>   >  伝統×最新技術の映像表現『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』VFXメイキング~SIGGRAPH 2018<1>〜
伝統×最新技術の映像表現『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』VFXメイキング~SIGGRAPH 2018<1>〜

伝統×最新技術の映像表現『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』VFXメイキング~SIGGRAPH 2018<1>〜

8月12日〜8月16日、カナダ・バンクーバーで開催されたSIGGRAPH 2018。その期間中に開催されたProduction Sessions(プロダクション・セッション)では、今年もハリウッドVFX大作のメイキングが連日披露されていた。本稿ではその中から映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(以下、ハン・ソロ)のVFXワークに関する講演「Making the Kessel Run in Less Than 12 Parsecs - The VFX of "Solo: A Star Wars Story"」をレポートする。

TEXT_鍋 潤太郎 / Juntaro Nabe
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada、沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』日本版予告
© 2018 & TM Lucasfilm Ltd.

プロダクション・セッションではハリウッド映画のメイキングを扱うため、基本的に全てのセッションにおいて、著作権保護の関係で、講演中は写真や動画の撮影がいっさい禁止されている。インターネットでは公開されないメイキング資料など貴重な情報が披露される点が、同セッションの大きな魅力というわけだ。そのため、セッションの冒頭では、会場前方にあるスクリーンに、撮影禁止を含む注意事項が表示される。この注意事項、SIGGRAPHは国際学会なので各国の言葉で表示されるのだが......



英語:Photography and Recording prohibited.
日本語:写真および動画撮影はご遠慮ください。
ウーキー:がるるるがるるるるるるるうがががががが!!!

......と、ウーキーへの注意書きもあり、なかなかお茶目であった。

<1>伝統的な手法と最新技術で表現するスター・ウォーズの世界

さて、本題である映画『ハン・ソロ』の講演をふり返っていこう。

登壇者
ロブ・ブレドー(Rob Bredow)/ Visual Effects Supervisor, Co-ProducerIndustrial Light & Magic
パトリック・トゥバック(Patrick Tubach)/ Visual Effects Supervisor Industrial Light & Magic
グレッグ・ケーゲル(Greg Kegel)/ Visual Effects SupervisorIndustrial Light & Magic
ジョセフ・カスパリアン(Joseph Kasparian)/ Visual Effects Supervisor Hybride


ロブ・ブレドーILMのロブ・ブレドーです。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(以下、『ハン・ソロ』)にはプロダクション側のVFXスーパーバイザーとして参加しました。今日は......

1.映画の中でわれわれがとったアプローチ
2.ロケーション、個々のキャラクター
3.ケッセル・ラン

以上、3トピックについて話したいと思います。

SIGGRAPH会場内のプロダクション・ギャラリーには、撮影に使用されたコスチュームなどが展示してあった

ロブ・ブレドー:『ハン・ソロ』は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)へと続くお話ですので、視覚面でもそれを感じさせる必要があります。そこで、われわれは"伝統的な視覚効果テクニック"を可能な限りとり入れることにしました。そのため、イタリアのドロミーティやカナリア諸島などでのロケを敢行し、実写プレートをたくさん撮影しました。

冒頭のスピーダー・チェイスのシークエンスは、イギリスのハンプシャーにある現在は使用されていない発電所など、実在する場所で撮影したことで臨場感を出しています。ショットによっては、この映像のように、タイヤのついたスピーダーでカーチェイスを撮影しました。そして後でタイヤをデジタルでペイントアウトすることで宙に浮いたスピーダーを表現しています。またスペース・ポートのシークエンスは、ヨーロッパで最も大きい、あの『007』でも使われたロンドンのスタジオで撮影されました。

続いて、パトリック・トゥバックが映画前半に登場する惑星コレリアについてお話します。

パトリック・トゥバック:ILMサンフランシスコでVFXスーパーバイザーを担当しているパトリック・トゥバックです。今日は大勢の方に来ていただいて、大変嬉しく思います。

では、惑星コレリアについてお話します。コレリアは、『スター・ウォーズ』ファンの間ではお馴染みの場所でしょう。ハン・ソロの出身地であり、スターデストロイヤーやTIEファイターの建造拠点でもあります。この星の映像化にはまずコンセプトアートから始めました。コレリアのデザインは、工業地域や居住区などが「ピル(錠剤)」とわれわれが呼んでいる楕円形の区画で繋がっています。映画のロゴが登場するショットは膨大なパーツで構成される工場地帯ですが、ここはフルCGショットです。

