のコントラストを意図的に強調してあげると、ストーリーがより明確になります。加えて、雨粒のサイズや密度に場所ごとの変化をつけると、空間の奥行きがさらに強く感じられると思います。

    『超高層建築群』(後藤悠人さん)

    次に紹介するのは、前回コンテストにおいて第4位を獲得した作品。画面いっぱいに緻密に建築物が配置されている印象的な画づくりが感じられる力作だ。

    ■Before

    タイトル:『超高層建築群』、作者:後藤悠人さん(ASOポップカルチャー専門学校)、作品情報(作者コメント):突貫工事で上へ上へと建てられていった高層建築物群をイメージして制作しました。視線が自然と中央の店舗と建物が融合したような、特徴的な構造物に向かうよう構図や配置を調整しています

    ■After

    行弘氏によるブラッシュアップイメージ

    ▼行弘氏 講評
    思わずじっくり見入ってしまうほど、細部まで丁寧に作り込まれた作品だと感じました。この建物がどんな環境にあり、そこでどんな人々が暮らしているのか、その“生活の匂い”が自然に伝わってきます。このようなモチーフは、複製を何度もして規則的に見えてしまいがちなのですが、雑多さやランダムさがうまく作られていて、とても良い工夫が感じられました。

    一方で、さらに説得力を高める余地があるとすれば、ライティングとテクスチャ表現です。手前の建物を少し暗く抑え、奥側に光を多めに当てる、あるいはわずかに白飛びを作るなど、光のメリハリを付けるだけで、空間の奥行きや視線の流れがより明確になります。また、テクスチャのバンプ値やスケールがやや強く感じられる箇所があるので、そこを調整してあげると、表面の質感が落ち着き、より自然な“時間の積層”として画に馴染むと思います。

    『オーバーヒート』(渡邉 瑠美香さん)

    さて、3番目に紹介するのは、可愛らしいロボットが目を引く『オーバーヒート』だ。物語性を感じさせる小物を随所に配置していて、想像が膨らんでくる本作は、前回コンテストにおいて第5位を獲得している。

    ■Before

    タイトル:オーバーヒート、作者:渡邉 瑠美香さん(多摩美術大学)、作品情報(作者コメント):掃除ができない開発者のかわりに開発されたロボット。働き過ぎてオーバーヒートし、修理される哀愁漂う場面をイメージしました

    ■After

    行弘氏によるブラッシュアップイメージ

    ▼行弘氏 講評
    細部まで丁寧に作り込まれた、とても完成度の高い作品だと感じました。木や金属の質感がしっかりと表現されており、そこに“手触り”が感じられるのが良いですね。また、ローテクでアナログな要素を組み合わせたロボットのデザインにも遊び心と個性があり、世界観の中でキャラクターとして生きている点が印象的でした。

    細かい部分になりますが、扇風機のボケ具合や時計・タバコの影の落ち方や接地の仕方にわずかに馴染みきらないところがあり、“浮いて見える”印象が少しありました。また、「ここはロボットを修理・制作する作業机である」という説得力をもう少し強めるために、細かなパーツや工具、油じみなどの痕跡が増えると、生活感と行為の余韻がより立ち上がると思います。

    加えて、全体に緑が強めなので、暗部に少し青みを、光側にわずかに暖色を加えることで、空気に奥行きと温度差が生まれ、画としての魅力がさらに深まるはずです。

    『田舎の家』(桂川空大さん)

    続く作品は、画面全体を明るく照らす陽光の暖かさが感じられる魅力的な一枚だ。木々の影をコントロールするなど画面外を含めてアセットの構成力が感じられるが、行弘氏はどのように分析したのかを見ていこう。

    ■Before

    タイトル:田舎の家、作者:桂川空大さん(名古屋工学院専門学校)、作品情報(作者コメント):大正時代初期の生糸生産をしている家をコンセプトとして制作しました。蚕を安定した室温で育てるための囲炉裏を排気口で表現しました。干し柿の特徴的な影を、障子に落とすようにライトを設置しました

    ■After

    行弘氏によるブラッシュアップイメージ

    ▼行弘氏 講評
    本当によく作り込まれた作品だと感じました。干し柿や瓦、井戸の手押しポンプといった細部の質感表現が丁寧で、実際にその場にあるものをしっかり観察して再構築した痕跡が伝わってきます。カメラ外から差し込む木漏れ日や、干し柿の影が建物に落ちる演出など、光によって「その場所の時間」を描こうとしている姿勢もとても良いです。

    一方で、全体に赤みが強く、やや同じトーンでまとまって見える印象があります。少しだけコントラストを強めたり、影側に青みを足してあげることで、光に厚みが生まれ、画にメリハリが出るはずです。また、細かく作り込まれた排気口があるので、そこから湯気や煙が立ち上る描写を加えると、生活の気配がより深く伝わるでしょう。

    この家そのものに強い魅力があるため、どの要素を主役として見せたいかを軸に、別の構図やカメラアングルを試してみるのも面白いと思います。例えば、少し高い位置から見下ろして屋根や敷地の広がりを見せたり、もう少し引いて「この家がどのような環境の中にあるのか」を画に含めることで、作品の“語り方”にさらなる深みが生まれる可能性があります。

    『無限』(川口 望央奈さん)

    次に紹介するのは、合わせ鏡によってどこまでも空間が広がっていくような独特な一品だ。画面奥の暗がりも相まって不気味な雰囲気が漂うが、行弘氏はこの作品をどのようにブラッシュアップしただろう?

