5月18日、サイバーコネクトツー福岡本社にて「西洋のレベルデザイン手法と日本と西洋のゲーム開発の違いについて」と題した講演が開催された。登壇者はサイモン・アビタン氏(以下、アビタン氏)。サイバーコネクトツーのモントリオールスタジオに所属するゲームデザイナーである。

TEXT & PHOTO_真狩祐志 / Yushi Makari
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

ゲームで遊んでいるプレイヤーが、フロー(集中と幸福)に達しているかどうか


サイモン・アビタン氏

同講演のはじめには、まずアビタン氏がゲームデザインとレベルデザインについて説明した。ゲームデザインとはプレイヤーの体験を定義づけるルールのこと。一方、レベルデザインはプレイヤーにキャラクターの能力を使ってもらうため、ゲームデザインを元にして障害物をつくることを指す。つまり、よりよいレベルデザインをつくれるかどうかは、ゲームデザインのでき次第になるという。そこに目的、挑戦、報酬を追加してプレイヤーのモチベーションを維持させていく。


ゲームデザインがうまくできないとレベルデザインもうまくできない

次にアビタン氏はレベルデザインを行うためのワークフローを解説した。レベルデザインのブリーフィングとレイアウトを設定した後に行うブロッキングは、プレイしてみて楽しいかどうかの確認をする工程。その確認はゲームエンジン内のテストデータで行い、テストプレイができるよう調整を施す。


基本レベルデザインのワークフロー

またアビタン氏は合理的にレベルデザインを進めるための方法についても触れた。まずはプレイヤーに応じて走ったりジャンプしたりなど、難易度を決定。その次に敵やチェックポイントなど、レベルデザインに関わる要素を一覧にして、難易度をつめていく。ここで各レベルの難易度を大まかに設定して決定。最後にパラメーターを抽出して、全体的に難易度のバランスが取れているかを確認。それらを必要に応じて再設定するといったながれだ。


ゲーム内のレベルデザインの変化

さらにアビタン氏は、プレイヤーが最大限に活用できるレベルデザインを目指すことが重要で、どのような難易度にすべきかをチェックする必要があると述べた。そのためにはまず、レベルデザインのブリーフィング、ストーリーのながれ、目的や時間などに与えたい状態を一覧にして、必要なデータを割り出す。そのデータを照合して、もっと難易度を上げるべきか、ストレスを下げるべきかの変更を行う。それらを繰り返してブラッシュアップしていくのだという。


プレイヤーがもつ能力で乗り越えられる課題の量を適切に設定

「ゲームで遊んでいるプレイヤーが、フロー(集中と幸福)に達しているかどうかが重要です」とアビタン氏。フローと呼ばれる状況に達するのは、アビリティ(能力)とチャレンジ(挑戦)が等しくなったときで、プレイヤーのアビリティとチャレンジが等しくない場合、つまり簡単すぎたり難しすぎたりすると集中力が切れて満足度が下がるのだ。ただし、プレイヤーにどのような体験をさせたいかにもよるため、必ずしもフローが必要とは限らないと補足した。


良いレベルデザインをつくるには良いゲームデザインが必要

アビタン氏は最後に、日本と欧米のゲーム開発のちがいに対する所感について、「ステレオタイプではある」と前置きしつつ、日本では小規模で職人的なスタイルの制作現場が多いが、欧米では大規模で熟練的なトレンドに沿って開発されるというちがいがあると述べた。このほか日本だと家族のような団結力で成長するチャンスが与えられるが、欧米では自分磨きのためにモチベーションを保てるような会社を求めるといった差異にも言及した。