4月3日(水)から5日(金)まで東京ビッグサイトにて開催された「コンテンツ東京 2019」。その中で、最先端のVR・AR・MR技術が展示された「VR・MR・ARワールド」も実施されていた。本稿では数多くのブースから4社をピックアップしてその模様をお届けしたい。

●関連記事
VRエンタメは今どこまで可能なのか? USJが自信をもつ「XRライド」とディズニー出資企業による最先端MRアトラクションの舞台裏

TEXT&PHOTO_安田俊亮 / Shunsuke Yasuda
EDIT_小村仁美(CGWORLD)、山田桃子

ヘッドセットを"被らない"VRゲームを展示(FLAME)

CG映像、VFX、データ制作を中心に活動するCG制作プロダクションのFLAMEは、VRヘッドセット「HTC Vive」のヘッドセット部分を"使わない"VRゲーム「METEORUS」を展示していた。

FLAMEのブース

ゲームの内容は、Viveコントローラをもち、3台のモニタに映し出された隕石や敵のロボットを撃つシューティングゲーム。ゲームには8本のViveコントローラとViveのベースステーションが接続されており、最大8人がプレイできる。コントローラの先を向けた方向にねらいのマークが表示され、トリガーを押せば弾を発射。プレイ感としては、任天堂のコンソール機「Wii」のWiiリモコンを利用したシューティングゲームに近いものがある。

画面に向かって弾を撃つ操作感だけを見れば、赤外線センサを利用するWiiリモコンの方がレスポンスが良いのではと尋ねたところ、将来的なイメージとして「部屋の壁面全てをモニタとして使うようなゲームを想定しているから」だと答えてくれた。

プレイの様子

FLAMEとしては、VR体験をヘッドセット単位から部屋単位の規模に拡張することで、同時に何人も体験できる「VRゲーム」ができるのでは、というねらいがある。コントローラをもつだけでVR体験が始まるのであれば、老若男女を問わずコンテンツを楽しんでもらえるようになる。それが「ヘッドセットを使わないVR」の意義なのだと話してくれた。

また母体がCG制作プロダクションなので、見た目を変化させることも比較的簡単に行える。今回はあくまで参考展示だが、要望があればコンテンツの制作協力も考えているそうだ。

VR+ARで楽しむ「ゾンビごっこ」コンテンツ(太陽企画)

CMをはじめとする総合映像制作会社の太陽企画が展示していたのは、「ゾンビごっこ」が体験できるVRコンテンツだ。コンテンツ名は『サイト・オブ・ザ・リビングデッド』

『サイト・オブ・ザ・リビングデッド』体験中の様子

体験はゾンビ役(最大4人)、襲われる役(1人)の2種類から選択可能。襲われる役を選んだ場合は椅子に括り付けられ、VRヘッドセット(Oculus Rift)を被せられる。ヘッドセットからはVRカメラ(ZED Mini)を通した目の前の風景が広がっていて、ゾンビ役になった人間の姿が見えるようになっている。

コンテンツがスタートすると、人間の上にゾンビの3Dモデルが覆いかぶさるように表示される。ゾンビの動きは人間の動きと連動していて、ゾンビ役がゾンビになりきればなりきるほど怖いゾンビが襲ってくる、というしくみ。



  • 襲われる役はじっと襲われるしかない



  • ゾンビの後ろに人間が見えているので、そこまで怖くない

一方、ゾンビ役は特に準備はいらない。襲われる役の後ろにはKinectセンサーが設置されていて、カメラ内にいる人の骨格を読み取っている。椅子の上のモニタには襲われる役が見ている風景、つまり自分たちの姿とそれに連動したゾンビが映し出されていて、自分がどんな演技をしているかがチェック可能だ。

実際に襲われる側で体験してみると、ゾンビの後ろに人間が見えているのでそこまで怖くない。コンテンツとしてはあくまで「ごっこ」であり、VRの参考展示が目的なのであえてそうしているということだった。



  • ゾンビ役はなりきることが大事、という説明があった



  • 太陽企画では、人など手前にあるものが溶けていくようなインタラクティブコンテンツ「TINT」の展示もあった。エンターテイメント領域での活用を目的としているという

Vive×HoloLensのMRシューター!(DataMesh)

MRとビッグデータのソリューションカンパニーを掲げるDataMeshは、HTC ViveとMicrosoftのMRヘッドセット「HoloLens」を組み合わせたMRシューティングゲームを展示していた。

ブースの様子

ブース内ではViveのベースステーションが設置された個室が準備されており、体験者はこの内部でゲームを体験する。Vive+HoloLensのデバイスを被ってゲームがスタートすると、敵戦闘機があらゆる方向から襲ってくる。敵を視界に入れ、その方向にViveコントローラを組み込んだ銃型デバイスで撃つと、弾を発射して敵機を攻撃できるというしくみだ。

HoloLensを使うことにより、「実際の空間に敵機が現れる」という感覚をより強く得られるのがこのデバイスの特徴。一般的なVRヘッドセットのような、視界が奪われる怖さもなく準備が進められる。

体験イメージ

ViveとHoloLensを組み合わせたヘッドセットでプレイできた

また水面下ではHoloLens 2版の開発も進めているという。初代HoloLensから性能が向上し、特に表示領域の視野角が2倍以上になることでゲームとしてのクオリティがぐっと上がることが期待できる。

MRシューターについては参考展示の意味合いが強いというが、中国のアトラクション施設では実際に引き合いもあったという。HoloLens 2の代名詞となり得るかもしれない、MRシューターという新しいエンタメ体験だ。

複数人が同時に裸眼立体視!(Looking Glass Factory)

アメリカのLooking Glass Factoryが展示していたのは、デスクトップ型ホログラムディスプレイ「Looking Glass」だ。

「Looking Glass」に映し出された実写モデル

「Looking Glass」は厚さ10cmほどの分厚いガラス板のようなディスプレイで、この中に様々な実写モデルや3DCGモデルを立体的に表示できるという製品。ディスプレイの正面だけでなく、左右から角度をつけても、裸眼のまま滑らかな60fpsの立体アニメーションが見られる。

つまりどの角度からも裸眼立体視が可能になっているのだが、これは「Looking Glass」の裸眼立体視表示を45の角度に分けて出力しているから。裸眼立体視のディスプレイが45個、放射状に一辺に取り付けられているようなイメージだ。

実際の展示では、実写モデルと3DCGモデルがアニメーションしているものがあった。3DCGモデルについてはモーションコントローラの「Leap Motion」も組み合わせてあり、球根のようなオブジェを掴んだり、踊っているおじさんをもち上げるような簡単なインタラクションができた。

3Dモデルとのリアルタイムのインタラクションが可能

当初はクリエイターに向けて、制作中の3DCGモデルをより簡単にレビューできるようにするために開発したデバイスだというが、複数人が見るディスプレイとしても可能性があり、クリエイションからエンターテイメントまで幅広く本製品を浸透させていきたいという。実際に、会場のVTuberエリアでは、「Looking Glass」を用いてVTuberの3Dモデルをリアルタイムで出力する展示もあり、可能性は様々に広がっていきそうだ。

現在はMayaBlenderSolidworksZBrushCinema 4Dのほか、Unity SDKthree.jsライブラリなどに対応。近日中にHoloPlay C/C++ API、OpenGLにも対応予定という。

ブースでは45枚の連続写真を撮影し、その場で「Looking Glass」内に反映させる実演もあった



  • VR・MR・ARワールド(コンテンツ東京 2019内)
    日時:2019年4月3日(水)~5日(金)
    場所:東京ビッグサイト
    www.content-tokyo.jp