2015年1月8日に放送した「第4回 『CGWORLD CHANNEL』 世界観を構築するコンセプトアートの描き方」を完成されたコンセプトアートとともに大公開!! 生放送を見ていない方もいると思うので簡単に概要を紹介。 動画は記事の最後にあるので是非見てほしい。
▲今回ご出演いただいたのは株式会社INEIの(右)富安健一郎氏(代表取締役・コンセプトアーティスト)と2015年1月にINEIの執行役員に就任した(中)橋本善久氏(執行役員・プロデューサー)。
二人の出会いは橋本氏がスクウェア・エニックスのCTOとしてAgni's Philosophyのプロジェクトに参加している時だった。
橋本氏:「ラストのシーンがあるんですけど、3分半のファイナルの一番重要なシーンで、どうしてもいい絵が欲しくてINEIの富安さんにお願いしたら、すごいいい絵がきて、それのおかげで作品がキュッとまとまった」
その後、飲みに行ったりするようになり意気投合しINEIの経営に参加するようになったという。
▲まず初めに「コンセプトアートとは?」について富安氏がCGWORLD vol.198の原稿を元に説明した。
橋本氏:「今回お伝えしたいことの重要なことのひとつとして、コンセプトアートというもののプロセスがあります。ゲームや映画などのいろんな作品でコンセプトアートを活用していただく際に、そのプロセス自体をもっとはっきり定義しようというのがINEIの中で話し合いがあった。」
コンセプトアートのスタートである「ピッチコンセプト」から「シーンコンセプト」「アセットコンセプト」「プロダクションアート」「プロップデザイン」までわかりやすく解説。
富安氏:「ひとつひとつ区切っているんですけど、この区切りが重要で、ここをきっちりと区切ることでその段階でやるべきことを終わらせておくことが大事ですね」
このワークフローはひとつの基準であり、プロジェクトの規模やスタイルや文化などで様々な形に応用する必要があるが、是非参考にしてほしい。
▲今回の放送では実際にコンセプトアートを描く前に視聴者の方がプロデューサーとなりピッチコンセプトの疑似会議から進めていった。
富安氏:「こういうのに中二病ぽい題名をつけていくんですよ。その方がコンセプトをひとつに絞れるんですね。コンセプトアートで大事なのってひとつの絵で大きいひとつのコンセプトをいうことが大事なので、あえて僕はタイトルをつけるんです。」
▲富安氏が即興で描いたピッチコンセプト3案を視聴者のアンケートで方向性を決めた。 今回はA案の「捕われのドラゴン」に決定。
▲ピッチコンセプトの方向性が決まったところで、よりそのシチュエーションを詳細化していく。
富安氏:「においも重要なんです。人間の記憶ってすごくにおいに左右されたりするんです。」
においに加えて気温、音、湿度、時間などの要素も視聴者のコメントを拾いながら書き加えていきピッチコンセプトの詳細が決定した。
▲実際にライブペインティングでコンセプトアートを描きはじめる。
まずは画面の雰囲気作りとしてキャンパスにグラデーションを使いその上に雲のような「もくもく」を加えることで下地となる画面の雰囲気作りをした。
▲詳細を議論したホワイトボードを見ながら実際に描いていく。
山のシルエットを描いた上に再度「もくもく」を描くことで絵に立体感が生まれファンタジーの雰囲気が作られてきた。
▲谷に捕われているドラゴンを描いていく。
富安氏:「ここでドラゴンのデザインがどうのこうのというのは全然重要じゃないんです。捕われている谷の雰囲気が重要なので。」
いまの段階はピッチコンセプトなのでドラゴンのディテールとかは重要ではない。 この作品(ゲームや映画などで使う場合)でドラゴンが重要になるのであればアセットコンセプトでディテールを詰めていくことになる。
▲全体の絵のバランスを見ながら画面を構成していく。
富安氏:「この絵の中で、例えばここに黒いものがあったほうがいいなというのでバーッと黒いものを描いて後からこれが何になるのかを描いていく。」
▲ホワイトボードを見ながら気温や音、におい、時間などのキーワードを表現していく。
▲富安氏:「拡大すると実はこんなにラフなんですよ。別に細かく描くことがゴールに必ずしも向かっていない。」
▲ライブペインティングを開始してから約1時間でできたコンセプトアート。
▲こちらが後日完成した「捕われのドラゴン」のコンセプトアート。
▲実際のライブペインティングの様子はこちらの動画で見ることができる。
【公式配信】 第4回 『CGWORLD CHANNEL』 世界観を構築するコンセプトアートの描き方
[Profile]
富安 健一郎 氏
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科インダストリアルデザインコースを卒業後、ナムコ(現、バンダイナムコゲームス)を経てフリーランスのデザイナーに。さらに、自由にクリエイティブに専念できる環境を作りたいと株式会社INEIを設立する。
橋本 善久 氏
東京大学工学部卒業後、株式会社セガでプログラマや ゲームディレクターとして家庭用ゲームソフト開発に従事。その後株式会社ス クウェア・エニックスのCTO/R&D部門長として全社技術の推進、開発マネジ メントの改善、技術者採用促進と育成等に努める。2014年春より独立し、リブゼント・イノベーションズ株式会社を設立。2014年12月より、ライフイズ テック株式会社 執行役員CTOを兼務。2015年1月より株式会社INEI 執行役員 プロデューサーを兼務。
[Information]
INEI公式サイト:http://ineistudio.com/