    ■Before

    タイトル:無限、作者:川口 望央奈さん(ASOポップカルチャー専門学校)、作品情報(作者コメント):無限に続く合わせ鏡がコンセプトです。作品を見た方々にこの空間から出られない閉鎖感を味わってほしくて制作しました。遠近、中近、近近それぞれ現れるような構図を意識しました

    ■After

    行弘氏によるブラッシュアップイメージ

    ▼行弘氏 講評
    この作品は、一目見たときに「居心地の悪さ」や「どこか終わりが見えない空間」という感覚がしっかり伝わってくるところがとても良いです。すべてのライトが均一に点灯していないところや、倒れたハンドソープなど、さりげない違和感の置き方に“意図して画を作っている”姿勢を感じました。無表情な空間なのに、気配だけが残っている感じがよく出ています。

    もう少し不気味さ・不安感を強めたい場合は、ライティングが鍵になりそうです。全体をほんの少し暗くし、青みを強めると、空間の温度が下がり、静けさの中の不穏さが際立ちます。また、奥の赤い光の先に“何があるか分からない”余白を作ることで、無限に続いている気配をさらに増幅できます。例えば、奥の壁をはっきり見せず、光だけがぼんやり消えていくような描写です。

    すでに「感じさせる」ことができている作品なので、光と奥の処理を少し工夫するだけで、より強い印象を持つ画に進化すると思います。

    『街が目覚める前に』(冨久丈丸さん)

    最後に紹介するのは、多くの果物や野菜が配置されている店先の風景を描いた作品だ。シンプルな形状のアセットを多く使いながらも日々の営みが感じられる有機的な印象を作り上げている。そんな本作について、行弘氏がどのように分析しブラッシュアップしたのか見ていこう。

    ■Before

    タイトル:街が目覚める前に、作者:冨久丈丸さん(N高等学校)、作品情報(作者コメント):早朝、開店前の八百屋の店先を制作しました。世の中が動き出す直前の静寂、そしてその静寂の中の果物・野菜一つ一つの生命の光沢を表現しました

    ■After

    行弘氏によるブラッシュアップイメージ

    ▼行弘氏 講評
    農家の方が道沿いに出している直売所のような空気がとてもよく再現されている作品だと感じました。果物を並べている台や箱が全て異なっており、「あるものを使って工夫して置いている感じ」がとても自然で、その場の生活感につながっています。果物のディテールも丁寧に作り込まれており、配置にランダムさや個性があり、ただ複製しただけに見えない工夫がきちんと感じられました。りんごの中に青りんごが少しだけ混ざっている演出も、非常に良いアクセントになっています。アセットそれぞれの自然な歪みや汚れ、手触りにも説得力があり、思わず見入ってしまいました。

    一方で、全体的に少し暗めで、見たい部分が少し埋もれてしまっている印象があります。早朝がテーマであれば、わずかに明るさを上げて、空にほんの少し朝焼けの色味を含ませたり、フルーツに軽いアクセントライトを加えることで、「街が目覚める直前の空気感」がより鮮明に伝わると思います。

    高校生で、しかも独学でここまでの完成度に到達しているのは本当に驚きです。観察力と粘り強さを強く感じました。今後の成長がとても楽しみです。

    WHO'S NEXT? 2026年第1弾 スタート!

    作品制作において、何を伝えたいか、それを魅力的に伝えるためにはどうすれば良いのか、その手法や考え方の一端をこの記事を通じて学んでいただけたのではないだろうか。また、自身の作品をブラッシュアップするには、プロに評価をもらう機会を増やすのが良いこともおわかりいただけたものと思う。

    そこで学生・アマチュアのクリエイターの方はぜひ次回のWHO'S NEXT?に挑戦してみてほしい! 2026年第1弾コンテストの作品募集締め切りは5月18日(6月結果発表)となっている。

    ▼ WHO'S NEXT? 2026年第1弾 募集告知ページ

    https://cgworld.jp/flashnews/cgwhos-next-202601.html
    ※応募フォームは5月初旬にオープン予定

    最後になるが、WHO'S NEXT? 2025年第2弾に参加してくれた応募者と審査員全員に改めて謝意を表する。そして次回のWHO'S NEXT?にも多くの魅力あふれる作品が集まることにもぜひご期待いただきたい。

    EDIT_小倉理生(種々企画