5月23日から6月28日まで、福岡市のアートギャラリー「三菱地所アルティアム」にて「東欧アニメーションの世界 -ポーランド・チェコ・クロアチア-」が開催された。会期中は関連イベントとして在福のスタジオを招く「フクオカ×アニメーション スペシャルトーク」も実施。ゲストは6月12日のvol.1がKOO-KIの白川東一氏と告畑 綾氏、6月26日のvol.2がhappyprojectの田上キミノリ氏だった。本稿では、その中から田上氏のスペシャルトークをお送りする。
『フルーティ侍』はどうやって生まれたのか?
田上キミノリ氏(happyproject代表)(左)。進行の高橋政俊氏(デジタルハリウッド福岡校校長)と
トークの会場はデジハリ福岡校。同校は2002年の卒業制作から大ヒットにつながった『スキージャンプ・ペア』シリーズの真島理一郎氏を輩出したことでも有名だ。田上氏は真島氏の先輩にあたり、『スキージャンプ・ペア2』ではオープニングの制作を担当した。近年では『LINE OFFLINE~サラリーマン~』やT・ジョイのマナーCMなどを制作する傍ら、自社オリジナル作品として『フルーティー侍』『パパンがパンダ』『くるくるスーシーズ』などのIP展開を行なっている。
果物の顔をもつ侍たちのチャンバラ時代劇『フルーティー侍』
田上氏は『フルーティー侍』について「チャンバラのアニメーションをやりたいと思ってました。ずっと企画だけ暖めていて、キャラクターをどうしようかなと思った時に、以前に描いたリンゴの侍キャラクターが頭に残っていたんです」と語る。「何も考えてない時のラクガキから生まれてきたキャラクターなんですが、そういう風にストックしていたアイデアが作品のベースになってます。どうしてフルーツなのかと言うと、自分が描いたキャラクターの中から笑えるものを選んで、それに見合う企画が乗っかってきたからです」(田上氏)。
『フルーティー侍』のコンセプトを聞くと『仮面ライダー鎧武/ガイム』を思い出す人も多いかと思う。『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013年放送)が発表された際には、知人から少なからず反応があったという田上氏。しかし『フルーティー侍』は2009年から展開している作品であり、後者の視聴者とでさして混乱は生じなかったという。
軽快なリズムと動きで話題の『パパンがパンダ』
一方、海外展開では『フルーティー侍』は欧米、『パパンがパンダ』はアジアでウケが良いと話す。これについて田上氏は「ローカライズの手間を考えてできるだけ喋らせないようにしているので、動きには気をつけました。喋りで話を進める作品だと、各地域での文化を含めたものになりがちでローカライズしづらいんです。どうやってコメディにするかという点で翻訳が難しいですし」と持論を展開。さらに、「ローカライズが前提だと、タイミングをコンテ上で決めるのがなかなか難しいですね。セリフがあるとセリフの長さでカットが決まりますが、動きがメインだと動きの流れでテンポを決めてくことになりますから」と制作時の難しさを語った。
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[[SplitPage]]世界が注目する東欧クロアチアの「ザグレブ国際アニメ―ションフェスティバル」
ここからは簡単に、イベント「東欧アニメーションの世界 -ポーランド・チェコ・クロアチア-」について説明しておこう。5月24日にはゲストとしてクロアチアからザグレブ・フィルムのサーニャ・ボルチッチ氏が招かれ、「ザグレブ派アニメーションの過去・現在・未来」が行われた(モデレーター:東京造形大学教授・越村 勲氏)。また会期中の6月9日から14日まで、現地では「ザクレブ国際アニメーションフェスティバル」が開催されていた。ザグレブでは過去に短編で『ジャンピング』(手塚治虫監督)や『頭山』(山村浩二監督)がグランプリを受賞するなど、日本作品に縁がある。
「ザクレブ国際アニメーションフェスティバル」は、例年フランスで開催される「アヌシー国際アニメーションフェスティバル」(今年は6月13日から18日)と会期が連続することでも知られている。長編アニメーション部門では、日本作品からザグレブで『ジョバンニの島』(西久保瑞穂監督)がノミネート、アヌシーで『百日紅~Miss HOKUSAI~』(原 恵一監督)が審査員賞となった。
各国のコンペでグランプリを獲得している『We Can't Live Without Cosmos』@東京アニメアワードフェスティバル2015
中でも注目したいのは短編アニメーション部門。ザグレブとアヌシーで同じ作品がグランプリを獲得したからだ。その作品『We Can't Live Without Cosmos (Mi ne mozhem zhit bez kosmosa)』(ロシア)は、3月に日本でも「東京アニメアワードフェスティバル2015」の短編部門にてグランプリを受賞と勢いに乗っている。
ザグレブとアヌシーはカナダのオタワ、日本の広島とで世界4大アニメーションフェスティバルとされ、いずれもアカデミー賞の公認映画祭としても動向が注目されている。本作は前回の第87回アカデミー賞ではノミネート候補作品となっていたが、フタを開けてみると名前が並ぶことはなかった。ザグレブとアヌシーでの結果が、次回第88回の賞レースにどう影響してくるのか気になるところだ。
TEXT&PHOTO_真狩祐志
「東欧アニメーションの世界 -ポーランド・チェコ・クロアチア-」
http://artium.jp/exhibition/2015/15-03-eeanimation
「三菱地所アルティアム」
http://artium.jp
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