一方、レディ・プロキシマ(惑星コレリアにいる異星人)はCGではなく、クレーンで操作する実物大パペットです。顔面はリモートのアニメトロニクスでコントロールし、手はパペッティア(人形操者)がアームで動かしています。ほとんどのプロキシマのショットでは、CGの腕を追加したり、2Dのワーピング・テクニックで目や歯を強調したり、セリフが更新された場合にはリップシンクを調整するなどしています。こうしてクラシカルな『スター・ウォーズ』の世界観を再現することができました。

グレッグ・ケーゲル:ILMバンクーバーのVFXスーパーバイザー グレッグ・ケーゲルです。ILMバンクーバーでは、最初のアクション・シークエンスに登場するスピーダー・チェイスを担当しました。

このシーンは移動コースがかなり長いチェイス・シーンなので、設定をきちんと決めておく必要がありました。なのでレイアウト・スーパーバイザーが位置関係やカメラ位置などを決定しました。先ほどパトリックの話にも登場した「ピル」は、それぞれの地区が異なる役割をもつことが認識できるよう、デザインも工夫しています。例えば、スピーダーが最初に建物の中から曇り空の下に出るシーンでは、小さなキューブで構成される複雑な外観の建物が見えます。このデザインは日本の建築物からヒントを得ています。

ロン・ハワード監督は、映画『ラッシュ/プライドと友情』を手がけた経験から、このチェイス・シーンでもF1レースさながらの迫力を求めていました。そのため、空港の滑走路で実際に模造車を使ってチェイス・シーンを撮影しました。この方法で、車のもつ遠心力や重心など、本物のダイナミクス感を得ることができたのです。ここから、ペイント・チームが膨大な時間をかけてタイヤをデジタルで消し去るという、昔ながらのVFXで表現しているショットもあります。

ロケにおける建造物の位置的な制約などから、セットでグリーン・スクリーンで別撮りしたショットもあります。その際、スピーダーの真上と左右にLEDパネルを設置して、ロケで撮影したプレートを投影することで、スピーダーのガラス部分への映り込みや、平坦なボディへのディフュージョン効果を得ることができました。これ(※会場で紹介された資料)は、このシークエンスのファイナル・ショットの1つですが、アセット・チームによるCGスピーダー、レイアウトチームによる正確なマッチムーブ、追加でCGエンバイロメントの映り込みを足し、完成となります。

ジョセフ・カスパリアン:ジョセフ・カスパリアンです。ユービーアイソフト傘下のVFXスタジオ、HybrideにてVFXスーパーバイザーを務めています。Hybrideは2013年からILMとパートナー契約を結び、数々の映画に参加させていただいてます。

われわれはスペース・ポートのシークエンスを担当しました。スペース・ポート内の空間は広く、煙が漂い、そして様々な要素が含まれます。多くのショットで、ショット・エクステンションを担当しました。Hybrideでは、合成にFlameを使用しており、Flame上でリアルタイム・エンジンを使用し、3Dパッケージからインポートしたモデルやテクスチャをリアルタイムで調整することができました。これはクオリティ向上に大きく役立ちました。

グレッグ・ケーゲル:スペース・ポートの撮影での楽しい思い出として、帝国軍の軍用犬があります。この犬はCGではなく、本物の犬が着ぐるみを着て、演技しているのです。スーツと地肌のギャップ部分は、後でデジタルペイント処理で調整しています。中には、撮影が長引いて疲れてしまって、もうテコでも動かない犬もいて、困りました(苦笑)。

ロブ・ブレドー:犬たちは極めて丁重に扱われる好待遇で、拘束時間も1日も20分ほどでした。私はこの頃1日20時間働いていたので、「犬になりたい」と本気で思いましたよ(笑)。

グレッグ・ケーゲル:また、パペッティアが操演するパペットの宇宙犬も使用しました。パペッティアは"あの"BB-8も操演したブライアン・ハリングが務めました。

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<2>エピソード4へのつながりも意識してつくられた映像

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