去る2月23日(月)にNHK「クローズアップ現代」で放送の「逆襲なるか 日本アニメ~海外輸出・新戦略の行方~」では、海外における日本的な長編映画やテレビシリーズの現状について触れられ話題となっていた。
そして、3月2日(月)に福岡市で行われた「Creative Meetup!powered by CLF vol.8 世界のコンテンツビジネス動向~映像コンテンツ海外進出セミナー~ 」は、上記放送との比較としても興味深いイベントになった。そのレポートをここにお届けしよう。

「Creative Meetup!powered by CLF vol.8」

「Creative Meetup!powered by CLF vol.8」

本イベントは、前半がメインゲスト(後述)による基調講演、後半では「パネルディスカッション ~福岡における海外展開の現状と事例」と題して、YOSHIYA AYUGAI氏(Turner International Asia Pacific Limited、エグゼクティブ・プロデューサー)と高松美由紀氏(Under The Milky Way日本法人、代表取締役)が登壇した。

トークは、森りょういち氏(FOREST Hunting One代表)と松下由香氏(モンブラン・ピクチャーズ)が2人に尋ねるかたちで進行。森氏はショートアニメ『Peeping Life』などの監督として知られており、松下氏は映画『放課後ミッドナイターズ』などの海外マーケティング担当として活躍中だ。福岡市を拠点として制作された両作品も、日本的なアニメと聞いて想起する作風とは異なるため、逆に海外を攻めやすい。

「Creative Meetup!powered by CLF vol.8」

登壇した4名。森氏の『Peeping Life』はシリーズ累計50万本だが、いわゆるアニメファン以外へのリーチに成功している。

「地域によってちがいますね。南欧や南米は日本の作品が人気があったりしますが。あと作品の内容によってまた異なるのですけど、例えば『ドラえもん』、『忍者ハットリくん』とかはインドで大人気で、特に『ドラえもん』はインドにおけるディズニー・チャンネルの視聴率を支えてるんですよね。子供向けは受け容れられてるんですけど、10年前に"ジャパニメーション"と呼ばれていた起承転結型の作品はなくなったと思います」(AYUGAI氏)。

カートゥーン・ネットワークのプロデューサーとしても活躍するAYUGAI氏は、イベント前半の「世界が求めるコンテンツとは?」と題した基調講演の中で、日本では既存のテレビが強いことや漫画から派生している作品が多いことなどを挙げていた。「(日本の漫画やアニメは)海外でもリスペクトされてると思います。ただし、カートゥーン・ネットワークのアニメーターでもファンがいて、日本の作品の手法を取り入れたりしてやってる点もありますけど、マスでどうかというと受け容れられていませんね。例えば人口が2.5倍だったらオタクも2.5倍ってことなんだと。別にマスではなくて日本のアニメが好きって人たちと同じだと思います」。

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AYUGAI氏と高松氏

高松氏もイベント前半に「iTunes 等の映像配信ビジネスにおける可能性」と題した基調講演を行なっていた。高松氏は、フランスに本社がある配信代理店「Under The Milky Way」の日本支社の代表として活躍している。「フランスでは第2世代がジャパンエキスポとかに参加してるんですけど、『キャプテン翼』とかを見て育った40代、50代の人たちが子供連れで来るんですよ。嬉々として自分の子供にコスプレさせるとか言い訳をつけて参加してるってのがあって、昔は日本のアニメは斬新だって楽しまれてたんですけど、今は親に薦められてる人が意外と多いと聞きました」。

海外では日本の漫画が"Manga"として、アニメが"Anime"として通じていることはひろく知られているが、高松氏のコメントから改めて実感した(ちなみにAYUGAI氏は、昨年の「第15回広島国際 アニメーションフェスティバル」で登壇した際に、言葉として日本的な作品の"Anime"と、海外的な作品としての"Animation"を使い分けていた)。

「Creative Meetup!powered by CLF vol.8」

議論をかさねる4氏

そしてAYUGAI氏は、「日本はクリエイターに対するサポートが(海外に比べると)少ない」「共同制作で入りたいけど、製作委員会方式が多くて非常に入りづらい」といった悩みを打ち明けた。

そうした日本の業界慣習に対するカートゥーン・ネットワークの優位性として、「100%出資で他のパートナーの意見を聞かなくてもクリエイターの中だけで解決できる」、「日本よりもチャンネル数が多いから初回で視聴率3〜4%ぐらいとれたら大成功」といったことを挙げていた。

また、ちょうど同局の大人向け放送枠「Adult Swim」における日本アニメ枠が縮小したことの関連から、コメディの方が視聴率がとれるという話をうけるかたちで、高松氏が「『R100』(松本人志監督)がアメリカやフランスではけっこうな数が売れた」という実例を披露。国内において日本と海外の話がなされる場合、長編やテレビシリーズと短編の構図になる傾向がある(短編作品に注目が集まるのは、海外の映画祭での受賞の際に限られる)。

そして近年のセールスの落ち込みに関しての報道も、そもそも否定的な見方をしているとか危機感をあおっているとかではなく、今ではそうした現状を広く知ってもらった上で一緒に考えていく段階になっていると言えるが、まだまだそれが伝わっていないことが問題なのだろう。本イベントは、そうした実状とはまた異なる視点から、海外マーケット事情を垣間見られる有意義なものになっていた。

TEXT&PHOTO_真狩祐志

「Creative Meetup!powered by CLF vol.8」
日時:2015年3月2日(月)15:00~17:30(受付開始14:30)
会場:エルガーラホール 7F 中ホール 〒810-0001 福岡市中央区天神1丁目4-2
主催:CREATIVE LAB FUKUOKA
共催:特定非営利法人「映像コンテンツ産業研究会」